他の小説に現を抜かしたり大学が忙しかったりといろいろありました。
これもすべて乾巧ってやつの仕業なんだ。
そうこうしてる間にマイスが始まってしまう…
試験的に三人称っぽく書いてみました。
一人称の方が良かったら戻します。
「幸果さん、兄さん、連れてきたよ!」
そう言ってショウマが扉を開け、その後ろから二人の女性が入ってくる。
「お姉さんの栄美さんと、妹さんの葉奈さん」
「どうも、なんでも屋はぴぱれ社長の甘根幸果です!」
「バイトの麻田守です。よろしくお願いします」
ショウマがお寿司を食べに行った時に、二人の会話が聞こえたらしく、話を聞いてあげるためにはぴぱれまで連れてきたというのが事の顛末だ。
「えーっと、今日はお姉さんの栄美さんの彼ピが胡散臭いってことで合ってます?」
「別に胡散臭くはないんです…」
「そうなんです!っていうか、まだ会ったこともないのに彼氏とか言ってんですよこの人」
栄美の言葉を遮るように葉奈が話し始める。
「なるほど、ネットで知り合ったってことですか?」
「はい。SNSで告白されてオッケーしたんです」
「明日、相手の人と初めて会うんだって」
「でも、正直怪しいじゃないですか。だから、ロマンス詐欺じゃないかどうか調べてほしくて」
「ロマンス詐欺ですか…」
(確かに、前世でもそういうSNSを悪用した事例はニュースやネット記事で見たことがある。
特に、こういう優しそうな人や流されやすい人は騙されてしまいそうだ)
守は依頼内容を聞き、前世の記憶も交えながら逡巡する。
「だから大丈夫だって。お金も要求されてないんだし」
「お姉ちゃん、いいからスマホ」
葉奈さんがそう言うと、栄美さんはガサゴソとカバンの中身を探り、スマホを取り出す。
そして、俺たちにやりとりの画面を表示させた。
「えっと…この人です」
「これって…」
その画面に表示されていたのは送られてきた顔写真で、その顔は俺たちのよく知っている顔だった。
「辛木田さんだ!」
「ハンティじゃん!」
「絆斗!?」
どこからどう見ても、俺たちの知っている辛木田絆斗の写真そのものである。
「この人知り合いなの!?」
「やばっ。運命的…」
「辛木田さんが栄美さん騙してるってこと?」
「いやいや、ちょっと待って落ち着こ…登録ネームは『ニワ』って書いてあるし、顔が激似なだけかもしれない」
「顔写真なんていくらでも擬装出来るし、この人が絆斗っていう確証はまだないな…」
「じゃあ、この人とお姉ちゃんの会話見てみてよ」
そう言って葉奈は姉のスマホの画面を見せる。
そのトーク画面には、意味の分からない砂糖を丸ごとぶち込んだような言葉が連なっていた。
『こんばんわ、僕の愛しい人。待たせた分、今夜は君が眠るまで愛をささやき続けるよ…』
「「いや誰!?」」
『僕の心は砂漠も同然だった。そこへ栄美さん、君というオアシスが…』
「…なんの話してんの?こいつ。急に砂漠の話?」
「でしょ?キモいんだって」
「兄さん、大丈夫…?」
「こんなの絆斗じゃない…コンナノハントジャ…」
「大変だよ幸果さん!兄さんがうわごとしか喋らなくなっちゃった!」
幸果と葉奈が共感する一方、自分の知る絆斗とのギャップで風邪を引いた守は壊れてしまった。
「1ミリもハンティっぽくないけど…まあ確かに、うちらハンティのこと詳しくないし~?」
幸果はそう言って、笑みを浮かべる。
そして現実へと戻ってきた守が咳ばらいをしながら提案する。
「…ハッ!ゴホン…確かめるなら、本人に聞くのが一番早いでしょうね」
「よし。ここはサクッと本人呼び出しだー!」
幸果が決断してから、電話をかけるまでは一瞬だった。
「約束通り、本日付でお前たちを正式に解雇する」
「「待ってランゴ兄さん!」」
「もっとたくさん人間を仕入れるから!」
「だからクビだけは…!」
「ふん、そう言って、今まで状況が改善されたことがあったか?」
「「っ!それは…」」
ランゴは書類を整理しながら、ただ淡々と、事実のみを告げる。
例え家族相手でも使えなければ容赦なく切り捨てる。
それがランゴ・ストマックという男である。
「言っておくが、遊んでる暇はないぞ。お前たちにはそれぞれ、富裕層に嫁いでもらう。それくらいは役に立てるだろ?」
「!結婚しろってのか?どっかの知らねえ偉い奴と?」
「私たち離れ離れになっちゃうじゃない!」
「これもストマック家の立場を盤石なものにするためだ。覚悟を決めるんだな」
「「…」」
力でも、知識でも、この双子ではランゴには到底及ばない。
だからこそシータとジープは、その命令をただ飲み込むしかなかった。
幸果が絆斗を呼び出してから数十分、話題の渦中にいる男がはぴぱれに訪れた。
「ちわーっす。なんだよ社長、急用って…」
「はあ~!は、は、初めまして栄美です!すいません、明日お会いするはずだったのに…」
絆斗を見るなり、栄美は興奮冷めやらぬといった様子で絆斗に近づく。
その様相を見て絆斗は理解が追い付かないといった表情で栄美と距離をとっている。
「あの、えっと…大好きです!」
そして思わず抱き着こうとする栄美を躱す絆斗。
「ちょっとお姉ちゃん!」
「!…誰!?」
やがて栄美も落ち着き、トーク画面を見た絆斗が言葉を発する。
