ようやくヴァルプ戦闘第二弾でございます。
あの紫色の戦士を見てから一週間。
エージェントの捜索も空しく彼を発見することはできなかった。
結局あれはショウマだったのか、未だに分かっていない。
仕事を終え、俺は物思いに耽りながらはぴぱれに帰還した。
「ただいま、幸果さん。」
「あっ、お帰り、マモルン。今お客さんが来てて...」
「へぇ、依頼人ですか?」
「いや、そういうわけじゃなくて、拾った...的な?」
「...事案とかじゃないですよね?」
「違うって!行き倒れてたところを介抱したの!今シャワー浴びてる。」
俺は帰ってくるなり幸果さんに事情を説明される。
まあ困ってる人はすぐ助けるからな、幸果さんは。
そう思っていると奥のシャワー室の扉が開いた。
「え?」
そしてその瞬間、俺は思わず口を開けてしまった。
だってシャワー室から出てきたその青年は...
「...ショウマ?ショウマなのか!?」
「えっ...?もしかして...ディル兄さん...!?」
まさかの、ショウマであった。
偶然にもほどがありすぎないか!?
「あれ、二人とも知り合い?てかディルって...?」
「あ、あー...」
しまった、こんなところで本名じゃないのが裏目に出るとは...
言い間違い...じゃ無理だな。守とディルじゃあまりにも違いすぎる。
「...ごめんなさい、幸果さん!実は守って本名じゃないんです!」
「えー!?そうだったの!?」
俺は観念して白状する。
きっとこっちの言い訳の方がマシだと思う...多分。
「本当はディルって名前なんです。でも、訳あってこの名前は使いたくなくて...だから嘘をついたんです!本当にごめんなさい!」
「いや別に怒ってないし。マモルンがその名前嫌だって思うならこれからも守って名乗ればいいし。それにウチにとってはもう、マモルンはマモルンだし!」
「幸果さん...」
やっぱ幸果さんってこの世の光だ...
こんな寛大で優しい人、前世の記憶を洗ってもそうそういない。
「てか兄さん呼びってことは、もしかして兄弟?」
「そうなんです。腹違いですけど...」
「うわっ、また複雑な感じだ...」
「えっと、ディ...守兄さん。」
「慣れないうちはディルでいいよ。人前ではちょっと気をつけてくれればいいから。」
「...ありがとう、ディル兄さん...おお~!」
ショウマは机の上に広げられた食べ物に目を光らせる。
「あ、そうだった。テキトー買ってきたから、テキトー食べて。」
「いただきます!...う~まっ!」
「えーっ?普通グミからいく?」
幸果さんはその様子を見て少しあきれたような笑いを見せる。
(ショウマ、向こうではろくに食べ物も食べれてなかったもんな...)
グラニュートの食生活は人間とは全く異なる。
グラニュート界の料理を人間が食べるのは不可能だったため、その辺の雑草などを食べさせられていた。
俺はその様子を見ても、人の口に合う料理を作るための食材がなかったため何もできなかった。
だからこうしてショウマが美味しそうに食事をしているところを見るとつい嬉しくなってしまう。
「ねぇ、これポテトチップってやつじゃない!?」
「えっ、うん。」
「...うまっ!」
特にお菓子を見るショウマの目はキラキラと輝いている。
きっとみちるさんがお菓子好きだった影響だろう。
時々ショウマたちの部屋の様子を伺っていたが...
「はあ...ポテトチップ食べたい...」
と、みちるさんがお菓子を思い出してよく呟いていた。
そういえば、みちるさんは一緒じゃないのか?
ふと、疑問が頭をよぎる。
「弁当もポテトチップも初めてって...家が相当厳しかった感じ?」
「あー、うん、そんな感じ。」
「それでショウマもマモルンも家出したってことか...」
(まあ当たらずとも遠からずだけど、納得しているようだしこのままでいいか...)
そんな折、幸果さんの携帯電話が鳴った。
「あっごめん。ちょっと電話してくる。」
そう言って幸果さんは外に出ていった。
聞くなら今か...
