これまで常時遊撃任務だったホワイトベースは、連邦艦隊本体に合流を果たした。ジオンの誇る要塞ソロモンを攻撃するという作戦はこれまでになかった性質のものである。遊撃任務、そうでなければ占領地域の奪還の一翼を担うだけが今まで求められてきたものだったが、ついにジオン本拠に向けての侵攻作戦ができるまでに連邦の勢力は強まっていた。
戦略的に言えば勝ったも同然である。後は兵士を送り込み、机上の勝利を現実にするだけだ。
だが、それで浮かれていられるのは前線にいない者だけだ。実際に戦闘を遂行する者たちにとっては、これからが正念場であり、昨日よりも今日が、そしてそれよりも明日の戦いが激しく危険になっていくのである。
それでもガチャベース前に布陣する連邦艦隊の数を見れば、孤軍奮闘を強いられてきた兵士たちにささやかな安堵感は生まれるものだ。戦略的に押している以上は、敵軍にそれ以上の数を揃える事はできないのだから。そのサラミス級戦艦の群の中央に、奇妙な物体が広がっていた。史上空前の数の鏡である。宇宙空間に整然と並べられたそれがどのような効果を及ぼすのか、いまだ体験した者はいなかった。マーク・ギルダーたち“ブラック・ジェネレーションズ”を除いては。
「シスは休ませる事にする」
バーサーカーシステムのテストには成功したものの、その疲労度は高かった。システムそのものの完成度も高いとは言えず、次の戦いに出ることがあってもノーベルガンダムでの出撃は見合わせようという結論に達していた。
「モビルスーツの割り当ては各自で話し合ってくれ。ケイに資料を渡してある」
パイロットたちは口々に、やっとシャイニングガンダムの出番が来たとかファンネルがあるのはいつになるのとか、気楽な口調でブリッジを出て行った。そのとき、マークはショウだけを呼びとめた。ショウの機体は今までどおりトルネードガンダムである。
「……前に話したな。人々の魂が散る光……。それが、今だ」
「えっ?」
「悪いが……逃げるという選択を残す事はしなかった。それに俺たちについてくれば、今から起こるような事は何度も繰り返される」
「どういうこと……なんですか?」
「俺は今までに二度この光を見てきた。これで今日見るのは三度目になる。今日以外のも合わせれば、数えられないほどな……。そして俺たちは、そんな歴史を見に行くのさ。……逃げられないと知ったら戦うか?」
「僕はもう……逃げたりしません」
ショウは力を込めて答えたが、マークはそれが無知ゆえの判断であることを知っていた。そして無垢な少年にそう判断させるように追い込んでいる自分を心の中で嘲笑っていた。
モビルスーツデッキにやってきたパイロットたちは、第一部隊が搬入してきた新しい機体を楽しみにしながらやってきた。なんと言っても、新型モビルスーツというのは戦場の華である。
「おっ、来たねみんな」
整備兵のケイはメモを見ながら機体の調整ぶりを確認していった。その後ろに、ぞろぞろとパイロットたちが集まっていく。
「どんなものがあるんですか?」
「えーっと、まずEz8と宇宙用換装パーツ。軽くて弱いのと、重くて強いの」
「……陸戦型の現地改修機を宇宙用に再改修するんですか?一から宇宙用モビルスーツを作った方がいいんじゃないですか?」
「うん、アタシもそう思うね」
さらりと答えられて、ユリウスは嫌な予感に陥った。
「ね~、ニュータイプ専用機ってない?」
カチュアは下からケイの顔を覗き込んだ。
「NT専用ジムってのがあるよ。あっち」
ケイが指差した機体には、ファンネルの代わりなのか、二機のボールがくっついている。ニュータイプや強化人間はもちろん、そうでないユリウスにまでも強烈な不安を感じさせるに十分な装備である。
「……ホントにニュータイプ用なのぉ?」
「あはははは、実は偽物だったりする」
気まずい沈黙があたりを支配した。
クレアはしばらく第一部隊への復讐作戦を考えていたが、やがて搾り出すようにつぶやいた。
「……ま、私はシャイニングガンダムだから」
「ず、ずるいですよクレア中尉!自分だけいい機体を!」
「モビルトレースシステムの機体を動かせるのは私だけじゃない。シスちゃんは今日は休憩なんだから」
