時は少し飛んで第二次特別学力試験前日……
補習授業部の面々とその顧問となった先生は合宿所の一教室に集まって士気を高めていた。
「明日はついに、第二次特別学力試験です!この一週間の合宿で、私たちはしっかり合格できるだけの実力を身につけられたはずです!!」
そう楽しげに話すのはヒフミ。
あろうことか試験当日にあのゆるキャラのような謎生物……ペロロ様とやらのイベントに参加して試験をすっぽかした自称一般人の問題児である。
先生も実際顔を合わせた時にはびっくりしていた。
「うん。私たちは頑張った」
その隣に立つのは白洲アズサ。
銃の乱射やら立てこもりをして正義実現委員会のお世話になった別ベクトルの問題児だ。
とは言え合宿を通じてヒフミたちとは仲を深めており、性格も幾分か丸くなったような気もする。
「はい♡私たちなら、きっと大丈夫ですよ!」
浦和ハナコ……学内を水着で徘徊して捕まった、一番謎の存在。
まあ、それにもいろいろ事情があったようで、今は皆で合格するために共に頑張ってくれている。
「ええ、そうね!」
最後は下江コハル……純粋に成績が悪く補習授業部入りとなった、ある意味最も普通の補習授業部員である。
「うん。みんな、本当によく頑張ったね!」
合宿中も色々とトラブルはあったものの、力を合わせて模試で全員合格ラインまで取れるように成長してきたのを見た先生はとてもうれしそうだ。
「あとはしっかり試験に合格し……堂々と補習授業部を卒業するだけです!ここが最後の正念場……皆笑顔でお別れできるように、頑張りましょう!」
「……そうか。合格したら、もうお別れか……」
アズサが目を伏せて残念そうにそう言う。
「ちょっ、ちょっとアズサ!?どうして急にそんなしんみりするわけ!?」
「なるほど♡合宿も含めて、なんだかんだすごく楽しかったですもんね?」
「……ああ。いや、それでもやっぱり、出会いがあれば別れもある。すべては、虚しいものだ」
アズサは皆とのお別れが近いことにばにたすしているようだ。
「……そんな風に思う必要はないんじゃないですか?私たちのこれまでの日々がなくなるわけじゃないですし、試験が終わったら、皆どこかに行ってしまうわけでもないでしょう?みんな、同じ学園の生徒なんですから♡」
「そ、そうよ!私なんかいつも正義実現委員会の教室にいるから!さ、寂しくなったら来れば……?」
「……うん」
コハルの言葉にアズサの顔は少し晴れた。
「私も気持ちは同じなのですが……まずは試験に合格することが先決というか……と、とにかく!今日は早めに休んで、明日の試験に備えることとしましょう」
「そう言えば、受験会場は前回と同じところ?」
「あ、そう言えばまだ告知を確認していませんでしたね」
ヒフミはそう言ってネットからトリニティの掲示板を探す。
しかし、そこには恐るべきことが書かれていた。
「……え、ええ!?」
「どうしたの、ヒフミ?」
スマホを見て急に悲鳴を上げたヒフミを見て先生が声をかける。
「そ、そんな……嘘、嘘ですよね!?」
ヒフミがスマホを見ながら地面に倒れこむ。
「ええっと……"補習授業部の第二次特別学力試験に関する変更のお知らせ"……?」
ヒフミが取りこぼしたスマホをハナコが拾い上げて眺めるとそんな文章が書かれていた。
「試験範囲を、既存の範囲から約三倍に拡大……また、合格ラインを60点から90点に引き上げとする……?」
「は、はぁ!?何よそれ!」
「わ、私でもまだ90点なんて超えたことないのに……。試験直前になって、こんな……。」
急に格段に難易度がアップした試験の合格条件に、全員が愕然とした表情を浮かべていた。
そしてハナコはその理由に心当たりがあった。
「……なるほど。私たちの模試の結果を、ナギサさんは何らかの手段で把握したようですね。……それにしても、露骨なやり方ですねぇ……どうしても私たちを退学にしたい、と」
「……退学?」
「えっ、た、退学!?」
そこで、まだ今回の件について深く知らない二人が反応してしまった。
「あら……まあ、そちらも共有するべきとは思っていましたが……と、その前に、まだ変更された点がありますね」
「そうですね、試験会場と時間も変更されてます……試験会場は"ゲヘナ自治区第十五エリア七十七番街、廃墟一階"……げ、ゲヘナ?ゲヘナで試験を受けるんですか!?」
思いもよらぬ場所が出てきてついヒフミの声が大きくなる。
「な、何でトリニティの試験をゲヘナで受けなきゃいけないわけ!?」
「とはいえ、もしいかなければ見受験扱いで不合格、ですよね……。」
