闇なる鴉はかく語りき   作:とんこつラーメン

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最近の高校生、殺る気溢れすぎワロタ

 引き続き会場の見回りを再開しようとすると、急に大きな影が視界の端に見えた。

 

「なんだ?」

 

 反射的に影の方を振り向こうとすると、被身子が大きく目を見開いた状態でスタジアムの方を指さしていた。

 

「ク…クロウちゃん…」

「どうした?」

「あ…あれ…」

「あれ?」

 

 一体何があった…って…うぇ?

 

『第一関門は…ロボ・インフェルノ!!』

 

 な…なんじゃ…あのバカデカいロボットは…?

 っていうか、インフェルノって…。

 

「あれって…入試ん時に出てきた0ポイントの仮想ヴィランじゃねぇか!!!」

「ちょ…マジかよヒーロー科!! あんな化け物と入試の時にやりあってたのかよっ!?」

「つーか、数が多すぎて前に行けねぇっ!!」

「こんなん、どーすりゃいいんだよっ!?」

 

 おいおい…一体どんだけ金が有り余ってんだ…雄英サンはよ…。

 あんな巨大なメカを入試に出すって…こいつに学校の防衛させた方がいいだろ…絶対。

 

「こ…こわぁー…。あんなの絶対に体育祭に出すもんじゃないですよぉ…」

「かもな。けど、ここは雄英だぞ? 寧ろ、あれぐらいがココじゃ普通なんだろ」

「世間一般の常識と雄英高校との常識が違いすぎる件…」

 

 意外と余裕あるだろ被身子。

 

「因みに、お前ならあのデカブツ…どうやって倒す?」

「そうですねぇ…私なら、前にMt.レディさんから貰った、あの人の血が入ったカプセルを使って変身、そのまま巨大化の個性を使ってやっつける…って感じですかね?」

「そうだな。お前の場合は、それが最適解かもな」

「クロウちゃんなら、どうするんですか? やっぱり巨大化?」

「私? そうだなぁ…」

 

 確かに、私も優の巨大化は覚えてるから使えるが…それじゃちょっと安直だしな。

 

「ワン・フォー・オールの超パワーでぶちのめしてもいいし、この間覚えたばかりの爆破でぶっ壊してもいい。放電でショートさせるのもいいな。縮小化で小さくしてプチって潰してもいい。後はー…」

「後は?」

「あんな風に…凍らせる」

「え?」

 

 コース上では、紅白の髪の男の子が巨大なロボットを一瞬で凍結。

 その隙間を普通に走って通過していた。

 

「ほぇ~…これまた凄いですねぇ~…」

「だよな。多分、私もやろうと思えばできる。凍結は覚えてるし」

「成る程な~…」

 

 あ…そんなことを言ってたら、凍り付いたロボットが倒れた。

 大丈夫か…あれ?

 

『1-Aの轟!! 攻略と妨害を一度に纏めてやりやがった!! こいつぁシヴィー!!!』

 

 轟って…あいつの事だったのか…。

 千里眼じゃ姿は見えても、声までは拾えないからな。

 そっか…あいつが…。

 

(なんだろう…妙な感じが…)

 

 偶然にも同じ苗字だからか?

 うーん…そうかもしれないな。

 苗字が同じってだけで不思議な親近感が湧いたりすることってよくあるし。

 

「へ? 轟? それって…」

「単なる偶然だよ。そもそも『轟』って名字だけで日本全国に何人いると思ってんだ? 前に調べたら約7000人以上だって言ってたぞ?」

「な…7000…それなら普通に偶然ですね…」

「そーゆーこと。ほら、今度はあっち行くぞ」

「はーい」

 

 被身子を伴って、私は別のエリアへと移動することに。

 その際、ちらっと倒れたロボットを壊して飛び出してきた二人のうちの一人の個性を覚えてしまった。

 『スティール』の個性…か。

 思い切り硬化と被ってるし、なんなら汎用性なら硬化の方がいいから、これは完全に死に個性になるな。

 あのスティールの個性の男子…夏とか冬とかはどうしてるんだろ。

 夏は超熱いだろうし、冬は逆に超寒いだろうに。

 体温調節とか、めっちゃ大変そうだな。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 

「お! クロウか! そっちはどうだ?」

 

 移動中に知り合いのヒーローと出会って、軽く情報交換。

 本当は通信とかがいいんだろうが、こうして出会ったのなら別に口頭でも問題はない。

 怪しい所があれば、すぐに分かるしな。

 