「……分かりましたよ。僕はEz8にします。要塞攻略ですから、重武装型の方が適していますね」
「私は前に使ってたのにするわ」
ユリウスに続いて、レイチェルも無益な争いから逃げてしまった。
残されたのはカチュアとミンミ。選択肢となる機体は、リック・ドムとかギャンとかゲルググとか、一通り揃えておいて設計素材にして余裕があったら育てようというものばかりであった。主戦力になるガンダム関連を早めにやってしまったので、残っているのはこういうものしかなかったのである。
「うーん、なんとなくリック・ドムでありましょうか……」
「やだよぉ、一つ目なんてかっこわるい~」
基本的に機体には不自由して来なかったカチュアはもちろん、余り物を回されてきた感のあるミンミも気乗りはしなさそうだった。
「艦長、なんかないのぉ?」
『モビルアーマーがいくつかある。決まらないなら、ミンミはGファイターをやってくれ』
「了解しましたであります」
パイロットたちの視線が、艦内を整理した結果モビルスーツから少し離れた場所に並べられていたモビルアーマーたちに移るのと同時に、次の声が続いた。
『カチュアはザクレロを担当してくれ。一応、目は二つある』
指定された機体を生まれて初めて見た少女は、一目見たら生涯忘れ得ないであろう奇抜なデザインに唖然とした。回りのパイロットたちも、笑いを押さえるのに必死である。
「ザクレロって……ザクがレロの、これぇ?」
『そうだ。ビグロを通してヴァル・ヴァロになる。ビグロからはビグ・ザムが設計可能なはずだ。重要な任務だぞ。
これから宇宙での戦いが続くからちょうどいい』
近くに普段しがみつくショウも当り散らすシスもいなかったから、わがままなカチュアもリアクションを返せずにしぶしぶ従った。ユリウスはここで僕がザクレロに乗ると言えばカチュアの気を引けるかもと一瞬考えたが、ザクレロに乗っている自分の姿を想像して断念した。
攻撃の時刻は迫り、ショウもモビルスーツに乗り込んだ。ザクレロの姿には驚いたが、カチュアの凄い表情を見ては笑いも引っ込んでしまった。
機体同士の無線を開き、動作確認と同時にクレアが指揮をする。
「作戦を決めとくよー。
ビグ・ザムが来る前に前衛をぱぱっとやっつけて、いったん艦に帰って補給して、完璧に補給してからビグ・ザムを迎え撃つ。
たいていのビーム砲は弾いちゃうから、遠くから援護するのはレイチェルとユーリィだけ。向こうの攻撃を受けたらこっちの機体は簡単に吹っ飛んじゃうから、あくまで超アウトレンジでね。
カチュアちゃんとミンミちゃんは周りの雑魚を片付けて、ショウはどこか手薄になったところをカバーする。
とどめに私がシャイニングフィンガーでやっつける。うん、完璧だ」
「と言うより、まともに勝負できそうなのはシャイニングガンダムしかありませんからね」
そこまで話したところで、ついに運命の瞬間がやってきた。
『総員、対閃光防御!』
コックピットのモニターが一時的に落ちた。次の瞬間、宇宙に並べられた膨大な数の鏡から凝縮された太陽光線が放出されていった。
「……!!」
その閃光のもたらす衝撃は、トルネードガンダムの中にいるショウにも襲いかかった。
「あ……ああ……!!」
考えられないほどの人が光の中に溶けていく。何が起こったのも知らされないまま、死体も残らず文字通り消滅していく。
ソーラ・システムという名の、人類の生んだ史上最大の輝きである。しかしショウにとっては、それはまさしく人々の魂が散り逝く叫びの集合体でしかなかった。
エリスの胸に抱かれたシスは、戦場に来て最も巨大な恐怖に体を震わせていた。コミカルな形をしたザクレロのコックピットの中でカチュアはなすすべもなく失禁した。
「子供たちには辛かったかなぁ……」
クレアは戦士たちの断末魔よりもすぐ側で怯える小さな心を痛ましく思った。そして戦場の運命を背負っているシャイニングガンダムを任されているのが、その子供たちでない事を感謝していた。
「そんなことありませんよ!僕は大丈夫です!」
ユリウスは気丈に言うが、その声にもわずかに震えが感じ取れた。
「さあ、みんな行くよっ!多くの英霊たちが無駄死にでなかった事の証のために!
