転生先はストマック家でした   作:白豆男爵

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5.チョコレートな後輩、現る!?

「さっきはごめん、デンテおじさん...」

「いいんじゃいいんじゃ、元々悪いのはわしらじゃからな」

 

シータとジープから無事に逃げ切った後、俺はショウマと合流したが、既にエージェントを撃破していたようで、一旦デンテおじさんのところまで戻っていた。

 

「俺にも、力を貸してくれる?」

「もちろん、可愛い又甥のためじゃ!」

「ありがとう!」

 

ひとまず二人は仲直りできたみたいだけど、俺は俺で絆斗の言葉が頭の中を反芻していた。

 

『バケモノからみんなを助けた...仮面ライダーだ!』

「仮面ライダー、か...」

 

その単語には聞き覚えがあった。

この世界ではなく、前世の世界で。

単語を知っているだけで詳しく知っているわけではないが、どうやら俺は前世で創作物とされる世界に転生したらしい。

実は俺がしてきた選択も、決められた運命で、ストーリーによって定められた既定路線だったのだろうか...?

 

「どうかしたの?ディル兄さん」

「ショウマ...いや、何でもない」

 

しかしショウマたちの顔を見て、俺は深く考えるのをやめた。

創作物とか、ストーリーとか、そんなものは関係ない。

俺はもう、この世界に生きる住人の一人なのだから。

俺はこの世界で、ディル・ストマックとして生きるだけだ。

 


 

「し...師匠...?」

 

仮面ライダーに出会った翌朝、俺の代わりに張り込みに行ってくれた師匠を探すため、俺は張り込み現場の周辺を散策していた。

すると張り込みに適していそうな場所に師匠の持ち物が散乱しており、その近くには圧縮され、真っ二つになった師匠が落ちていた。

 

「ちょっ...ちょっと待ってくれよ...」

『無理すんな!割れると死んじゃうから!』

 

俺は仮面ライダーに言われた言葉を思い出す。

ってことは師匠は...

 

「信じねぇぞ...信じねぇぞ!」

 

俺は叫びながら走り出した。

目的地は決まっている。

酸賀の研究室だ。

 

「おい、酸賀!おい!起きろ!」

「おお、びっくりした...絆斗くん?」

「これ見ろ。見てくれ!」

「何?何...?」

 

俺は酸賀を叩き起こし、酸賀は不機嫌そうに起き上がりながら眼鏡をかける。

そして酸賀に真っ二つになった師匠を見せる。

 

「これは...」

「まだ助かるんだろ?あんた助けられるよな?なあ!?」

「...無理だね」

「ふざけんな...あんたグラニュート博士だろ!」

 

俺は思わず酸賀に八つ当たりする。

本当はもう分かってる。

いくらなんでも師匠を助けられないことくらい。

でも、今の俺はそれに縋るしかなかった。

 

「君の知り合い?」

「師匠で...恩人だ」

「それは気の毒だったね」

 

酸賀はそんな、どこか淡白な返事をする。

それもそうだ。

酸賀にとって、師匠は赤の他人でしかないのだから。

 

「母ちゃんがグラニュートに攫われて、育ててくれた婆ちゃんも死んで...一人で荒れてた俺を気にかけてくれたのが師匠だったんだ。」

「...」

「なんで師匠なんだよ...なんでまたグラニュートなんだよ!」

 

俺は目の前にあった机を蹴り飛ばす。

俺の心はもうぐちゃぐちゃだった。

 

「復讐...したい?」

「えっ?」

「手がかりはある。君の師匠の欠片を調べたところ、キノコの粘液に近い成分が検出された。粘液はグラニュート全般の持つ特徴ではない。故に、犯人は絞られる。そして、グラニュートを倒すすべもここにある」

 

酸賀はそう言いながら机の上にある銃のようなものを持ち上げる。

 

「どういうことだよ?」

「この前言っただろう?俺はグラニュートを退治する方法を研究してるって。つい昨日、それが結実したんだ!」

「本当かよ!」

「ああ、サンプルを拝借できたおかげで一気に捗った。そう!これを使えば君も仮面ライダーと同等の力が手に入る」

「その銃が...」

「ただし、これを扱うためにはグラニュートに匹敵する力をその体に宿さなければならない」

「はあ?んなのどうやって...」

 

酸賀は俺の疑問に答えるように、冷凍ボックスのような箱からあるものを取り出した。

 

「これを体内に埋め込む。グラニュートにしかない、グラニュート特有の体液を生成する器官だ」

「はあ?んなもん体に入れて平気なのかよ?」

「分からない。俺はまだ試したことがないからね」

「...あんた、俺を実験台にしたいんだ」

「君はグラニュートに復讐したい。俺はグラニュート退治の技術を研究したい。ウィンウィンだと思うけど?」

「...ふざけんな!」

 

俺は酸賀の提案を呑むことなく、その研究室を去った。

 


