アマタと真昼がプルガトリウムで合流。
二人で映画を見る。
「スマホスタンドないの? じゃあこれでいいか」
「いいんですか? 大事なものでは?」
「使ってやったほうが本望だろ」
スマホスタンドが無かったため、真昼の白旗を使うことにした。白旗を地面に寝かせ、試しに持ち手部分をスマホの支えにしてみる。バランスを取るのは難しかったが意外とできなくはない。それでも不安定ではあるので細心の注意を払いながら再生ボタンを押す。
「映画の一番最初、始まる前の」
「幕間ですね」
「あれが好きで、さ……」
真昼の表情が曇る。アマタは一瞥だけして、気づかれないように目をそらした。
真昼がプルガトリウムに居座って随分経つ。最後に映画館で何を見たのかすら、真昼は忘れてしまっていた。
「こういうの全部、俺は手放してきたんだな」
「……」
真昼の独り言にアマタは口を挟めなかった。映画が始まったからだ。せめて映画を見ている間だけは、その葛藤を忘れられますようにとアマタは静かに祈る。
×××
二人で映画を見るのに、スマホの画面は小さすぎた。各々が崩した座り方で、寄り添うように同じものを見つめている。そばにいるから相手の反応が余計に目がついた。ビクリと震える一瞬、堪えきれずに漏れ出る笑い声。言葉を交わさずとも、反応を見ればなんとなく、誰かと見る映画が好きなんだと互いに気づいていた。相手と仲良くなるのに、同じ視界を共有するのは手軽だ。
『貴方はさ、誰かを救える自分が好きなんだよ』
最初は実況するように反応していた真昼だったが、クライマックスに差し掛かると静かになっていた。息を呑んでいるのが分かる。図星と怯え……自分の罪悪感を撫でられるように刺激されているのだろう。アマタは「やめますか」と問いかけようとして、結局止めた。食い入るように見つめる真昼の横顔が、真剣そのものだったから。
『
『それは、今困っている君を見捨てる理由にはならないよ』
相手の問いかけに画面の中のヒーローは怯まない。
真っ直ぐ目前の人に手を差し伸べ、決して引かなかった。
『絶対助けると決めた』
真昼が、自分の頬に流れた涙を袖で拭う。
アマタは視界の端に見えた影を見ないよう、頬杖をついて誤魔化した。
×××
エンドロールに入って、真昼はようやく口を開く。
「お前は……」
「アマタです」
「……アマタは、俺が映画で泣いても笑わないな」
「この映画で泣ける人は良い人ですよ」
「どうかな……」
アマタはお約束が好きなやつなんだと真昼はようやく気づく。