機動探訪記ガンダム・ジェネレーション   作:キャノン娘

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第15話 求め合う魂

 窓の下には、ホンコンの町並みが広がっていた。

 子供たちは皆地球で育ったわけではない。旅の間に地球に降りたときも戦闘に時間を取られ、平和な町など見たことがなかった。

「綺麗だね……。地球にもこんなところがあるんだ……」

「ねえ、みんなで遊びに行こうよ!」

 カチュアは元気いっぱいにはしゃいでいる。シスやユリウスも騒ぎはしないが、表情はいつもより明るくなっている。

「そうだな。少しは外の空気を吸うのも悪くないだろう」

「誰か見てないと……。子供たちだけは駄目よ」

 マークとエリスも、表立って反対はしなかった。

「連れて行ってやれるのはいないか?」

「私、いいよ。レイチェルは?」

 子供たちと一緒になって窓の外を見下ろしていたクレアが振り向いた。

「私は……そんな気分じゃないわ」

「ま、それならしょうがないね」

 クレアは強く誘いはしなかった。無理に押し付けるよりも、シェイドと二人で静かにしていた方がレイチェルのためでもあるのだ。

 それに、彼らはモビルスーツのパイロットである。全員が同時に艦を離れるわけには行かなかった。

「作戦までには帰って来るんだぞ。今回のは少し忙しい」

「……成り行きだからな。俺もやらせてもらうぜ」

「出来るか?」

 シェイドはマークの視線を軽く受け流した。そんな目で見られるのは不本意なのだ。

「当たり前だ。俺を誰だと思ってるんだ?」

「ああ……。白い弾丸、ラナロウ・シェイド……だったな」

「帰って来るのを待ってるぜ、戦場の魔王さんよ……」

 マークは深く溜息をついた。それができていれば、これまでの戦局はどれほど楽になっていただろう。子供たちを戦争に駆りだすような事もしなくてよかったはずだ。

「ねえ、シェイドが入るとなるとモビルスーツの数がぎりぎりだよ。フライングアーマーを入れられないよ」

「その問題はない。今回の作戦は二手に別れて行う。半数を海上の防衛に当たらせることになっている。

 そのため、マッドアングラー隊が追って到着するのだが……」

「パス!」

「冗談じゃねえ」

「私も遠慮するわ……」

 クレア、シェイド、レイチェルは反射的に拒絶した。ショウたちは何が何だか分からずに驚いたが、良からぬ予感は薄々感じていた。

「でも、子供たちをあんなところに行かせるわけには……」

 エリスも不安な表情だ。

「どちらかと言うと、クレアやレイチェルがいた方がこちらとしてはありがたい。

 ユリウス、シス、カチュア、ミンミはマッドアングラー隊に移動してくれ」

「マーク!また勝手にそんな……」

「仕方ないだろう、押し付けあっていても時間の無駄だ」

「だからって……」

 不安を煽る二人の態度に、ユリウスたちはホンコンの町の光景も忘れて暗澹とした気分になっていた。

 

 ジャブローで戦線に投入されたマッドアングラーはマークたちが降りた後、水中専門の部隊として再編成されていた。ところが、彼らはほとんど戦場に立つことなく宇宙世紀0087年を迎えていた。出撃した事もあるにはあったが、敵は陸上部隊の陽動として現れた数機の水中用モビルスーツだけで、激戦と言えるほどの戦いはなかった。マークたちの部隊はモビルスーツ隊が七名いたが、ゼノン少将の部隊は四名しかいない。そのため万全を期して配備されたのであって、もしモビルスーツ隊の配備が整っていたとしたら、出撃の機会そのものが危ぶまれる有様だったのだ。配備されているモビルスーツも、かつてのジオン軍が使っていた機体がそのままである。次から次へと新型が開発・設計されていく他の部隊と比べると、あまりに見劣りする。

 当然、彼らはそんな二軍扱いに満足しているわけではなかった。

「マッドアングラー隊のガルン・ルーファス少佐だ。諸君らを歓迎する」

 髭の濃い艦長は、顔そのままの濁声で子供たちを迎えた。

「俺はオグマ・フレイブ大尉だ。……よろしくな」

 片目の男は、子供たちにあまり好感を持っているようには見えなかった。せっかくの出撃の出番を、こんな連中に奪われるのは我慢ならない。無口な質だが、態度にはそれがありありと出ていた。

「よォォォォォ!ニュゥゥゥタイプの坊ちゃんたちよォォ!マァァッドアングラァァによォォこそォォ!