 

「じゃあうち帰るから」

「はい!」

「お疲れ様です、幸果さん」

「マモルンも、遅くならないうちに帰りなね。あっ、ウマショーは外出るときは戸締りね」

 

幸果さんはそう言ってはぴぱれを出て行った。

 

「そうだ、今朝幸果さんがね、俺の眷属たちに名前を付けてくれたんだ!ゴチゾウっていうんだけど...」

「ゴチゾウか...いいなそれ。てか幸果さんに名付けてもらったって...」

「えーっと、おもちゃって認識してたから、多分大丈夫」

「そうか、ならいいんだけど」

「それと、ゴチゾウたちにも町のパトロールをやってもらうことにしたから、兄さんの眷属を少し減らしてもいいかも」

「うん、ゴチゾウの方が目立たないし、その方がいいだろ。あっ、デンテおじさんがゴチゾウについて研究してみたいって。俺の変身システムに応用できるかもしれないってさ」

「本当!?俺がディル兄さんの力になれるなら、喜んで!ゴチゾウたちも、いいよね?」

 

ゴチゾウたちはショウマの言葉に賛同するように騒いでいた。

本当に可愛いなこいつら...

 


 

俺は一人で雨の中、石のベンチに腰かけていた。

ここはあの日、母ちゃんがグラニュートに攫われた場所だ。

俺は師匠に拾われた時のことを思い出していた。

ツンケンした態度の俺を拾って優しくしてくれて、記事を書くことに自分なりの信念を持ってて、俺にもできるかなと口にしたときは、笑いかけながら『やってみるか?』と肯定してくれた。

あれを埋め込めば、戦う力が手に入る。

でもその代わり、何が起こるか分からない。

人間じゃなくなるかもしれないし、最悪死ぬかもしれない...

そう思ったときには、俺はある人物に電話をかけていた。

 

『もしもし、絆斗?どうしたんだよ、こんな夜更けに』

「ワンコールで出るとか、お前暇かよ」

『だって友達の電話だし。それに、絆斗は意味もなく電話なんてかけないだろ。何かあったのか?』

「...なあ、守。もし、家族の仇を討てる力が目の前にあって、でもそれを手に入れたら何が起こるか分からないとしたら...お前はどうする?」

『なんだよ急に』

「例え話だよ。いいから聞かせてくれ」

『そうだな...俺だったら迷わず手に入れると思う。俺にとって家族は、それくらい大切な存在だから』

「そうか...」

『でも、その場面に出くわしているのがもし絆斗だったら、俺は絆斗にはそんな真似して欲しくないって思うかな』

「えっ?」

『だって、絆斗は俺の友達だから...危ない目には遭ってほしくない』

「ははっ、なんだよそれ...ありがとな、話聞いてくれて。じゃあな」

『ああ、お休み、絆斗』

 

そうして俺は通話を切った。

途中の会話の節々で、守が俺を心配してくれているのが分かった。

でも、俺の決意はもう固まった。

 

「ごめん、守。それでも俺は...!」

 

師匠や母ちゃんの仇を討つためだけじゃない。

大切な友達を守る力を、大事な人をもう失わないための力を手に入れるため、俺は再び酸賀の研究室に向かった。

 

「おっかえり~。答えは決まったかな?」

「好きにしろよ。この先何があろうと、絶対にグラニュートをぶっ倒す!」

 

そこから酸賀によるグラニュート器官を埋め込むためのマッドな手術が始まった...

 


 

「待て!」

「逃がさねえぞ!」

 

俺とショウマは、街中でマジシャンを装っていたグラニュートを追いかけていた。

まさか消失マジックと銘打ってヒトプレスを集めるとはな...趣味が悪い。

 

「もう、何なんだよお前ら!しつこいな!」

「これ以上好き勝手やらせるか!」

<グミ!EAT グミ!EAT グミ!>

<ワッフル・オン!>

「「変身!」」

<ポッピングミ・ジューシー!>

<ワッフル・ヴァルプシステム!>

「お前、噂の赤ガヴとヴァルプだな!」

「どうする?二度と闇菓子に関わらないか...それとも、「俺たちに倒されるか!」」

「う、うるせえ!お前らの命を手土産にしてやらあ!」

「「ハアッ!」」

 

向かってきたグラニュートに対し、俺とショウマは同時に斬撃を喰らわせる。

 

「うわーっ!」

「うおおお!」

「くそっ、これでどうだ!?」

 

接近する俺とショウマに対し、グラニュートはブレイクダンスのように回転した。

 

「くっ、近づけねえ!」

 

相手に近づけず苦戦していると、スナックのゴチゾウが俺の肩に乗ってきた。

 

「使えって...?オーケー、任せた!」

<バレットモード!>

<セット・スナック!>

 

俺はスナックのゴチゾウをヴァルプスラッシャーにセットする。

 

