私の妻が人外過ぎて地球がヤバイ   作:ちゅーに菌

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注意:この小説は聖杯戦争期間中の出来事です。


ご都合主義(物理)

「このイス、家にあったのにそっくりだわ」

 

そんなことを言いながらエリザちゃんは、さも当たり前のように椅子を片手で持ち上げると、とりあえず与えておいたそれなりの広さの洋室に移動させていた。

 

無論、私の骨董品店の商品の椅子をである。

 

律儀に朝一番で教会へ行き、"霊呪あるから聖杯戦争に参加するぜイエーイ!"的な宣言をし終えて帰ってきたらこれだ。

 

神父が私を見て驚いていたが、恐らく数年間、昔の執行者仲間以外と連絡を取ってなかったせいで死んだとでも思われていたのだろうな。

 

それはそれとして一応、軽く抗議でもしようと話し掛けたところ。

 

「売れてないんだから別にいいでしょ? 寧ろ、私に使われるなんてラッキーよ。でも埃っぽいわね。はたくの手伝いなさいよ」

 

半分、正論である。もう半分はジャイアニズムである。解せぬ。

 

実際、何年も売れてないんだから困る。別に売れなかったところで特に困ることなはないのだが。

 

まあ、残念な美人に使われるだけ家具も幸せだろう。

 

仕方なく、そのまま移動や家具の手入れを手伝い、部屋に幾つか運び入れたところで店に戻ると、エリザちゃんがとある一角で足を止めていた。

 

いや、鍵の付いていない鉄扉のドアノブを回そうと悪戦苦闘しているようだ。

 

「くっ…なによこれ…開かないじゃない!」

 

「ああ、そこはちょっとレアなモノの入った倉庫だな。もう何年も開かないうちにいつの間にか開かなくなっ…」

 

次の瞬間、ドアがバツ字に切り裂かれ、金属片が中を舞い、激しい音を立てながら床に落ちた。

 

「開いたわよ。感謝しなさい」

 

そう言いながら誇らしげに無い胸を張るエリザちゃん。

 

…………まあ、そろそろ私もそうやって開けようかと考えていたところだったので別にいいか。とりあえずエリザちゃんは褒めておこう。ただし、家以外でやっちゃいけません。

 

「~♪」

 

エリザちゃんは気を良くしたのか、鼻歌を歌いながらズンズンと倉庫に入って行った。私も続いて入る。

 

電気を付け、明かりを灯すとそこには巨大な本棚のような家具の棚に、魔術礼装や、黒鍵などの概念武装、魔術的な道具に神代の原料、さらには本に移された無数の魔術刻印などが所畝ましと展示されていた。

 

「なにこれ…スゴい…」

 

まるで時計塔の資料室をミニスケールで再現したような光景にエリザちゃんは言葉を失っているようだ。聖杯の予備知識でそこにあるモノの大半がなにかわかるのだろう。

 

暫く、そこを見回してからエリザちゃんは私に話し掛けてきた。

 

「魔術工房は性に合わないじゃなかったの?」

 

「いや、魔術工房ではないぞ? ただのレアなモノを集めた倉庫だ」

 

「え? と言うことはこれって…」

 

「私が生きることを否定した魔術師、代行者、死徒などの遺品だ」

 

まあ、私の昔の趣味と言ったところか。次々に溜め込んでいたのでこんなことになってしまったのだがな。

 

「遺品!? これ全部? この魔術刻印が移された本で埋まってる本棚も?」

 

「ガラクタもかなりあるが、大体そうだ」

 

「何千人殺したの?」

 

「さあ? 数える代わりにこれだけあるのだから、調べたくもないな」

 

正直、仕事で殺すも趣味で殺すも大差はない。無論、そこには善も悪も優劣も存在はしない。いたから殺した。仕事だから殺した。趣味だから殺した。そんな些細な理由が残るだけだ。

 

まあ、私が彼女を召喚()べた理由があるとすればその些細な理由が……。

 

【エリザベートは不老のために殺した】

 

【私は不死身のために殺した】

 

惜しいほど似通っていたからだろう。

 

「……神羅ってひょっとして見た目よりずっと高年齢(オジサマ)だったりするの?」

 

「…………禁則事項だ。それを言っても誰も幸せにはなれないさ」

 

