機動探訪記ガンダム・ジェネレーション   作:キャノン娘

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第13話 すれ違う悪意

 シャンプーの泡をシャワーで洗い流すと、栗色の髪が姿を現した。

「目、開けていいわよ」

 そう言うまでは、シスは目を閉じ続けたままだ。それを何度も直そうとしているのだが、いまだに成功したことがない。

「じゃあ、あと百まで入ってから出ようね」

「はい」

 単純な返事を「了解」から「はい」に変えるだけでも大変な苦労だった。

 プログラムの変更なら簡単なのだろう。だが、シス・ミットヴィルは生きている人間なのだ。上層部がそのことを考えてくれているのかどうか、エリスは不審の目を向けざるを得なかった。

「いち、にぃ、さん、しぃ……」

 一緒に数を数えていく。このときだけはシスも饒舌だ。考えをまとめやすいのだろう。

 思った事を素直に口にすることがシスには難事だった。物事について何も感想を抱くことができない方が多かったからだ。

 さらに、他人はすべからく自分の意に沿わぬ意見を排除したがる。たとえそれが正論であろうと、「自分と違う意見」であれば排除の対象なのだ。そして、異論の排除の究極形は戦争である。自分はそのために存在するのだ。

 そんな戦争の道具に意見をはさまれていい顔をする「人間」はいない。口を開くだけで冷たい視線に囲まれ、返事が来る事はなかった。言葉をかけてもらえるのは好成績を収めたときだけだ。

 だから、シスは自然に無口になった。そして他人はそれを歓迎した。ここに来る前は。

「……99、100」

 エリスはシスを浴槽から抱き上げた。以前反応がなく、いつも無口なのだからと油断していたら、実は湯あたりしていたと言うことがあったからだ。

 体を拭いてやり、寝巻きを着てベッドに向かう。そのとき、シスがパジャマのすそを引っ張った。

「どうしたの、シスちゃん?」

 シスはしばらく返事をせずにうつむいていた。

「おなかでも痛いの?」

 小さく左右に首を振る。そして、聞こえるかどうか分からないくらいの声が漏れてきた。

 

 明日は大気圏突入である。そのときは戦闘にはならないが、降下後には戦場にたどりつく。

 それを伝えられても、ショウは気乗りしているわけでもなかった。戦いたくてやっているわけではない。

 戦いたいというと語弊があるが、少なくとも以前は生き延びるためとか、倒すべき敵が見えたとか、何かしら戦う理由があった。今はそれが何もないのである。

 戦いの歴史を見届けること……七年後の未来に来てからは、それが理由になるはずだった。だが、あまりにも過酷な一幕を見せられると、安易な遊び半分だったという事を思い知らされる。

 布団にもぐっても、なかなか寝つけなかった。

 この時代、カミーユ・ビダン、そしてレイチェル……いろいろなことが頭の中を通り過ぎていく。だが、それにどうしていいのか、自分自身は何をするべきなのかは考えつかなかった。

 目を閉じてとりとめもないことを考えていると、ドアを叩く音がした。

「ショウ君、まだ起きてる?」

 エリスの声だ。

「起きてるよ」

 返事をして、ベッドから降りてドアを開くと、エリスに連れられてシスが頬を赤くしていた。

「シスちゃんがね……ショウ君と一緒に寝たいんだって」

「えっ?」

 シスは黙ったまま、部屋の中へと入ってきた。それがシスにできる精一杯の自己主張だった。

「シスちゃん……」

「ごめんねショウ君、言い出したら聞かないのよ……」

 そんな事を知っているのはエリスだけだろう。シスが何かを言い出すことなどほとんどないのだから。

 シスは抱っこしてもらうのを待つように、ショウのパジャマを握りしめた。

 

「お兄ちゃん……」

 ベッドに入ってからも、シスはしがみついたままだった。だから小さなつぶやきが耳に入った。

「お兄ちゃんがいるの?」

「私じゃないわ……そう、誰かを呼んでる人がいるの……。その人も怖がってる……淋しがってるの……。

 ショウにも分かる?」

「僕は分からない……。悲しんでる人が多すぎて、誰のことなのか……」

「私も、怖い……」

 シスはショウを感じるように、体を強く寄り添った。

「この時代は怖い……。私と同じことを考えている人が何人もいる……。渦の中に悲しみの光が集まっていく……。そのすぐ横にあなたがいるの、ショウ……。

 こんな世界をもう一度呼び戻すなら……やっぱり封印されていた方が良かったのかもしれない……」

 ショウはシスの背中を優しく撫でて、もう眠るように告げた。二人は互いの体重を預けあうようにして眠ったが……心の中の不安は感じていた。渦の中心に立つもう一人の男が近づいて来ていることを。

