:指輪止めろ
ケロロ軍曹と同業者。
:主人公
あーぱーパパ。
:キングネコアルク
あーぱーママ。
:ちなカレー空間
金星シェフ。
:フランちゃん
俺らの夢。
:中身もレヴァアタン
愛玩用エンジェロイド。
:あーぱー幼女
スリーサイズは殺生院キアラと同じ。
:ちゃりん娘
メガネッコナッコォの使い手。
:W竜
巡音ルカの子。
:誰得元奴隷
あいつは人の話を聞かないからな。
『ちょっと、いつまでモタモタしてるんですの? 夜が明けますわ』
『すいません、この使い魔の調整が難しくて』
『仕方ないですわね。ん? 光ってますわね。それもう映ってませんか?』
『ああ、映ったようです』
『それでは皆さん、ご機嫌よう。私はシスター・ヘル。ビデオカメラ風使い魔を構えているのがアシスタントのメデューサさんですわ』
『こんばんわ。メデューサです』
『ちょっとメデューサさんレンズに指が映ってませんこと?』
『ああ、すみません。ビデオカメラが勝手に動くので』
『全く……ちなみに画面の奥の方に佇んでいるのは私のバーサーカーのスパルタクスさんですの。一応、八騎目のサーヴァントと言うことになりますわね。シャイではないですがこのビデオカメラ風使い魔を誰に渡すか言ったら壊しかねないので内緒で録画してますわ』
『アルティメル以外の話は通じませんものね』
『いえ、私の話も通じてませんよ?』
『そうなんですか?』
『話と言うものは相手に理解して貰えなければ相手に通じている事にはなりませんの。パスタさんは狂化し過ぎて自分の信念以外には超々無頓着になっている感じですわ』
『パスタ……?』
『スパルタクスさんだからパスタさんですわ』
『本人の前で絶対に言わないで下さいね…』
『えー……』
『えー、じゃないです。と言うか人に変なアダ名を付けるのを止めてください。もちろん、私にも』
『なぜですか…ちゃりん娘さん…』
『それがイヤなんです…』
『ふう、話が脱線しましたね』
『まだ、本題をひとつも話してないような…』
『しゃらっぷですわ。えーと、とりあえず自己紹介はしましたから……こほん、ここは柳洞寺。今は私たちの拠点ですの。基本的には私たちはここにいますのでサーヴァント連れのマスター様方は昼夜問わずじゃんじゃん来て下さいませ。というかあんまり人が来ないとスパルタクスさんが、痺れを切らして真昼にも関わらずダイナミックお宅訪問とかしかねないので早いとこ来た方がいいですわよ? まあ、それはそれで面白いので私は一向に構いませんがね。最後にですが、メデューサさんは私の嫁なので絶対に誰にもあげませんわ』
『アルティメル……そんなことを今言わないで下さい…』
『照れてるクセにこのロリコン。では皆さんさようならー………………よし、ではこの使い魔をさっきの教会に届けて来てくださいな。後、ジャンプ買ってきて下さいませ』
『ロリコン…いえ、確かにそうなると言えばそうなるのですが…………え? 今からですか?』
『その内、スパルタクスさんが動いちゃいますから。そしたら態々柳洞寺にいる理由が無くなるじゃないですかやだー』
『そしたらどうなるんですか?』
『さあ? 冬木市民絶叫! スパルタクスさんといっしょ、圧制者撲滅編でも始まるんじゃないですか……ってメデューサさんそれまだ動いてません?』
『ああ、そうみたいですね。今、止めます』
『流石、どじッ娘スキルA+で』
◆◇◆◇◆◇
薄暗い教会の中で映像の上映が終了した。
教会には一人の神父と、数体の使い魔がいるようだ。
その中でも一際、異彩を放つのは背の高い花嫁衣装のような服を着て、頭に電極や、角の生えている女性……もといフランだろう。
フランは神父から最も近くの椅子にちょこんと座りながらじっと神父を見つめていた。
神父……言峰璃正は使い魔を寄越せと言ったにも関わらず、昨夜の戦いに参加していた者を寄越すのは予想外だったのか苦い顔を浮かべている。
ちなみにフランが来た理由はエリザとのじゃんけんに負けたからである。微妙に天然が入っているフランのマスターは使い魔=サーヴァントと解釈したということを誰かが知ればどんな顔をするだろうか。