「ふーん…まあ、いいわ。そんなに知りたくも無いし…無いわよ? ホントよ?」

 

そう言ったエリザちゃんは倉庫でチョロチョロし始め、日本刀のように台に乗せられた、大型の黒いハンドガンのような形のモノの前で足を止めた。

 

ん?………………ああ、ここにあったのか。

 

「これ知ってるわ! 近代兵器の拳銃ね」

 

「いや、よく似ているが違う」

 

「違うの?」

 

「それはアトラス院に逃げ込んだ封印指定の魔術師を追って、交渉したが決別したため、アトラス院を私含め、執行者40人で襲撃した時、序でに盗み出した(気に入ったから永遠に借りてきた)概念武装"黒い銃身(ブラックバレル)"だ」

 

「へー、なんか強そうね」

 

まあ、こちらもミリョネカリオンと私以外の38人は死んだがな。

 

私としてはその程度で済んでマシな方だと思っ……ん?

 

「おっと、それはダメだ」

 

私はそれを掴み上げようとするエリザちゃんの手を掴んで止めた。

 

「な、な、なにする…」

 

「止めておけ、それは第五真説要素(エーテライト)によって作られた兵器だ。第五架空要素(エーテル)で構成されたあらゆるモノを無条件で破壊する。ちなみに(サーヴァント)の身体はエーテルで構成されている」

 

「エーテル…?」

 

「要するに当たり所によれば原初の一すら理論上は一撃で葬り去れる代物だ。サーヴァントなんて銃身に触れた瞬間に無に還るぞ」

 

「あ、あ、あ、危な!?」

 

エリザちゃんは私の手を振りほどくと部屋の隅まで一目散に逃げた。

 

まあ、完全破壊してしまう特性上、

使い途も無かったため、こうしてここにあるのだがな。死徒を無に還してしまうと不死にはなれないのでしかたない。

 

まあ、"最強になる必要はない。最強であるものを作ればいいのだから"というアトラス院が誇る最強のモノのひとつであり、その中でも極めて凶悪な部類に入るモノだということは理解しているがな。

 

どうもあそこの連中とは反りが合わない。例えば最強の聖剣使い手が居なければ、その聖剣はショーケースに並ぶ包丁と何が変わろうか? 兵器は玩具でも置物でもない。使わなければ意味がないのだ。

 

 

と、思っていたのだが……。

 

 

ミリョネカリオンと一度試しに死徒二十七祖に対して黒い銃身(ブラックバレル)を使ってみた事がある。

 

その後、私とミリョネカリオンが出した結論は"これは魔術協会どころか人類には過ぎ足るものだ……永遠に眠らしておこう"である。

 

まあ、なんだ……モノには限度があると言うことのいい教訓になったと言ったところだ。アストラ院に返そうかと本気で考えているうちに台ごとここに置き忘れてしまっていたのだろう。

 

無論、こんなものを聖杯戦争に投入する気もない。というか霊体ごとこの世から消滅しかねないので使えるわけもない。

 

「んげっ!?」

 

そんなことを考えているとエリザちゃんからアイドルらしからぬ声が上がった。

 

見れば棚の一番上に乗せてあったと思われる、人が入る鋼鉄製の棺桶のような物体の角が頭に命中している。

 

どうやらさっき逃げた時に棚まで下がったところ棚を刺激し、上のモノが落ちてきたようだ。

 

「大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫…よ…アイドルはこれぐらいじゃ…へこたれないわ……」

 

エリザちゃんの中のアイドル基準は人間には到底なれないものらしい。なるほど確かにこれなら私もファンになれそうだ。

 

「なによこれ…?」

 

「ああ、ガラクタだ」

 

「………ガラクタ!?…なんかスゴく、ムカついたわ!」

 

エリザちゃんは槍を取り出し、鋼鉄の棺桶に跨がると丁度、中央に突き立てた。その一撃は鋼鉄など紙の如く貫通する。

 

が、中身の物体は貫通出来なかったらしく、槍は途中で止まっている。

 

床に刺さらないように加減していたのか、力をセーブしていたのだろう。中身には刺さりもしなかったようだ。

 

思ったよりかなり頑丈だな。見た目は華奢なのに如何なる素材で出来ているのやら…。

 