「なあショウマ。一週間前にグラニュートと戦ってた紫色のやつ...あれはショウマか?」
「...うん、そうだよ。...ってか見てたの!?」
「途中からだけどな。街中をバギーで疾走してたあたりから。ショウマ、戦えるようになったんだな。」
「うん、こっちに来てお菓子を食べてから、眷族を生み出せるようになって、その力であのグラニュートと戦ったんだ。」
そう打ち明けるとともにショウマのポケットや周りからマスコットのような生物?がたくさん出てくる。
「これがショウマの眷族...なんか可愛いな。」
それにくらべてうちのエージェントは可愛げがない。
命令を遂行するだけのいわば人形のようなものだ。
そして俺は核心を突く質問をする。
「...みちるさんはどうした?一緒じゃないのか?」
「あっ...」
その言葉を聞いて、ショウマは俯いて固まってしまう。
「すまん、答えたくないなら無理に答えなくていい。」
「いや、話すよ。母さんは...死んだよ。父さんが死んで、その後母さんはランゴ兄さんたちにヒトプレスにされて、闇菓子の材料に...それで、俺だけ生き残って...」
「っっ!そうか...」
考えてはいた。みちるさんが亡くなっている可能性があるかもしれないと。
ただいざ聞くと堪えるものがある。
みちるさんは実の母じゃないし、あまり接点はない。
それでも、元人間として、勝手ながら同情していた身としてはつらかった。
兄さんたちがみちるさんやショウマをよく思っていないことは知っていた。
これは推測でしかないが、ランゴ兄さんあたりが父さんを殺して、ストマック社の実権を握ったのだろう。
もともとランゴ兄さんと父さんの仲はすこぶる悪かったから。
でも、俺は舐めていたのかもしれない。
闇菓子に染まったストマック社がどれほど堕ちてしまったのかを。
俺は次の瞬間、思わずショウマを抱き留める。
「ディル兄さん!?」
「ごめんっ、ショウマ!お前がつらいときにそばにいてやれなくて...勝手にストマック社に失望して、ショウマを残してあの家を去って...!俺、お兄ちゃん失格だ...」
「そんなこと、ないよ。ディル兄さんはあそこにいたとき、たった一人、俺たちに優しく接してくれた。それだけで、嬉しかったんだ...」
「...ありがとう、ショウマ。」
そのショウマの言葉で、少し救われた気がする。
やがてショウマを離すと、ちょうど電話が終わったのか、幸果さんが帰ってきた。
「あれ?幸果さん、どこか行くんですか?」
「うん、引っ越しの手伝い。友達の友達に頼んでたんだけど、ドタキャンされたってヘルプ来た。」
「うわぁ、中々ですね。俺も行きましょうか?」
「それ、俺も手伝っていい?お菓子のお礼。力仕事なら、役に立てると思う。」
「えっ!マジ!?2人とも助かる〜!」
こうして俺たちは引っ越し作業のヘルプをすることになり、俺とショウマがグラニュート由来の怪力を披露したことにより瞬く間に作業が終わった。
そして俺たちは依頼人の律さんと共に引っ越し蕎麦を、ショウマはポテチを食べていた。
「うまっ!」
「引っ越しポテトチップって...ウケる!」
「それな!」
「ショウマ、本当にお菓子気に入ったんだな...」
本当に、よく美味しそうに食べる。
みちるさんを失った悲しみはなくなるわけじゃない。
でも、これからは人間界で幸せに生きてほしいと、俺はそう願っていた。
仕事を終えた俺たちははぴぱれに帰還した。
「はいこれ。少ないけど、バイト代。」
そう言って幸果さんはショウマにバイト代を手渡す。
「えっ、いいの?」
「爆裂助かったもん。家出資金家出資金!」
「...ありがとう。」
「ハハッ!お菓子の時とのテンションの違いな!ホントお菓子好きなんだね。なんか理由あんの?」
「...亡くなった母親の影響かも。昔、自分が食べたおいしいものの話をたくさんしてくれたんだ。特にお菓子の話はすっごく幸せそうで、聞いてるだけで、俺もめちゃくちゃときめいたんだよなあ。」
「ショウマ...」
「...」
その話を聞いた幸果さんはノートとペンを取り出してショウマに手渡した。
「はい、これもあげる。」
「えっ?」
「おいしいものノート!食べておいしかったものとか、食べてみたいもの。忘れる前にバーっとかいとくといいよ。そしたらあとで読み返した時、なんと、また幸せになれる!」
「そうか...。それいいな!ありがとう、幸果さん!」
「...あっ!ねえウマショーさあ...」
「ウマショー?」
「幸果さんは親しい人をあだ名で呼ぶんだ。あまり気にしないほうがいい。」
「う、うん...」
「行くとこないならここいればいいじゃん!あっ、でも兄弟だし、マモルンのとこのほうがいい?」
「いや、正直俺の住居にもう一人が住む余裕はないですね。幸果さん、俺からもお願いします。」
さすがにあの洞窟でもう一人が生活するスペースはない。それにショウマに不自由を感じてほしくないからな...
