Blue Sky Archive   作:subnautica

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53 先生視点:quis ut proditor

ゲヘナまで試験を受けに言ったはいいものの、温泉開発部の爆発によって試験用紙を吹き飛ばされてしまった補習授業部たち。

彼女たちは様々な葛藤を抱えながらも最後の試験に合格できるように勉強を重ねていた。

 

「こ、こんばんは、先生……まだ起きてらっしゃいましたか」

 

今日は第三次特別学力試験の前日。

ヒフミは皆に試験の前日なのだから英気を養うために早めに寝るように言ったものの、緊張して上手く寝付けずにいた。

 

「ふふ、私も来ちゃいました♡」

「もう、皆何してるの……」

「ハナコちゃん!それに、コハルちゃんまで……」

 

先生とヒフミが話し合っていたところに二人もやってきた。

緊張する気持ちは皆同じようだ。

 

「明日は試験なのに何してるのよ。休むのも大事だって言ったのはそっちでしょ……!?アズサもどっかに言っちゃったみたいだし……まあ、緊張する気持ちは分からなくもないけど……」

「それはそうなのですが……少々気になることがありまして、シスターフッドのほうへと伺っていたんです。明日、私たちが試験を受ける第十九分館なのですが……」

「何かあったのかい?」

「それが、この建物全体をかなりの数の正義実現委員会が封鎖するとのことらしいのです」

「!!?」

 

ハナコが驚愕の情報を告げた。

 

「建物全体を……いったいなぜ……?」

「"エデン条約に必要な重要書類を保護する"という名目でティーパーティーからの要請があり、建物全体を正義実現委員会として守る厳戒態勢に入ったとか……おそらく、誰一人あの建物への出入りは許されないでしょう……エデン条約が締結されるまで、ずっと」

「ちょ、ちょっと待って!そしたら、私たちの試験はどうなるの!?」

 

コハルが至極全うな不安を吐露する。

 

「……つまりこういうことですね。"試験を受けたいのであれば、正義実現委員会を敵に回せ"と……」

「そんな……」

「そ、それなら!私からハスミ先輩に事情を説明して……」

「……難しいでしょう。ハスミさんは今回の件の裏側について詳しく聞かされていないでしょうし、何より私たちを助けることはティーパーティーに対する明確な離反と捉えられます。そんなことになれば、ハスミさんも正義実現委員会から追放されてしまうでしょう」

「う、うぅ……」

 

知れば知るほどに八方塞がりな状況に、コハルは頭を抱え込んでしまった。

 

「ふう……どうやらナギサさんは本気で、私たちを退学させる気のようですね……」

「なぜ、そこまで……」

 

ヒフミがそうつぶやいたその時、部屋のドアが開かれる。

 

「……私のせいだ」

 

扉の向こうから出てきたのはどこかへと消えていたアズサだった。

 

「アズサちゃん!?ど、どこに行ってたんですか?それに、私のせいっていうのは一体どういう……」

「……」

 

困惑に包まれた空気の中、アズサは口を開いた。

 

「みんな、聞いて。話したいことがある」

「アズサちゃん……?」

「ど、どうしたの、アズサ……?」

 

何かに恐怖するように身を震わせるアズサに、二人から心配の声がかけられる。

 

「……みんなにずっと、隠してたことがあった。でも、もう隠しておくわけにはいかない……ティーパーティーのナギサが探している"トリニティの裏切り者"は、私だ」

「……はい?」

「……え?きゅ、急に何の話?」

「……」

 

アズサの唐突なカミングアウトにヒフミとコハルは困惑の表情を見せるも、ハナコはどこか険しい表情をしている。

 

「私は元々アリウス分校の出身。今は身分を偽ってトリニティに侵入している」

「えっと……そのアリウスって何?」

「アリウス分校……かつてトリニティの連合に反対した分派の学園です。その反発が原因で今のトリニティとはトラブルとなり、どこかに身を潜めているという話でしたが……」

 

ハナコがコハルの疑問に答える。

 

「……ああ、そのアリウスで間違いない。私はアリウスとしての任務を受けて、この学園に潜入している。その任務というのが……ティーパーティーの桐藤ナギサ、そのヘイローを破壊することだ」

「……うそ、それってつまり……」

 