 

 宇宙全体が悪意に圧迫されるような空気の中、クレアとケイはいつものように新型機を眺めて悦に浸っていた。

 SFSもありあわせの安物ではなく、フライングアーマーが揃えられていた。大気圏内外を問わず使用可能で、単機で大気圏突入さえ可能な優秀なものである。

 これが揃えられたということは、いよいよ大気圏内での空中戦が激化するということなのだ。

「いよいよだねー」

「これからが楽しい時期だよね」

 二人の笑みは不謹慎だが、事実モビルスーツの発展は今が一番劇的なものだ。サイコミュ兵器を搭載したモビルスーツが全盛期を迎えるのである。

 その代表例とも言えるのが、今目の前にあるサイコガンダムだ。大きさは普通のモビルスーツと変わらないプロトタイプであるが、全身に装備された拡散メガ粒子砲の攻撃力は既に一級品である。

「サイコガンダムはレイチェルの役だけど……となると私がハンマ・ハンマかぁ。まだマンダラに乗ってたいんだけどなぁ……」

「シスちゃんが乗るって言ってたよ」

「ありゃ?そうなの?」

「ユリウス君がね、バーサーカーシステムをつけるっていろいろいじってたよ」

「ユーリィのやつ、まだやるつもりだったのか」

「機体のデータチェックして、どう考えてもエネルギーCAPが優先だってぼやいてたよ。新型バーサーカーシステムはエネルギーを余分に使うんだって」

「ノイエ・ジールⅡか何かにしかつけられないんじゃない?」

 もっとも、あれほど強力な機体があればいまさら強化する必要はない。装弾数を削って強化するよりも、そのままの強さで弾数を増やした方が特だ。したがって、せっかくの新発明も残念ながらあまり使いどころはなさそうであった。

「馬鹿アキラのゴッドガンダムにつけたらかっこいいだろうなぁ……」

「クレア、久しぶりに聞くけどアンタの“かっこいい”ってどういう基準なのよ?」

「それはまあ、主にジオン水中系とか、あの辺に並んでるモビルファイターとか」

「ソレ系か……」

「だっていいじゃない。ナイチンゲールなんて究極の機体だよ。高機動力にファンネルがあってバケモノみたいな外見、ビームサーベルは変な不意打ち用、と。アレより私向きの機体はたぶん無いよ」

 ケイが頭を抱えていると、話題のシスがやってきた。いつもはエリスに連れられているが、今日はショウとだった。エリスとの次に多い組み合わせなので、怪しまれることはなかったが。

「これに……私が乗るの……」

「そうだよ。……どうしたの?」

「嫌な感じがするの……」

「これは悪魔のマシーンだ、って?」

「…………」

 シスはその形容が正しいと思った。同時にそれは、誰かが身をもって思い知らされた経験を代弁しているのだと感じた。

 たとえ型は違っても、これは確かにサイコガンダムなのだ。

 それを知りながら、シスはコックピットに足を踏み入れた。外から感じたような悪霊の巣窟のような感覚はない。だが、それも時間の問題のように思えてきた。

「シスちゃん!」

 外からクレアの声が響く。

「嫌なものが来たら追い払えばいい!絶対に自分から呼んじゃダメだよ!」

「自分から……?」

「外から集まってくるのを呼び込んでたら、自分がその嫌なものになっちゃうよ」

 クレアはにっこりと笑う。それがかえってシスには重圧だった。

「私にはできるの……?」

 機械を操り、敵を倒すことなら簡単だろう。だが自分が悪魔のガンダムに取りこまれないこと……それこそがシスの不安だった。

「来る……!」

 サイコミュと連動した瞬間に、昨日感じた波動をより強く感じ取った。トルネードガンダムに乗り込んだショウも、すぐにそれを理解した。

「敵……!出撃ですか!」

 ショウは逸るが、マークは冷静に行動を進めた。

『出撃はしない。我々はこのまま大気圏に突入する』

「でも……!」

『ブライト大佐の艦だけで敵の追撃は抑えられる。その間に我々が先行し、戦場を制圧するのだ。

 降下してからはクワトロ大尉やカミーユ・ビダンを戦力として当てにできない』

 マークの自信に満ちた声は、少なからず子供たちを勇気づけた。そして渦巻く悪寒とお互いに距離を取りつつ、アルビオンは地球へと降りて行った。その悪寒の正体がパプティマス・シロッコという男だと知るのは、まだ先の事になる。