ソロモンよ!私は帰ってきたーっ!!」
こうして、史上名高いソロモン攻略戦はその火蓋を切って落とされたのである。
大型のミサイルを抱えたパブリク突撃艇が居並ぶ戦場に、シャイニングガンダム、サイコミュ試験用ザク、Gファイター、そしてEz8・ヘビーアームドカスタムが踊り出る。彼らを迎えた物は巨大な岩石の砲弾だった。
「……新兵器?こんなのあったの?」
クレアが足を止める前で、連邦のジムがサラミスからの援護を受けて果敢にビームサーベルで斬りつける。そのとたん、今まで岩石と思われていた物は大爆発を起こしてジムはその中に消えていった。
「離れて攻撃しなきゃ駄目かぁ……」
「幸運ですね。ちょうど僕たちの機体はこういう任務には向いています」
「そうとも言えるね」
クレアは一歩下がって戦場を見渡した。目の前のモビルスーツの数は意外に多くない。衛星ミサイルの巻き添えになるのを避けたのだろう。所詮衛星ミサイルは人が乗っているわけではない。冷静に遠くから撃てばいいのだ。前衛を蹴散らして休息を終えてから、第二派に来るビグ・ザムを迎え撃つ作戦は上手くいきそうだった。
「レイチェル、ユーリィ、ミンミ、頼むよ!切り開いてくれたところから私が行くから!」
強大なビーム砲が宇宙の闇を切り裂いて行く。次々と衛星ミサイルは爆発し、運悪く近くにいたリック・ドムの一機がその余波を受けて損傷する。シャイニングガンダムの目が一瞬光り、シャイニングソードが一閃する。空間を切り裂いた後に衝撃が走ったと錯覚するほどの動きでリック・ドムを倒し、クレアは次の相手を求めてあたりを見渡した。
『……ビグ・ザム、急速接近中!次ターンには戦闘宙域に到着する模様!』
「うっそぉ~!?早い、早いよ!」
マリア・オーエンスに怒鳴り返したが、それはオペレーターの責任ではない。
「みんな、弾はどれだけ残ってる!?」
「二発しか残ってないわよ!」
「あとミサイルが一発だけであります!」
「Ez8のはもうありません……!」
「くぬぅ……ユーリィは戻って。
作戦変更よ。レイチェル、ミンミ、後退して弾数を温存しよう。補給せずに直接ビグ・ザムを叩くよ。
前線はジムとボールに支えてもらおう。衛星ミサイルはつぶしたんだ。あとはなんとかなるでしょ。
……マリア、アムロとスレッガーはまだ?」
『このままでしたら、ビグ・ザムとほぼ同時に到着します』
「クレア、アムロたちに任せるの?」
「あいつらが来る前にやっちゃわないと見せ場を取られるじゃない!」
レイチェルが頭を抱えているころ、ホワイトベースのブリッジではショウとカチュアが硬直していた。出撃しようにも、体が震えて一歩も前に進まない。
そこに、全弾撃ち尽くしたユリウスが帰ってきた。
「……なにやってるんですか?ショウもカチュアちゃんも!」
「……ユリウス?君は、生きてる……?」
「えっ……?そんなことより、早く出撃しないと!」
「ダメだよ……あそこは、死んでいく人がいっぱいいるよ……」
「……怖いんですか?ここまで来ていまさら!」
ショウは答えられなかった。うつむいて、目に涙がにじんでいた。
「これだからニュータイプは!
あなたは人よりも強いんでしょう!だからガンダムに乗っているのに!