ヘイローの破壊……それが指し示すことはただ一つ、殺人である。

 

「……アリウスはティーパーティーを消すためなら手段を問わない。そして明日の朝、アリウス分校の生徒がナギサを狙ってトリニティに潜入することになっている。……私は、ナギサを守らなきゃならない」

「……」

「な、明日!?」

「!?」

 

急すぎるカウントダウンに全員が驚きの顔を見せた。

その話が本当であれば、残された時間にはもう余裕がない。

 

「本館には戒厳令……ナギサさんの命で正義実現委員会の守りも手薄……なるほど、要人殺害にはもってこいの状況です。アリウスは思ったより頭が切れるようですね」

「ま、待って!アズサは……話の通りならティーパーティーをやっつけに来たんじゃないの?なのに守るってどういうことなのよ!」

「それは……」

 

コハルの質問にアズサは言い淀む。

 

「……アズサちゃん自身はその目的のために送り込まれた。そう言うことですね?」

「……」

「アリウス側には連絡係として、問題ないと報告を続けながら……裏切るための準備をしていた。……なぜ、ナギサさんを守ろうとするんです?それは、一体だれの指示で?」

「……これは誰かの命令じゃない。私自身の判断だ。桐藤ナギサがいなくなれば、このエデン条約は消えてしまう。」

「……では、平和のためだと?それはまた、ずいぶんと夢のような話です。この条約の名前と同じくらい、虚しい響きですね……アズサちゃんは嘘つきで裏切り者だった。トリニティでもアリウスでも本当の自分を隠し続け、ずっと、周りのすべてを騙していた……そう言うことであってますか?」

 

ハナコの言葉にアズサは目を伏せる。

 

「……いつか言ったとおりだ。私は皆のことも、皆の信頼も……みんなの心も、裏切ってしまうことになる、と」

「アズサちゃん……」

「ごめん……私のことを恨んでほしい。今補習授業部が置かれている状況のすべては、私が原因だ」

「それは違うよ、アズサ」

「先生?」

 

先生がアズサの言葉を否定する。

先生はミカやナギサを思い出しながらアズサに語り掛ける。

 

「原因は"信じられなかったこと"の方。お互いがお互いをもっと深く信頼出来ていたら、こんなことにはならなかった」

「ええ……そうかもしれませんね。誰かを信じるということは、とても難しい事です。でも、アズサちゃんはこうして私たちに本心を語り、こうして謝ってくれました。……ごめんなさい。アズサちゃんのまっすぐな顔を見ていると、心が落ち着かなくって……少し、意地悪してしまいました」

「ハナコ……」

「補習授業部は見せしめとして作られたような、ある意味目立つ部活。スパイであるなら、このような場所に長くとどまることはなるべく避けたかったはず。

……誰にも姿を見せず姿を消す方法など、いくらでもあるはずでした。でも、アズサちゃんはそうしなかった」

「……」

「アズサちゃん、補習需要部で過ごした生活、とても楽しかったんじゃありませんか?」

「……!」

「皆で一緒に過ごして、一つの目標に向かって頑張るのがとっても楽しかった。そして、その時間を壊したくないと思ってしまうようになった……違いますか?」

 

ハナコは微笑んでそうアズサに質問する。

 

「いや……うん、そうだな。そうなのかもしれない。みんなで一緒に勉強したり、遊んだり……この楽しい時間を、私は手放せなかった」

「アズサちゃん……」

 

アリウスの生活は過酷なものだ。

冷たい生活に慣れ切っていたアズサは、その温かい生活に触れてしまったことでその温もりを手放せなくなってしまった。

 

「……なんだか知ったような口をきいてしまいましたが、私にもわかります、その気持ち。何せ……はい。同じようなことを思った人がいたんです」

「……?」

「その人はなぜか要領がよく、周りからおだてられてしまうタイプでした。……本当はそんな人間ではないのに。その人は誰にも本心を話せず、誰にも本当の自分を見せることができずにいました。……その人にとってはすべてが無意味で、学校をやめようと思っていたんです」

「ハナコちゃん……」

 

ヒフミが心配げな声をかける。

 

「でもアズサちゃん、貴方は今回の件を終えてしまえばトリニティにもアリウスにも居場所がなくなってしまう……それでも補習授業部でいつも一生懸命だった。その人は試験を台無しにして学園から逃げようとしていたのに」