「今、聖杯戦争は重大な危機に見舞われている。埋葬機関No.2"鮮血"の"メデューサ"と、埋葬機関No.4"執行代行者"の"シスター・ヘル"がこの冬木で大規模な聖堂教会の教徒狩りが行われている事が判明した。そして私もその被害者の一人だ……」
璃正の全身の包帯から察するにかなりの事をされたのだろう。魔術で回復させたのだろうとは言え、まだ立っていられるとは彼も中々に頑丈な男である。
「彼女らが襲撃している殆どは聖堂教会に出資金を出しているだけの企業や、冬木の教徒が集う小さな施設だ。更にその秘匿も全く行っていないときている。これでは聖堂教会はとても聖杯戦争の監督どころではない。いや……冬木の危機だ!!」
声を荒げた事を恥じたのか、素に戻ると咳払いをしてから言葉を続けた。
「失礼した……よって私は非常時における監督権限をここに発動し、暫定的ルール変更を設定する。全てのマスターは直ちに互いの戦闘行動を中断し、各々バーサーカーと埋葬機関の殲滅に尽力せよ。そして、見事バーサーカーを討ち取るか、埋葬機関を討ち取った者には……」
璃正は怪我が痛まないようにゆっくりと腕を捲り、 使い魔たちに掲げた。
「特例措置として、一体につき追加の令呪をひとつ寄贈する。これは過去の聖杯戦争で敗北したマスターが使い残した令呪である。彼女らは私を襲撃した上でこの令呪を三画奪い、八騎目のサーヴァントを召喚したのだ……最後にはこの教会の十字架まで破壊して…!!」
そこまで言ったところで璃正は首を傾げているフランと目が合う。
「………………?」
無機質ながらどこか人間には無い凄みを感じる目だ。本題に戻れよと無言の威圧をしているように璃正は感じている。
それによって璃正は変な汗を流しながら、本題に戻ることにした。
ちなみに当のフランはと言うと"朝ごはんは何かな?"などと考えていたりするがそれを知るものは本人だけである。
「話がずれたな、先の映像を鵜呑みにするのなら柳洞寺に拠点を構えているであろう。サーヴァントはバーサーカー。そして、真名はトラキアの剣闘士スパルタクス。幸いにも場所が場所だけに一日中攻撃が可能だ。諸君らにとってこれらの刻印は貴重極まりない価値を持つはずだ。一先ずはバーサーカーの消滅が確認された時点で、改めて聖杯戦争を再開するものとする」
新ルールの設定。埋葬機関の実力を知る者は一画で足りるわけねぇだろと言いたくなるが、そもそも人語を出せる使い魔はこの場に存在しない。
また理解している者でも単純にバーサーカー陣営はサーヴァント三騎分が相手と考えれば自然と閉口するしか無いだろう。その上、向こうは魔術師より遥かに戦闘のプロ中のプロだ。総合的な実力は三騎以上だとしても何も可笑しくはない。
「また、シスター・ヘルの埋葬機関での行動上、No.3"双頭"の"アンフィスバエナ"を連れている可能性も捨てきれない。アンフィスバエナは現代に生きる数少ない竜だ。その戦闘力は世界の上位から数えた方が遥かに高い地位にいる。勿論、討伐すれば令呪を寄贈しよう。更にはシスター・ヘルとメデューサもサーヴァントに引け劣らないほどの実力者だ。討伐は困難を極めるだろう。そして、埋葬機関は聖堂教会の最高機関のひとつではあるが、構成員の各々が完全に独立しており、その実態は私設傭兵と大して変わりはしない。その癖にひとりひとりに持たされている権力は私では到底及ばない程だ。更にシスター・ヘル以外の二体の代行者は付き人と考えても遜色ない。そのために鱗一枚でも高い利用価値のある竜を含めた三体の代行者を一気に失いたくない聖堂教会としては、始末書に一言だけ、異端でしたからやった等と書かれれば街を消し飛ばそうともそれを鵜呑みにするしかない……よって、聖杯をあのような卑劣な背教者に取られたく無ければ我々の力だけで彼女らを退けるしかないのだ! ふぉ!?」
少しだけ熱が入り過ぎ、腕を引きいて拳を作ったのだがそれがいけなかったようだ。関節技でへし折られた場所が痛み出し、璃正は腕などを押さえる。
それを見たフランは"大丈夫?"と書かれた木製の看板を上げており、璃正は彼女に対して会釈をした。
「コホン……既に周知の事実だと思うが、幸いなことにこちらには歴代最多の埋葬機関を含めた代行者殺害記録を持つ元執行者の"蘆屋神羅"もいる。彼は対代行者戦のプロだ。何かと頼りになるだろう。まあ、ご協力いただければの話だが……」