「い、いいの?迷惑なんじゃ...」
「うーん...うち、名前に『幸せ』って付いてるからさ、みんな幸せなのがいいと思うんだよね。」
「みんなが?」
「うん。なんでも屋もさ、それで始めたんだよね。困ってる人手伝えたらなあ、とかって。っつても、お金もらってるんだけどね!アハハッ!自分語りやばっ。」
「...やばくないよ!さっきのりっつんさん、すっごく嬉しそうだった。あの幸せも、幸果さんが助けたんだよ。かっこいいよ!」
「そうそう、幸果さんはもっと自信持っていいですよ。みんなのこと、ちゃんと幸せにしてるんですから。」
「フフッ...ありがとう。」
こうして、ショウマははぴぱれに住むことになり、夜も近いので解散となった。
「まったく、デンテおじさんったら人使い荒いんだから...いや、俺グラニュートだし、グラニュート使いか?」
その夜、俺はデンテおじさんに頼まれてお菓子を買いに街へ再び赴いていた。
そんな時、俺の視界に見覚えのあるものが入った。
「あれって、ショウマの眷族...?それにショウマも。」
地面を駆け抜けていくショウマの眷族と、それを追いかけるショウマの姿があった。
「なにかあったのか?」
そう思った俺はショウマのことを追いかける。
そうしてたどり着いたのは、いろんなものが置かれている廃倉庫だった。
「はぁ、はぁ...」
「ショウマ!」
「ディル兄さん!?どうしてここに...」
「街でお前を見かけてな。それで...」
俺とショウマは同じ方向に目線を向ける。
その先には、ヒトプレスにされた律さんを手に持つ男の姿があった。
「お前、ストマック社の手先だな。」
「はあ、何度懲らしめても懲りないな...」
「なんだ?お前ら。」
「りっつんさんを返せ!」
「あっ、焦るなショウマ!」
「これか?嫌だね!」
その言葉と共に目の前の男はミミックキーを外し、グラニュート体となる。
そして特攻したショウマをその触手で弾き飛ばした。
しかしショウマは素早く受け身をとり、着地する。
「大丈夫か、ショウマ!」
「うん、ありがとう。ディル兄さん。」
「俺もいることを忘れるな。二人でやるぞ。」
<ヴァルプニルギア!>
俺は懐からヴァルプニルギアを取り出して腰に装着する。
「なんだそれは...?」
「えっ、ディル兄さんも変身するの!?てっきりグラニュート体で戦うのかと...」
「ああ、グラニュート体で派手に暴れると兄さんたちに見つかるかもしれないからな。」
「そっか、確かに。」
それに、せっかくデンテおじさんと作り上げた戦闘システムだしな。
「いくぞ、ショウマ。」
「うん、ディル兄さん。」
そして俺はアイテムをベルトに、ショウマは眷属をガヴに装填する。
<グミ! EAT グミ! EAT グミ!>
<ワッフル・オン!>
俺の周囲をワッフルが、ショウマの周囲をグミが包んでいく。
ショウマは左手を左目に、俺は右手を右目に添え...
「「変身!」」
<ポッピングミ・ジューシー!>
<ワッフル・ヴァルプシステム!>
俺とショウマは変身を完了させた。
「紫の方は知らねえが、茶色っぽいお前。さては話に聞くグラニュートハンターだな?」
「ああ、俺がグラニュートハンター・ヴァルプだ。」
「「ハアッ!」」
「ぐはっ!」
俺とショウマは同時に拳を突き出し、グラニュートを後方へ吹っ飛ばす。
<ヴァルプスラッシャー!>
そしてショウマはガヴから赤いブレードを、俺はベルトのシステムでヴァルプスラッシャーを生成する。
「ハッ!」
「そらっ!」
「ぐっ...!」
俺とショウマは交互に剣戟を繰り返し、グラニュートを斬り刻んでいく。
「く、くそっ!闇菓子を喰いたいだけなのにこんな奴らに目をつけられるなんて!せっかく幸せそうな
「ふざけんな!人間は...お前らに食われるために幸せになるんじゃない!」
グラニュートの言葉にショウマは激昂し、グラニュートを押し倒して胸ぐらをつかむ。
「どけ!」
「ふっ、タアッ!」
「俺も忘れんな...よっ!」
「ガハッ!?」
ショウマを押しのけたグラニュートだが、ショウマの蹴りに後ずさり、俺がその隙を斬りつける。
その反動でヒトプレスにされた律さんが宙を舞い、それをショウマがキャッチした。
「ほっ。よし。」
「てめぇ...返しやがれ!」
その瞬間、グラニュートの触手が自在に伸び、周囲を無差別に攻撃する。
「ぐっ!?」
「ショウマ!」
「大丈夫!」
俺たちはその攻撃から逃れるために走り出す。