などと思っていると変化が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナアアアアアアアアアアアアアアアア―――――オゥッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鋼鉄の棺桶から地獄の亡者の如き叫び声が響いてきたのだ。棺桶内で音が籠ることにより棺桶全体がガタガタと振動するほどである。

 

「ヒィッ!!?」

 

棺桶に跨がったままのエリザちゃんが、またもやアイドルらしからぬ声を上げるが私はそれどころではなかった。

 

「なん…だと…?」

 

とは言っても私が何を出来るわけでもない。先ほどガラクタと言ったが訂正しよう……たった今ガラクタではなくなった。

 

ただ、"アレ"は私とミリュネカリオンで封印指定の魔術師の執行のため、北極へ行った時に私が海中を飛んでいたら偶々発見したものだ。

 

だが、"アレ"を魔術協会に持ち帰り、 50人程の物好きの魔術師が手を尽くしたが起動することは無かった。

 

仕方無くアトラス院にそれとなく情報を流してみたところ嬉々として300人を越える錬金術師の団体様が来て、"アレ"に付きっきりで当たったが起動することは叶わなかった。その日、アトラス院の連中と我らは涙を流した。

 

が、後日にアトラス院では"アレ"の解析データを元に"ラニ"シリーズなどという者達が製造されたらしい。羨ましけしか…げふんげふん。

 

「そ、それを…それを………ただの槍の一撃で再起動させるだと!?」

 

「わ、わけわかんないこと言ってないで助け…いやぁー!?」

 

次の瞬間、棺桶の鉄扉が吹き飛び、エリザちゃんと槍と鉄扉が宙を舞った。

 

どうせ無傷であろうエリザちゃんを無視し、私は棺桶をみた。

 

そこには鉄扉は無く、代わりに丸い戦槌(メイス)が棺桶から出ている。

 

一部始終を凝視していると棺桶の中からゆっくりと"アレ"が上半身を起こした。

 

色違いのミイラのように黒い布でぐるぐる巻きだが、あれは長期保存のための魔術礼装の様なものだ。

 

「………………」

 

"アレ"が自らの手で、全身に巻き付いている黒い布外そうとすると黒い布に赤い呪詛が浮かび上がり、"アレ"の身体からひとりでに離れ、棺桶の中に包帯のように纏まった。

 

"アレ"はそれを不思議そうに眺めてからキョロキョロと辺りを見回している。

 

私は"アレ"にゆっくりと近づいた。

 

「…………!?」

 

"アレ"は私に目を合わせると棺桶の中で身体を縮め、怯えるような動作を取った。

 

私は"アレ"の隣まで近付くと、しゃがみ込み、目線の高さを合わせた。

 

「………………」

 

"アレ"は若干怯えながら、抵抗も逃げようともせずに私をしっかりと見つめている。どうやら悪い娘ではないようだ。

 

「はじめましてと言うべきかな?」

 

私は目の前にいる花嫁らしい純白のドレスに身を包んだ可憐な"少女"に笑顔を送った。

 

 

 

「"フランケンシュタインの怪物"さん」

 

 

 

ひとつわかった事がある。

 

電化製品の修理と称して叩いてみる行為はやはり正しかったようだ。

 

 




ほら…最初からこの小説のあらすじに"ご都合主義(物理)"って書いてあるじゃないですか。

魔術師でも錬金術師でも出来なかったことをするなんて……エリザちゃん恐ろしい娘…。

ちなみに黒バーサーカーことフランケンシュタインちゃんは英霊でも、亡霊でも、サーヴァントでもなく、生身です。本体です。

つまり何が言いたいかと言えば……フランケンシュタインちゃんを幸せにしてあげたい。



◇ちょっとした解説コーナー◆

黒い銃身(ブラックバレル)
恐らく判明しているなかで最強最悪の概念武装。サーヴァントなんて霊体ごと一発でこの世から消え去ります。聖杯になんて行かせません。最早、原初の一用決戦兵器のような代物。ORTさんだって外殻さえ壊せれば殺せちゃいます=事実上の不可能。

フランケンシュタインの怪物
サーヴァント恒例の公式女体化の被害者の一人。一番真面目にバーサーカーやってる娘。
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