「こっちは今の所は何も問題はなかったよ。そっちは?」

「こっちも…と言いたかったんだけどな…」

「何かあったのか?」

「どうやって入場検査を突破してきたのか、缶ビールを持ち込んでた親父がいてな。それで酔っぱらって暴れそうになってたのを、ギリギリで食い止めてから、今は安全な場所で爆睡して貰ってる」

 

 よりにもよって酔っ払いかよ…。

 一応、入場の際にはアルコールの類の持ち込みは禁止されてるし、それを観客席で飲むなんて以ての外だ。

 勿論、アルコールがダメなら煙草もダメ。

 ちゃんと会場内に設けられた専用の喫煙室で吸うようにと通達がされている。

 だから、私も今回は煙草は吸ってない。

 休憩の時には遠慮なく吸いに行くつもりだけどな。

 

「もういないとは思うが…一応は気を付けてくれ。後で他の皆にも言っておくよ」

「頼んだ。じゃ、また後でな」

「おう。お互いに頑張ろうぜ」

 

 軽く手を振ってから分かれて、あいつがさっきまでいたエリアへと入った直後だった。

 

『オイオイ! 第一関門はチョロ過ぎたってさ!! んじゃ第二関門はどうよ!?』

 

 ほぉ…第二関門?

 位置的にさっきは見えてなかったし、ちょっとだけ興味あるかも。

 どれどれ…?

 

『落ちれば当然即アウト!! それが嫌なら意地でも這いずりな!!』

 

 うっわ…これはまた…なんともまぁ…。

 

『ザ・フォーーーーーール!!!』

 

 一体どうやって作ったんだよ…こんなの…。

 幾つもの小さな崖をワイヤー同士で繋いでやがる。

 バランス感覚が優れている奴には楽勝だろうが、誰もが皆そうとは限らないしな。

 

「あ…クロウちゃん。あの子、なんか道具みたいのを装備してますよ?」

「ホントだ。なんだありゃ」

 

 一体どこから持ってきた?

 けど…ちょっとカッコいいな。

 アレが所謂『サポート科』って連中か。

 身体能力や個性で劣っている分、それを道具で補っている…ってところか。

 

「さっきの氷の子…また先頭だ…」

「みたいだな」

 

 普通にバランス感覚もいいが、それ以上に氷の使い方をちゃんと理解してる。

 未だに一度も立ち止まってないじゃん。

 

(早くも優勝候補誕生…ってか?)

 

 次のエリアの見回りを開始しようと思ったら、不意に近くにいた観客の会話が聞こえてきた。

 話の内容的に、恐らくはスカウト目的のヒーロー達だ。

 

「あの一位の奴…圧倒的じゃないか」

「個性の強さもあるが、それ以上に素の身体能力と状況判断力が完全に頭一つ以上、飛びぬけている」

「そりゃそうだろ」

 

 何が『そりゃそうだろ』なんだ?

 

「だってあの子、あのフレイムヒーロー『エンデヴァー』の息子さんだもんよ」

 

 …………なん…だって…?

 あいつが…あの男の…息子…?

 じゃあ…もしかして…あの轟って奴は…私の…クソ!

 こんな時に限って過去の記憶が無いのが足を引っ張るとは…情けない…!

 

「あぁー…道理で! オールマイトに次ぐ、トップ2の()か!」

「早くもサイドキック争奪戦開始だなー!!」

 

 トップ2の血…ね。

 本人がそれを受け入れているかどうかは不明だがな。

 

「クロウちゃん? どうしたんですか?」

「いや…何でもないよ。早く行こう」

「はい…」

 

 被身子を心配させてしまったか。

 仕方がない…帰ったら全力で可愛がってやろう。

 

「さて…どこかに不審者はー…いない…ん?」

「今度はなんですか?」

「いや…風に乗って、凄く嗅ぎ慣れた匂いが…こっちか」

 

 被身子を連れて匂いのする方へと早歩きしていくと、そこには物陰に隠れて煙草を吸っている太ったおっさんがいた。

 

「やっぱり…」

「喫煙所じゃない場所でタバコを吸ってる…これって」

「普通に注意案件だな。行くぞ」

 

 そーっと近づいてから、おっさんの咥えている煙草をひょいっと取り上げてから、そのままグシャっと握り潰す。

 勿論、こんなので火傷とかしたくないから、握り潰す瞬間に煙草を凍結させてから粉々にした。

 