 前の連中よりもっとガキになってらぁ!ヒャハハハハッ!」

 目を剥いて話す異常にハイテンションな禿頭の男は、ドク・ダーム伍長だと紹介された。強化処理は解けているはずなのだが、なぜか性格は変わらないそうである。強化する前からすでにこうだったのではないかとユリウスは思った。

「……まあ、せいぜい頑張るんだな……クックックックッ……」

「あんたらのおかげで、俺たちの楽しいハンティングがお流れになっちまうんだからよォ!」

 ブラッド少尉とニードル少尉も、あまり人当たりのいい人物とは言えなかった。

 子供たちは、なぜクレアたちが嫌がったのか身をもって思い知らされた。お化け屋敷より怖いかもしれない。

「……ユリウス大佐です。どうぞ、よろしく……」

 ショウ、なんでおまえ一人だけ来なかったんだ。ユリウスは震える手をおさえながら、腹の底で恨み言を繰り返していた。

「カチュア、リィス……だよ……」

「シス少尉です……」

 シスは物事に動じないが、カチュアはユリウスの背中に隠れて震えていた。泣き出さないだけでも必死であった。

「ミンミ伍長であります!よろしくお願いします!」

 一人びしっと敬礼をこなして、ミンミはいつもの笑顔を保っていた。

「よォォォォォ!元気いいな坊主ゥゥゥゥ!」

「自分は女の子であります!坊主ではありません!」

「よし、その意気だ!それでいい!」

「はいっ!」

 ガルン艦長もミンミの肩を叩いて、彼なりの最高の笑顔を向けた。

 それを見ながら、どうしてミンミはこの状況に適応できるのか分からずに三人は唖然としていた。

 

『ねぇー、早く遊びに行こうよー!こんなとこ、やだよぉー!!』

 マッドアングラーからカチュアの悲鳴が届いた。エリスはだから言ったじゃないとマークを責めたが、もはや後の祭りである。さすがにマークも後悔はしていたが。

「クレア、行ってやれ。迷子にならないようにな」

『りょ~かぁい。クレア・ヒースロー、エレカ、いっきま~す』

 なんとなくこうなることを察していたクレアは、出かける用意はすでに済ませていた。

「ふぅ……」

「もう……!」

 マークとクレアは、二人で溜息をついた。

 

「どーだったぁ?」

 エレカを運転するクレアは、今にも吹き出しそうな顔をしていた。

「聞かなくても分かるでしょう……」

 ユリウスはクレアに恨みのこもった視線を向け、カチュアはショウにしがみついてマッドアングラーの恐怖を訴えた。

「ハゲたおじちゃんがぎろって睨むんだよ。怖かったのよぉ」

 それを聞いたクレアは笑いを噛み締めるが、彼女はすぐ顔に出るタイプだ。

「笑わないでもいいじゃないの!」

「知っていたなら、あんなところに行かせないでくださいよ……」

「い、いやっ、ご、ごめんっ…… くっ、あ、はははははっ!」

 クレアはカチュアに頭をぽかぽか殴られながら、笑いを抑えられずに危なっかしい運転を続けた。

「何なんだろう……?」

「知らない方が幸せですよ、ショウ……」

 ユリウスの声には多少の嫌味がこもっていた。

 なんとなく話しづらくなったショウは周りの風景に目をやった。そしてすれ違う車の一台に、見知った顔がいた気がした。

「カミーユさん……?」

「ん?どうしたの?」

「カミーユさんが乗ってたんです、今の車……。誰か、女の人と……」

「フォウだね、きっと。

 ……ヘンだな、私は気づかなかったけど。カミーユが近くにいるならなんとなく分かるんだけどなぁ」

 それはショウも感じていたことである。カミーユから感じられるものはあまりにも刺々しく、近くにいるだけでも怖かった。だが、今すれ違ったカミーユからは、そんな雰囲気はまるで感じられなかった。別人のように優しく、あたたかい人間に思えた。