「そ、それもそうだけど、さっきの退学ってどういうこと!?初耳なんだけど!」
「……」
先生は不安そうな表情のコハルとアズサに今わかっていることを一から二人に説明した。
真実を知ったコハルは、案の定顔を青くしていた。
「そ、そんな……退学になんてなったら、正義実現委員会に復帰できないじゃない!」
「それは……」
「……なんとなく状況は分かった。とにかく出発しよう」
「え、ええ!?」
「……試験時間が"深夜三時"になってる。今から急いで出発しないと、間に合うかどうか……」
「……あっ、本当です……」
「いろいろ言うのは、試験を受け終わってからでも遅くはないはず。障害物の多さに文句を言っても、状況は変わらない。大切なのは、それでも最後まであがくこと。」
アズサは胸を張ってそう言い切った。
「……ええ、アズサちゃんの言う通りですね」
「うん、私もそう思うよ。とにかく、まずはやってみないとわからないからね!……とはいえ、今からゲヘナに許可を取って試験会場に行くのはさすがに厳しいから……私も少しズルをしようかな?」
そう言って先生はシッテムの箱からどこかへと通信を行った。
「……あのな先生。俺はタクシーじゃないんだぞ。というか今何時だと思ってんだ、いきなりゲヘナまで送ってくれだなんて……」
先生が呼び出したのは正義実現委員会の下で一時的に宿泊していたコーストである。
深夜にいきなり呼び出されて普通に機嫌が悪そうであった。
「ごめんコースト!でも、今回は本当に大切な用事で……」
「はいはい、どうせ生徒のためだっていうんだろ、分かってるよ……」
「えっと、先生こちらの方は……?」
コーストと初めて会うハナコたちは困惑した表情を見せる。
「ああ、一応自己紹介しておこうか。俺はコースト。まあ、先生の友人くらいに思ってくれればいい。そしてヒフミ……お前本当にここにいたんだな」
「あはは……その、色々ありまして……」
「あら、ヒフミちゃんとも知り合いなのですね……ところでなぜ先生はこの方をお呼びしたので?」
「そうだ、コースト!ゲヘナまで皆をコルベットで運べないかな?」
「……すまないが先生、コルベットでここからゲヘナに向かうのは正直やめておきたい」
「ど、どうして……」
断られるとは思っていなかった先生は悲しげな声を上げる。
「……今の時期はエデン条約の件で両校がだいぶピりついてる。そんな中、中立で警備を行うことになってる俺がトリニティからゲヘナに無許可で入り込んでいったらどうみられると思う?トリニティがゲヘナに攻め込んできたと思われても仕方ないだろう?コルベットはもうそれなりに姿が広まってるんだ。あまり火種になりそうなことはしたくないんだよ。」
「でも、そしたらどうすれば……」
先生は項垂れている。
「……ったく、俺がだめだといったのはあくまでコルベットでの移動だ。別の移動手段なら問題ない。」
「別の移動手段?」
コーストはその背後にエクソクラフトを呼び出す。
呼び出されたのはいつかの銀行強盗でも活躍したコロッサスだ。
「こいつで行こう。そこらの車よりは速度が出るはずだ。ほれ、時間がないんだろ?早く乗れ」
「……あ、ありがとう、コースト!!」
「……抱き着くな鬱陶しい!」
そんなこんなでわちゃわちゃしつつ、先生と補習授業部はコロッサスに乗ってゲヘナの試験会場への移動を開始したのだった。
出発から数十分、コロッサスの内部は激しい揺れに見舞われていた。
「わああああ!!」
「ちょ、ちょっとこれ、どうなってるのよ!?」
「ゲヘナの自治区に入ってから不良共が襲って来てやがるんだ、お前たちも応戦してくれ!くそがっ、RPGまで持ち出しやがって!」
ゲヘナに存在する大量の不良たちに囲まれながら進み続けるコロッサス。
採掘ブレードのおかげでバリケードは突破できるため止まる事はないが、それでも攻撃の揺れはどうしても内部には伝わる。
「おら!なんか高そうな車のってんじゃねえか、よこせ!」
「トリニティの制服が見えたぞ!とっ捕まえて身代金を要求してやる!」
大量の不良たちが銃器を乱射しながら追いかけてくる。
「うう……銀行の時よりもひどいです」
「え、何でそこで銀行が出てくるの?」
「へっ!?……な、何でもないです、あはは……」
そんなコントを繰り広げながらも補習授業部の面々は窓から身を出して銃で応戦する。
しかし、応戦を繰り返していると急に人気が少なくなってきた。
「なんか急に人が少なくなってきたな……」
「そうですね、いくら夜中とはいえ……」
ダダダダ!!