フランがまた看板を掲げた。
そこには"それぐらい別に良いって"と、書かれている。それにより、使い魔にもマスターの意思が伝わったのか、教会内が少しだけどよめいた。
「さて、専門家の同意も得られたところで質問のある者は今、この場で申し出るがいい。最も人語を発音出来る者のみに限らせて貰うがね」
「……ナァァ……?」
フランは"これは?"と書かれた木製の看板を上げた。
「………………発音出来る者で頼む…」
「……ウィィ……」
フランは目に見えてしょげた。それを見た璃正はなんだかとてもいたたまれない気分になったと言う。
◆◇◆◇◆◇
「別に良いの? あなたの実の娘でしょう?」
フランちゃん越しに教会での一部始終を見終えたメルトちゃんはそんなことを呟いた。
「アイツはアルティメルではなく、シスター・ヘルとして参加しているのだ。ならば加減する道理も、引目を感じる事もあるまい。なに、アイツの事だ。寧ろ向こうの方が私に対し、何の躊躇もなく銃撃してくるだろうな」
「……娘から殺したいほど嫌われてるのかしら?」
『銃弾でシンラさんが死ぬ姿が想像出来ますか?』
「………………ムリね」
『でしょう?』
それで納得されるのはなんだが寂しいものがある。
ちなみにだが、エリザちゃんは教会での話の途中から私の膝の上で寝ていたりする。どうやらエリザちゃんには難しい話だったようだ。
エリザちゃんの尖った角がたまに頬っぺたと、下顎を攻撃してきて地味に痛いが今は仕方あるまい。
加えて、フランちゃんは教会から帰宅中である。
「しかし、八騎目のサーヴァントか…今回はバーサーカーのようだが……そう言えば前回の聖杯戦争ではアヴェンジャーというクラスがいたな」
『そうですね。第三次聖杯戦争ではアインツベルンがアヴェンジャーを召喚して………………ん?』
ジェノバの挙動が完全に停止した。私が何かあったのだろうかと疑問に思っていると頭だけ私に向けてまた口を開いた。
『なんでシンラさんが当時の人間ですらほぼ知らないアヴェンジャーの事を知っているんですか? 私は聖杯が汚染されているという話はしましたがその原因は言っていないような…』
「ん? それは勿論、アヴェンジャーを殺ったのが私だからだが?」
『は?』
「は?」
「ほう…?」
ジェノバ、メルトちゃん、姫子さんは一様に驚いた表情をしている。
はて? 私の実年齢的に考えれば別に参加していても何等おかしくは無いと思うのだが……。
「言ったことが無かったかな?」
『だ、だってシンラさん……野良呪術師の私でも聖杯戦争ぐらい知ってるとか、魔術協会関連施設の何処かしらにデカデカとポスターが貼ってあるので一度でも協会と関わりがあれば誰だって知ってるとか、10年前は私も本気で聖杯を取ろうと色々やっていたこともあったが、結局途中で求める理由が無くなったので止めたとか………………あれ?』
うん、一言も60年前の第三次に参加していなかったとは言っていないな。
「クククッ……一般参加なら寧ろ聖杯戦争の裏事情を知っている方が逆に可笑しかろう。それにサーヴァントが強者ならば作戦も不要と見た」
『………………』
姫子さんのトドメの言葉にジェノバが黙る。
あの頃はまだ"私だけの永遠"の探求がそこまで切迫詰まっては居なかった頃のため、英霊という者と話を交えて見たかったために参加したのだ。
『………………』
ジェノバは私の肩をゆっくり掴むと、笑顔になり、言葉を吐いた。
『キチンと説明してくださいね…?』
「お、おう……とは言っても三次では大した事はしてはいないぞ? モガッ…」
膝の上で動いたエリザちゃんの角が私の口に入る。地味にウザいぞコレ。
「エーデルフェルトの姉妹とサーヴァント二体を潰し、その片割れに引導を渡した後、取り敢えず死体と一緒に拠点に監禁していたんだが、いつの間にか当時の遠坂家の当主に持って行かれたり……」
『あなたのせいですか…』
ジェノバがなぜかメルトちゃんを抱き寄せた。そう言えば気のせいな気もするが妹の方に似ているような…まあ、60年も前に半日あった程度の記憶などアテにはなるまい。
「ちなみにどんな英霊を召喚したのかしら?」
「"美人さん"」
「ふざけてるの…?」