 

「ん?なんだ、お嬢ちゃんは遊びに行かねぇのかよ?」

 ブラッドは一人残って整備をしているミンミに話しかけた。

「はい!自分はまだ仕事が残っておりますので」

「偉いね~、嬢ちゃんは。戦闘の前だってのにさっさと遊びに行っちまう連中とは大違いだ」

「いえ、あの方たちは優秀ですので…… 自分は仕事が遅いので、残ってしまうのであります」

「そうか。なら、おじさんが手伝ってやろうか」

「あ、そのような事をしていただいては……」

「おいおい、ただでさえ仕事がねぇってのに、これくらいさせてくれてもいいだろ?」

「まかせとけまかせとけ!こう見えても俺たちゃ、整備ならお手のものなんだぜ!」

 ニードルたちも加わって、断る間もなく作業を進めてしまう。

「み、みなさん……ありがとうであります!」

「いいって事よ。俺たちゃ戦友だろ? ……もっとも、そう思っちゃくれねぇ連中も多いけどよ」

「ヒヒヒ…… まあ、悪役にも悪役なりの苦労があるってことさ……」

 それをマークたちが聞いたら、まず間違いなくこう言うことだろう。

 顔と口調をまずどうにかしろと。

 

「それじゃ、みんなにおみやげでも買っていこうよ」

 大きなショッピングセンターの前にエレカを止めて、クレアは子供たちを先導した。その時である。

『エゥーゴ並びにその関係者諸君に聞いてもらいたい!私はスードリの艦長代理、ベン・ウッダー大尉だ!』

 周りは騒然とした。エゥーゴとティターンズの戦いに巻き込まれる危険が出てきたのだ。しかも、ショウたちが到着する数日前には、サイコガンダムが街中で暴れまわっていたのである。

「もうちょっと羽根を伸ばしてからにして欲しかったなぁ」

 ティターンズはクレアの都合を考えてくれるわけではない。

『こちらの人質は、かつてのホワイトベースの艦長ブライト・ノア夫人、ミライ・ノアとアムロ・レイである!』

「急いで戻らないと!」

「車、一台しかないよ。先にマッドアングラーに行く?」

 話しながら、ショウたちは全力でエレカに駆けた。

「そんな暇はありません!僕がマッドアングラーまで運転しますから、クレアさんとショウはどうにかしてアルビオンに戻ってください!」

 ユリウスは当然のような口調で言った。

「……運転できるの?」

「それくらいできますよ」

「いいのかなぁ、子供が……」

「モビルスーツの操縦だってしてるじゃありませんか」

 それもそうだと、あっさりクレアはキーを渡してしまった。手早くエンジンを噴かせると、ユリウスは子供とは思えないスピードで遠ざかっていく。

「花形満みたいな奴だなぁ」

「……誰ですか、それ?」

「知らないの?サッキー竹田とかは? ……まあ、説明してる時間がないや。こっちに来て!」

 クレアは数ブロック走ると、物陰に留めてあったバイクに飛び乗った。

「あったあった。ショウ、しっかり掴まっててよ!」

 慌ててショウも後部座席に座って、クレアの腰にしがみつく。慣れた様子でアクセルを踏み込み、クレアは風を切って走り出した。

「こんなバイク、いつ用意してたんですか?」

「いや、この前の時たまたま見つけたの。今度もあそこにあるかなーって思ったけど、やっぱりあったよ」

 ショウは歴史を飛び続けることの効用を知った気がした。何度時が巡っても、クレアはこのバイクの窃盗を繰り返すに違いない。

 多少気分を削がれながら、ショウはクレアの体に掴まっていた。

 

 アムロの乗るホバー・ボートは、今まさにスードリに撃墜されようとしていた。ご丁寧にモビルスーツ隊まで配備しての完全包囲である。いくら一年戦争の英雄アムロ・レイと言えども、武装もないボートで逃げ切れるはずがなかった。

