5 新入生、襲来
ユメ、ホシノとともに賞金稼ぎやバイトを続けること数か月、ユメは三年生、ホシノは二年生となり、新たに新入生も入ってきた。
片や大企業のお嬢様、もう一人は入学前にキヴォトスでも最強格のホシノにケンカを売ったというのだからだいぶアクの強いメンバーだ。
この星の住人からすれば宇宙人の私が言えたことではないかもしれないが。
せっかくアビドスに来てくれたので二人の入学歓迎会を執り行うことになった。
「こんにちは☆十六夜ノノミです!よろしくお願いします!」
「ん、私は砂狼シロコ。よろしく。」
「私の名前は小鳥遊ホシノ。これからよろしくね、二人とも。」
「私は梔子ユメ!よろしくねぇ~。」
「俺の名前はコーストだ。よろしく。」
とりあえず自己紹介を行った。オオカミの耳がついた生徒……シロコがホシノにケンカを売って打ち負かされたという話だが……そんなに血の気が多いようには見えないな。
「あの……一つ気になったんですけど、コーストさんて生徒って感じではないですよね?服装もその、だいぶ珍しい感じですし……。」
「ん、まるで宇宙服。」
二人がコーストの格好に対し不思議そうな顔で問う。
「あ~、そういえばもう当たり前すぎてコーストさんがキヴォトスでは特異な存在ってこと忘れかけてたね。」
ユメ……さすがにそれは気が抜けすぎじゃないか?
「まあ、疑問に思うのも無理はない。とはいえ素直に話してもすぐには信じてくれないだろうし……よし!ユメ、ホシノ、二人を連れてきてくれ。二人には最初から体で体感してもらおう。」
「ああ……そういうことですね。わかりました。」
「お、そういうことですね!じゃあ二人とも、一緒に来て~。」
「「?」」
何もわからないまま連れ出された二人は数分後、
「「わあああああああぁぁぁ!!!!!」」
宇宙に連れていかれるのだった。
二人に宇宙からやってきたという証拠をしっかり刻み付けて地球に戻ってきた。
「まさか宇宙人だなんて……びっくりですね☆」
「ん、地球は青かった。また宇宙行きたい。」
二人は目をキラキラさせて言う。自分としては見慣れた光景だが、こうも喜んでもらえるとこちらとしても連れ出した甲斐があるというものだ。
「いきたいなら、いつでも連れてってやるぞ。何なら次は月にでも連れて行ってやろうか?」
「ん、お願い。」
シロコの瞳のキラキラ具合が増した。声は平坦だが、とても分かりやすい子だ。
「宇宙旅行の話はいいとして……この学校に入ったなら、この学校の問題についても教えておかないとね、と言ってもノノミちゃんはもう知ってるだろうけど……。」
話されるのはアビドスが抱える借金の問題である。
「ん……八億五千万の借金……銀行を襲えば――」
「ダメに決まってるでしょシロコちゃん。」
ホシノがたしなめる。
余り血の気が多いようには見えないといったが、その評価は間違いだったようだ。
「あれ……?でも私が知る限りアビドスには九億円の借金があったはずです。そして、利息の返済が精いっぱいで元の借金はほとんど減っていないことも。五千万円ものお金……一体どうやって手に入れたんですか?」
ノノミが不思議そうな顔で聞いてきた。確かに今までのアビドスの経済状況を考えると異常ともいえる返済スピードだろう。
「ふふん。それがここにいるコーストさんの活躍のおかげだよ!」
「なんで先輩が得意げなんですか……まあ、そうですね。そこのコーストさんが大物賞金首を大量に捕らえてくれるおかげで、その報奨金で借金返済がだいぶスムーズに進んでいます。
この調子ならこれからの後輩にかかる負担も大幅に減らせるでしょう。」
ホシノのその言葉に、思い出したようにノノミが答える。
「え、ではもしかして最近賞金首を大量に捕まえてヴァルキューレに引き渡していることで有名な『空の悪魔』とかいう賞金稼ぎはもしかしてコーストさん――」
「おい、待てなんだそれは、賞金首を大量に捕まえているのは事実だが、悪魔なんて呼び名は知らないぞ。」
ノノミが言うには突然空から現れて見知らぬ航空兵器で対象を吹き飛ばしていくことからこんな異名がついたらしい。
確かに一度町で宇宙船の呼び出しをしてしまってからは、開き直って賞金首探しの効率化を兼ねて宇宙船で飛び回っていたがまさかそんなことになっていたとは。
