機動戦士ガンダム0092ー Left Behind Memorie   作:トロフィー

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第一話 着火、そして宇宙へ

 

 

 

宇宙世紀0087年

 

ごく普通の好青年のパイロット候補生トモヤは、サイド1の16バンチで訓練を受けていた。

ある日の朝の点呼、大きな施設の前に候補生がずらりと並んでいた。

 

「お前らはもちろんパイロットになるのだから、規律を守るのは大切だよな。寝るなんてもってのほか。」

 

教官が強い口調で、ある候補生を睨みながら言う。

 

ドバン!!

 

立ちながら眠っていたトモヤを、持っていた本で思いっきり叩く。

痛ってぇ、今にも倒れそうに体を揺らしながら、トモヤが言った。

 

「はい!意識が飛んでました!申し訳ありません!」

 

寝ぼけたトモヤがそういうと、周りから笑い声が聞こえた。

教官からあきれたようなため息が出た。

 

劣等生、トモヤはそう言われていた。

成績も微妙、その上態度も微妙。それには理由があった。

 

トモヤの父は有名なMSのパイロットだった。それもあって、流れるようにトモヤもパイロットになった。

言うならばつまり、コネで入ったということ。

自分には父のような才能はない。そんな考えで適当に候補生として過ごしていたのだ。

 

「お前ら。こんな奴見習うなよ!ルイ候補生、彼は私の息子であり、とても優秀な候補生だ。こういうやつをしっかり見習え。」

 

さっきまで笑っていた候補生から笑顔が消えた。

また教官の息子の自慢か。全員が同じことを考えた。

成績優秀なルイ・ラウズ。コザマ教官の息子だ。

 

トモヤはまるで教官が自分とルイを比べて愉悦に浸っているような気がして腹がたった。

それじゃ俺について来い、そう教官が言って歩き出した。

 

 

 

 

 

 

施設に入り、大きな部屋へと入った。

そこにはMSのコクピットのような機械が15個ほど並んでいた。

 

「ここではMSにゲーム感覚で乗ることができる。お前らには、実践を体験してもらう。」

 

ルールは一つ、3対3で戦い、1機でも生き残った方の勝ち。

 

「はぁ。劣等生代表と一緒かよ。こりゃあ、遺骨は残んねぇな。」

 

同じチームになったガルド・シーランが言う。

ガルドに言われむかついたが、もっと最悪なことがあった。

対戦相手に、ルイの姿があったからだ。

 

「三秒数えたら開始だ!準備はいいな!3、、、2、、、1!始め!」

 

宇宙空間の映像が流れる。

 

ビュヒュン!!!

 

早速ビームライフルを打つ音が聞こえる。

 

「もう始まりかよ!ルイの野郎、ぶっ飛ばしてやるぜ。」

 

バーニアをふかし、ビームライフルをぎりぎりのところで避けた。

開始位置が近すぎるうえに、障害物がちょっとしたデブリしかなく、激しい戦いになっていた。

 

ドビューーン!!

 

味方一人撃破!と、文字が出る。

残るは味方はガルドのみ、だがそんなことにかまってる暇はなかった。

なぜだ、なにか違和感がある。

ルイがいない。あたりを見回しても、2機しか敵がいない。

 

ピピピ!

 

一瞬レーダーに、ルイと思われるMSの影が映る。

後ろだ。

デブリをうまく使い、後方に回っていたのだ。

 

「さっき落としたのもルイか。なかなかやるな。が、バレちゃあおしまいよ!」

 

レーダーの位置からルイの居場所を推測する。

脚部のバーニアを思いっきり吹かし、うまく調整しながら体を半回転させ後ろを向く。

 

「ここ!!当たれ!!」

 

ビューーン!!

 

トモヤが、雑にビームを撃つ。

ビームはルイの頭部をかすめ、ギリギリのところで避ける。

 

「な!よくあんな動き!」

 

驚きながらも、ルイもライフルを構える。

 

ビューン!ビューン!!

 

撃ち合いが始まる。どっちが当たってもおかしくない状況だった。

 

敵1機撃破!

 

ガルドが1機撃破したという知らせが来た。

二人の戦いにおいて、撃破の合図は邪魔でしかなかった。

 

ドドヒューン!!gameover!

