一先ずはUSJ編の完結まで。
なんか成り行きでオールマイトと一緒に戦うことになった。
ぶっちゃけ、戦力としてはこれ以上無い程に頼もしくはあるが、個人的にはなんだか複雑。
僅かな時間で向こうの信用度が一気にカンストしてしまっているのも謎。
もしかしなくても、相澤さんとの会話が原因だろうけど。
あの人…あの見た目でどんだけの人望を持ってんだよ…。
「はぁ…過ぎてしまったことを嘆いても仕方がないか…」
「どうかしたのかい?」
「いや…何でもないよ」
人生何があるか分からない。
事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもんだが、全くもってその通りだと思うよ。
とんでもない土産話が出来てしまった。
少なくとも、この事は弔達には絶対に話せないな。
あいつはオールマイトのことを目の敵にしてるから。
逆に先生は大爆笑しそう。
というか、現在進行形でこの状況を見ながら、腹を抱えて笑ってるかもしれない。
「あ…そうだ。奴と本格戦闘になる前に言っておくことがある」
「なんだい?」
「あいつには、アンタ対策に『ショック吸収』と『超再生』の個性が備わってる。生半可な攻撃じゃビクともしないと思った方がいい」
「なんとっ! だが…その割には随分とボロボロに見えるが…」
「それはー…あれだ。私の今までの攻撃のせいじゃね? 自分で言うのもなんだけど、こう見えてパワーにはそれなりに自信あるし」
「うーむ…人は見た目によらないってことか…」
そのセリフは、私が心の中で何度も相澤さんに思ったことだよ。
まさか、他の誰かに言われるとは思わなかった。
「しかし…『吸収』と言うことは、許容限界が存在すると思っていいのかな?」
「多分な。となるともう…必然的に私たちが今からやることは決まってるわな」
「あぁ!」
全身を濡らしながら、まるで幽鬼のように静かにゆっくりと立ち上がる脳無に向かい、私たちは決意表明のように高らかと宣言する。
「「超再生の回復よりも早く、奴にショック吸収の限界以上のダメージを叩き込む!!」」
うーん…我ながら、なんてマッチョな作戦。
けど、これが現状で出来る最善策であるもの事実なんだよな。
弔達がいないからこそ出来ることでもあるんだが。
マジで、とっとと帰しておいて正解だったな。
「来る!!」
「クロウ君!!」
振りかぶったのは…右拳!
まずは私を倒そうって算段か!
(下手にガードしても意味が無いってのは理解した。ならば…)
このまま奴の攻撃を迎え撃つ!!!
「うらあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」
脳無と私の拳が激突し、凄まじい衝撃が辺りに広がる。
植えてある植物たちは吹き飛び、破壊され溢れ出る噴水の水は大きく弾けた。
(ぐ…! 超痛てぇ…!)
こちとら両腕骨折してる上に拳が砕けてんだぞ!
明らかに人体から鳴っちゃいけない音が聞こえてきたんだがっ!?
「今の音は…クロウ君! まさかっ!? ぐぅぅぅっ!?」
拳を私に突き付けたまま、それを起点にして体を捻り、オールマイトにキックをかましてきたっ!?
こいつ…気のせいか、時間が経てば経つほどに戦闘に関する知識が増していってないかっ!?
そんな話はマジで聞いてないんだがっ!?
「キックはパンチの数倍の威力があるというが…流石に今のは効いたよ…!」
ガードしたオールマイトが少しだけ後ろに下がらせられ、その腕からは煙が出ている。
あの攻撃で、その程度で済んでる時点で十分に化け物だろ…。
けど、オールマイトが離れてくれたのは少しだけ好都合。
今からする攻撃に巻き込まずに済むからな。
「おい…脳無…あんまし調子のってっとな…!」
私の拳が触れている部分から、脳無の体が徐々に凍り付き始める。
氷はあっと言う間に脳無の右半身を覆いつくし、その動きを完全に止めた。
「『凍結』しちまうぞ…!」
「こ…これは…轟少年の個性っ!?」
とどろき? 誰だそれ?
けど…偶然ってのもあるもんだ。
この雄英に『
「全身がびしょ濡れになってたからな…簡単に凍り付いてくれた」
「クロウ君…さっきのワン・フォー・オールといい…君の個性は一体…」
「んあ? その話なら後でな。それよりも…」
「むっ!? あれは…!」
あろうことか、脳無は凍結した体を無理矢理に動かしてこちらに向かって来ようとしている。
しかし、そんなことをすれば当然、凍った体には罅が入り、そのまま砕け散ってしまうわけで。
「自分には超再生があるから、多少の無茶をしても平気ですってか? けどな…」
「その大きな隙を見逃すほど、我々は甘くはないぞ!!!」
砕けた部分から新たな肉体が再生を始めた。
けど、その瞬間だけは脳無は完全な無防備状態になる!