「いや、ハサンを喚んだらハサンではない黒いローブの美人が出て来たのだ。名前は無いらしい、故に"美人さん"だ」
喚び出した瞬間に襲ってくるわ、ザバーニーヤのデパートだわ、私好みの美人だわもう大変だった。
捩じ伏せるのに10分も掛かってしまったぐらいに。
まあ、最終的に私が聖杯に特に何も望んでいない事に気が付くと、普通のサーヴァントぐらいには従順になったのだがな。
実力は流石のアサシン。ライダーやアーチャーを圧倒し、セイバーと互角の超性能であった。
『ハサンコンプガチャのシークレットレアじゃないですか……』
なにそれ強そう。
「それから大層な名前の割りには妙に弱かったアヴェンジャーをパパッと倒し、最後には私の美人さんの願い通りに聖杯をぶっ壊したぐらいだな」
『何がしたかったんですかシンラさんは……』
「魔力供給……嘘だ嘘。首になにか凄そうな剣突き付けないでくれ。姫子さん」
というかどこから出したその異様に光っている長剣。騎士王が持っていた剣が玩具に見えるような逸品じゃないか。
『それは姫子さんの一番強いskillの攻撃です。レベル89で覚えますよ』
なぜだ……如何に強かろうと殆ど死にskillな気がする。
「ふむ? すまぬ。こう胸の辺りがモヤモヤとしてな」
姫子さんは私に向けた剣を下げると、自身でも釈然としないような表情を浮かべながら剣を消した。
「ねえ、父さん」
「なんだ? メルトちゃん」
「父さんって何十…いえ、何百年生きているのよ?」
「…………………………禁則事項だ」
ふと、時計を見れば午前三時過ぎを指している。
私はメルトちゃんに斬り飛ばされた腕がしっかりとくっついたか確認すると、エリザちゃんを姫子さんの膝に移動させ、席を立つ。
『お休みなさい。シンラさん』
「おう。お休み」
◇◆◇◆◇◆
『
「へー、そうなの。あなたも大変ね」
アインツベルン城の中庭にて、息をつく間もなくドラゴンが喋り続けている。
見た目が、絵に描いた必敵必殺がモットーな邪竜のような容姿で、竜の中に渦巻いている魔力もそれ相応のドス黒いモノなだけに凄まじいギャップだ。
ちなみにドラゴンの話に相槌を入れているのはアイリスフィールである。見た目は兎も角、好奇心は年齢相応らしい。
『ちなみにお嬢ちゃんの名前は?』
「お嬢ちゃんなんてそんな…」
『まだ、9歳ってところだろ? 十分お嬢ちゃんだ。まあ、
「わかるの?」
『人間とホムンクルスの違いがわからなくなったらボケ始めだよ。ホムンクルスもよく見れば年齢がわかるもんだ』
「凄いわ……。私はアイリスフィール・フォン・アインツベルンよ」
『アイリスフィール……アイリスね。ギリシア語で意味は虹。そして、花言葉は愛に纏わることが目白押しだ』
「よく知ってるのね」
『人間は面白い。野花に名を付け、言葉も付ける。興味深いよ』
そう言って一人と一体の間だけで笑いが起こる。いつの間にか、アイリスフィールの後ろに並んでいる三人は完全に止めるタイミングを失ったと言った様子だ。
「ところであなたのお名前は?」
『
「アンフィスバエナね。アンフィス……バエ……ナ…?」
埋葬機関No.3"双頭"の"アンフィスバエナ"。
ついさっき、聖杯戦争での討伐対象に上がった内の一体である。
「お下がりください! アイリスフィール!」
騎士王は剣と鎧を展開し、アイリスフィールを庇うようにアンフィスバエナに向ける。その姿は何かを護らんとする騎士のソレだ。
だが、それを見たアンフィスバエナは悲しそうな瞳をするとポツリと呟いた。
『可哀想なお姫様』
「なんだと…」
『お姫様。世間知らずで独り善がりで夢見がち、目の前で抵抗ひとつしない
「黙れ! 戯れ言を抜かすな」
『君にとっては戯れ言でも、違わないね。それは護るための剣とでも言う気か? と言うことは護る方法は何も危害を加えていない
「貴様……」
騎士を侮辱したからか、騎士王の目は怒りに満ちた。それを見たアンフィスバエナは深い溜め息をついてからまた呟き始める。
『剣を向けられている
「なに?…」
騎士王は言葉を詰まらせた。確かに自分はさっきまでアイリスフィールと楽しげにお喋りをしていたモノに剣を向けた。だが、その理由はなんだ? 邪竜だから? 見た目が危なそうから? 聖堂教会に手配されていたから?
