二人で映画を見た。
嫌なところを突かれる。
「もういっか……」
「真昼?」
立ち上がった真昼をアマタは見上げる。
真昼の目が、チラチラと光を反射しているのが見えた。
「……いいんですね」
「うん」
真昼の決心がついたようだ。いや、もしかしたら……映画を見る前にアマタについていくと決めていたのかもしれない。真昼は白旗を回収し、アマタのスマホを手渡そうとする。アマタはそれを受け取ろうとして、
「……アマタ?」
突風、次にアマタが視界から消える。
違う、
「アマタ!!」
真昼が状況を把握した一瞬で、戦況が変動する。
割れたスマホ、転がる白旗、広がる血溜まり、その中にいるアマタ。そして、今にもアマタに掴みかかろうとするプルガトリウムの在来種。タイヤの姿をしている在来種は、ギュルギュルと回転速度を上げてアマタに突進を試みている。――動けるのは真昼ただ一人だ。
「ま、……って」
状況を把握しても、真昼は震える左腕を抑えるのに必死だった。
怯えている場合じゃない。頭で分かっているのに身にしみた恐怖が簡単に飲み込んでくる。
「終わったこと……!! あれは終わったことだろ!!」
……かつて交通事故に巻き込まれ、押しつぶされた左腕の感触がフラッシュバックする。震えを貶された日も、救われたときのことも、その救いを台無しにしてしまった罪悪感でさえ、容易に。
「朝日ちゃん……」
何度だって、もう一度救ってほしかった。でも叶わない。
朝日ちゃんは、夕凪チカコはいってしまった。
『負け犬』
その声は、一体誰のものだったんだろう。
貴方だったら、どれほど。
「……真昼」
「!」
アマタのかすれた声がした。
目線がかち合う。……導線が見える。
割れたスマホの位置と、転がった先の白旗、手を伸ばせば届く距離!!
「勝ちましょうよ、真昼」
「――うぅっ!!!!」
這うように進んだ真昼が割れたスマホを覗き込む。左腕が使えないからなんだ。足はまだ動く!! 勇気の目、自分の目をみた相手を強化する能力。その対象には真昼自身も含まれる!
「勝て、勝て……!!」
しかしボロボロと溢れる涙が行く手を阻む。
身体も震えるせいで、なかなか目線が合わない。
「勝てよ……」
それでも祈り続けるしかなかった。
人生が終わった先でも、またやりきれるんできるんだって。
転んでも立ち上がれる瞬間が来るんだと、お約束の結末を信じてみたかった!!
「勝てよ、涙!!!!!!!」
映画のセリフが真昼の脳内でこだまする。
『
誰もがそういう一側面を持っているんじゃないかと思った。
たぶん、そこで伸びてるアマタが諦めず手を伸ばし続けたのも、きっと。
『貴方は他人を利用しないと自分を守れないの』
今更の話だとも思った。
たとえそうだったとしても、そこから先の話をするって段階に入っているんじゃなかったのか。
「この勇気が……!!
覚悟がひとつあればいい。
負け犬の遠吠えが響く。
「ここで踏み出す一歩は、絶対に正しい!!」
------------------------------------------------------------
試作「勝てよ涙」
第一話「The_Underdog's_Howl」
------------------------------------------------------------
――絶対助けると決めた。