それに伴って、タグの方も追加します。
今後も話の展開に合わせてタグが追加されていく予定です。
私が雄英から帰ってこれたのは、あれから二時間半後ぐらい。
すっかり外は暗くなって、空を見上げれば一番星が見えた。
一度でも学校の外に出てしまえば、後は適当な物陰に隠れてから黒霧の転移の個性を使って、一気に裏神野まで帰ればいい。
あいつの個性を覚えたお陰で、長距離移動が格段に楽になった上に、移動費が全くかからなくなった。
お陰で少しずつではあるが生活に潤いが出てきた。
先に『面倒な用事』を済ませた私は、何度も何度も溜息を吐きながら、裏神野の端の方にある私の拠点と言う名の自宅へと帰って来た。
と言っても、今住んでるのはとっくの昔に廃れたボロいビルの二階にある、嘗てはどこぞの組が使っていたと思われる事務所跡の大部屋なんだけど。
勿論、ちゃんと中身は私好みに改装済み。
「ただいま~…今帰ったぞ~…」
「あ! クロウちゃん! おかえりなさい!」
エプロンを着用したままキッチンから満面の笑みを浮かべて出てきた少女。
こいつが私が一緒に住んでる、前に保護をした同居人。
今じゃ殆ど、家族同然になってるが。
「悪い…遅くなった。留守番ご苦労さん…被身子」
名前は『渡我被身子』。
年齢的には普通に高校に通っていても不思議じゃないんだが、諸事情により前に通っていた高校は退学している。
ま、あんな生徒に寄り添おうとしないクソ学校は、とっとと辞めて正解だと思うけどな。
あいつらは、そこらのヴィランよりも遥かに邪悪で質が悪い。
それは被身子の両親も同様で、私と一緒に来ると決めた日に二人の前で堂々と絶縁状を叩きつけた被身子と、それを見たあいつの両親の呆けた顔は今でもよく覚えている。
勿論、あいつらが被身子にした仕打ちは私が長年かけて構築したパイプの一つである、塚内さん経由で警察に暴露し、あっと言う間に虐待の罪でお縄になった。
それからは、私が被身子の身元引受人となり、今に至る…と言った感じだ。
ま、そこに至るまでにも被身子の個性の事で色々と一悶着あったが…今はまだいいか。
「って…ワーーーーッ!? なんか色んな所を大怪我してるーーーーーっ!?」
「大丈夫だよ。仰々しく包帯こそ巻いてるけど、実際には殆ど治ってるから」
「そ…そうなんですか?」
「あぁ。だから、安心してくれていい」
「よかったぁ~…もしクロウちゃんに何かあったら…私…私…」
「はいはい。心配かけて済まなかったって」
被身子が目尻に涙を浮かべた時は、こうして頭を優しく撫でてやれば機嫌がよくなる。
こいつと一緒に暮らして学んだ攻略法の一つだ。
「ぐす…そんなに大変だったんですか? 今日の『外注』のお仕事って」
「ん…まぁな。かなり骨が折れる仕事ではあったよ」
文字通りに骨は折れたけど。
因みに、被身子には私が敵連合に入ったことは伝えてない。
その必要はないと判断したから。
「今回の『依頼主』にはちゃんと帰りに報告してきたから、後はもうゆっくりするだけだ。飯作ってたのか?」
「はい! もうそろそろ帰ってくるかな~って思って」
「そっか。なんか手伝うことってある?」
「大丈夫です! クロウちゃんは帰って来たばかりなんですから、ソファにでも座って休んでてください!」
「分かった。んじゃ、遠慮なく、そうさせて貰う」
別に私も家事が出来ないわけじゃないんだけど、一緒に住むようになってからは被身子が積極的に家事を引き受けてくれるようになった。
あいつなりに私の役に立ちたいっていう気持ちの表れなのかもな。
なんて考えてたら、被身子が戻っていったキッチンからいい香りがしてきた。
「あ~…めっちゃいい匂いがする~…何作ってるんだ~?」
「被身子特製ハンバーグでーす! ちゃんとデミグラスソースも作ったんですよー!」
「マジか…相変わらず凝ってるなー…」
私がハンバーグを作ったら、適当にケチャップで済ませるんだけど…。
そこは個々人の拘りなのかもしれないが。
(それにしても先生とドクターめ…完全にしらばっくれてやがったな…)
少し目を休めるために瞼を閉じ、頭の中でさっきのことを思い出していた。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
自宅に帰る前、私は報告と言う名の文句を言うために、秘密の場所を訪れていた。
ここは先生とドクター以外には、私しか場所を知らない。
黒霧は当然として、あの弔ですら。
「随分と酷くやられたようだね。そんなにヒーロー達は手強かったのかい?」
「全部見てたくせに、いけしゃあしゃあと…!」
「はっはっはっ! 流石はクロウ! バレてたか」
「当たり前だ。脳無をぶっ飛ばした直後、絶妙なタイミングで奴の体がアンタの持つ個性の一つで転移させられた。あんなの、ずっとあの場所の出来事をリアルタイムで見てないと不可能だ」
「まぁね。確かに、僕も君の持つ『千里眼』と酷似した『遠見』の個性を持っているからね。楽しく観戦させて貰ったよ」
私の戦いは野球中継かっつーの。
まさかとは思うが、ビールとポップコーン片手に見てなかっただろうな…?
