私の妻が人外過ぎて地球がヤバイ   作:ちゅーに菌

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この小説でも例に漏れず、かわいい騎士王様は格下にも苦戦します。やったぜ。


残酷な女神

「くっ……」

 

依然として変わらない闇の中で騎士王は声を漏らした。次の瞬間、直感的に背面で剣を盾にすると衝撃が走る。言わずもがな、あの男のサーヴァントの戦槌による攻撃だ。

 

「かはっ!?」

 

それを受け、サーヴァントがいるであろう場所を切り払うが、それは虚しく風を切った。その直後に脇腹に衝撃を受け、吹き飛ばされ、コンテナに直撃した。

 

何とか起き上がるがその直後、直感的にそこから飛び退くと、騎士王が立っていた地点でコンクリートが吹き飛び、コンテナがひゃげる爆音が響く。

 

「はぁ…はぁ…」

 

そして、彼女が漸くこの暗黒に目が慣れ始めたところで、あの男のサーヴァントがさっきの雷光の拡散追尾弾を彼女に対し、四発ほど発射してきた。

 

騎士王はそれを飛ぶように避けるがここで問題が発生する。あの雷光を直視しなければ避ける事が出来ない事だ。その上、あの雷光は意思でもあるかのようにフェイントを交え、一発づつ騎士王に攻撃を仕掛ける。

 

全てを避け、或いは叩き斬った頃には、騎士王の視界は再び黒一色に染まっていた。

 

「一体どうすれば……?」

 

彼女がそんな言葉を呟く程、これは無駄のなく、確実な闇討ちだった。

 

その理由は三つある。

 

一つは闇と閃光。これにより、完全に視覚も奪われたも同然だ。

 

二つはあの男のサーヴァントの足音が全く無いこと。その代わり、常に飛行機のエンジン音のような異質な音が響き渡っており、聴覚での位置把握も困難な事だ。

 

三つはあの男のサーヴァントはどうやら人間の出来る動きを越えた機動で動いている事だ。そのため、攻撃予測が全く立た無い。

 

これらにより、騎士王は直感によるガードしか出来ないという最悪の展開になっている。いや、あの男の策略なのだろう。

 

「くッ……」

 

重い一撃を直感で防いだが、騎士王の片腕からは血が吹き出し、震え始めていた。ディルムッドの魔槍により、傷つけられた場所だ。せめてこれさえ無ければもう少しマシな応戦が出来ただろう。 今はガードするだけでも精一杯だ。

 

ダメージは徐々に蓄積し、アイリスフィールが無力化されたため、このままでは騎士王は確実に敗北する。言うまでもないが敗北とは死である。

 

再び、騎士王に戦槌が直撃し、身体が吹き飛ばされる。直感だけでは限界があるのだろう。

騎士王は剣を地に突き立て、どうにか立ち上がった。

 

目には暗黒だけが映り、耳には何かの駆動音だけが響いている。

 

万事休す。正にそれだろう。騎士王は唇を噛み締めた。

 

 

 

 

 

 

『八時の方向だ…』

 

ふと、騎士王に自身のマスターからの声が届く。それに従い、騎士王は自身から見た方向に剣を振るった。

 

「……ナゥゥ……!?」

 

軽い手応えと僅かな女性の声。どうやら剣先が命中したようだ。

 

「今頃になってあなたは……」

 

『それどころではない、直ぐにまた来るぞ……僕が暗視スコープで敵の位置を知らせる』

 

「くっ……」

 

騎士王は釈然としない中、自身の剣を構え直した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

マスターの指示により攻撃を繰り返す最中、騎士王は思うところがあった。

 

見立てでは恐らくはバーサーカーだが、これだけの攻撃を幾度も受けている自分自身が死んでいないため、相手の物理攻撃の威力が明らかに低いのだ。

 

「マスター、相手は本当にバーサーカーですか?」

 

『なに…?』

 

「確かに機械のように精密な攻撃をしては来ますが……バーサーカーにしては全体的に攻撃の威力が低過ぎます」

 

『………………!!』

 

切嗣は黙った。そして、何かに気がついたのか行動を起こした。

 

『まさか…』

 

次の瞬間、一発の銃声が響き渡る。その直後に金属か何かに当たるような音が響いた。

 

『やはりそうか……』

 

「一体何が?」

 

