闇なる鴉はかく語りき   作:とんこつラーメン

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原作に入ると言ったけど…もしかしたら次回になるかもしれない…。









襲撃の裏にある真実

 一か月後。

 雄英高校襲撃計画決行日。

 

 私は裏神野の一角にある古びたバーに足を運んでいた。

 

「よっ」

「…お前か」

「お久し振りですね、クロウ。お話は先生から伺っております」

 

 気怠そうにこっちを見る、顔や首、体に無数の『手』をくっつけている男と、バーカウンターにてグラスを拭きながら私に挨拶をする黒い靄のかかった男。

 こいつらが今回の襲撃の主犯格だ。

 私は…おまけ?

 

「まさか、自由至上主義のアンタがこっちに来るとは思わなかった。流石のクロウでも先生には逆らえないってことか」

「さぁね。そこら辺はご想像にお任せするよ、弔」

「まぁまぁ…いいじゃないですか。確かにクロウは自由奔放ではありますが、その実力は紛れもなく本物。これで今回の襲撃が更に盤石になったと言えます」

「そんなことを言ってくれるのはアンタだけだよ、黒霧」

 

 ほんと…ヴィランにしておくには勿体ないぐらいにいい性格をしてるよ。

 料理も上手だし。

 

「ここに入る時に表で見たけど…あの連中が今回使う奴らか?」

「えぇ。今回の為に方々から搔き集めました」

「ふぅ~ん…」

 

 あれ…どう考えてもやられ専門の雑魚キャラ集団だろ。

 下手したら、ヒーロー戦隊に出てくる敵組織の雑魚戦闘員の方が、まだいい仕事をする可能性がある。

 

「あいつら、私の顔を見た途端に凄い驚いた顔をしたんだけど」

「それは当然でしょう。この界隈で貴女のことを知らぬ者は一人もいない」

「いつの間に、そんな有名人に…」

「自覚ねぇのかよ…」

 

 弔に言われてしまった。

 これはこれで屈辱だ。

 

「…で、例のカリキュラムとやらはちゃんと手に入れたのか?」

「それはもうバッチリと。今日の午後、敷地内にある特別施設内にてオールマイトを含めた三人で救助訓練を行うらしいです」

「そこを襲撃する…と」

「はい」

 

 敷地内にある特別施設って…どんだけ広いんだよ雄英…。

 流石はヒーロー養成学校、無駄に金だけはかかってんなー。

 その金を少しでもいいから、この裏神野に落としてくれんかね。

 

「私の『弟』はどうなってる?」

「今はラボにて最終調整をしているとか」

「…そっか」

 

 ドクターも無駄に仕事熱心ですこと。

 ま、形だけでも何かしておかないと拙いんだろうな。

 

「景気づけに、仕事前に何か一杯飲みますか? 勿論、ノンアルコールに限られますが」

「そうだな…」

 

 久し振りに黒霧のカクテルを飲むのも悪くはない。

 そう思った…その時だった。

 

「ん?」

「どうしました?」

「携帯。ちょっと裏借りるわ」

「はい。まだ時間には余裕がありますので」

「とっとと戻って来いよ」

「はいはい」

 

 こんな時に一体何の用だ…ドクターめ。

 

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「もしもし?」

『お前さんの声を聴くのも久し振りじゃな、クロウよ』

「挨拶はいい。何の用だ?」

 

 バーの裏口から出て、小さく纏まった喫煙スペースに入る。

 ここは基本的に私だけの特別ルームだ。

 防音加工もされてるから、誰かに話を聞かれる可能性は低い。

 

『先生から話は聞いておる。お前さんも今日の午後の襲撃に参加するんじゃろう?』

「一応な。けど、私は…」

『何もする気はない…か? そんなことはワシも先生も百も承知じゃよ。今や、裏の世界におけるクロウの存在は先生に比肩するレベルになっている。そんなお前をあんな小僧の下に置くなど宝の持ち腐れじゃ』

「それ程でも」

 

 私があの男と同等って…それは果たして喜んでいいのか?

