機動探訪記ガンダム・ジェネレーション   作:キャノン娘

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[機動戦士Zガンダム編]
第11話 未来と現在


 宇宙世紀0087。一年戦争の終結からすでに七年の歳月が過ぎ去っていた。

 それは少年を大人に変え、社会を動かす世代へと成長させるに十分な時間だった。

 しかし、そうではない者たちもいた。彼らが一年戦争で果たした功績の記録は世界のどこにも残ってはいない。ただ確実なのは、彼らが反地球連邦組織エゥーゴの一員として、ここグリーンノアに潜入しようとしている事実だけであった。

 

 少年は目の前のモビルスーツを撃墜しながら、心のどこかで何故こんな事になってしまったのか考えていた。

 少年の名はカミーユ・ビダンと言う。その名前が原因のひとつだということは認めたくはない現実だった。彼は他に原因を求めた。自分の近くで戦っている、赤いモビルスーツの主から感じた不思議な感覚……それが自分をこうさせているのではないかと感じていた。

 だが、最大の原因はそれではないことは誰の目にも明らかだった。

 ティターンズ。

 今戦っているその相手は、以前からカミーユが反感を持っていた者達だった。

 ジオンの残党狩りを名目にスペースノイドを弾圧する、連邦政府のエリート組織……それに対する反撃の火の手がついに噴き出した、カミーユに取ってはそれだけの事だった。

「お前みたいな奴は斬られる事の痛みを味わった方がいいんだ!」

 ビームサーベルで敵機を切り倒す底にあるものは殺気や闘気といった戦士の気迫ではなく、苛立ちと反感をぶつけるだけの憎悪に近いものだった。ただ、それをぶつけるべき正当な相手を求めて、カミーユは戦場と化した街中を疾駆しつづけた。

 

 それとは対照的に被害を抑えて戦っていた赤いリック・ディアスのパイロットは、クワトロ・バジーナ大尉と名乗っていた。

 彼は、まだ赤い彗星のシャアと呼ばれていた時代に感じたものと同じ感覚を、この敵意の塊のような少年に抱いていた。

 そして、奇妙な感覚はもうひとつある。

 彼らを援護するために他方面で陽動をしているモビルスーツたち……大出力のメガ粒子砲とSFSが一体化した黄色のマシンに乗った緑色のサイコミュ搭載機と、その隣にいる青いガンダムは、どこかで見たことがなかっただろうか?

 そのどちらかが、確かに自分の事をクワトロ大尉と呼んだ気がする。彼らと出会ってからではなく、もっと遠い過去に。

 

 彼らは危なげなくガンダムMk-Ⅱを強奪し、コロニー外に脱出した。楽な任務だったといってもいいだろう。

 コロニーの外に待っている戦艦アルビオンには、アプサラスⅢ、ジオング、ビグ・ザム、ヴァル・ヴァロなど大型のモビルアーマーが窮屈そうに控えている。外に出られれば安全だった。

 だがそんな任務を完遂しても、ショウの心は晴れなかった。カミーユの心の刺々しさにも圧迫感を感じていたし、何よりも今自分のいる場所そのものが衝撃だった。

 ア・バオア・クー攻略戦を終えて帰艦したショウを迎えたのは、信じられない事実だった。

 マークら“ブラック・ジェネレーションズ”は、はるかな未来からやってきたのだと言う。過去の歴史を実際に体験し、かつて存在したモビルスーツや、クレアの乗っている量産型ハンマ・ハンマのように計画だけで実際には使用される事のなかった機体までをも開発・設計し、調査するのが目的だった。

 そしてその最終目的は、二体の伝説のモビルスーツ……全てを超越し、その光の中に滅ぼし去る“ギガンティス”と、全てを内包し、その光によって創り出す“フェニックス”を手に入れる事であった。

 冗談事だと思ったが、クレアやレイチェルはそれを知っていた。知らずに参加していたのはショウ一人だけだったのである。

 十一歳の少年にとって、七年の隔たりはあまりに大きい。小学校に入ってから卒業するまでよりもさらに長いのだ。この時代の自分をショウは考えてみたが、もう高校を卒業しているのだろうか。どこにいて、なにをしているはずなのか、想像さえできない。

 そして実際にコロニーの中を体験して、その空気が自分の知っていたものとは違うことを体験させられた。

 自分が戦っていたあの戦争が、一年戦争と言われている事にさえ違和感を感じた。ショウにとっては、ほとんど一ヶ月ほどしか経過していなかったのだから。

「本当に……ここは七年後なんですね……」

 ショウは淋しそうにぽつりと漏らしたが、クレアの返事はいつものように明るいものだった。

「私にとっては一年前だよ。それから……」

「私には、今が本当の時間なのよ」

 カミーユのものとは異質ではあるが、レイチェルの声も鋭い厳しさを持っていた。

「ご、ごめんなさい……」

「別に謝る事じゃないわ」

 苛立っているわけではない。ただ、真剣な思いが過剰なまでに込められていた。

「レイチェルぅ、今から気負ってもしょうがないよ」

「分かってるわよ。でも……」

 ショウは後に言葉を続けられずにその場を立ち去った。ここに来てから、急に空気そのものが重くなってしまったのを感じていた。

 歴史を旅する者なら、誰もがそう感じたことだろう。

 宇宙世紀0087……長い黒歴史の中で、今こそが最も深く悲しみに満ちた時代だという事を……。

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