全く…目が見えない代わりに脳内に外部の映像を映し出す『遠見』の個性…今の先生には必須の個性なんだろうな。
「なら、ここは敢えてストレートに尋ねよう」
「なんだよ」
「…オールマイトは強かったかい?」
「…強かったよ。鳥肌が立つほどに」
オール・フォー・ワンの真の継承者…。
頭でなく心で…体で理解した。
アレこそが『HERO』…『人類決戦存在』…。
人類と言う種の希望と存亡を全て背負うべき者…。
「それにしても、まさか君があのオールマイトと共闘するとは思わなかった。意外と様になっていたじゃないか」
「それ、冗談で言ってるなら最低だけど、皮肉で言ってるならもっと最低だぞ」
「ありがとう。最高の誉め言葉だ」
「この野郎…」
ああ言えばこう言う…!
何をどうすれば、このマスクマンの顔を歪ませられるんだ…?
「しかし、今回の事は君にとっても決して無駄ではなかったんじゃないかな? どうやら、かなり多くの有益な個性を覚えたようだしね」
「まぁな。それに関しては素直に良かったと思うよ」
特に、氷結や爆発、創造や放電、硬化などの個性はかなり使い勝手がよさそうだ。
今後も沢山世話になるだろうな。
抹消に至っては普通にチートだしな。
「あの脳無はどうした?」
「あれなら心配ない。ちゃんとドクターのラボに直行させたよ」
「うむ。非常に有益なデータが山のように取れたぞ! お前にはどれだけ感謝しても、しきれんのう!」
「その代わり、こっちは色んな骨を折りまくってんだけどな」
「あの脳無相手に、それだけで済んどる時点でお前は異常なんじゃ。本来なら、常人の腕や足など、小枝を折るように砕けるんじゃぞ?」
「だろうな。それは、実際に戦った私がよく分かってるよ。ったく…何が『身体能力はお前の方が上』だよ。普通にめちゃくちゃ強かったじゃねぇか」
「ほっほっほっ! ワシとて読み違うことぐらいはあるわい」
「言ってろ」
あの脳無との戦いを思い出して、一つ思ったことがある。
『アレは本当にオールマイトとの戦闘を想定した性能だったのか』と言うのが。
私一人の時には普通に苦戦をし、オールマイトが参戦した途端に戦況が一気に逆転した。
あれはオールマイトの異常なまでの強さも理由の一つだろうが…恐らくはそれだけじゃない。
あの脳無は恐らく…。
(最初から…私を仮想敵として想定していた…)
そう思うと、色んなことに納得が出来る。
オールマイトと言う『最強のイレギュラー』に過剰に反応したからこそ、奴はオールマイトにも同じように襲い掛かり、その想定以上の強さにリズムを崩され、そのまま倒されることになった。
もし、この予想が当たっていたとして…一体どうしてそんなことをする?
私と脳無を戦わせて、どんなメリットがある?
