私の妻が人外過ぎて地球がヤバイ   作:ちゅーに菌

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注意:このケリィは親友の話をしているため、本人も気づかぬうちにかなりテンションが上がっております。


呪術師の本気

『そうか……数年所在不明だったアイツも参加しているのか…』

 

アイリスフィールが超小型携帯電話という謳い文句が売りの携帯電話を彼女の夫……衛宮切嗣は電話越しにそう呟いた。

 

だが、切嗣の声はいつもより幾らか弾んでいるようだと感じ、アイリスフィールは首を傾げたが、指摘する事はなかった。

 

「ええ、そうよ」

 

『最悪のシナリオだ……アイツには起源弾の効き目も極めて薄い』

 

起源弾は手早く言えばMP分のダメージをHPに与えるようなものだ。どう考えてもHPがMPを越えすぎている相手には効き目が薄いのである。

 

まあ、それ以前に大半の代行者を遥かに越える機動力を持つ彼に当てられるのかという話も絡んでくるのだが、それは置いておこう。

 

「後、執行者時代は使えない部下は次々と戦場で捨て駒にする安心と信頼の実績を持っていたそうね」

 

切嗣のように手段を選ばない人なのだろうと、アイリスフィールは考える。切嗣よりは数段外道だが。

 

だが、それを聞いた切嗣はアイリスフィールの言葉を否定した。

 

「違うの?」

 

『確かにアイツは執行者として使えない者は使い捨てる事で有名だった。だが、それは言葉通りの意味とは違う』

 

そう言うと切嗣は言葉を区切り、再度話始めた。

 

『アイツは魔術師の貴族や名家と言うものがとてつもなく嫌いでね。執行者として貴族が来る度に嫌み混じりに人一倍注意と引き際を呼び掛けるんだ。でも、大概逆効果で、それに怒ったプライドの高いが彼の言い付けを守らず無茶な深追いをして死ぬ。それだけの話だよ。後、彼は自分の言葉を守らないものは一切助けようとしないのも拍車を掛けている。2~3度、そんな魔術師が死んだときにその家に魔術刻印を返しに行くのを同行したことがあるんだけどいつも同じことを言っていたよ』

 

切嗣はそれの言葉を思い出し、何か考えるところがあったのか溜め息のような声を漏らしてから会話を再開した。

 

『"あなた方のお子さんは執行者としては最高に使えないクズでした"とね。そんなことをいつも言って、自分を誰よりも悪者のようにしているから使い捨てるとか周りから言われてたんだよ』

 

「じゃあ、彼は本当は好い人…」

 

『いや、それはない』

 

切嗣はキッパリと言い切った。

 

『確かにそういう者に対しては人一倍注意と引き際を呼び掛けてはいたが、嫌みだって本気で言っていた。あれは確実に頭に血を上らせようとしているようにしか見えない。彼は根っから、プライドと家だけお高い魔術師が執行者に来るのを嫌がっていたからね。死因の四割は彼のせいだよ間違いなく』

 

「そ、そう……」

 

『でも敵にした場合、彼の最も厄介な所は残虐性でも、戦闘力でもない。"異常なまでの生存能力"。それと"とてつもなく目が良い"事だよ』

 

「生存能力と……目が良い?」

 

『そうだ。生存能力はさっき、引き際を呼び掛けると言ったね?』

 

「ええ…」

 

『彼はこれまでの経験から"深追いをしながら確実に逃げる"能力を持ってるんだ。自分の能力と相手の能力を瞬時に見極め、適度に深追いし、絶妙なタイミングで切り上げる。言うのは簡単だけど実現は不可能に近い。それを当たり前のようにやってのけるんだよ彼は』

 

「それってつまり……」

 

『ああ、要するに彼のサーヴァントを殺すより、彼を殺す方が100倍は難しい』

 

「………………」

 

『更に彼の凄い所はそれが自分以外の者でも判断出来るところだ。故に死にたくないならあれより上の指揮官はいないと言っても良い。味方ならあれ以上はいないよ』

 

アイリスフィールは絶句した。死なないマスター。文字にすると大したことも無いように感じるが実際は違う。

 

サーヴァント最大の弱点は伝承の云々でも何でもなく、マスターだからだ。

 

幾らサーヴァントが強力であろうとサーヴァントより肉体的なスペックが遥かに劣るマスターの存在自体が、足を引っ張る事になる。その弱点が彼には無い、さらに逃走能力もとてつもなく高いと来た。

 

実質、100%サーヴァントの力を引き出せるという事だろう。他のサーヴァントには必ずある弱点が無いのだから。

 

「それで……とてつもなく目が良いというのは?」

 