 

あ、

 

そう思った頃には、トモヤは撃墜されていた。

 

「まぁ、無理かー。惜しかったと思うけどなぁ。」

 

トモヤがそう言葉を零した。

ガルドもいつの間にか撃墜されていたようだ。

しかし、トモヤよりもこの戦いで負けを感じる人間がいた。

 

「あんなのまぐれだ。いや、違う。あの動きは本物だ。なんであいつが、、、」

 

そう言いながら、ルイが拳を握りしめる。

あんなやつに俺が、、、そう言う考えが頭で回っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食時間、トモヤの好物の野菜オムライスの日。

健康食品のような食べ物しかでない軍人にとっては、月に一回のご馳走だった。

しかし、ウキウキで昼食室に向かうトモヤに水を指すような出来事が起きる。

 

「おい、トモヤだな。昼食を採った後、六時半に第三倉庫裏に来てくれ。少し話がある。」

 

ルイが肩を叩き囁く。

何事だよ。喧嘩はごめんだ。そう思いながら野菜オムライスをほうばる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

食後、約束通り第3倉庫裏に来てみると、夕日に照らされたルイが腕時計を見ながら立っていた。

 

「おう、来てくれたか。すまない。一つお前に聞きたいことがあってな。」

 

「この前の戦いのことか?俺の負けで終わりでいいだろ。」

 

トモヤが面倒くさそうに答える。

 

「お前はいつも本気を出しているのか?いつも適当に訓練を受けているんじゃないか?。」

 

問い詰めるようにルイが、聞く。

 

「ほ、本気?まぁ、確かにちょっと適当ではあるかもな。でも、お前と戦ったときは本気で戦ったぜ。」

 

ルイが、それを聞いて更に苛立つ。

 

「本気を出した?だろうな。じゃなきゃ困る。俺がいいたいことはな。お前には才能があるかもしれない。あの動きはまぐれじゃない。あんな動きができて、なぜ手を抜く!?」

 

トモヤはとても驚く。ルイがそんなふうに思っていたなんて。

 

「じゃあどうしろっていうんだよ。なぜ手を抜くかって?理由は簡単、お前ほどの情熱はないからだ。だから、本気を出す気にもなれないし、なろうとも思わない!」

 

それを聞いて、ルイが下を向く。

そして勢いよく顔を上げ、肩を摑む。

 

「面白いと思わないか?宇宙をMSで駆け回り、敵を落としていく。俺等でだ。俺がこんなこと言うのは性に合わないが、お前は強い。俺とやろうぜ!本気で!」

 

ルイの強い熱量に押されそうになったが、トモヤも少し冷静になる。

 

「なるほどな、まぁ、考えておいてやるよ。」

 

そう言って、少し強引に帰った。

 

「おい見ろよ。やっぱ美人だよなぁ。あの人。」

 

一人の候補生が言う。

マレイ・トレイン。超がつくほどの美人な整備士で、月に一回、彼女の姿を拝める日が来る。

いつもは自分もまんざらではなかったが、今日は違った。

あいつの言っていたことが頭から離れない。

俺には才能なんかあるはずがない。俺はもっと安全で、面白味もない人生を歩むだろう。そして死ぬ。

そう自分を卑下していた。でなければ、あいつの熱にやれそうだった。

 

 

 

 

 

 

 

1週間後…

 

候補生達にとって、待ちに待った日が来た。

実際にMSを使った実戦訓練だ。

この訓練は、実際に自分がパイロットになれるかなれないかの大切な訓練となる。

 

教官からの長い指示を受けた後、ようやく旧世代のジムに乗り込んだ。

胸の鼓動が高鳴るのを確かに感じた。

騙されるな。こんなデカいだけの機械、何とも感じない。そう自分に言い聞かせる。

 

「それでは、足を動かし前方に歩き出せ。八歩のみだぞ。」

 

ギュイーーンガシュン!

 

自分は全く理解していなかった。MSに乗る。まるでおとぎ話のように思っていた。実際に動かすと、圧倒的な非日常感の興奮で押しつぶされそうだった。

 

「これが、、、MS!ほんとに巨人みたいだ。」

 

歩きなどの、色々な基本動作を丹念にやった後、次はいよいよ宇宙空間での操縦だった。

 

ギュイーーン!ブシュー!

 

入念に占められた、コロニーから宇宙への扉が開く。

一寸先は真っ暗、そんな宇宙に、確かに足を踏み入れる。

 

ガシュン!ビューン!

 

 

 

 

 

 

「なるほどな」

 

 

 

 

 

 

 

今まで当たり前にいたコロニーが、まるで精巧に作られた偽物の世界のように思える。

これが本当の世界。恐怖を圧倒的に凌駕する興奮。好奇心が確かにあった。

宇宙をバーニアを軽く吹かして、少し動き再度コロニーに戻る。

しかしトモヤは、気づけばもう一度だけバーニアを吹かしていた。

ただ、それだけだった。

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