「ハイ残念。タバコを吸いたかったら、ちゃんと喫煙所に行きましょーねー」

「な…なんだお前は!? 別にいいだろ! ちゃんと周囲に配慮はしてたんだから!」

「そーゆー問題じゃねーんだよ。ルールの問題なんだよ、オッサン」

「会場内は基本的に全面禁煙ですよー」

「う…うるさい! そもそもなんなんだ! お前たちに、そんなことを言う権利が…」

「あるんだなぁ~…これが」

 

 首からぶら下がってる物をオッサンに見せつけると、急に顔が青くなっていく。

 いい反応だ…その顔が見たかった。

 

「け…警備員…?」

「そゆこと。警備で呼ばれている、何でも屋さんでーす」

「な…何でも屋…?」

「そ。一応、一回目な上に怪我人とかは出てないから、今回は厳重注意で済ませるが…もしまた同じことをしたら…」

「したら…?」

「「磨り潰す」」

「何をっ!?」

 

 花の乙女にそんなこと言わせんなよ、恥ずかしい。

 なんて、涙を流しながら股間を抑えているオッサンに言っても意味無いか。

 

 つーか、会場はめっちゃ盛り上がってんなぁー。

 もうレースは最終関門に突入してるんだっけ?

 なんか地雷とか超物騒な単語が聞こえてきた気がするんだが。

 

 ドカァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!!!!

 

「な…なんだ? なんだぁ?」

「ば…爆発!? って…あれ!?」

「「んん!?」」

 

 ついオッサンと一緒に被身子の視線の方向に注目してしまう。

 そこにいたのは…。

 

『A組の緑谷!! 地雷の爆発を上手く利用してからの猛追!!! っつーか…前方の二人を一気に追い抜いたー!!!』

 

 うぉ…マジかよ…。

 幾ら何でもクレイジー過ぎるだろ…。

 っていうか…あのもじゃもじゃ頭の子って…前にUSJで見かけたブツブツ言ってる奴だったよな?

 ふーん…緑谷っていうのか…覚えておこう。

 

「必死なのは分かりますけど…手段を選ばなさすぎでは?」

「それには同感。あれ絶対に咄嗟の思い付きだろ」

 

 こっわ…最近の高校生って、あんなにも殺伐としてんのかよ…。

 裏で生きてる被身子の方が、ずっと性格が穏やかだぞ…。

 

「段々とスピードダウンしてる…」

 

 やっぱり、着地の事を全く考えてなかったか。

 咄嗟のアイデアにしては上出来だが、ここまでだな。

 

 ボォォォォォォォォォォォォォン!!!!

 

「「また!?」」

 

 手に持ってた巨大な鉄の板を地面に叩きつけて地雷を爆発させ、その勢いでそのまま一気にゴールまで突っ込んでいきやがった…。

 

『さぁさぁ!! 序盤の展開から一体誰が予想出来た!? 今一番にスタジアムへと還って来た…その男…緑谷出久の存在を!!』

 

 イズク…それが下の名前か。

 どんな漢字なんだろうか。

 にしてもやるな…私の記憶が正しければ、あの子って最初はかなり後ろの方にいただろ?

 そこから徐々に追い上げて、最終的にはまさかの一位突破。

 

「…やるじゃん」

「え?」

 

 最初に見た時は、いざって時にはヘタれる腰抜け野郎かと思ってたけど…意外と根性あるじゃないか。

 割と普通に見直したよ…緑谷出久くん。

 ただ…もうちょっとだけ自己を顧みた方がいいな。

 それさえ備われば文句はないな。

 

「クロウちゃんが誰かを褒めるだなんて…珍しいですね…」

「人聞きの悪いことを言うな。私だって褒める時は褒める。現に被身子の事はいつもめっちゃ褒めてるだろ」

「私はいいんです! 私以外の人を私の目の前で褒めてるのが…その…」

「こいつ…いっちょ前に嫉妬なんかしちゃって。可愛い奴め。このこの」

「うぅ~…」

 

 はぁ…癒されるわぁ~…。

 加齢臭が酷いオッサンに話しかけるっていうストレスも、これで一気に解消されるわ。

 

「はぁ…美少女とワイルド系美女とのイチャイチャ百合カップル…尊い…♡」

 

 はっ!?

 なんか…急に私の背中に凄まじい悪寒が…。

 き…気のせいか…?

 

 因みに、さっきのおっさんは、ちゃんと手持ちの煙草を全部没収して、目の前で灰にしてやった。

 でも、オッサン自体はレースの内容に興奮して、もう煙草なんてどうでもよくなってたみたいだけど。

 

 

 

 

 

 

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