だとしても目の前の竜が自分達に何をしただろうか?
『人間は大義名分と力さえあれば何でもしてしまう生き物だからさ。それに善とか正義って言う名前をつけてね。そんな大義名分を振りかざして挑んできた人間を何人擂り潰したかなんて覚えてないけどさー。なら聞くけど?
「…ッ!……」
その問いにも騎士王は答える事が出来なかった。いや、答えなら既にアンフィスバエナが口にしている。答えの根拠が見つからなかったのだろう。
『答えたくないなら教えてあげる。人間だよ人間。人が勝手に飢饉とか国の経済難とかよくわからない事でを
「そんなこと…今は関係が無いでしょう!」
『なら結構結構、さーて……お姫様』
次の瞬間、アンフィスバエナから空間を黒く染め上げる濁流のような量の魔力が放出された。それは天に聳える闇の柱のようにアンフィスバエナの全身を隠し、その中で四つの瞳だけがギラギラと輝いていた。
さらに魔力は徐々に勢いを増し、中庭の花々を呑み込み始める。
『どうする? その怪我した腕で
あまりにも強大で侮蔑まみれの殺気にも関わらず、騎士王の手元が震え、足も固まっていた。視線はアンフィスバエナの瞳を見たまま一ミリも動かす事が出来ない。喉はカラカラで汗はぐっしょり、それでも辛うじて残った彼女の何かが逃げることだけはさせなかった。
これが人々から恐れられ、現在も家紋として残る伝説の竜。
人間を理解した上で、人間を殺すだけの狂った神代の怪物。
自らの母にすら会えなかった可哀想な邪竜。
華やかな姿ではない、寧ろ醜悪だ。
善か悪かで言えば確実に悪だ。
その思想は人間とは決して相容れず、混沌そのものだろう。
だが、それでもその瞳だけは騎士王よりも遥かに真っ直ぐで、どこまでも澄みわたっているように感じた。
「ごめんなさい」
その言葉は騎士王の後ろにいたアイリスフィールから出たものだった。
彼女は切嗣らの静止を振りほどき、騎士王を越え、アンフィスバエナの眼前まで来るとまた言葉を続けた。
「セイバーに悪気は無かったの。セイバーはセイバーの義務を果たしただけ、あなたもわかってるでしょ?」
『ふーん……まあ、いいや』
アンフィスバエナはポツリと呟くと魔力放出を止め、殺気を払い、眼光もいつも通りに戻してからまた寝そべりながら言葉を吐いた。
『本当に怖い人間はね。悪人でも狂人でもないよ。そこのお姫様みたいに悪意のない善良な人間なんだよ』
それだけ言うとアンフィスバエナは身体を丸め、身体をゆっくり上下させ始める。
剣を握り締めたままの騎士王は、アンフィスバエナが寝息を立て始めた頃にやっと深呼吸を始め、体調を整えた。
ふと、周りを見れば濁流のような魔力に呑まれたハズの花々は花弁の一枚すら散ってはおらず、ただ風に吹かれ、ざわめくばかりだった。
ちなみにアンフィスバエナさんは騎士王が嫌いなわけではなく、英雄全体が嫌いなだけです。自分から手を出せば英雄とやっていることが変わらないため、何かと難癖を付けて騎士王を退けなくさせて攻撃させる口実を作ろうとしていました。とてつもなく歪んでいます。これがアンフィスバエナさんの対英雄スキルです。