『そのままの意味だよ。静止視力、動体視力、深視力、中心視力、中心外視力、片眼視力、両眼視力、近見視力、遠見視力など兎に角、彼は目がとてつもなく良いんだ。それこそ、まるで魔眼の領域か、本物の千里眼のようだった。その目の良さは、数十人の熟練した魔術師による横殴りのガントの一斉掃射のを、道中で殺した代行者から奪った黒鍵一本と、歩法だけで捌き切り無傷で皆殺しに出来るほどだ』

 

「なんというか……まるで…」

 

『現代の英霊(サーヴァント)のよう、かい?』

 

「ええ…」

 

『それもそうだ。蘆屋神羅の祖先はあの"安部清明"と、そのライバル"蘆屋道満"だからね』

 

「はい?」

 

アイリスフィールは話の内容が理解出来なくなり、呆けた声を上げた。

 

安部清明と言えば10世紀の平安時代中期にいた、日本史上屈指の陰陽師だ。蘆屋道満は清明とライバル関係にあったそれに並ぶ程の陰陽師だったらしい。

 

共通していることは両者共に英霊ならば日本最高クラスの英霊だという事だろう。

 

『彼は、現在も殺し合う程度の関係を持つ、日本最大の陰陽家である安部家と、蘆屋家の間の子なんだよ。最も彼は産まれる前から忌み子とされ、今では二つの家からは刺客を差し向けられる程度関係らしい。よって彼の魔術刻印は彼の代で造られたものだね』

 

「なにそれ…だから最強の執行者と言われていたの?」

 

『そうとでも思わなければ、あの実力を人間だとは到底思えない。先祖帰りでもしたんじゃないのかな? 他に何か彼について知りたいことはあるかい?』

 

「い…いいえ、もういいわ…」

 

蘆屋神羅の事を知れば知るほど絶望が込み上げるため、アイリスフィールはそれ以上追求することは諦めた。

 

「あなたは本当に彼の事を慕っているのね」

 

『そうだね。僕では二割り取り戻せた親父の魔術刻印の残りの全てを、大した仕事もしてないのに報酬の代わりに執行者のコネと、彼の口車で取り戻してくれたのも彼だ。彼の呪術を教えて欲しいと頼み込んだら見返りも要求せずに教示してくれたのも彼だ。恩なら人一倍だよ』

 

「そう……ツラい戦いになるわね…」

 

切嗣にとって友人であり、師でもある相手との死闘。きっと声にも表情にも出さないだけで内心は優れないだろうとアイリスフィールは心配していた。

 

『いや、アイツが相手なら気兼ね無くやれる。僕程度の魔術師が数日掛けるだけでアイツを殺せるならアイツは疾っくの疾うに死んでるよ。寧ろ、何としてでもせめて足止めを出来る方法を考えなければ……』

 

「そ、そう……わかったわ…」

 

良くも悪くも切嗣は彼の事を良く理解しているようである。

 

「それで同盟の申し出はどうするの?」

 

『いや、同盟は止めた方がいい。さも自分と敵が対等の力だと相手に思わせながら、相手が勝利を確信した瞬間に奥の手を出し、絶望した表情を拝むのが大好きなアイツの事だ。既に他のマスターを殺害し、サーヴァントを二騎……いや、三騎ぐらい持っていても何もおかしくはない。寧ろ、最優先でアイツのサーヴァントを攻撃し、追い詰めて確かな情報を掴む必要がある』

 

「………………」

 

アイリスフィールは蘆屋神羅と言う男は一体、仕事で何をしていたのだろうかと聞きたくなった。だが、それと同じぐらい彼の事を過大評価し過ぎではないかとも感じ始めていた。

 

『そうだ。彼の連れていたサーヴァントはどんな奴だったんだ?』

 

「ええ、そうね」

 

アイリスフィールは見た限りの情報を切嗣へ伝える。華奢で背の高い女性、花嫁のような衣装、先端の丸い戦槌、言葉が喋れない事からバーサーカーの可能性、それと轢いた後に一瞬身体から電気が出ていたこと、そして彼はサーヴァントの事をフランちゃんと呼んでクラスでは呼ばなかったこと等だ。

 

『…バーサーカー…戦槌…電気……フラン…何かの略語……?』

 

切嗣は暫く、ぶつぶつと呟いた後で自信無さげな声で言葉を放った。

 

『まさか"フランケンシュタインの怪物"か…? いや、だが…女性と言うことは有り得ないだろう……それに単純過ぎる…』

 

「うちのセイバーみたいにあり得るんじゃないかしら?」

 

『………………なるほど』

 

切嗣はどこか納得したような声を上げた。

 

するとポツリと切嗣が呟いた。

 

『そう言えばアイリ?』

 