 だが、その海中からマッドアングラーが現れた。

「何っ……ジオンの!?」

 アムロは驚愕したが、転覆することは避けられた。そして浮上したマッドアングラーから、フライングアーマーに乗ったモビルスーツが飛び出してくる。

「援軍だって言うのか……?なんだって、こんな潜水艦を……」

 いぶかるアムロとは逆に、パイロットたちは限りない開放感で満たされていた。戦場とは言え、マッドアングラーから出ることができたのだから。

「もう、やなのよ、あんたたちなんか!せっかく遊んでたのにぃ!」

 カチュアはボリノーク・サマーンを敵の真っ只中に飛び込ませる。EWAC機能が敵の詳細な情報を伝え、それをもとに百式やガンダムMk-Ⅱのビームライフルがうなりをあげる。

 性能に劣るハイザックでは、その猛攻を食い止める事はできるはずもなかった。水中にもザクマリナーが潜んでいたのだが、彼らの運命はより悲惨なものだった。

「ヒャーッハッハッハァ!ぶっ壊ぁ~~す!」

 奇声とともに襲い掛かるジオンのモビルスーツたち。クローを擁した接近戦が得意なそれらの機体に、格闘用武器のないザクマリナーではまさに餌食でしかなかった。

 水上の味方が全滅するより前に、ザクマリナーは鉄塊と成り果てていた。

「もの足りねぇぞ!次の獲物はどこだァ!」

 

 クレアとショウが戻った時にも、まだアルビオンは出発していなかった。

「……クレア、そのバイク、もしかして……」

 レイチェルは戻って来たクレアを見るなり顔をしかめる。バイクの事を覚えていたようだった。

「あははは、あの時の場所にあったよ」

「ちゃんと返して来なさいよ!」

「もしまた来たら取らないからさ、ねっ。それより、こっちはどうなったの?」

『向こうの任務はいろいろ制約があるが、こちらは単純だ』

 制約の多い任務にどうしてマッドアングラー隊が向けられたの、とエリスが愚痴を言うが、それはマークのせいではない。

『もうすぐ現れるサイコガンダムを倒せ。四方を囲んで取り付いてしまえば大丈夫だ』

 分かっていた事とは言え、クレアやレイチェルにも緊張が走る。シスの乗っているプロトタイプとは段違いの、怪物のような相手である。こればかりは、緻密な連携で戦うユリウスたちよりも、ニュータイプの勘と本能で一瞬の判断ができるショウたちの方が適任と言えた。

「ショウは遠くで見てて。私たちが最初相手をするから」

「えっ?」

「それからビームは効かないから、やるならビームサーベルでね。

 拡散メガ粒子砲の射程外から一気に飛び込んで切り倒せるのはトルネードガンダムくらいだからね……」

 かつてのビグ・ザム相手の時のように、クレアにしては細かい注文が続けられた。それほどまでに、サイコガンダムは並々ならぬ強敵なのである。

『サイコガンダム出現しました!』

『よし、モビルスーツ隊発進!無茶はするなよ!』

「プロトZでサイコガンダムと戦えってこと自体無茶っぽいんだけどなぁ」

 クレアの軽口に、シェイドはあきれて茶々を入れた。

「おまえも変わってねぇなぁ……。ガキ共の前でもそうなのか?」

「そうなのよ。まったく、隊長になってもこの調子なんだから」

「レイチェルがやった方がいいんじゃねぇのか?」

「そこ二人、うるさいっ!クレア、プロトZ、出るよっ!」

 クレアは逃げるように飛び出し、レイチェルとシェイドはそれを追って出撃した。

「仲、良かったんだな……」

 ショウは彼らのやり取りに邪心がないのをうらやましく思えた。無事この旅を終えて家に帰ったとしても、彼らのような友達は一人もいない。もしそんな友人を得られるとすれば、共に旅をしているユリウスやカチュア達なのだろう。

 

 サイコガンダムの前には、カミーユの乗るMk-Ⅱが一人で立ちはだかっていた。

「君は戦っちゃいけない!フォウ!君は!