 

 七年の時を越え――体感的には二ヶ月も経っていないが――ショウはジャブローの密林を見下ろしていた。見慣れた風景というわけではないが、忘れられるものでもない。

 勢力が手薄な要地を少数精鋭のモビルスーツ隊で制圧し、政治的優位を得ようという作戦である。だが、事態はエゥーゴが予想もしなかった意外な方向に動いていた。

「どうしてこんな事になったんだろう……」

「愚劣としか言いようがありませんね」

 ユリウスも珍しくいらだっていた。たった一人で苦戦をして、初めてカチュアに心の中を素直に出せた思い出の場所である。

 ティターンズはそれを地下の核爆弾で爆破しようと言うのだ。

 知らずに突入してしまったクワトロたちを援護するにも場所が遠すぎ、彼ら自身の奮闘を祈るしかなかった。

 しかしショウが気づくことはなかったが、マークはこの事態は想定済みであった。迅速な行動のためのフライングアーマーの配備はそのためである。それでも一歩間違えば全滅の危険がある危険な作戦だった。しかも、その成否の鍵を握っているのは自分たちではないのだ。

「前方にジム・スナイパーカスタムが三機。上空後方にセイバーフィッシュが四機迫っています」

「骨董品だな」

 マリアに余裕の表情を返すと、マークはモビルスーツ隊に出撃命令を出した。

 モビルスーツの性能差は圧倒的である。もともとティターンズにとってジャブローは捨て駒でしかなく、爆破予定地に優秀な機体など配備するはずもなかった。指揮官にとっては願ってもないことだが、兵士たちにとってはそうでもなかった。

 

「この人たちは何で戦ってるんだろう……?」

「ひどい話ですよ……こんな作戦を……」

 ユリウスにも素直に受け入れる事のできない作戦だった。

 どう見ても効率が悪すぎる。エゥーゴという反乱組織を葬るだけのためにジャブローを消滅させては、地球連邦にとっても戦争勝利後の地球圏統治に支障が出るはずだ。

 それを平気で実行することから、ひとつの推論が導き出された。ティターンズはいずれ地球連邦を滅ぼし、自分たちだけで地球の支配権を握ろうとする。そのためにエゥーゴの活動を口実に、ティターンズに関連性のない連邦の要所を消していくのだと。

 そうでなければ、ティターンズは失うものの大きさも分からず、捨てられる者の気持ちも分からない愚か者という事になる。どちらにしても、今後ティターンズの勢力が大きくなればなるほどジャブローのような犠牲が出る事は明らかだった。

「ねえ……戦いたくないよ……」

 ショウがこんな事を言い出すのは初めてではない。やる気を出した時はとてつもない力を発揮するくせに、すぐにやる気をなくすことばかり言うのは正直好きではないが、それでも今度ばかりは怒鳴りつける気にはなれなかった。

「敵に撃たれるのと味方に騙し討ちにあうのとどちらがマシなんですか?僕たちは少しはマシな選択を与えるだけです」

「でも……」

 ユリウス自身、欺瞞だと分かっている言葉ではショウを動かすことはできなかった。ショウはユリウスほど頭は良くないし、自分を騙すことが得意でもない。

「ニキ先生もこんな戦いを続けてきたんだろうか……」

 ニュータイプの存在の大きさ、ゲームの駒ではない仲間たちとの交流、そして理知的でも人道的でもない敵首脳と置き去りにされる前線兵士……そうしたことを教えられた事はなかった。ただどんな事態が起こっても冷静であることを求められた。具体的な事は実際に体験した方が良いとニキは考えたのだった。しかしそれは、いかに天才ユリウスであっても若干十一歳の少年には厳しい体験すぎることは承知していた。