 こっちとしては微妙なんだが。

 

『…クロウ。これはお前だからこそ言うんじゃが…』

「なんだよ」

『今回の襲撃…本気で上手くいくと思っておるのか? いくら弱体化したとはいえ、あのオールマイトを殺せると思っておるか?』

「まさか。冗談でも笑えないな」

 

 あの程度の戦力で? 鉄壁の雄英を? あの最強のヒーローを?

 碌な作戦も無しに? あんな精神が未熟な奴が作戦指揮をして?

 …出来るわけねーだろ。

 

『ワシも、今回はお前と全くの同意見じゃ。即席で集めた有象無象の雑魚など肉壁にすらならんし、主戦力となりうる弔は個性こそ強力じゃが、その精神はまだ未熟。黒霧は役に立つじゃろうが、奴はあくまでも弔のお守り。思うようには動けん可能性がある』

「『アレ』は? もう完成してるんだろう?」

『一応はな。だが、無理じゃろう』

「だろうな。いくらオールマイトに匹敵するレベルのパワーを付与し、超再生とショック吸収を付与したところで意味は無い。だって、『アイツ』はオールマイトじゃないから」

『その通りじゃ。どれだけ対策をしようとも、オールマイトには今までの戦いで培った膨大な技術と経験値がある。それは、どんなにあがいても『アレ』には付与できん。その時点で負けは確定しているといっても過言ではない。何より…』

「何より?」

『奴らヒーローはピンチの時に謎の根性論で幾度となく危機を脱してくる。他のヒーローならば十分に打倒できるやもしれんが、実際にオールマイトと対峙した際には簡単に圧倒されるじゃろうな』

「じゃあ、なんで『アレ』を同行させる?」

『テストじゃよ。テ・ス・ト。今回のは『一応のゴール』にしか過ぎん。まだまだ改良すべき余地は山のように残っている。それもこれも、全てお前さんのお陰じゃよ、クロウ』

「どういたしまして」

 

 ドクターに礼を言われても微塵も嬉しくないな。

 なんでだろうか。

 

『そもそも、死柄木は今回の襲撃の『真の勝利条件』を全く理解しておらん。ま、無理もないがな』

「図体だけデカい、中身ガキだからな」

 

 そう仕組んだのも先生なんだけど。

 

『念の為に聞いておきたいが…お前さんは分かっておるじゃろうな? 今回の襲撃の『真の目的』を』

「私を舐めるなよ。そんなの、先生から話を聞いた日に理解したわ」

『それを聞いて安心したわい。ま、先生の箱入り小僧とお前とでは、生きてきた環境が違いすぎるから当然か』

 

 それもまた先生の『計画』のうちなんだろうけどな。

 考えれば考えるほどに反吐が出そうだ。

 

「…で? こうして、このタイミングで私に電話をかけてきた本当の目的をそろそろ話せよ」

『おっと、そうじゃった。先生も言っておったが、どうもクロウとは思わず長話をしてしまう。ワシも年かのう?』

「肉体的にはともかく、精神的にはまだまだ若いだろ」

『それはー…褒められとるんかの?』

「さぁね」

 

 それはソッチの受け取り方次第じゃない?

 

『さっきも言ったが、まず間違いなく『アレ』は負ける。製作者のワシが言うんじゃからまず間違いない。これは先生も承知の上じゃ』

「だろうな。で?」

『じゃが、『アレ』が負けるということは、その身柄をヒーローや警察どもに確保されるということになる。そこから変に足がつくのだけは御免被りたい。じゃから…』

「私に後始末しろと?」

『その通りじゃクロウ。お前は本当に話が早いの』

 

 いや…これぐらいは誰にでも想像できるだろ。

 

『接近戦ならばかなりの強さを誇るが…お前ならば問題はあるまい? なんせ、クロウはワシの最高傑作! 結果的にじゃがな』

「最後の一言が余計だよ」

 

 今度会った時、こいつの眼鏡に油性ペンで落書きでもしてやろうか。

 

『素の身体能力の時点で、お前の方が圧倒的に上。更に、先生から貰った『個性』を使えば楽勝じゃろう』

「…だろうな」

 

 『アレ』か…。

 出来れば使いたくはないんだが、贅沢は言ってられないか。

 

『先生も言っておったよ。『どうせ、今回の襲撃じゃクロウは殆ど動かないだろうから、それならせめて『アレ』の処理を任せた方が彼女も少しは乗り気になるだろう』とな』

「さよか」

 