『ソイツはサーヴァントじゃない。ただの銃弾でほんの僅かだが傷を付けることが可能だった』

 

「な……!?」

 

サーヴァントにダメージを与える神秘性と、これ程の力と宝具のようなものを持ちながらサーヴァントではない。その情報は騎士王に衝撃を与えた。

 

『大方、言語すら棄て去り、戦闘に特化したホムンクルス。いや、それならば神秘性とあの雷光を持つのはおかしいか……。ならフランケンシュタイン本人かもな。アイツならそれぐらい用意していてもおかしくはない』

 

「こんな状況で冗談を…」

 

騎士王は自身のマスターの言葉に対し、顔をしかめた。

 

ちなみに衛宮切嗣という男は嘘はつくが、意味の無い冗談を軽々しく口にする男ではない。

 

すると、闇の向こうからあの男の声が響いてきた。

 

「潮時か……私の後ろにいろ、フランちゃん」

 

「……ヤァァ……」

 

あの男がそう言った瞬間、騎士王の周辺に漂っていた気配と、機械の駆動音のような轟音が消え、スタスタと軽い足音が響いた。

 

「10分足らずか……仕事が早いのは日本人の美徳だが今夜はもう少し休んでいて欲しかったものだ」

 

あの男がそう呟いた直後、街全体が次第に明るくなって行き、この一帯にも光が戻る。

 

どうやら施設爆破まではしなかったらしい。

 

「な……!?」

 

だが、騎士王はその事よりも彼の足元で全身から血を流し、片腕と片足がありえない方向に曲がりながら倒れ伏しているディルムッドに視線が釘付けにされた。

 

「まあ、結果オーライだな。丁度、暇を持て余し始めた頃だ」

 

彼は持っていたディルムッドの二本の槍をディルムッドの隣に投げ落とすと、そう呟いた。

 

「な、なぜ……殺さない…?」

 

既に虫の息のディルムッドが絞り出されたような声で呟いた。

 

それに対し、彼はディルムッド視線は向けながらも気だるそうな表情で答える。

 

「私に掠りもすることが出来ず、むざむざ両方の槍を奪われた君に慈悲を掛けているのがわからないのかポンコツ槍兵君。まるで子供の玩具の兵士のようだったよ。さっさと霊体化するなり、マスターに治して貰うなりして立ち去れ期待ハズレのゴミクズが……」

 

「ぐ………うぉぉぉおぉぉおぉぉ…!!!!」

 

その言葉にディルムッドは血混じりの涙を流しながら、残った片腕の拳を地面を叩き付けた。衰弱しきった拳ではコンクリートにヒビを入れることも叶わないようだが。

 

「まあ、悪かったとは思っているよ。君が弱過ぎるのに闇討ちなぞしてしまってね。そもそも闇討ちすら必要はなかったようだ。そうだ、明日の夜は君のマスターの魔術工房にお邪魔することにするよ。楽しみにしているといいさ」

 

マスターの遠隔治療により、なんとか槍を拾い上げ、立てるようになったディルムッドに対し、彼がそう言った。

 

ディルムッドは死刑宣告をされた冤罪の罪人のように驚愕と遺恨の織り混ざったような顔をすると、溶けるように消えて行った。

 

「さてと……」

 

彼は地面に落ちていた銃剣付きの火縄銃を拾い上げ、ゆっくりと騎士王の方へ振り向いた。

 

その表情は相変わらずの笑顔。だが、その背に漂う阿修羅も裸足で逃げ出したくなるような闘気と殺気が入り乱れたモノは騎士王の足を一歩退かせるには十分なモノであった。

 

「さあ、まだ時間もある。少し殺ろうか……かわいい騎士王さん?」

 

 

 

 

 

その直後、騎士王と彼とフランがいる真横のコンテナが、積まれた紙箱を吹いて飛ばすが如く吹き飛んだ。

 

それにより、全員の視線がそちらへと向かう。

 

見れば黄金の鎧を纏う男が、吹き飛んだコンテナとは反対側のコンテナに衝突し、血を吐きながら肩で息をしていた。

 

すると、吹き飛んだコンテナ側の方からカシャンカシャンと金属を固い地面に打ち付けるような音が響き渡る。

 

「な……!?」

 

そこから来た者を見た騎士王の目が驚愕に見開かれる。

 