「それでも、僕は行くんですよ……!」

 ショウを後に残して、ユリウスは出撃した。後に続いてくれる事を信じながら。

「待って、ユリウス!あ……」

 取り残された形になってしまったショウは、行動するタイミングを失ってしまい、誰もいなくなったモビルスーツデッキでひとりたたずむ事になった。

『ショウ、どうした?また迷っているのか?』

 マークの問いに、ショウは答えに詰まった。正直なところ、どう答えていいのかさえ分からなかった。

『倒すべき敵が、なんとなく分かってきている……だが、それは今目の前にはいない。だから迷っているんだろう?』

「……分かるんですか?」

『悩んでいることくらいは分かるさ。

 意味もないのに出撃したくないなら、今日はそうしてもいい。難しいのは脱出だからな』

「そうですか……」

 そう言われてしまうと、ショウはかえって力をなくした。

『出撃するのに意味が欲しいなら、人を助けるために出てはどうだ?』

「助けるため……?」

『エゥーゴのレコア少尉が捕らわれているのをカミーユが救出に向かっている。それを援護するんだ。

 今いる位置からまっすぐ十二時の方向に行けば合流できるだろう』

「は……はいっ!」

 

 ようやく出撃していったショウを見送ると、ブリッジのマークとエリスは同じく溜息をついた。

「まったく……こうまでしてやらないといけないとはな。まるで……」

「マーク、あなたみたいよ」

「エリス、昔のおまえと同じだよ」

 二人は顔を見合わせて、表情を硬くした。

「戦いたくないってごねてたのはおまえだろう」

「すぐ自分の都合でだだをこねてたのはマークの方じゃないの」

「おまえだよ」

「あなたよ」

 それを聞かされるネリィとマリアはげんなりした顔で作業を進めた。

「……まったく、いいかげんにして欲しいですわね」

「まあ、いいんじゃない?それだけ余裕があるんだから……」

「そうですの?後ろから敵戦闘機が迫ってきていますわよ」

 ネリィのつぶやきが耳に入ったのか、攻撃の意思を感知したのか。マークとエリスは突然我に返った。

「後方七時の方向!ミサイル発射だ!北上しながら攻撃を回避!」

 即座に命令は実行され、セイバーフィッシュたちは弾幕の嵐の中に消えた。

「ふう……!

 ……で、さっきまで何の話をしてたんだったかな?」

「えっ?さ、さぁ……私も、ちょっと……」

 マリアとネリィは、二人で深い溜息をついた。

 

「ちょっと、敵どこよ?」

「森の中に、ジム・スナイパーカスタムが潜んでいますよ!見えないんですか?」

「見えない。モビルファイターはセンサー関連が甘いから」

 視認か、超能力のような閃きで敵を発見するのだろう。ガンダムファイターという者たちを実際に見たことはないユリウスだったが、これまでのクレアの行状からなんとなく類推した。

「え~っとねぇ。誰かが囮になって、レイチェルとシスちゃんが遠距離攻撃。空を飛べるのは突撃するよ」

「囮役は誰が?」

「んーと……私だね」

 味方の中で唯一、敵が見えないのはクレア自身だからだ。そう判断して軽く答えると、マンダラガンダムは勢いよく突出した。

 そこに森の中から、ビームライフルによる狙撃が三発命中する。

「痛い!痛いっ!

 ……もう、少しは手加減してくれてもいいじゃない!こっちはモビルトレースシステムなんだぞっ!」

 無理です。特にそのガンダムでは。

 咽まで出かかったツッコミをこらえると、ユリウスは位置が割り出された相手に照準を向けた。

 今回の切り札はサイコガンダムだけではない。ユリウスは成長株のガンダムMk-Ⅱを駆り、カチュアは単独で大気圏内を飛行可能なバイアランに乗っている。二機が空中から接近しようとしている最中に、森の木々の中から有線制御式ビーム砲がぬっと姿を現し、ジムを奇襲した。

「ファイヤー!」

 クレアの掛け声を合図に、バイアランのメガ粒子砲が、ガンダムMk-Ⅱのハイパーバズーカが襲い掛かる。そしてわざわざ目の前まで突進したマンダラガンダムが火炎放射で森ごと焼き払う。

 圧倒的な戦力差の前に、三機のジムはあえなく玉砕した。

 彼らの運命がユリウスの言葉どおりなのかは分からない。分かっているのは、たとえ彼らに愛や平和を説こうとも、彼らの運命は変わらなかったということだ。地下の核爆弾の存在を彼らは知らなかったのだから。

 ジムの残骸から吹き上がる煙の横をトルネードガンダムが駆け抜けていく。

「ショウ……ニュータイプはこんな時、何を思って戦うんですか……」

 