「オールマイト!! 合わせろっ!!!」
「任せておきたまえ!!!」
最後の力を振り絞って、オールマイトと同時に脳無を殴り飛ばす!!
そこから更に私の右腕から『糸』の個性を発動!
脳無の体を雁字搦めのボンレスハム状態にする!
「こんだけ体をギュウギュウにすれば、肉が固まってショック吸収どころじゃないだろ」
「成る程! 考えたなクロウ君!」
「まぁな。ところでオールマイト」
「なんだい?」
「
「あぁ…
「「ここが一番!! 拳を叩き込みやすい角度っ!!!」」
糸を全力で自分たち側に引っ張り、その勢いのまま…私とオールマイトの二人で全力のラッシュを叩き込むっ!!!
「矢張りなっ!! クロウ君の予想通り、その状態ではショック吸収も上手く機能していないようだなっ!!!」
「このまま一気にカタをつけるっ!!!」
この感じ…オールマイトの奴…攻撃の組み立ても何もない!!
全弾が全力攻撃か!!
それ程までに焦っているってことなのかっ!?
まぁ…それは後でじっくりと考えるとして、今は脳無をぶちのめす!!!
「私対策!? 私の100%を耐える!? 大いに結構!! ならば私は…否!! 私たちが!! その更に上から捻じ伏せて見せよう!!!」
「限界を超えていくか!! 偶にはそういうのも悪くはないな!! ところでオールマイト!! アンタは相撲は好きかっ!?」
「相撲っ!?」
「あぁ、そうだ!! 純粋な力と力のぶつかり合い!! 特に土俵際の駆け引きは…手に汗握るよなぁぁぁぁっ!!!」
「確かにそうだね!!! 私も相撲は大好きさ!!! ただしっ!!!」
正真正銘、体に残った全部の力を右腕に込めて、今出来る最大最強の一撃をぶちかますっ!!!!!
それはオールマイトも同じようで、彼の左拳に力が集中しているのが分かった!!
「「うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!!!!」」
瞬間、脳無は凄まじい炸裂音と共に天井を突き破り、音をも置き去りにする勢いで遥か空に彼方へと飛んで行った。
その時…私は確かに見た。
吹き飛ぶ脳無の口から黒い泥のようなものが溢れ、それが奴の全身を覆い尽くした後に消えたのを。
野郎…先生め…やっぱりこっちの様子を見てやがったか…!
戻ったら絶対に文句言ってやる…ドクターも一緒に。
「殴るのは反則だけどね」
「だよな。ま、今回は仕方がないってことで」
何はともあれ…これで終わりってことで…いいよな…?
あぁ…本当に…もう…。
「めっちゃ…疲れた…」
「クロウ君っ!? しっかりしたまえ!! クロウ君!!」
ゆ~ら~す~な~よ~…。
お前は私に気絶することすらも許さないってか~…?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
変な黒い靄に土砂ゾーンに飛ばされた後、そこで待ち伏せをしていたヴィラン達を一掃し、そのままセントラル広場へと戻ろうとした時、そのタイミングで相澤先生がやって来た。
なんでも、ここにオールマイトが駆けつけてくれて、あの場を任せてこっちに来たとのことだった。
先生に連れられる形で他の皆と合流し、広場へと戻って来た俺たちが目撃したのは…。
(これがトップ…プロの世界ってやつか…)
オールマイトと見知らぬ女とが一緒に黒いヴィランをUSJの外までぶっ飛ばした瞬間だった。
凄まじいなんて言葉じゃ言い表せないほどの圧倒的なパワー。
それと並んでいる、あの女は一体誰なんだ…。
というか…なんだ…この感じは…?
(あの黒い服を着た女…どこかで見たことがあるような気がする…?)