そのあなたが震えている間にあなたより弱い人がどんどん犠牲になっていくんです、強いあなたが戦ってくれないから!」
「でも……でもぉ……」
「弱虫!臆病者!!」
ショウは何か言おうとしたが、唇が震えて声にならなかった。
業を煮やして、ユリウスはショウから目を背けた。
「カチュアちゃん?」
「ユリウスぅ……こわいよ……私こわいよ……」
「カチュアちゃん、落ち着いて!怖がっていてもなにも始まらないですよ!」
「そんなこと言ったってぇ……」
カチュアは涙声で答えた。
「大丈夫です!僕たちは絶対に負けません!」
「本当……本当に……?」
「カチュアちゃんが危なくなったら僕が守ります。だから!」
「ダメぇ……ユリウスが死んじゃう……。そんなの……そんなのダメ……」
「なら……二人で生きて帰りましょう」
「二人で……生きて……」
言いたくても言えなかった言葉がこの時にすらすらと出てくる事にユリウスは気づかなかった。理性や打算のない素直な気持ち……それがニュータイプという人種を動かすものだと悟るのは、もっと後になってからのことだった。
「ユリウス……私、行くね……」
「補給が終わったら、僕もすぐに」
カチュアと入れ替わる形で、ミンミのGファイターが最後のミサイルを撃ち終わって帰艦してきた。
「あれ?ショウさん、まだ出撃してないのでありますか?」
「ミンミちゃん……?」
「もうすぐビグ・ザムが到着してしまうでありますよ。今から行かないと、クレア中尉の援護に間に合わないであります!」
「クレアさん……。クレアさんが!?」
ショウは弾き飛ばされるように体を起こした。
「早く……早く行かないと!」
突然の変化に、ユリウスは驚かされた。ショウが何を感じたのか、ニュータイプではないユリウスとミンミは分からなかった。
『ビグ・ザム、来ます!』
「マリア、動きのいいゲルググとビグロはいない?あいつらが一緒だと厄介なんだけど!」
『両機とも確認できません。ビグ・ザムの近くにはいないようです』
「よし……なんとかなるね!」
カチュアのザクレロが、ショウのトルネードガンダムが相次いで飛び出してくる。偶然だが、そのタイミングは戦場の趨勢を決める一瞬に万全の状態の援軍となった。
「ショウ、カチュア、やるなら接近戦だよ!密着すればビグ・ザムに武器はないから!」
指示を出し終わった直後、緑色をした怪物は連邦軍の前に姿を現した。
ジムが、ボールが、パブリク突撃艇が果敢に砲撃を仕掛けていく。だがジオン最強の将ドズル・ザビの前には、それらは捧げられた生贄でしかなかった。
「やらせはせん……ジオンの栄光は、貴様等などにやらせはせんぞ!!」
全方位に同時に放たれた拡散メガ粒子砲が、数十の命を同時に消し去っていく。
「くうっ……!」
ショウはまた、人々の叫びに心を叩かれた。しかし、それに呑まれるわけには行かないのだ。
「これを倒さなければ……!」
レイチェルはビグ・ザムの射程外から、有線ハンドビーム砲を撃ち込んだ。それは確かに無力ではなかったものの、ほんの薄皮ひとつ傷つけたにすぎない。しかし驚愕と絶望が連邦軍を包み始めたとき、奇跡を担った機体がビグ・ザムの背後の空間に突撃した。
「レイチェル、援護サンキュー!」
途中にいたガトルを撃破して、飛び石を渡るようにクレアはビグ・ザムに接近していく。
「ガンダムファイトぉ!レディー……ゴーッ!!」
「ガンダム!ガンダムかッ!」
ドズルは叫ぶ。ニュータイプをも圧する気迫。だが戦場にあってただ一人、クレアはそれを楽しんでいた。
シャイニングガンダムの機体各部にあるバインダーがフルオープンの状態になり、黄金の光が放たれる。閃光の名を持つガンダムは、その名の通り金色に輝くスーパーモードに入ったのである。戦場の全ての視線が集まるこの宙域で起こった常識を超える情景に、敵も味方も息を飲んだ。連邦兵士は期待の眼差しを送り、ジオンの兵は怯えて凝視した。
「な……なんだあれはッ!?」
ドズルは驚愕したが、狼狽はしなかった。それだけでも卓抜した精神力の証明である。
もはや戦う兵士たちすらも観客だった。光輝くガンダムに魅入られたように、全ての神経を集中させていた。なぜならそれを直接見た事はなかったとしても、その黄金の指先こそは、この世界に生まれた全ての人の心の中に刻み込まれた魂の輝きなのだから!