賞金首を窓口にもっていくたびに相手がひきつったような顔をしていたのはもしかしてこれが理由だったりするのだろうか。
「ん、空の悪魔、カッコいい。」
シロコ的には何かの琴線に触れたようで再び目を輝かせている。
「まあとりあえず、借金返済のためには二人にも頑張ってもらわなきゃならない。学校のために二人の力貸してくれる?」
「もちろんです☆……私はそのために来たわけですし。」
「ん、私はホシノ先輩に従う。」
ホシノは二人の返答を聞いて安心そうにうなずいた。
こうしてアビドス高校に新たな仲間が加わった。
「ん、約束通り月に連れて行ってほしい。」
二人が入学して数日、校内の掃除を手伝っているとさっそくシロコから再度の宇宙旅行の催促が来た。
「ああ、かまわないぞ。おーい、三人ともちょっとしたらシロコと月に行ってくるんだが、誰かついてくるか?」
コンビニについてくるか尋ねるようなノリでコーストは同じく掃除をしていた三人に聞いた。
「あんまそんな軽いノリで行くような場所じゃないと思いますけど……私はいいです。二人はどうします?」
「月かぁ、ちょっと行ってみたいなぁ。」
「わあ☆月に行くなんてとてもロマンがあるじゃないですか!」
前からコーストと暮らしている二人はともかく、後輩二人組の適応が恐ろしく速い。
何はともあれ、ホシノが留守番で、三人で月に行ってくることになった。
「ホシノちゃ~ん!お土産に月の石持ってくるからね~!」
「いや、さすがのキヴォトス人でもエクソスーツも着ないで宇宙空間に出るのは無理があるぞ……石が欲しいなら俺が拾ってくるから、船内からは出ないでくれよ。」
「そんなぁ~。」
軽口をたたきながらここにやってきたときに乗っていた探査用コルベットにに乗り込み、パルスジャンプで月に飛んで行った。
「天外より来た、我々の理解を超えた存在……あなたは私たちより崇高に近い位置にいるのでしょうか、いや、もしやすでにたどり着いているのかも……クックック……。」
何者かが、空に延びる排気煙を眺めながらそう言った。
だが、彼はまだ知らない。この世界の真実が、思ったよりあっけなく、つまらないものだということを。
その頃、月旅行一行は月の表面付近を高速で航行していた。
「「「おおお~!」」」
いつも地上から眺めている月が目の前にあるというのはやはりテンションが上がるものなのか三人は窓に張り付いて楽しんでいる。
「ユメは月の石が欲しいんだっけか、表面に落ちてるのを拾ってくるが何個ほしいんだ?」
「え~っと、ホシノちゃん用に一個と、私も欲しいし……。」
「私も欲しいです☆」
「ん、私も欲しい。」
「OK,四個だな、ちょっと待ってな。」
そういってコーストはハッチを開け、船体の下に落ちていた月の石を持ってきた。
「おお☆これが月の石……思ってたより普通ですね。」
「ん……思ってたのと違う。」
「まあ、月にあったというだけでただの石だからな。そんなもんだろう。」
実際、月の表面は玄武岩などといった地球上にも普通にあるような岩石が多く、転がってる石も地球でも取れるようなものが多い。
ただ、月の石は地球上の石よりもはるかに古くから存在しているため、ロマンがあるのは確かである。
「まあ、みんなで月にやってきた思い出ってことでいいんじゃないか?」
「そうだよぉ。今度はホシノちゃんもつれてみんなで来よう!」
ユメは持ってきた石を掲げてとても楽しそうにしている。
彼女にとってはこうやって後輩とわいわいやれることのほうが嬉しかったのだろう。
次があれば必ずホシノもつれて来よう。
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「はい、ホシノちゃん!これが月の石だよぉ。」
「……申し訳ないですけど、ただの石にしか見えませんね。」
月の石のお土産は彼女にはいまいちだったようだ。
subnauticaです
次から原作開始後に入っていく予定です
コーストをキヴォトスの中でどんな立ち位置にするのかがまだ迷走中……
先生を出せたらなんかいい感じにまとまったりしないかな
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