「…これは俺じゃない」
「「そうなんだ!」」
「……だよな。これが絆斗なわけ無い」
「そんな…」
その事実に栄美を除く一同は安堵し、一方栄美は落ち込んでいる。
「うーん、じゃあこの画像は何なんだろう?」
「ネットから拾ったんだろ。ライターの仕事で顔載せたことあるし」
「じゃあこのニワさんはやっぱり詐欺?」
「そう考えるのが妥当だろうな」
「まあ、詐欺じゃなくても、他人の写真勝手に使う時点でやめとけ案件ですかねえ…」
「ありがとうございます、おかげで助かりました」
葉奈は手を合わせて頭を下げる。
そして、姉である栄美をじっと見据える。
「お姉ちゃん。明日会っちゃダメだからね」
「う、うん…」
「この人とは終わりにしとくから…」
「…待った」
葉奈が連絡先を削除しようとしたそんな時絆斗が待ったをかけた。
「もうちょいそのままにしといてもらえます?」
「え?」
「その待ち合わせ…俺が行きます」
「どういうつもりだ?絆斗」
「勝手に人の写真使いやがって…お返しに取材して記事にしてやるんだよ!」
「!ぜひ!お願いします!」
「任せてください!」
そうして段取りを決めていく絆斗と葉奈をよそに、栄美はどこか思いつめたような顔をしていた。
そんな栄美の表情を、ショウマは見逃さなかった。
「…ショウマ、どうしたんだ?何か思いつめたような顔して」
「えっ?」
絆斗がニワと待ち合わせる当日。
はぴぱれで仕事をしている最中に守はショウマにそんな疑問を投げかける。
「…兄さん。やっぱり栄美さん、会いに行っちゃうんじゃないかな?」
「…ふむ」
「葉奈さんに何言われても、栄美さんはニワさんのこと信じてたし、俺ならきっと、自分で確かめたいって思うから…」
「なるほどな。確かに、ショウマの言うことも一理ある。それに、気になるなら確かめればいい。幸果さん」
「うん、とりあえず電話してみよっか!」
「兄さん、幸果さん…ありがとう」
幸果は依頼者のリストから葉奈の名前を探し、電話をかける。
「あ、葉奈さん!なんでも屋はぴぱれです。昨日はご依頼ありがとうござ…えっ?」
『気づいたら姉が居なくて。電話したらやっぱり待ち合わせに行くって…』
そんな連絡を聞き、幸果は電話をつなぎながら二人と顔を見合わせる。
「…どうやら予感的中みたいだな」
「!栄美さんが心配だ!」
「ああ、俺たちも行こう」
そうして道中で葉奈と合流し、喫茶店へ続く階段を上がっていく。
狭い階段の中、途中で急いで下る小学生とすれ違ったが、気にしている暇はない。
「わっ、ご、ごめんなさい…」
「…」
「次の階だよ、行こ」
やがて喫茶店のある階に辿り着き、一同はその扉を開ける。
「あっ!ハンティ!」
「…!何でお前らまで来てんだ?」
「絆斗、栄美さん来なかったか?」
「えっ?…いや、俺が来てからお前らが来るまで、1時間くらい誰も来てねえ」
「え?入れ違っちゃったのかな…」
「それって、ニワさんも来てないってこと?」
「マジで?待ち合わせ時間とっくに過ぎてんのに…?」
「お姉ちゃん電話繋がらない。電話切ってるのかも」
突然の栄美の消失、連絡の取れない状況、待ち合わせに訪れないニワ。
そんな不可解な状況の中、ショウマと守はある思考に至る。
「そうだ、階段ですれ違ったあの子!」
「ああ、何か見てるかもしれない。手分けして捜そう」
一方絆斗は、ある状況を思い出す。
(行方不明で電話がつながらない…!師匠の時と同じだ!)
「待ってくれ!俺も一緒に行く」
そんな守たちについていこうとする葉奈を、幸果は静止する。
「あっ!うちらで捜すから、葉奈さんはここにいて。栄美さん来るかもしんないし」
「…分かった。お願い!」
そして店を出た4人はバラバラに分かれて栄美を捜す。
やがて守は路地裏にて、先ほどの小学生を発見した。
「あっ、いた…」
しかし歩み寄ろうとした瞬間、物陰からエージェントが姿を現す。
「!」
守は反射的に姿を隠す。
そして小学生は懐からヒトプレスらしきものをエージェントに手渡そうとする。
(あれはランゴ兄さんのエージェント…止めないと!)
<ワッフル・オン!>
「変身!」
<ワッフル・ヴァルプシステム!>
ドン!という音と共にエージェントの足元に火花が散る。
エージェントが視線を向けたその先には、グラニュートハンター・ヴァルプが銃口をこちらに向けていた。
「その人プレスを返してもらう。そこのお前も、グラニュートだろう?」
「ちっ、噂のグラニュートハンターか!どこから嗅ぎつけやがった…」
「ほう、貴様がヴァルプか。実際に見るのは初めてだな」
「!」
守…いや、ディルにとって、その声はあまりにも聞き覚えのある声だった。
聞き間違えるはずもない。
威圧感のある、自身の兄の声。
「ランゴ…」
その姿を見て、守はポツリと呟いた。
シータ&ジープvsグルキャンとダンスの女の子エピはパスさせていただきます。
理由はディルを絡ませる展開が思いつかなかったからです。
最後のチャンスを提案する間もなく解雇される双子が若干可哀想ですが、まあ作者の頭の中では整合性が取れるのでこのまま進行します。
原作11話をすっぽり収めることはできなかったぜよ…