「行っけえ!」

<スナック・バレット!>

 

俺が弾丸を発射すると、着弾と同時に緑色の粉塵が舞い、それはグラニュートの回転の中に吸い込まれていく。

 

「イテッ!?いだだだだだだ!?」

「よし!」

「ナイス、兄さん!俺も!」

<キッキングミ!>

<CHARGE ME!CHARGE ME!>

「これで終わりだ!」

<キッキングミ・キック!>

 

そしてショウマは必殺技を繰り出した...のだが、

 

「ハアーッ!...うわっ!?」

「あれっ...?」

 

グラニュートの頭への蹴りはツルっと滑り、不発に終わってしまった。

 

「大丈夫か!」

「ハハハハハ~!間一発。粘液のおかげで助かったぜ~!」

「粘液?」

「もしかして...なめこ?うわあ、ネッチョネチョ...」

 

ショウマが足に纏っているオレンジ色のグミはなめこの粘液でネチョネチョになっていた。

 

「こんなこともできるんだぜ?」

「これは...胞子?」

「スリー、ツー、ワン...ドーン!」

「「ぐわっ!?」」

 

その言葉と共に胞子は一斉に爆ぜ、大爆発を起こした。

 

「あっ...逃げられた!」

「ちっ、追うぞ!」

 

俺たちは立ち上がり、グラニュートの追跡を開始した。

 


 

「ああ...ちょっと休憩...」

 

手術が終わり、おぼつかない足取りのまま、俺はグラニュートに向けて銃弾を放った。

 

「うわあーっ!だ、誰だお前!」

「これはお前の仕業か?」

 

俺は目の前の、キノコのような見た目をしたグラニュートに問う。

 

「んっ?ああ、そうだ。それがどうした?」

「...話は終わりだ。ぶっ倒す!」

 

目の前のこいつが、師匠の仇...!

俺はポケットから仮面ライダーのお供を取り出す。

 

「力を貸せ!」

<チョコ!SET チョコ!SET チョコ!>

 

俺は銃の上下についているレバーを前に持って行き、地面に向かってトリガーを引く。

 

「変身!」

<チョコドン・パキパキ!>

 

俺はついに、仮面ライダーと同じように、変身を遂げるのだった。

 


 

「あいつは...?」

「えっ...誰?」

 

グラニュートを追ってきた俺とショウマが見たものは、思いもよらない光景であった。

チョコを身に纏ったような何者かが、俺たちの追っていたグラニュートを打ち上げ、そのまま射撃体勢に入っている。

 

「くらえーっ!」

<チョコドン!>

「うわあああーっ!?」

 

そのチョコの弾丸を諸に喰らったグラニュートは屋根の上に転がり落ちる。

 

「赤ガヴとヴァルプの他にも邪魔者がいるなんて聞いてねえぞ...!」

「だろうな。生まれたてだ」

「ぐああーっ!」

 

その会話を最後に、グラニュートは爆散した。

 

「倒した...」

「あいつ、一体...?」

 

俺たちと同じような力...?

グラニュートなのか?

 

俺たちはその疑問を解決するため、そいつを追うことにした。

やがて建物の屋上に辿り着く。

俺は即座に銃を構え、奴に質問した。

 

「お前、何者だ?」

「ちょっ、俺は...あんたらの後輩みたいなもんだ」

「後輩...?」

「じゃあ、君も改造されてその力を?」

「ああ」

 

ショウマと同じく改造されてこの姿に...?

見たところ、銃で変身しているみたいだが...

 

「悪いが、お互い詮索はナシでいこうぜ。分かるだろ?秘密を知る者は少ない方がリスクが低い。」

 

目の前の後輩?は俺たちに向かってそう提案する。

 

「じゃあ一つだけ。君は人間に危害を加えない?」

「俺の狙いは、人間を食い物にするグラニュートどもだ」

「なるほど...分かった。これ以上は俺たちも聞かない。」

「チョコレートくんは、いいやつだね。」

「チョコレートくん?俺が!?」

「なあ、流石にチョコレートくんは...」

「えっ?違った?」

「...俺のことは、ヴァレンとでも呼べ」

「ヴァレンか。分かった」

 

ヴァレン...由来はバレンタインとかか?

まあそんなことはいいか。

 

「あんたらは?そっちの紫の先輩は...アカガヴでいいのか?」

「...ガヴだ。アカはいらない」

 

赤ガヴは嫌だったのか、即座にガヴに訂正するショウマ。

...あんまり変わってない気がするけど。

 

「俺はヴァルプだ。よろしくな、ヴァレン」

「じゃあ、またどっかで会うかもな。ヴァルプ先輩、ガヴ先輩」

 

そう言ってヴァレンは俺たちと別れる。

とりあえず、これっで様子見ってところか。

今この瞬間、お互いの正体も知らない、奇妙な共同戦線が張られたのだった。

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