と言うのも、そこから姿を現したのは両足に剣のような具足を身に付け、黒のロングコートだけを纏ったような紫髪の少女だったからだ。

 

到底、サーヴァントだと容認し難い年齢と外見であるが、その存在が纏う凄まじいまでの存在感と神性は正しくサーヴァントのそれである。いや、神性に関しては大概のサーヴァントでは足元にも及ばない程だろう。

 

「もう終わりかしら? 英雄王」

 

紫髪のサーヴァントはコンテナで沈んでいる黄金の鎧を纏うサーヴァントに対し、挑発と侮蔑が入り雑じった視線を向ける。その仕草はまるで妖艶な毒婦のようだ。

 

「おのれ……」

 

黄金の鎧を纏う男がポツリと呟く。

 

その瞬間から男の後方の空間が広く歪み、古今東西のあらゆる武器……宝具が空を埋めんとばかりに展開された。

 

その数は二百や三百は下らないと見える。

 

「おのれ――――おのれ、おのれおのれおのれおのれおのれおのれ……!!!」

 

黄金の鎧を纏う男の叫び声に合わせ、展開された宝具の数々が雨のように紫髪のサーヴァントへと降り注いだ。

 

「あら、怖い怖い」

 

だが、それに対し、紫髪のサーヴァントは肩を竦め、ポツリと呟いてから舞うように次々と避ける。往なすわけでも、その具足で叩き斬るわけでもなく、ただ舞うように避け続け、その表情には余裕すら見て取れた。

 

そして、雨は終わりを迎え、そこには地面に突き刺さる数々の宝具と、誰に対してか恭しくお辞儀をし、掠り傷すら負っていない紫髪のサーヴァントだけが残っていた。

 

騎士王はまるで神々の戦いを見ているような錯覚を覚え、生唾を飲み込む。あれを自分がやれと言われたら彼女は首を大きく横に振った事だろう。

 

「ゴミがァァァアァァァ!!!!」

 

それを心良く思うハズもなく、明らかに冷静さを欠いている黄金の鎧を纏う男はまた、空間を歪ませ、そこから円柱状の刀身を持つ突撃槍のような形状の剣を取り出した。

 

その剣の円柱状の部分が音を立てて回転を始める。

 

「行くわよ」

 

だが、その宝具の真名解放は紫髪のサーヴァントが、黄金の鎧を纏う男の背後に瞬間移動のような速度で移動し、蹴りを叩き込まれた事で強制的に停止された。

 

「行くわよ行くわよ行くわよ――!」

 

紫髪のサーヴァントは蹴った次の瞬間に、蹴りを入れた方向とは逆の場所に瞬時に移動し、蹴りを叩き込む事により、相手を立たせたまま攻撃をし続ける。

 

そして、最後にこれまでの中で最も強力な蹴りを放ち、吹き飛ばすと、その場から飛び退き、黄金の鎧を纏う男を見つめた。

 

黄金の鎧を纏う男はなんとか起き上がったようだが、その様子は既に満身創痍を越え、底知れぬ気力だけで肉体を支えているようだ。このままでは終わりもそう遠い話では無いだろう。

 

だが、次第に彼の顔が歪んで行き、最後には言葉を荒げ、何かを罵倒していた。

 

「ふざけるなぁぁ!? 我の眼前にあのようなふざけた俗物を立たせておきながらこの我に退けだと!? 身の程を知れ!! 令呪一画如きで……」

 

そこまで黄金の鎧を纏う男が血混じりに吐き出したところで突如、彼が溜め込んでいた怒気が次第に萎んでいった。

 

その代わり、彼の表情に理性の色がみるみるうちに戻って行く。

 

「なに……? 貴様の娘だと…アレがか?」

 

黄金の鎧を纏う男はさっきまでとは違い、目を疑うような様子で、紫髪のサーヴァントを眺めていた。

 

「そうか……そう言うことか……」

 

そして指を鳴らし、全ての宝具を回収すると、訝しげな表情で紫髪のサーヴァントへ語り掛ける。

 

「貴様を造り変えた戯け者は誰だ? いや、天地をひっくり返す事の出来る存在が貴様の主人か?」

 

「母さんは偉大よ。それに優しいわ。薄汚れた私をこんなに強く、綺麗にしてくれたんですもの」

 