「なにかしら?」

 

『さっき、言っていた彼の話は誰に聞いたんだい? アイツが自分の過去を誰かに話すのは中々レアなのだが』

 

「彼の奥さんよ。とっても綺麗な人だったわ」

 

 

 

『なん…だと…?』

 

 

 

電話越しの切嗣の空気が代わったのアイリスフィールは感じ取った。

 

『"永遠"狂いのあの男が妻を取った…? 身の安定を謀った? いや、そんなバカな……もし、アイツが突然…"真祖の吸血鬼を妻にしてきた祝ってくれ"とか言い出したとしても僕は全く驚かない自信がある。そうか!……遂に真祖を嫁にしたのか…』

 

「あなた? ちょっと…落ち着いて」

 

『そうでなければその女の正体は"人の皮を被った碌でもない怪物"か何かに違いない。不味いな…早急に作戦の練り直しが必y』

 

そこまで聞いたところでアイリスフィールは電話を切った。

 

「全く……幾らなんでもあの人に失礼よ」

 

アイリスフィールは喫茶店で見た、可愛らしい笑顔を浮かべる綺麗な女性の事を思い出しながらそう呟いた。

 

どうやらアイリスフィールは夫の恩師であり、親友であり、今はライバルである彼がリア充になった事が錯乱するほどショックだったのだろうと解釈したようだ。

 

だが、後に彼女は思い知ることとなる。

 

亀の甲より年の功。彼とのそれなりに長い経験により、導き出された切嗣の回答が強ち間違っていなかったと言うことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くしゅん』

 

「くしゅっ…」

 

夜に備えて、魔術礼装とエリザちゃんを取りに家に帰ると、ジェノバと姫子さんがほぼ同時にくしゃみをしていた。

 

『風邪ですかね』

 

「風邪か、味わえるものなら味わってみたいものよな」

 

「し、神羅……た、た、た、大変よ!? 私たちもう死ぬの!?」

 

エリザちゃんがすがり着くように私を揺さぶって来た。私の家、ヲワタ。

 

「まあ、それは2人の冗談だろう」

 

「なんだ……冗談ね…」

 

というかあの2人が風邪でダウンするような事があれば、その前に私たちは消滅しているだろう。

 

私はエリザちゃんの頭をポンポンと撫でながら手にしている書物を眺めた。

 

「なによそれ? 字が汚くて全然読めないわよ」

 

「……お、おう…」

 

まあ…安部清明直筆の呪術指南書の最上級者編とは言え、現代っ娘からしたらミミズみたいな字がのたうってるようにしか見えないのだろうな……現代っ娘?

 

まあ、いいや……これは親の形見のひとつである。まあ、自分で殺しておいて形見もクソもないがな。

 

「呪術の指南書だよ」

 

「呪術の?」

 

エリザちゃんが目を細めて読もうとしているが無駄だろう。

 

私は指南書を置くと、説明を始めた。

 

「そう、呪術だ。こっちの方はここ数年全然使ってなかったから読み直していたんだ」

 

「こっち?」

 

「私が作った呪術ではなく、魔術回路があり、それなりの備えがあれば誰にでも使える教科書通りの呪術と言うことだ」

 

まあ、この指南書を教科書と言うのは学術論文を絵本と言うようなものだが、大体あっているので良いだろう。ご先祖に怒られるかもしれないが。

 

「へー、誰でも使えるの?」

 

「行程を踏めばそうだな。正し、これは始めから一代で行使することを目的としているため、並の才能では不可能だ。それに"属性"も重要になってくる」

 

「属性…?」

 

「"火"、"地"、"水"、"風"、"空"の五大元素だ。これにより最終的に使える呪術の種類が決まる。まあ、才能とはそんなものだ。ちなみに私は"風"と"空"の二重属性。中々、レアだぞ」

 

まあ、後二つあるがそれは呪術にはほぼ関係がないので良いだろう。

 

「へー、私はなんなの?」

 

そう言えばエリザちゃんも一応はキャスターなわけだから魔術の適正がそれなり以上にあるはずだな。

 

「んー、少し待っていろ」

 

私は倉庫に向かい、注射器(未使用数年放置品)と、墨汁の入る面積の少ない硯のようなモノを持ってくるとエリザちゃんの横に置いた。

 

「献血にご協力ください。血がないと見れないんだ」

 

「し、仕方ないわね……ちょっとだけよ?」

 

私はエリザちゃんの了解を得たため、二の腕の内側から少しだけ血を抜いた。よしこれで……。

 

「ねえ、神羅?」

 

「ん?」

 

「抜かれてから思ったんだけど、なんでナチュラルにサーヴァントから血を採れてるのよ?」

 

ああ……それもそうだな。うーん…。

 

「多分、師匠と会ってから普通に霊に触れれるようになったからではないか?」

 

「神羅の師匠って何者よ…」

 

こっちが聞きたいぐらいだ。

 

よし、サーヴァントでも人と同じように結果が出たようだ。えーと……色の数はいち、に、さん、し…、ご…?