「そこ……生きてる人がいる……」

 地下に気配を感じながら北上すると、行く手をグフ飛行試験型の一隊が阻んだ。

 飛行型と言っても、実際に空を飛べるわけではない。グフからドムに至る過渡期の実験機である。そもそも一年戦争のジオン軍は量産化しなかったような機体だ。

 そのパイロットたちの気迫を感じたとき、ショウは背中に黒い影がのしかかってきたような悪寒を覚えた。

 彼らには助かる道のりはない。唯一の希望として信じすがっているものは、目の前にいるショウを殺すことなのだ。同情するにもできず、敵意を向けることもできずにショウは立ち往生した。

 そこに横合いからビームライフルの閃光が叩きこまれた。

「なにをしてるッ!足手まといなら帰れよ!」

 カミーユのガンダムMk-Ⅱである。少なくとも、彼は誰かを助けるためにやってきたのだ。それを手伝うはずだったのである。にもかかわらず、敵に対しては混乱したショウの思考ははっきりと形を持った。恐怖である。

「あ……足手まといなんかじゃないよ!」

「なら敵を倒せッ!」

 カミーユは正確な動きで連邦兵を撃ち落していく。ショウにはその姿が、己にまとわりついた黒い影をビームに乗せて撃ち出しているように思えた。

「どうして……こんな風に戦わなくちゃいけないんだよっ!」

 カミーユが三機目を落とした時、ショウも同じ思いを込めて目の前のグフを叩き斬った。その行為が、クレアがシスに注意していたことだとは考えもしなかった。

 行き場のない怒りを抱えながら、カミーユとショウは地下へと進んで行った。

「俺はレコアさんを探してくる!おまえはティターンズの相手を!」

 カミーユは感覚が求める場所に向かって行く。残ったショウの前に、ザクのような風貌の機体が三機向かってくる。先頭の隊長機は赤く、量産型は緑色だ。これがジャブローを守る部隊だという事が、ショウには馬鹿にされているように思えた。

「連邦なら連邦らしくしろよっ!」

「俺はティターンズだ!連邦とは違う!」

 赤いザクに似たモビルスーツ、マラサイのパイロットはショウに叫び返した。

「ティターンズ……おまえたちが!おまえたちがぁぁ!」

 トルネードガンダムから赤黒いオーラが噴出した。ニュータイプでない相手にも、それははっきりと見て取れた。

「なっ……なんだと!?」

 マラサイはビームライフルで攻撃する。そのビームをトルネードガンダムは正面から、正確にビームライフルで撃ち返した。二条の閃光が正面からぶつかり、密閉された空間を白一色で埋め尽くす。

 完全に視界が閉ざされた中で、赤黒いオーラが迫り来るのをマラサイのパイロットははっきりと悟った。無我夢中で回避した後に、とっさの判断が正しかった事を知った。ビームライフルを持っていた右腕が綺麗に斬り落とされ、部下のハイザックが反応もできずに撃破されていく。

「化け物なのか……?クッ!」

 あれと戦って勝てる気はしなかった。このままでは脱出さえできなくなる。そう判断したマラサイはショウが振り向く前に離脱した。

 敵の気配が去り、トルネードガンダムを包んでいた光もうっすらと消えていく。

「救出した!早く脱出するぞ!」

 カミーユの声を、ショウは疲れ切った表情で聞いていた。

 

 ジャブローが消える。その光景を、ショウたちは呆然と見つめていた。

 作戦は成功した。艦に残った者達は安堵の笑みを浮かべ、本部からは労いの言葉が届いている。犠牲者はなく、戦果は上々だ。

 しかし、戦士たちの表情に喜びはない。

「いつまで……こんな戦いが続くんですか?」

 そう漏らしたのはショウでなくユリウスだった。

「まだ続くわよ。最後の最後まで……」

 レイチェルは強く答えた。その態度に少年達は反感を覚えたが、レイチェルの芯にある炎は揺らがなかった。この悪夢のような時代を生きるのはこれで三度目なのだ。

「ティターンズの本隊と戦うにはまだ戦力が足りない。迎えるべき人を迎えなくては……」

 マークは場を取り繕うように言うと、その時を待つように目を閉じた。

 アムロ・レイとシャア・アズナブルが再び出会う時は、もう遠くない未来であった。

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