紫髪のサーヴァントが語る表情は陶酔し切っており、恍惚とした表情を浮かべていた。

 

「……どれだけ変質しようと所詮、中身は母を求める童か……。貴様の母とやらに伝えろ。必ず我がこの手で肉片の一片すら残さず抹消してやるとな」

 

「なら時臣と葵に伝えなさい。私はもう、遠坂でも間桐桜でもないわ。現代の神メルトリリスよ」

 

「ぬかせ、すがる事しか知らぬ女郎が……人形遊びに興味はない」

 

「残念ね。これから面白くなりそうだったのに」

 

それだけ言うと黄金の鎧を纏う男は消えた。理由はどうあれ、退くことを選んだのであろう。

 

だが、現代神と自称したサーヴァントの目は相変わらず殺気立っている。メルトリリスの熱を帯びた眼に映るのは可愛らしい騎士王だった。

 

「うふふ、なら代わりに貴女と遊びましょうか」

 

「なに!?」

 

笑いながらメルトリリスは騎士王に音速の数倍の速度で接近した。その膝を騎士王へと向けながら。

 

「じっくりと、内側から溶かしてあげる」

 

メルトリリスから呟かれたその言葉が騎士王の耳に強く残る。騎士王は目で追えてはいるが、彼女の風王結界と魔力放出を合わせて出せるような速度に対し、手負いの彼女では対応出来るハズもない。

 

さらに、あの膝に溜まっているのは宝具発動級の魔力だ。結果はどうなるかなど嫌でもわかる。

 

騎士王は悲痛な声を上げるマスターに、謝罪の言葉を心の中だけで送ると、その瞬間をそっと待っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、その瞬間がいつまでも訪れる事は無かった。

 

その理由は単純。片手に火縄銃を担いだあの男が騎士王の目の前で、もう片手の指の間に持った四本の銃剣でメルトリリスの膝の刺を受け止めていたからだ。

 

見れば銃剣の四本中、二本は半ばから折れ、残りもヒビが入ってはいるが確かに止めれている。

 

「………………」

 

なんのつもりだと言わんばかりの表情と、無言の圧力を掛けながら彼はメルトリリスを見つめる。

 

それに対し、メルトリリスは頬を紅葉させると言葉を吐き掛けた。

 

「あなたが相手ね? いいわ……いいわよ……ヤりましょう?」

 

「加虐体質か……良いだろう。少し灸を据えてやる」

 

それを聞いたメルトリリスは嬉しそうに彼から飛び退き、構えるように自身の体勢を下げた。その様子はまるでスタートラインに立つ選手のようだ。

 

「な、なぜ……?」

 

「大規模な戦闘が始まった初日にそこまで躍起になることもあるまい。闇討ちで死ななかったのならそれ以上は求めんよ。要するに今日の私は紳士的だ」

 

騎士王の疑問に対し、彼は即答でそう答える。

 

その解答に騎士王が絶句していると、彼は折れた二本の銃剣と、ヒビの入った二本の銃剣を捨て、懐に手を入れ、質素な銀色の直剣を抜き放った。

 

「今の君にこの"ヴォーパルの剣"はちと痛かろう。妻の忠告通り、持って来て正解だったか」

 

彼の言葉の直後、メルトリリスは笑いながらあの男へと爆発的な加速で接近した。

 

「ふ___あはははは!」

 

直後、彼のヴォーパルの剣と火縄銃に付いた銃剣による剣撃と、メルトリリスの具足による斬撃の嵐が衝突し、凄まじい速度での剣と剣の応酬が繰り広げられる。

 

そこにいた他のモノはそれを眺めているばかりだ。

 

フランだけは地面に座りながら、どこかから取り出した弁当箱の蓋を開け、箸でつつきながらメルトリリスと神羅を見ていたが、食べ終えてもそれに気づく者は誰一人として居なかった。

 

 

 




メルトちゃん大暴走というか御乱心。まあ、そうなるな。

今のメルトちゃんの精神状態を有名な人…人?……の言葉を借りるとこんな感じですね。
「しかし……困る。そうは言っても、楽しくて仕方がないのだ。ヒトに倣って言うのなら、うむ、こうであろう。”笑って許せ。暴走していると分かってはいるが、自分で自分を止められぬ”」



まだギリギリ毎日更新だし(震え声)。
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