「アズサちゃん、いつも言ってましたね、"たとえすべてが虚しくても、抗うことをやめるべきじゃない"って。……その言葉で私も気づくことができたんです、学園で過ごす楽しさに。ええ、その通りです。例え虚しくとも、抵抗をやめるべきではありませんね。……桐藤ナギサさん……彼女を、アリウスの襲撃から守りましょう。後から文句を言われないように仕掛けられた罠はそのままに、皆で会場にたどり着いて、堂々と90点以上を取って合格するんです!」

 

ハナコは自信たっぷりに言い切った。

 

「……そう言ってくれるのは嬉しい。けど、そんなことは物理的に不可能だ。アリウスの襲撃と試験はほぼ同じ時刻に設定されている」

「えと……他の方に助けを求めるとか?」

 

ヒフミは不安げに言った。

 

「それもそうですが……私たちが試験に合格するには、それだけでは足りません。これまでは弄ばれるばかりでしたが、次は私たちから動く番です」

 

ハナコは眼前の三人を見回す。

 

「何せここには正義実現委員会のメンバーにゲリラ戦の達人、そしてティーパーティーの偏愛を受ける自称凡人にトリニティのほぼすべてに精通した人がいます。」

「「……?」」

「へ、偏愛ですか……?」

「それに、ちょっとしたマスターキーのようなシャーレの先生までついてるんですよ?」

「マスターキー……その呼ばれ方は初めてかな……」

 

先生は苦笑いを浮かべた。

 

「これだけ錚々たるメンバーが揃ってるんです。……トリニティ位、半日で転覆させられますよ♡」

「……ちょっ!転覆って、何言ってるのよ!」

「ふふ、そうはいってもただ試験を受けて合格するだけです……さあ、いまこそみんなで力を合わせるときですよ!」

「あ……うん。とりあえず、頑張ろう!」

 

全員がいまいち意図を読み取れぬまま桐藤ナギサ救出作戦が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「……チームⅢ、Ⅳ、Ⅴ総員揃ったとのことです」

「そうか。ターゲットの位置は確認済み。予定通り作戦を開始する」

 

セーフハウスの近くに集まるアリウスの私兵。

しかし彼女たちは気づかなかった。

遥か上空から彼女たちを監視する影があることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――トリニティ、セーフハウス

 

ナギサは一人紅茶を飲みながら自問自答を繰り返していた。

 

考えていることは先日補習授業部の試験会場をゲヘナに変更したときのことである。

しっかり彼女たちをモニタリングしていたナギサはコーストからの自分への評価が急転直下している場面もリアルタイムで捉えていた。

 

「(彼女たちを合格させないためにはやむを得ない選択でした……でも、これではコーストさんをトリニティに呼んだのが本末転倒に……これ以上彼の機嫌を損ねるようなことがあってしまえば……あそこで先生がコーストさんを呼ぶと予測できなかった私のミスでしょうか……)」

 

ナギサの顔色はすでに大分青くなっており、今しがた飲んだ紅茶さえも吐き出してしまいそうだった。

 

コンコン

 

部屋に扉を叩く音が響いた。

 

「……紅茶でしたらもう結構です。」

 

ギィー……

 

紅茶は拒んだはずなのに戸が開けられた。

その事実に違和感を感じたナギサが振り返ると額には鉄の感触、目の前には見覚えのある顔とガスマスクがあった。

 

「夜分に失礼しますね♡……思ったより顔色が悪いですが、本当に大丈夫なのでしょうか?」

「動くな」

 

アズサによって銃口が押し込まれる。

 

「っ!裏切り者は一人ではなく、二人……!」

「ふふ、単純な思考回路ですね。私たちはただの駒、指揮官はまた別にいます。」

「それは誰ですか!!」

「その前に……ナギサさん、ここまでやる必要ありました?私たちはまあ怪しかった自覚はありますけど……もともと友好的だったヒフミちゃん、それに無関係なコハルちゃんや先生まで巻き込んだのは何故ですか?」

「それは……」

 

ナギサは言葉を詰まらせる。

 

「……ええ、確かにヒフミさんには悪いことをしてしまったかも入れません。ですが、後悔はありません。彼女との関係は守りたいと思っていましたが、大義のためなら、私は……」