そして俺たちに並走して乗り物のようなものに乗ったショウマの眷属が話しかける。
「イートスナック!イートスナック!」
「よし、頼む!」
ショウマはその眷族を拾い上げ、ガヴに装填。
<スナック!EAT スナック!EAT スナック!>
走りながらそのレバーを回していき、振り返りざまにガヴについているボタンを押した。
ショウマの周りをポテトチップスが漂い、それはガヴに吸い込まれていく。
先程の紫色の装甲とは打って変わり、ポテチのような黄色い装甲をまとった。
<ザクザクチップス・ザックザク!>
「二刀流か!ハッ!」
ショウマは生成されたポテチの双剣を触手に向かって振りかざすが、その刀身はいとも簡単に壊れてしまった。
「えっ?うわっ!」
「大丈夫か!?セイッ!」
「うっ...なんで?」
「オラッ!」
困惑するショウマに向かってさらに触手が伸びていく。
俺も迎撃してはいるが、すべてを斬り落とすことはできなかった。
しかし、ショウマは咄嗟に再生成された刀身を前にクロスすると、触手はあっさりと切断された。
「イタッ!」
「斬れた...?」
「ショウマ、もしかして角度じゃないか?」
「角度...?」
ショウマは困惑しながらも近くの棒を試し斬りしていく。
「フンッ!あっ...フッ!おお...なるほど!」
「よし、いくぞショウマ!」
「うん!」
俺とショウマは迫りくる触手を切り刻んで進んでいく。
そしてグラニュートのもとまで辿り着き、斬撃を喰らわせた。
「「ハアッ!」」
「ぐわっ!うう...ん?どこ行った...?」
やがて立ち上がったグラニュートの頭上の足場から俺とショウマは刀身をグラニュートに向け、ショウマは問う。
「どうする?二度と闇菓子に関わらないか、この場で俺に...いや、俺たちに倒されるか。」
「バカか。闇菓子をやめられるわけないだろ。」
「...分かった。」
「なら、遠慮はいらないな。」
その問いは、俺が何度もしてきた問いだ。
しかし、命の危機だというのに、闇菓子をやめるというやつは一人もいなかった。
その現実は、闇菓子がどれだけ凶悪なものであるかを突きつける。
問いの答えを確認した俺たちは足場を降りるとともにグラニュートを斬りつけた。
「「ハッ!」」
「うわっ!ああっ...!」
<CHARGE ME!CARGE ME!>
<セット・ワッフル!>
ショウマはガヴのレバーを回して、俺はベルトのアイテムをヴァルプスラッシャーにセットして必殺技の構えに入る。
<ザクザクチップス・フィニッシュ!>
<ワッフル・スラッシュ!>
「ウオオーッ!ハッ!」
ショウマが刀身を砕くと刀身の破片は宙を舞い、緑色の粉塵と共にグラニュートを切り刻む。
「うあああっ...!ああっ...!」
グラニュートは負けじと触手を伸ばすが、まだ周囲を舞っていた刀身に切り刻まれる。
そして俺とショウマは同時に踏み出し、一閃を喰らわせる。
「「ハアーッ!」」
「うわああああっ!」
俺たちの攻撃に耐えきれず、グラニュートは爆散した。
「りっつんさん...」
「あっ、ショウマ、ちょっと待っ...」
俺はショウマを静止しようとしたが、それよりも先にショウマはヒトプレスにされた律さんを解放した。
「えっ、えっ!?何何何何!?バケモノ!?二匹も!?何!?」
「あちゃ...」
案の定、律さんは俺たちを見て取り乱してしまった。
「あっ...怖がらせてごめん...。これからも、バケモノには気をつけて。」
「...」
少しシュンとした様子のショウマを横目に、俺は無言になりつつも、一旦その場を去った。
やがてしばらく離れたところで、俺たちは変身を解除する。
「早く解放してあげたい気持ちはわかるけど、怖がらせちゃうから次からは気をつけたほうがいい。」
「う、うん。気をつけるよ...」
ショウマは見るからに落ち込んでしまった。
ちょっと強く言い過ぎたか?
そう思った俺はショウマの頭を撫でる。
「うわっ!?ディル兄さん!?」
「よくやったなショウマ。おかげで律さんは助かった。」
「...うん!」
(今この瞬間は、兄弟らしくなれたのかな)
と、俺は密かにそう思うのであった。
ディルの変身ポーズはショウマの逆バージョンの構えをとってからレバーを降ろすって感じです。
ヴァルプスラッシャーは今のところ変形とかはないです。
必殺技の時は刀身と柄の間に小さなワッフルメーカーみたいなのがついてて、そこにゴチゾウなどをセットする感じです。