映画を見終わった。
アマタが襲撃される。戦闘開始。
真昼は落ちていた白旗を鷲掴み、アマタを助けるため敵に突っ込む。
真昼の身長を容易に越える大旗が風を含んで靡いていった。
「いちいち人の嫌なとこ突いてきやがってぇ!!」
プルガトリウムの在来種は【相手の弱点やトラウマの姿】を見せる場合がある。外来種の人類を排除しようとしているのか。それともトラウマに引き寄せられる性質をもっているだけなのか。どちらも定かではない。
「止まりな!!」
まずは大ぶりの払い!
しかし、タイヤの生物の方が小回りが効くようで空振りに終わる。
「分が悪い!」
バスケットボールのように跳ね回るタイヤ、これにどう当てるか。マキビシのようなものがあればパンクさせられたかもしれないが、あいにく持ち合わせがない。
「防ぐだけじゃ埒が明かねぇ……!!」
そうこうしている間にも、タイヤは真昼を追い込むように叩き込んでくる。真昼は白旗で受け流すのがやっとだった。アマタが狙われないようにたち振る舞うが、それもいつまで続くか……そうだ。
「お前、見えてるか?」
真昼の目がキラキラと反射している。
その輝きに呼応するように、タイヤの回転率がどんどん上がっていく。
「こいよ、我慢比べだ」
真昼はタイヤを見続ける。
もしコイツに目があるのなら……【勇気の目】が適応される。
タイヤも自身が勢いづくのを感じているようだ。ギュルギュルと力をため続け、この一撃に全てをかけようとする。
「俺に必要なのは、見つめ続ける覚悟だった……」
白旗を構え直し、フルスイングで向かい打てるように調節する。球もバットも大きいとはいえ、バッティングセンターなんて滅多にいかない。勇気の目の身体能力向上がどこまでやれるかは賭けだ。……タイヤが、迫ってくる。
「勝負だ」
パァンッ!!
結果は、タイヤが破裂して終わった。
真昼の身体能力向上に耐えられなかったのだ。
「こんな使い方もできるのか……」
真昼は目線を下に向ける。勇気の目はおまじない程度に使っていたが、真昼の想像以上に幅のある能力だったらしい。
……元々、能力の自覚がなかったわけではない。ただ、プルガトリウムにくるまで「そんなこともある」程度の予感にすぎなかった。真昼はプルガトリウムに残って、少しずつ能力のコントロールを覚えている。【自分は外で生きていけるような人間じゃない】という自覚が植え付けられながら。
「……切れたか」
敵が倒されて気が緩んだのか、真昼はガクリと膝を折ってしまう。
ぶり返しによる恐怖と罪悪感。震えが先程の比ではない。それでも白旗を手放さなかった。震える腕で抱きしめるように白旗を抱える。これはプライドだった。
「ふー……」
呼吸を整えようと務めるが、自分の行動を振り返ってしまって上手くいかない。「絶対に正しい」と言いながら、その絶対を信じきれずに涙が出る。強がりだった。本当の自分は勇者じゃないと誰かに言い訳したくなる。誰かを助けても、この矛盾は消えなかった。誰かに慰められたかった。同時に一人になりたかった。
静かに泣き崩れる真昼を見届けたアマタは、ボロボロの身体で立ち上がって近づく。
「不安ですか?」
「……」
「僕は不安ですよ」
アマタが真昼の前に膝をつく。二人の視線が交わる。
能力の責任、できてしまうこと、考えればキリがないほど重い。
「それでも貴方に言わなくてはいけない。僕の目を見て、真昼の勇気を分けて」
――勇気の目の本質は、誰かの後押し。
きっと迷いながら見つめ合っていけると、貴方に伝えなければならない。
「僕の味方になってください」
×××
「んじゃ、本日から正式にバディになるわけだが……わかってるな?」
二人は同時に「はい」と返事する。
「アマタ、お前は死ぬことを許されない。鍵を使えるお前が死ねば、プルガトリウムから出られなくなるからだ。真昼、お前も死んではならない。アマタを無事に帰還させるため、死ぬ気で働いてもらうぞ」
二人の「了解!」が響く。