あんな奴は知らない…知らない筈…なのに…何故か他人のようには思えない…。
「本当に…とんでもない奴だよ…お前は…」
あの女を見ながら、相澤先生が感慨深そうに呟いた。
もしかして、知り合いなんだろうか。
「めっちゃ…疲れた…」
急に女が力尽きたかのように膝から崩れ落ちた。
それを見た相澤先生が血相を変えて走り出し、傍にいたオールマイトも必死に彼女に呼びかける。
「クロウ君っ!? しっかりしたまえ!! クロウ君!!」
「クロウ!! 死ぬな!! お前にはまだ聞きたいことや言いたいことが沢山あるんだ!!」
「勝手に殺すなぁ~…」
…意外と大丈夫そうじゃないか?
よく見たら…いや、よく見なくても、全身血だらけだ…。
あんな体で戦ってたのか…あの女は。
「…おい、半分野郎」
「ん?」
急に爆豪に話しかけられた。
半分野郎って俺のことか?
「あの黒い女…他のヴィラン共と一緒にいた奴だろ…。それがどうして、オールマイトと一緒に居やがるんだ…!」
「そうだったか?」
「覚えてねぇんかっ!」
「…すまん」
「ちっ!」
爆豪が言ったことが本当なら、あいつはヴィラン連合とやらの一員ってことになる。
だったらなんで、ここで他のヴィランと戦ってた?
もしかして…この場で裏切ったのか?
それとも…。
「あのネーちゃん…本当にヴィランなのかな…」
「どういう意味だ!? あぁっ!?」
「切島…?」
本当にヴィランなのか…か。
あんな光景を見ちまったら…俺にも分からなくなっちまうな…。
「だってよ…さっきオールマイトと一緒に戦ってた姿…俺にはヒーローに見えたんだよ…」
「んなわけねぇだろっ!! ちゃんと目ぇついてんのかっ!?」
「ちゃんとついてるけどっ!? 立派なのが二つ!」
「だったら、ちゃんと普段から洗眼しとけやクソがっ!!」
「罵倒されながら目の心配されたっ!?」
切島に怒ってるのか、心配してるのか、どっちなんだ…。
「オールマイト。一先ずは…」
「あぁ! クロウ君をリカバリーガールの元へ連れて行こう! 彼女…奴との戦いで相当に無茶をしていたみたいだからね…」
「見れば分かりますよ…」
「なんか…私抜きで話が進んでる…?」
「今は大人しくしとけ」
「相澤君の言う通りだ! 君は本当によく頑張ってくれた! 今はゆっくりと休むんだ!」
「あぅ~…」
完全に全身の力が抜けてやがる。
さっきまでの迫力はもうどこにもないな。
ともかく、これでもう終わりか。
そう思った時、非常に聞き覚えのある声がUSJ内部に響き渡った。
「1-Aクラス委員長! 飯田天哉!! 只今戻りましたっ!!!」
戻って来たか…やっと。
随分と待たせやがって…フッ…。
「ごめんよ皆。本当に遅くなったね。今すぐに動ける者達を一人残らず搔き集めてきた」
飯田の周囲には、沢山の先生たちが一堂に会していた。
B組の担任であるブラドキング先生の肩に校長先生も乗っている。
あの人(?)も来てくれたのか…。
知ってるのはパンフレットの写真だけで、こうして生で見たのは初めてだけど。
「…と言いたいけど、どうやらもう殆ど終わってしまっているみたいだね」
入り口付近にて完全に戦意喪失状態になっている、この場でさっきまで暴れていたであろうヴィラン達は大人しく先生たちに捕縛され、13号先生が先生たちに状況報告をしているみたいだった。
「…と言うことなんです」
「成る程ね…そんなことが。それにしても…」
校長の視線が、あの女の方に向いている?
「まさか、あの『クロウ』が助けてくれるとはね」
「校長は、あの子の事をご存じなのですか?」
「勿論さ! ああ見えて、彼女はこの国の裏社会じゃ、そこそこの有名人だからね!」
やっぱり…裏社会の人間なのか。
見た目からして普通じゃないとは思ってたが。
「ここに来た経緯はどうあれ、彼女が生徒達を守って戦ってくれたのは事実だ。この短い時間で相澤君や13号君、オールマイトの信頼も得ているみたいだしね。少なくとも、今この場で彼女をどうこうする理由はないのさ!」
どうやら、オールマイトたちの要望はちゃんと通りそうだ。
そこから先は…先生たちだけが知る…か。
少なくとも、生徒である俺たちが介入出来るのはここまでだろう。
(クロウ…か。覚えておくか…)
何故だか、そうしなくてはいけないような気がするから。
あと一話ぐらいでUSJ編は終わると思います。
因みに、後半部分は轟君視点です。
どうして彼なのか…その理由はまた追々ということで。