 

蒼白度合いの増した顔でナギサはそんな言葉を吐き出した。

 

「……ふふ♡それなら、改めて私たちの指揮官からナギサさんへメッセージを送りましょう……」

 

 

 

"あはは……えっと、それなりに楽しかったですよ。ナギサ様とのお友達ごっこ"

 

 

 

「ヒュッ……」

 

ナギサはその言葉にひきつったようなうめき声を残して気を失ってしまった。

 

「……あら、思った以上に精神的に限界だったようですね。銃弾で気を失わせようかと思っていましたが。その必要もなさそうです」

「いや、途中で目を覚まされても困る。ここはちゃんと銃撃しておくべきだ」

「……いや、死体撃ちみたいで気が引けるのでさすがにやめておきましょう。それより、ポイントへの誘導を急ぎますよ。」

「そうか。分かった。」

 

ハナコは気絶したナギサを担いで安全なところに運び、アズサはゲリラ戦を仕掛けつつ入り口を絞ることでアリウスの兵を誘導する。

 

「スパイが裏切った!」

「奴を囲い込め、逃がすな!」

 

既にアズサが裏切ったことも全隊に知れ渡っている。

アリウスは対象の殺害と裏切り者を排除するまで止まらないだろう。

かくして、アズサはアリウス兵を体育館に誘導することに成功した。

 

「……なるほど、逃げたのではなく待ち伏せだったと。だが、それは愚策というものではないか?こんな退路もない場所でこの数の兵に果たして何分耐えられるというのだ?」

 

アリウス兵は指揮官が手を上げると同時に一斉に銃口を補習授業部に向ける。

 

「あうう……」

「っ……!」

「そうだ。ここに退路はない。お前たちはもう逃げられない」

「ですね、ひとまず仕上げと行きましょうか♡」

「ようやく私の出番だね」

 

ヒフミとコハルが弱気な表情を見せる中、他三人はかなり強気だ。

 

「殲滅戦を始める。先生、指示を」

「うん……じゃあ、補習授業部、行くよ!」

「「「「おーー!」」」」

 

そう元気よく返事をしたのも束の間――

 

ドゴオオオオオオン!!!

 

「きゃああ!な、何!?」

「な、なんですか一体!?」

「あら……思ったより早い到着でしたね」

 

いきなり体育館の屋根を突き破って何かが落下してきた。

土煙の奥に見えるそれは、よく見ればそれは巨大な人型のように見える。

 

『やあ、先生。あれからまだ一週間ほどしか経ってない気がするが……面倒ごとの頻度が高すぎるんじゃないか?』

「こ、コースト!?なんでここに?」

 

そこにいたのはコーストのミノタウロスであった。

 

『そこのピンク髪の……ハナコだったか?そいつがトリニティで観光していた俺に話しかけてきてな。……まあ、水着で話しかけてきたから驚いたが、とりあえず様子を見に来ることにしたんだ』

「ハ、ハナコ、あんたまた外で水着で徘徊してたの!?え、エッチなのはダメ、死刑!!」

「……うーん、さっきまで結構シリアスな感じだったと思うんだけどな……」

 

先生は空気感の変化に困惑した。

 

「まあ、その話はそこまで掘り下げなくていい。本題は……おい、"裏切り者"。空撮でお前もここにきていることは分かってるんだ。さっさと姿を見せたらどうだ?」

「……な~んだ。全部ばれちゃってるってわけだね」

 

コーストの呼びかけに答えるように、アリウス兵を割るようにして一人の生徒が現れる。

 

「うーん、貴方にもちゃんと待機しておくように言っておいたはずなんだけどなぁ。ま、いいや。じゃあ、改めて……私が本当のトリニティの"裏切り者"。まあ簡単に言うと、黒幕登場☆ってところかな?」

 

ティーパーティー、パテル分派の長、聖園ミカ。

彼女が、裏切り者として先生たちの前に立ちはだかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




subnauticaです

黒幕登場☆ですね。
ここからは話がどんどん流れていくかと思います。
補習授業部編はコーストをねじ込めそうなところがあまりなかったですからね……。

次回はvsミカ&アリウスですね

では、また次回お会いしましょう。

先に書いてほしいイベントは

  • 桜花爛漫
  • アビドスリゾート
  • 4546B
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