 実際にそうなるかは、その時次第だと思うんだが。

 人の心を見透かしたような言動がマジで気に食わない。

 

「このこと、死柄木たちは?」

『知らん。知ればまた癇癪を起こすじゃろう』

「だろうな」

『じゃが、黒霧は途中で察する可能性はあるな』

「あっちはまだ理性的だしな」

 

 ぶっちゃけ、黒霧がいなかったら死柄木は年中無休で癇癪起こしてたか、ずーっとゲームをしてるかのどっちかだな。

 

『どのタイミングで処分するかはクロウに任せる。というか、今思ったんじゃが、オールマイトと戦うよりは、クロウと戦った方がいいデータが取れそうじゃ』

「私はオールマイトの代理かよ」

『奴に倒されるよりはずっとマシじゃ』

「そーかよ」

 

 このジーさんの価値基準が未だによく分からん。

 理解しようとも思わないが。

 

『今回の一件で死柄木も流石に理解するじゃろう。こんな稚拙な襲撃程度でオールマイトが倒せるのなら、とっくの昔に…それこそ5年前の時点で既に決着はついていたとな』

「だといいけどな。普通に悔しがって終わりってパターンもありそう」

『そうなった時は、そうなった時…単純に時期尚早だったというだけじゃ』

「それだけで済めばいいけどな」

 

 このことが後々まで尾を引かなけりゃいいんだけど。

 死柄木(アイツ)の場合、ずーっと引きずりそうな気がする。

 

「今回の襲撃は前哨戦…いや、スパーリングってところか」

『随分と派手なスパーリングじゃな』

「派手にしてるのは死柄木達だろ。本来、こういうのは少数精鋭かつ静かに行うもんだ。完全アウェーな敵の懐に雑魚を引き連れて自ら飛び込むなんて、一人でもどうにかなる程の一騎当千の実力を持っている奴か、身の程知らずで無駄にポジティブな脳内お花畑の馬鹿のどっちかだろう」

『お前から見て死柄木はどっちじゃ?』

「脳内お花畑の馬鹿。先生はあいつを甘やかしすぎなんだよ。だから、こんなことになってしまう」

『まぁ、そう言うな。先生も先生の考えがあってのことじゃ』

「そんなのは私だって分かってるさ。だが、それでも看過できる事と出来ない事がある」

『その気持ちはよく分かるがな…』

 

 分かられた。解せぬ。

 

『兎に角、『アレ』の処理は任せたぞ。死柄木はー…ほっといてもいいじゃろ。偶には痛い目を見るのも勉強じゃ』

「それには同感。あいつは一回、本格的にボコボコにされた方がいい。それが死柄木の為にもなる。ヴィランならヴィランらしく、何度倒されても這い上がる雑草根性ぐらいは身に着けてほしいもんだ」

『クロウが言うと説得力絶大じゃな』

「ほっとけ」

 

 こっちだって、苦労したくてしてるんじゃないんだよ。

 

「話はそれだけか? そろそろ切るぞ」

『そうじゃな。無用な心配かもしれんが、お前も気をつけろよ? 経緯はどうあれ、ワシはお前のことを孫娘のように思っとるからな』

「裏切るかもしれないのに? 先生から聞いてるんだろ? 私が『こっち側』に来る条件」

『聞いておるとも。じゃが、そんなことワシは全く気にせんわい。もし、お前が裏切ったとしても、それはそれでまた一興というものじゃ。というか、その程度のことでどうこうなるようじゃ、死柄木もその程度の器だったということじゃろう』

「フッ…だな。それじゃあな。少しは健康に気をつけろよ」

『心配無用じゃ。毎日三食カロリーメイトを食っとるからな』

「何がどう心配無用なんだ。寧ろ、逆に心配になってきたわ」

 

 半ば呆れながら通話を着る。

 はぁ…仕事前だってのに無駄に疲れた。

 こんな時は…。

 

「黒霧ー。何でもいいから甘い飲み物くれー」

「承知しました。では…」

 

 さてはて…今回の襲撃…どう転がるかな…。

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり無理でした。

なので、雄英襲撃は次回ってことで。


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