闇なる鴉はかく語りき   作:とんこつラーメン

6 / 17
本格的な初戦闘。

クロウの個性とは?







姉弟喧嘩

 あー…いったー…。

 別に死にはしないけど、今ので確実に奥歯が折れたな。

 なんか口の中に違和感があるわ。

 帰ったらドクターのところで治してもらおう。

 

 それはそれとして、これでようやく堂々と『お仕事』が開始できるな。

 負けがほぼ確定している脳無の後始末。

 どうやって、そこに持ち込もうかと考えて動いたが、思ったよりも上手くいったな。

 …私に、こんなことを言う資格はないかもしれないが、あれ以上、相澤さんと戦うのは気が引けたからな。

 今からは心置きなく全力が出せるってもんだ。

 手加減をするってのも中々にフラストレーションが溜まるんだよな。

 

「くそっ…完全に予定が狂った。これじゃあ、オールマイトが殺せないじゃないか…!」

「脳無ありきの作戦でしたからね…。まさか、調整不足で暴走してしまうとは…」

 

 悪いな…弔。黒霧。

 別に脳無は暴走なんてしてない。

 私がワザと殴られただけだ。

 ま、もし仮に私が何もしなくても、こいつはオールマイトにボコボコにされてただろうがな。

 要するに、私に倒されるか、オールマイトに倒されるかの違いでしかないんだよ。

 

「戻ったら先生に問い詰めるぞ…」

「それがよさそうですね…」

 

 あの男が素直に答えるとは思えないけどな。

 そこは私には関係ないか。

 こっちだって依頼されたことをやってるだけだし。

 

「よぉ…脳無ちゃんよ。さっきは随分と生きのいい右ストレートをくれたじゃないか。結構、痛かったぞ」

「…………」

 

 返事…するわけないか。

 こいつに知性なんて上等なものは無いもんな。

 動く死体にまともな反応を期待するだけ無駄か。

 

「今度は…こっちの番だ。ついでに色々と試したいこともある」

「まさか…」

 

 お、流石は黒霧。

 この一言だけで理解したか。

 

「まずは…」

 

 さっき相澤さんとスパーをしたお陰で、いい感じに手に『汗』が溜まった。

 これなら出せる(・・・)

 

「こいつだっ!!!」

 

 BOOOOOOOOOOOOOOOOOOOM!!!!!

 

「こいつは…」

「先程、私に奇襲を仕掛けてきたツンツン頭の男子生徒の個性! あの一瞬の間に覚えた(・・・)というのですか…」

 

 うん。いい感じだ。

 変異した掌の汗腺からニトロに酷似した汗を出し、それを自在に爆発させる『爆破』の個性。

 少し派手なのが難点だが、威力は申し分ないな。

 色々と応用も出来そうだし、そこら辺はこれからの課題だな。

 

「い…今のって…おい緑谷!?」

「か…かっちゃんの…個性…!? どうして、あの人が…!?」

「どういうことかしら…」

 

 ん? なんか後ろで子供たちが言ってるが…かっちゃんとは誰だ?

 

 煙に覆われて脳無の姿が見えないが、奴が何をしようとしてるのかは分かる。

 歩く闘争本能みたいな奴だからな。

 凄く分かりやすいんだよ。

 

「クロウ! 忘れたのですか!? 脳無は!」

「ちゃんと覚えてるよ。こいつの個性は」

 

 黒煙の中から突き出される黒く巨大な拳。

 これぐらいなら普通に避けられるが、ここは敢えて覚えたてのもう一つの個性を試してみよう。

 

「『硬化』」

 

 私の両腕が岩石のように頑強になり、脳無の拳を受け止める。

 意外と骨とかには衝撃が響かないんだな。

 

「今度は…切島くんの個性…」

「ど…どうなってんだよぉぉぉぉっ!? どうして、あのセクシー姉ちゃんは爆豪と切島の個性を使えるんだよぉぉぉっ!?」

「それが分かったら苦労しないわ。峰田ちゃん」

 

 うーん…子供たちが意外とうるさい。

 とっとと逃げてくれてほしいんだが…。

 

「『見る』…『覚える』…まさか…! クロウ…お前の個性は…!」

 

 …流石はプロだな、相澤さん。

 もう私の個性に大体の見当をつけたか。

 

「しかし…流石は『ショック吸収』の個性だな。この程度じゃビクともしないってか。しかも、僅かなダメージもちゃんと『超回復』の個性で治癒してるし」

 

 このままじゃ完全にジリ貧。

 普通なら万事休すってところだろうが、私はちゃんとこいつの個性の弱点は把握している。

 他にも色々と試したいと思っていたんだが、その時間も残ってなさそうだしな…。

 

(…来てるな。物凄い速度で向かって来てる)

 

 明らかに人間に出せる速度じゃないぞ…。

 これで弱体化してんのなら、全盛期はどれだけ強かったんだっつー話だよ。

 そんなのと互角に渡り合ってた先生も普通に化け物だけど。

 