 

「あ、アベレージ・ワン……だと!?」

 

「ひゃあ!? 耳元でなによ!」

 

私はエリザちゃんの顔をまじまじと眺めた。

 

アベレージ・ワンとは要するに五大元素全てを兼ね備えた者のことだ。

 

な、なんという……贅沢な才能の無駄遣い…これだけの素質を持ちながら魔術の"ま"の字も知らないとは…。

 

「あら、カラフルね。これってスゴいの?」

 

「あ、ああ……私も数人しか見たことがない。超一流の素質がある…」

 

それを言った時、エリザちゃんは一瞬物凄く嬉しそうな表情になってから、ハッとしたのかいつも通りの余裕に溢れるように見える態度に戻った。

 

「も、もちろん、そうに決まってるわ! だって私はスーパーアイドルですもの!」

 

私にビシッと指を指しながらエリザちゃんはそう高らかに宣言した。

 

あ、アイドルって凄まじいな……。

 

「折角だから何か見せてみなさいよ。この私が採点してあげるわ!」

 

そう言って誇らしげに無い胸を張るエリザちゃん。顔にはよほどに嬉しかったのか笑みが漏れている。

 

私はお手製の御札を取り出した。まあ、自分のサーヴァントのご機嫌取りのためなら一枚ぐらい別に良いだろう。

 

エリザちゃんに呪術の素晴らしさを知ってもらおうではないか。ならば私が使える限り最強のモノを撃とう。

 

庭に何か当てるのは……いや、庭のモノに当てるのもどうなんだ?

 

そんなことを考えているとジェノバが近づいてきて、私に声を掛けて来た。

 

『ならあのビルはどうでしょうか? 幸い周辺に人はいませんよ』

 

ジェノバは丁度、縁側からの夕日を隠す場所に建っている廃ビルを手で差した。

 

「成る程、あれなら良いな」

 

「え? ビル?」

 

エリザちゃんが混乱しているが放って置こう。あのビルは未開発地区に数年前からポツリと建つ廃ビルで、家の夕日を遮る憎い奴である。

 

「そうだな。今宵からは最高の無礼講だ。少しだけ早い祝杯を上げる事にしよう」

 

私は御札を空へ掲げた。さらに全ての魔術回路を開き、指先に全ての力を集めるように魔力を通す。

 

そして、ポツリと呟く。

 

「"呪層界・怨天祝祭"」

 

その言葉により、私の魔力が数倍に跳ね上がり、更に御札へとその全ての魔力が収束した。

 

掲げられた御札が魔力により光り出し、発動の準備が完全に整う。

 

私は数年ぶりにその言葉を放った。

 

「"呪相・空烈"」

 

その言葉の直後に御札は水平に投げられ、意思でも持つかのように一直線にビルに命中する。

 

そして、ビルを中心から大型爆弾による巨大な透明の衝撃波のような波紋が一瞬、広がった。

 

その少し後で巨大なビルが斜めにズレる。

 

ビルは半分が地面に落ちていき、派手な音と、高い土煙を巻き上げた。

 

後に残ったのは斜め方向に対し、滑らかに切断されたビルの下半分と、綺麗な夕陽だけだった。

 

隣には開いた口が塞がらないご様子のエリザちゃんがいる。

 

「どうだ? 呪術師を目指すというのも悪くないだろ?」

 

まあ、エリザちゃんなら黒魔術の方が向いている気がするがそれは言わぬが花だ。だって私が教えられないし。

 

「ふ、ふん! まあまあね! 気が向いたら教えさせてあげてもいいわよ?」

 

そう言ってチラチラとこちらを見てくるエリザちゃん。

 

「ではそのように」

 

「やった! あ……せ、精々頑張るのね!」

 

それだけ言うとエリザちゃんは尻尾をふりふりといつもよりかなり、多目に振りながら居間の方へ向かって行った。

 

「さて……と…」

 

私はゆっくりと立ち上がり、腕を組ながら暫くその場で佇み、ふと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「魔力がもうねぇ…」

 

私は店に並べているエリクサー(made in JENOVA)を取りにふらふらと移動する事にした。

 

 

 




神羅さんの魔力の規格は魔術師相応です。最近、ジェノバに頼んで魔力量を伸ばそうか本気で悩んでいるそうです。

次話から本格的に活動開始だぜ。
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