そんなことを話していると、どこからか銃声が聞こえてきた。
「どこかで戦闘が起きてる」
「しかも目的地のほうじゃないか。はあ……」
めんどくささを覚えつつ、とりあえず目的地のほうへと向かう。
が、その予感は的中し、試験会場のほうへ伸びる橋の上では検問が行われていた。
「止まれ!ここから先は立ち入り禁止だ!」
「あー……この先に用があるんだが、どうしてもだめか?」
「ダメだ!そもそも今日は町全体に外出禁止命令が出ているはずだ!」
「……なあ、これは先生パワーでどうにかならないのか?」
「いやぁ~ちょっと厳しいかな?」
「……なら、ここは強行突破で――」
ドゴオオオオオオン!!
コーストがアクセルを踏み込もうとしたその直前、凄まじい爆音とともに目の前の風紀委員たちが吹き飛ぶ。
「……おい、俺はまだ言い切ってなかったんだが、攻撃するのが速すぎないか?」
「も、もしかしてアズサちゃん……」
「いや、今回は私は何も……」
「そうですね。今の攻撃は私たちより後ろのほうから来ました。いったい誰が……?」
車内が不思議に包まれていると、後ろからバイクの音が響き渡った。
「もしもーし、風紀委員ともめていたようですが、一体どなた……あらっ☆よく見たら先生もいらっしゃるじゃないですか!」
「大当たりでしたわね。ご機嫌よう先生、こんなところで一体何を?」
コロッサスに横づけをしてきたのは美食研究会一行の車だ。
「美食研究会の皆!まさかこんなところで会うなんて!」
「あ、あなた達!まさかこの前戦った!?」
「何だ知り合いか、先生?」
先生がハルナになんとなくの状況を説明する。
「なるほど、そう言うことでしたか……ですがタイミングが悪かったですね、先生。この辺りは今温泉開発部が破壊活動を行ってまして、風紀委員会も含めかなりの大騒ぎになっているんですよ。」
「まあ、そのおかげで私たちも騒ぎに乗じて牢屋から抜け出せたんですけどね。それに、非常事態ということもあって偶然居合わせた給食部の風化さんが車を快く貸し出してくれましたし☆」
確かによく見れば美食研究会の乗っている車には"給食"の文字が書かれている。
そしてトランクからは"協力者"と思しき人物のうめき声が聞こえた。
「んんっ!?んー!んーーっ!!」
「……快くという割にはその方は縛られたままトランクに積まれているようですが……」
「細かいことはお気になさらず☆」
『ぎゃーー!!風紀委員会が追いかけてきてる!ハルナ、アカリ!今どこ!!合流できそう!?』
暢気に話をしていると通信機の先からジュンコの切羽詰まったような声が響いてきた。
「ジュンコさん、脱出作戦は取りやめです。」
「え、何で!?」
「ふふ、皆様には借りがありますから、先生と皆さんのことはこの美食研究会が責任をもって護送いたしますわ。」
「……話を聞く限りお前たちと行くと風紀委員会が余計についてきそうな気がするんだが……まあ、いいか。行くなら早く出よう。時間も近づいてるからな、しっかり掴まれ!」
コーストとアカリが一気にアクセルを踏み込む。
既にその背後には大量の風紀委員会の車両が迫っているのが見えた。
爆撃の音も近づいている。
「うわあああ!?なんですかあの風紀委員会の量、というかなんで重機まで!?」
「来てるものは仕方ない。応戦する」
ヒフミが半泣きで言う通り、後方には風紀委員会以外にも温泉開発部のものと思われる車両も混じっていた。
「文句言う暇があったら応戦しろ!……もしかしたらコルベットで来たほうがさっさと着いてよかったかもしれないな……」
地表付近ではなく宇宙を経由してくれば万事解決だったのだが、コーストは最後までそのことには気づかなかった。
「アカリさん、また爆撃が来ますわよ」
「OK~☆なら、私たちもど派手に返してあげましょう!」
アカリが後方に投げ込んだ爆弾で夜中の町が明るく照らされる。
そして後ろからの爆撃がより過密になった。
「これはこれは……大騒ぎですね♡」
「わ、私たちはただ試験を受けに来ただけなのにぃ!?うわああああん!!」
火薬の匂いの立ち込めるゲヘナの街に、ヒフミの叫びが響き渡った。
カーチェイスを繰り広げた後、補習授業部一行は何とか試験会場の廃墟にたどり着くことに成功した。