 フォウ!分かるか!俺はカミーユだ!」

「私は記憶が欲しいの!自分の事をもっと知りたい!」

 説得は届きそうにない。それでも、カミーユは叫ぶ事を止めなかった。

「相手の事をカミーユは知ってるの?それに……フォウ?」

 カミーユの動きはいつにも増して激しい。だがショウは、カミーユから感じ取れるものが、道ですれ違ったときの優しいイメージになっていると思えた。そして、フォウも。

「クレアさんっ!今攻撃したら……」

「今やらないと、もっとまずいよっ!」

「でも、今サイコガンダムを刺激したら!」

 その言葉を打ち消すように、拡散メガ粒子砲がMk-Ⅱに降り注ぐ。確かに戦況だけを見れば、カミーユが撃墜されないうちにサイコガンダムを止めなければならないのは明らかだった。

「フォウ!降りるんだ!そこにいてはいけない!」

「Mk-Ⅱを倒せば、記憶を戻してくれると言っていた!」

「それは違う!そんな約束、当てになると思っているのか!?」

「自分の事を知りたいのがいけないことなの!?」

 カミーユとフォウは、お互いの心の壊れてしまった部分を相手の存在で補おうとしている。それが今までのカミーユとの絶対的な違いを生み出していた。もはや彼は、荒れ狂う心を敵に叩きつけるだけの戦士ではなかった。

 だがそれでも、このままではMk-Ⅱが持たないという現実が変わったわけではない。

「レイチェル!シェイド!サイコガンダムに、ジェットストリームアタックをかけるぞ!」

 縦一列に並ぶようにして三人は突進した。途中まで近づいたところで、クレアはビームライフルを発射する。しかしサイコガンダムを包むIフィールドは、簡単にそれを払いのけた。

「苛められるの!嫌なのよ!」

 フォウは新たに現れた敵に腕を向け、指のビーム砲を発射する。だが、まだクレアたちにとっては楽に回避することができる距離だった。その伸ばした腕を、サイサリスのビームサーベルが一撃で斬りおとす。先頭のクレアはサイコガンダムの手をおびき寄せる囮だったのだ。これでもう、こちら側にはビーム砲もシールドも向けられない。

 その後に彼らの切り札である、レイチェルの乗る赤いモビルスーツがファンネルを撃ち出した。第一部隊の完成させたギラ・ドーガとゲーマルクから設計された、赤い彗星最後の機体サザビーである。

「墜としてみせるわ!」

 サイコフレームの光が走り、無防備な方向から次々にビームが浴びせられる。さしものサイコガンダムもたじろぎ、ひざをついて停止した。そこにカミーユのMk-Ⅱが、抱き合うように密着する。

「フォウ……宇宙へ行こう!」

「宇宙へ?」

「エゥーゴの技術なら、君の記憶を取り戻せるよ!フォウ!」

「研究所で戻せなかったことを、宇宙で治せるものか!」

「やってみなくちゃ分からないだろう!」

 サイコガンダムから生気が失われていく。それは戦闘の終わりを意味してはいたが、二人の幸せにつながるものではなかった。

「カミーユ……お互いの居場所に戻りましょう。ここはあなたにはふさわしくないわ……」

「でも……フォウ!」

「さよなら……カミーユ……」

 サイコガンダムは箱のような形のモビルアーマーに戻り、彼方に飛び去っていく。

「フォウ!これで良かったのか!?フォ───ウ!!」

 カミーユの叫びは届くことなく、二人は惹き合いながらもその距離を広げていった。

 最後の一手として後方に控えていたショウの出番は訪れることなく、その情景を見届けるだけに終わった。

 

「向こうはどうだった?怖くなかったか?」

「はい!とても感じのいい人たちでありました!おみやげまで貰ってしまいました!」

 ミンミは満面の笑顔だが、ユリウスとカチュアは憔悴しきっていた。

「……そうなのか?それなら、いいんだが……」

「そんな人たちだったかしら……?」

 マークとエリスが首をかしげるのを見て、ミンミはますます嬉しそうな顔をした。

 最後までショウは何の事だかよく分からず、他の事を考えることにした。

 今までの悪寒が嘘のようになったカミーユ。己を変えてくれたフォウを求めて奔走したカミーユ。それはシェイドやレイチェルと同じ、悪夢の運命を切り開く力と心に満ち溢れていた。

「カミーユさんとフォウ……幸せになれるといいな……」

 サイコガンダムの去った空を見つめて、ショウはどこか不安を感じていた。

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