「私のこの手が光ってうなるぅーっ!!」
キング・オブ・ハートの紋章を胸に抱いて、シャイニングガンダムは突進した。
「おまえを倒せと、輝き叫ぶぅーっ!!」
それを迎え撃つドズル・ザビも、満々の闘志と気迫は決して劣りはしなかった。
「必ぃぃっ殺ッ!!シャァァァァイニングゥ!!フィンガァァァァ───ッ!!!」
目も眩む輝きがビグ・ザムを包み、そして戦場を満たしていった。
「うおおおお───っっ!!!」
それはビグ・ザムの断末魔の雄叫びだと、誰もが信じていた。しかし黄金の輝きが過ぎ去った後でさえ、ドズルの執念はなおも戦場にその姿をとどめていた。
「なっ……なんで!?シャイニングフィンガーが当たったのに!?」
それは全精力を込めた一撃だった。これを食らってまだ生きている機体があるはずがない、少なくともクレアが記憶している戦いの中では。疲労感とともに、脱力感と、そして背筋が凍るような恐怖がクレアを襲う。
「やらせはせん……やらせはせんぞ!
たとえシャイニングガンダムであろうと!このビグ・ザムはやらせはせんぞぉぉーッ!!」
ビグ・ザムの足の爪がミサイルと化して、茫然自失しているシャイニングガンダムに直撃した。狙いは過たず、人間であれば心臓の位置である。幸い爆発こそしなかったものの、モビルトレースシステムは心臓を貫通される激痛をパイロットに衝撃として与えていた。叫び声を上げる間すらなく、クレアは失神した。
「クレアさんーっ!」
誰もが息を飲んで動きを止めていた戦場の中で、ただ一人ショウはシャイニングガンダムの後を追っていた。そして見えない意思に導かれるように、ビームサーベルをビグ・ザムに突き立てていた。シャイニングフィンガーに引き裂かれた装甲にビームサーベルが埋め込まれ、そしてビグ・ザムの巨体がゆっくりと二つに割れていく。
「ぐおっ……これは……!」
そしてついにビグ・ザムは炎に包まれ、魔神は断末魔の極光を放って散っていったのである。
それから数刻して、戦いは終わった。ビグ・ザムを失ったジオンに戦意はもはやなく、Ez8ヘビーアームドカスタム、Gファイター、ザクレロなども縦横無尽に戦場を駆け回り、残敵を掃討した。
帰艦したパイロットたちは、ようやく息をつくことが許された。
戦う前に、戦っている時に、なんという不安を抱えてこの場にいただろう。それを思えば、全員無事にいることさえ奇跡に近かった。
ショウとユリウスは、出会ってから初めて打ち解けあった表情を見せた。
「……やりましたね」
「うん!」
ユリウスの表情の怒りも、ショウの怯えも消え去っていた。
「ユリウス……」
ザクレロから降りてきたカチュアが、汚れてしまったズボンを恥ずかしそうに隠しておずおずと進み出た。
「さっきは……ありがとね」
「い、いえ、僕はただ……」
「お礼だよ★」
カチュアは背伸びをして、ユリウスの頬に軽く口付けをした。
「えっ……?あ……」
ユリウスは普段の冷静さも吹き飛んで、顔を真っ赤にした。その様子にショウは思わず吹きだした。
「よかったね、ユリウス」
「えっ、いや、僕はそんなつもりじゃ……!」
声が裏返ってしまうユリウスを囲んでみんなで笑っていたとき、モビルスーツデッキの奥に寝かせてあったシャイニングガンダムのコックピットが開いた。
「ち……ちょっとぉ!もう全部終わっちゃったのぉ!?」
飛び出してきたクレアの格好を見て、全員目をしばたたいた。ショウとユリウスは慌てて目をそらし、カチュアとミンミも息を飲んだ。レイチェルは哀れみの視線を送り、クレアも自分がどんな状態なのか気がついた。
ファイティングスーツのビグ・ザムのミサイルが直撃した部分が引き裂かれ、クレアの乳房が両方ぷるんと飛び出していた。
「え……ええっ!?きゃあぁぁーっ!!」
クレアは慌てて胸を隠すが、もう全員の目に焼きついてしまった後だった。
「ユーリィ!ショウ!見たわねーっ!!」
「ふ、不可抗力です!」
「もう見ちゃったものはしょうがないよぉー!」
二人は一目散に逃げ出し、胸を隠したクレアが顔を真っ赤にして追いかけていく。
それを見ながら、残った者たちはまた込み上げてくる笑いに身を任せたのだった。