「はあはあ……し、死ぬかと思いました」
「そんな簡単にコロッサスの装甲は抜かれないさ。まあ、隣にいた美食研究会の連中は酷いことになってたが……」
「橋の上から川に落っこちてたけど、大丈夫なのかしら?」
「巻き込まれただけっぽいアイツが不憫でならないな……」
親指を立てながら余裕のある表情で沈んでいったハルナとは対照的に、フウカは迫りくる命の危機と新品の車が水に沈んだ絶望で魂の抜けたような顔で沈んでいった。
「えっと、みんな揃ってるかな?」
「ええ、大丈夫ですよ♡」
「ああ、私も問題ない」
「私も、大丈夫です」
「問題ないわよ、先生」
先生が全員の無事を確認した。
「ところで結局聞いてなかったが、お前たちはこの廃墟に何をしに来たんだ?」
「あれ、言ってなかったっけ?みんなの試験をしに来たんだよ」
「は?そいつらトリニティだろ?なぜゲヘナで?」
コーストが素朴な疑問を口にすると、アズサが弾頭から取り出した装置からナギサの声が流れた。
『貴方たちがこの映像を見ているということは、無事試験会場にたどり着いたということですね』
「な、ナギサ様!?」
「こいつは、ティーパーティーの……」
「……」
『ふふっ、恨みの声が聞こえてきそうですが……この映像は録画ですので、話しかけても私には聞こえませんよ。とはいえ、引き続きモニタリングは続けますので、時間までに試験を終えて戻ってきてくださいね。……
どこか含みを込めたような言葉を残して録画装置は停止した。
「そこまで話したわけでもなかったが……こいつ大分性格が悪そうだな?」
コーストが身もふたもない感想を吐く。
「あ、あはは……」
「まあ……良いほうではないかもですね♡」
「……とにかく時間がない。早く試験を始めよう」
「そ、そうだね。もう試験の始まる時間だ。みんなも席について」
先生がそう言って皆を建物の中へ入れようとしたその時……
ドゴオオオオオオン!!!
目の前の地面が、爆ぜた。
幸いにも建物の中には入っていなかったために各々の被害は限定的だった。
しかし爆風の被害はしっかりと受けてしまい……
「……………………っは!?し、試験用紙は!?」
「あう……ご、ごめんヒフミ……」
一番前にいたアズサの持っていた試験用紙は半分ほど消し炭になってしまっていた。
「なあ、先生。あいつらはここに試験を受けに来たんだよな」
「う、うん、そうだね……」
「ということはつまり、ド深夜に叩き起こされてやったこの送迎は、今この瞬間完全に無駄になったと?」
「そ、そうだね……」
コーストから黒いオーラが立ち上る。
その時、近くの瓦礫から工事用ヘルメットをかぶった生徒が現れた。
「あれ、あんた達も温泉を探してる感じ?」
「あんた達も、見つけたら教えてよ!」
コーストの顔が声のほうへ向く。
「なあ、いまここら一体を爆破したのは、もしかしてお前達か?」
「え?うん、そうだけど……」
ヘルメットの少女は微塵も悪びれることなくそう言い放った。
「そうか……温泉開発部…………ハハハハ…………やれ、テラモン」
〈了解しました、
ガガガガガガガ!!
テラモンの返答と共に頭上にコルベット、地上にミノタウロスが現れ、機銃掃射を始めた。
「皆殺しだ、温泉開発部共があああ!!」
「ちょ、落ち着いてコースト!」
寝不足で機嫌の悪いコーストはその後しばらくヘルメット狩りにいそしんだ。
温泉開発部しか狙わなかったためにそこまで問題にはならなかったが、結果的にコルベットを風紀委員会に観測されたコーストは風紀委員会から文句を言われることとなった。
subnauticaです
皆さん共同探検楽しんでますか?
今回はなかなか報酬が豪華でした。個人的にはマルチツールが好きですね。
新規の方も共同探検でいろいろ報酬を受け取った状態でゲームを始めるということもできるので、楽しんでみてほしいところです。
次回は……黒幕登場じゃんね☆
では、また次回お会いしましょう。
先に書いてほしいイベントは
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桜花爛漫
-
アビドスリゾート
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