「おい黒霧。弔。脳無の後始末は私が何とかする。お前たちはとっとと離脱しろ」

「あ? お前、いきなり何言って…」

「分かってるだろ。脳無が使い物にならなくなった時点で、今回の作戦は失敗だ。オールマイトと戦うどころの話じゃない」

「だが、俺たちはまだ何も…!」

 

 そういうと思ったよ。

 けど、こんな時の黒霧だ。

 

「死柄木弔。悔しいですが、ここはクロウの言う通りです。脳無の制御が出来ない以上、ここに居続けるのは単なる自殺行為です。オールマイトだけじゃない、すぐに他のプロヒーローたちも駆けつけてくるでしょう。そうなったら引くに引けなくなる」

「くそ…くそ…くそがぁ…!」

「クロウが暴走した脳無を引き付けている今しかありません。下手したら、脳無はこちらにも牙を剝く危険性がある。引き際を間違ってはいけません!」

「なんでだ…なんでこうも…上手くいかない!」

 

 完全に子供の癇癪だが…これでいい。

 そもそも、先生によって幼さの残る憎悪の化身にされた弔にまともな判断能力は期待出来ない。

 弔と黒霧は二人でワンセットだ。

 そして、余程のことがない限りは黒霧の提案を無下にはしないだろう。

 

「どうでもいいが、早くしろ…よっ!」

 

 脳無が両手を合わせて、それを私の頭に向かって振り下ろしてくる。

 普通の人間なら、この一撃だけで簡単に木っ端微塵になるだろう。

 けど、生憎とこちとら普通の人間じゃないんでね!

 その巨大な両拳を…こっちの拳で正面からぶちかます!

 

「くっ…!」

「…………」

 

 いくら身体能力はこっちが上でも、体の頑丈さは向こうが上かよ…。

 打ち合った右拳の骨が砕けたぞ…。

 

「…クロウ」

「なんだ」

「その失敗作の始末を終えたら、お前もすぐに戻って来い。絶対に死ぬな。ヒーローにも捕まるな。お前は俺達にとって貴重な戦力だ」

「了解だ。リーダー」

 

 やっと帰ってくれるか。

 ほんと…子供のお守りも大変だ。

 

「ちょ…ちょっと待ってくれ!! 俺たちはどうなるんだ!?」

「俺達も…一緒に戻れるん…だよな…?」

「あ? 何言ってやがる。んなわけねぇだろ」

「「なっ…!?」」

 

 まぁ…そうだわな。

 なんて言ってる間に脳無が私の体を掴もうと迫ってくる。

 その太い両腕を掴んで阻止し、そのままの勢いで脳無の薄気味悪い顔面に膝蹴り!

 

「言わなきゃ分からねぇか? クロウとは違って、お前たちは単なる雑兵。数合わせ。肉壁だ。ここでお前らを連れ帰る理由も、メリットも俺達にはない。理解したなら精々、俺達やクロウの為の生贄にでもなってろ」

「テ…テメェェェェェェェェェェェェッッ!!!」

「ふざけんじゃねぇぇぇぇぇっ!!!」

「お…おい! やめろっ!!!」

 

 ちょ…弔が変に挑発するから、名も無き雑魚キャラが何人かこっちに向かってくるんだが!?

 バカやってないで早く帰れよ!

 

「ガッ…!」

「ひっ…!」

 

 あーあ…言わんこっちゃない。

 怒りに身を任せた雑魚キャラの感情に充てられて、脳無が反射的に彼の頭を掴んで持ち上げた。

 これは…死んだかな。

 

「だ…だずげ……がぁぁぁっ!?」

 

 グシャァァァッ!と言う破壊音と共に、そのまま地面に全力で叩きつけられる。

 地面が粉々に砕け、そこには夥しい量の血が。

 脊髄反射でビクビクしてるが、これはもう助からないな。

 もし奇跡的に助かっても、頭蓋骨骨折は確実だろ。

 

「ば…化け物…!」

 

 もう一人の雑魚キャラ君は腰を抜かした挙句、小便を漏らしてる。

 いい年して恥ずかしくないんですかコノヤロー。

 

「こんな風になりたくなかったら、邪魔せずにとっとと消えろ。少なくともヒーローに捕まれば死ぬことはないだろうよ」

「ひぅ…ひぅ…!」

 

 恐怖の余り、言葉すら出せずに何度も首を縦に振る。

 大した矜持もない連中じゃ、これが限界だな。

 

 雑魚キャラを一人殺ったことで、脳無の奴がマジで暴走し始めたかもしれない。

 本来は弔の指示に忠実な戦闘人形だったんだが、味方である私を殴ったことに加え、その私から攻撃されたことで色々と狂ったんだろう。

 逆を言うと、この程度のことでどうこうなる時点で、戦力としては失格だ。

 

「今回は予想外のことが起きたが…次はこうはいかない。今度は確実に殺すぞ…ヒーロー…」

「では、失礼します」

「ま…待てっ!!」

「先輩っ!」

 

 相澤さんが転移で逃げようとする二人に飛び掛かろうとし、階段の上からは13号がブラックホールの個性を使って拘束しようとするが…一歩遅かった。

 

「クロウ…また後で会おう…」

「御武運を」

 

 弔たちは静かに靄の中へと消えていき、残されたのは無数の雑魚キャラ君たちと私と脳無のみ。

 そして、脳無はさっきから私の方ばかりを見て殺る気満々と言わんばかりに息を荒くしている。

 どうやら、完全に私を標準に定めたようだな。

 

「余計な観客がいなくなった。ここからは…」

 

 全体重をかけた脳無の肘打ちが落ちてくる。

 それを私は…。

 

「マジで行かせてもらう」

 

 左手で受け止める。

 そこから更に…。

 

「ぶっ飛べっ!!!」

 

 その無駄に長い、嘴のように前に突き出した顎へ目掛けて全力の蹴りをぶちかます!!