まさか、本当にデータ取りのため…じゃないだろうな…。
「とにかく、今回は本当にご苦労様。そして、お疲れ様」
「…その言葉だけは素直に受け取っておく。んで、これからどうする気だ?」
「当初の予定通り、雄英側に緊張感と危機感、疑心暗鬼を植え付けることには成功した。なので、暫くは潜伏しながら様子見だね」
「なら、私は『本職』に戻らせてもらう。文句はないよな?」
「勿論だとも。契約通り、君は君で自由にしてくれていいよ。どこで何をし、誰と会って、何を話そうとも、我々は微塵も文句は言わないし、干渉もしないと約束しよう」
「…ちゃんと聞いたからな。忘れんなよ」
こっちには『録音』の個性だってあるんだ。
その気になれば、いつでも音声再生可能なんだぞ、この野郎。
「そうだ。帰る前に弔の所に顔を出しやってくれないか? 君の事を凄く心配していてね」
「…そうか。ちょっと悪いことをしたしな…寄ってみるよ。丁度、喉も乾いてたし」
言いたいことを全て言い終えてから、私は転移の個性でこの場を後にした。
バーに寄って弔の顔を覗いたら、なんかめっちゃ謝られた。
流石に申し訳なくなったので、頑張って弔を慰めて、労いとして黒霧が作ってくれた特製カクテルを一杯飲んでから、私は帰路に就いた。
この調子で本当に大丈夫なのかよ…敵連合…。
・・・・・
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・・・
・・
・
クロウが去った後、先生とドクターは楽しそうに話を続けていた。
「あの様子…クロウは恐らく、ワシらの『本来の目的』に薄々とはあるが気が付きつつあるようじゃな」
「それはそれで構わないよ。寧ろ、彼女には僕に対して警戒心や嫌悪感を抱いてほしい。それと同時に、弔との絆を育んでくれれば最高だ」
「今の時点で十分過ぎる程に、あの小僧はクロウに依存しているように見えるがな」
「まだまだ…もっとだ。もっと依存してもらわなければ。それこそ、クロウなしじゃ生きていられなくなるほどに」
「死柄木弔の中での存在価値を、先生と同格にまで引き上げようというのか?」
「そうさ。今回の事でクロウもヒーロー達と深く関わって、知らず知らずのうちに彼らに感化されつつある。本当に…あの子たちは愛おしくてしょうがない。どうしてこうも、僕の書いた台本通りに舞台の上で踊ってくれるのか」
「それは、先生の人心掌握術が優れているという証拠じゃろう。いっそのこと、本当に作家デビューでもしてみるか?」
「そうだね…本願を果たした後には、それも悪くないかもね」
「冗談じゃ。先生なら本当にやりそうで怖いわい」
「やろうと思えば出来るからね。しかし本当にクロウと出会えたのは僥倖だった。彼女を捨てた『あの男』には感謝の念しかないね」
「本当に愚かよのぉ…。クロウの才能と実力を見抜けず、個性でしか子供を見なかった結果…『本当の最高傑作』を捨ててしまうんじゃからな。ワシからしたら絶対に有り得ん事じゃ」
「全くだよ。だが、だからこそ、僕の計画が想像以上にスムーズに進んでいるんだが」
「もしかしたら、奴にはヒーローではなくて、ヴィランの方が向いておるのかもしれんのう!」
「案外、そうかもしれないね。だとしたらお笑い草だ」
「その被害者であるクロウが知ったら、どんな顔をするじゃろうのう…。今回の脳無の本当のターゲットが自分であったと」
「あの子の事だ。それの事も見抜いているかもしれないね」
「有り得るのぉ…。あ奴は本当に勘が鋭いからの」
「だからこそ、それを逆に利用できるのさ」
「それもそうか」
「今回の脳無との戦いを通じ、彼女はより一層、僕やドクターに対して疑問を抱く。けど、契約をした以上、籍だけは敵連合に置いておく。この状況を上手に利用し、絶好のタイミングで彼女を裏切らせれば…」
「間違いなく、死柄木の小僧は精神崩壊レベルで絶望するじゃろうな」
「それでいい。寧ろ、そこから全てが始まる。今のこの状況は、僕にとっては単なる前菜…もしくは序章でしかないのさ」
「そうじゃな。ワシとしても、先生の行く末と言うものに興味がある。今から楽しみじゃ」
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・・・
・・
・
「うっまっ!」
え? なにこれ? これ間違いなく被身子の料理の腕…上がってね?
ハンバーグの肉汁が凄いんだけど…。
めっちゃご飯が進む!
「美味しいですか?」
「最高。割とマジで、いつでも嫁に行けるわ」
「じゃあ、私はクロウちゃんのお嫁さんになります」
「その為にはまず、同性でも結婚できるように日本の法律を変えないとな」
「頑張って変えます! 愛の力は無敵ですから!」
「さよか」
うーん…もう完全に被身子の女子力は私を超えたな…。
ここに来た頃は、恐る恐る私に料理を教わっていた子が…ちょっと複雑。
「そうだ。明日から『いつもの仕事』に戻るから。被身子も、そのつもりでいて」
「分かりました。じゃあ、明日に備えて今日は早く寝ないとですね」
「私は子供かっつーの。と言いたいけど…今は普通に賛成。マジでめっちゃ疲れたし。これ食って、シャワー浴びたら、とっとと寝るわ」
なんか…すごーく長い一日だったような気がする…。
色んな意味で、これまでの日常が崩れていく予感…。
なんて言ったらフラグになりそうな気がするので、今のはナシってことで。
と言うわけで、救済キャラ一人目はみんな大好き渡我被身子ちゃんです。
個人的にも好きなので、彼女はかなり優遇するかも。
今の所はクロウの嫁になってますが。
休んでいる間に色んな二次小説を読んで、敵連合の皆にも愛着がついているで、可能な限り救済していきたいですね。