 

「あ…あの…」

「巨体が…」

「真上に吹き飛んだぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 脚が命中する一瞬だけ硬化を発動したから、いくらショック吸収の個性でも全部の威力は吸えないだろう。

 受け身と言う考えすらない脳無は、そのまま真っ直ぐに天井へ頭が突き刺さる。

 これだけ見るとギャグマンガだな。

 

「あ…あの細い体のどこに、あんなパワーがあるんだ…? もしかして筋力増強系の個性で…」

 

 なんか、緑色のもじゃもじゃ君がブツブツ言ってて五月蠅い。

 ちゃんと状況考えんかい。

 

「緑谷ちゃん。ブツブツしてる場合じゃないわ」

 

 よく言った、そこの蛙っぽい個性の女の子。

 …もしかして、この場にいる連中で一番まともなのは、あの子と相澤さんだけなんじゃなかろうか。

 

 なんて考えてたら、相澤さんが傍まで来た。

 

「…やったのか?」

「どうだろうね。っていうか、こっちに来ていいのか? 私は…」

「ヴィランじゃない」

「……は?」

「お前はヴィランじゃない。少なくとも、俺はそう判断した。らしくないと思うがな」

「…そうかい。好きにしな」

「そうさせてもらう」

 

 この程度でどうにかなったら、ドクターも私に頼んだりはしないだろうな…。

 絶対にまだ息はあるだろ。

 

「なっ…!?」

 

 やっぱりな。

 両腕を天井に突き刺し、腕を伸ばしてから頭を引き抜く。

 腕力だけで自分の全体重を支え、そのまま肩の関節を無視して体をぐるりと一回転。

 その際にゴキゴキって音がしたけど、聞かなかったことにする。

 

「あの体勢は…まさか…」

「水泳のスタートダッシュみたいな構え。ってことは…」

 

 グググ…と両脚を縮め、天井に添えた。

 その視線は私だけをジッと見据える。

 

「だよな…相澤さん!!! 下がれっ!!!」

「クロウっ!!!」

 

 相澤さんの体を軽く突き飛ばし、すぐに上を向いて両腕を交差させる。

 視線の先には、同じように両腕をクロスさせた脳無が黒い流星となって落ちてきた!

 

「この…野郎…がぁぁ…!」

 

 まるで大爆発でも起きたかのような炸裂音と共に周囲に凄まじい衝撃波が走る。

 私のいる場所には巨大なクレーターが生まれ、その威力はこちらの両腕を粉々にするには十分すぎた。

 

「重力落下+超脚力+超加速の合わせ技…ってか…! 文字通りの脳筋のくせに妙な知恵を使いやがって…!」

 

 両腕だけじゃない…両脚にも罅が入ったな…これ…。

 多分、頭からも血が出てるわ…。

 一応、ガードする時に両腕と両脚に『硬化』の個性を使ったんだけどな…。

 気休めにしかならなかったか…!

 

「ク…クロウ…お前…」

「もうちょっと…防御に全集中するべきだったかな…」

 

 『バリア』の個性とかも使っておくべきだったかな…。

 せめて、こいつの『ショック吸収』の個性が覚えられたら、もうちょっとは楽だったかもな…。

 けど、それ系の個性は覚えるのにちょっとコツがいるしな…。

 

「クロウっ!! 追撃が来るぞ!!!」

「チッ!」

 

 相澤さんの叫びと同時に、脳無の蹴りが来る!

 今のダメージじゃ避けられないし、この体勢じゃガードも間に合わない!

 

「がっ…!」

 

 脳無の蹴りをまともに腹に受け、とんでもないダメージと共に体が派手に吹っ飛ぶ。

 あぁ…これは絶対に肋骨とか折れたわ…。

 これ…もしかしなくても入口まで飛ばされてるか…?

 

 思ったよりも強い脳無をどうするか、飛ばされながら考えていると…いきなり入り口のドアが破壊され、誰かが入ってくると同時に私の体を受け止めた。

 

(おいおい…よりにもよって今かよ…)

 

 戦いに夢中で見るのを止めてたからな…。

 もう少し注意しておくべきだった…。

 

「もう…大丈夫」

 

 遂に来た…来てしまった…。

 

「私が…来た!!」

 

 天下のナンバー1ヒーロー…『オールマイト』が。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっぱり私の悪い癖が出てる…。

思った以上に話が長引いてしまう…。



  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。