機動戦士ガンダム0092ー Left Behind Memorie 作:トロフィー
宇宙世紀0087年6月25日
部屋の入口にはジオン公国軍の旗、棚には勲章やMSの部品が転がっており、焼けて軍のマークのみが残った服の破片などが飾られている。
窓からは、海がよく見える立地の家で、一人の男がテレビを見ながら酒を飲んでいた。
「バラク・アーシュベルトだ。入るぞ。」
一人のコートを着た男が、ドアを叩きながら言う。
部屋の男はそれを聞いて立ち上がり、ドアののぞき穴を見る。
「お前、アクシズの人間か、いいぞ入れ。」
男が鍵を開け扉を開く。
バラクが隠れるように、急いで部屋へ入る。
「なるほど。愛国心の強い部屋だ。少し息が詰まるな。」
「すまん、居心地が悪かったな。さぁ、ここに座って。」
バラクがゆっくり椅子に腰を掛ける。
そして、コートから紙切れを取り出し話し出す。
「デラーズ戦争の生き残り、ルクス・オーガー。お前の名だな。」
ルクスが呑気に、沸かしていた水で紅茶を作り出す。
「そんな風に呼ばれてるのか。まぁいい。用はなんだ?」
「赤い彗星を知っているか?やつが生きているという話があってな。」
ルクスが紅茶を口に持っていこうとする手を止める。
なるほどという顔をしながら口を開ける。
「連邦はそのことについて嗅ぎ回っているのか。お前スパイだろ。」
そう言って左手でいつの間にかバラクに銃を向けていた。
「バラク・アーシュベルト。実在の人間の名前を使ったようだな。俺は、本物にあったことがある。お前とは似ても似つかんな。」
バン!!!
偽物のバラクの頭に穴が空く。
血しぶきがはね、奥の壁に飛んでいった。
「連邦はそこまで感づいているとは。しかし残念だが、赤い彗星はすでにアクシズと接触している。ジオン訛りもないしな。」
男の頭にビニール袋を被せ密閉した後、コートを掴み部屋を引きづりながら外に運ぶ。
「時代がまた動き出す、平和な世界は、俺には合ってないようだな。俺はとことん狂っちまったよ。」
外の家の壁に座らせた死体に向かって話す。
ルクスは自分のおかしさにとっくに気づいていた。
宇宙世紀0087年7月8日
ドビューーン!ガシャッン!!
MSが着陸する音が訓練場に響き渡る。
3週間ほど前には想像できなかったような状況だ。
2日に一回のペースでMSに乗り、基本操作の訓練を受ける。そんな訓練をトモヤは全力で楽しんでいた。
俺がここまでMSに取り憑かれるなんて。
結局自分は、父さんと何も変わらなかった。
(でも俺は死なないから。父さんみたいなヘマはしない。)
そうブツブツ考えながら、一人トレーニングルームに残って鍛えていた。
「どうやら、ようやく本気になれそうだな。」
後ろを見ると、嫌味のない笑顔のルイが手を乗せていた。
「別に、本気になったわけじゃない。」
トモヤは、ジムをまっすぐ見ながら話す。
「それは無理があるな。お前の練習態度はみるみる良くなってる。」
「勘違いしないでほしいが、別にお前に言われたから頑張っているわけではない。」
そう言って、トモヤはルイから離れようとするが、ルイがついてくる。
「俺よ。安心したんだぜ。お前が最後まで本気を出さず、その才能を使わず意味もなく死ぬようじゃもったいなさすぎる。」
そう言って前に出てくる。
「俺からも言わせてもらう。今度の模擬戦。お前を倒す。そしたらもう俺にこだわるな。俺は一人のほうが性に合う。」
トモヤが強くルイに向かって言う。
しかし、ルイはトモヤの予想に反してニヤッと笑い、嬉しそうに話し出す。
「なるほどな。お前に勝てばいいんだろ。俺は昔から努力してきたんだ。この教習所で最も強いのは俺だ。」
「じゃあ、模擬戦で決めるぞ。来月の。」
そう言って、トモヤがルイの胸を叩く。
「じゃあ一つ覚えておけ。俺は真っ先に全員を倒して回る。ずっと動き回って敵を倒して回っているやつがいたら、そいつが俺だ。分かったな?」
ルイがそう言って、トモヤに応えるようにトモヤの胸を叩く。
宇宙世紀0087年8月12日
1ヶ月が経った。そう、模擬戦の日。
いつもと違う場所、戦場には、いくつかの大きな岩、そして山、真ん中にはモビルスーツが入れるような建物があった。練習機のジムがずらりと複数機並んでいた。
「あっちぃなぁ。早くMSの中に入りてぇぜ。」
ガルドが配られた紙で顔を仰ぎながら話す。
日差しが照って、全員が軍服の袖をまくっている。
教官が前で説明を始める。
ルールは一人で戦闘し続け、負けたものはその場に座り込む。という簡単なルールだ。戦闘にはペイント弾を使用し、MSの録画された映像によって候補生の最終評価が決まるという重要な日だった。
「あと、一つ重要なことだ!モビルスーツの過失による損傷を起こした時点で失格だ!わかったな!」
教官が続いて重要な感じで言った。
「よぉ、トモヤ。お前最近頑張ってるみたいじゃねぇか。ちょっと尊敬するぜ。」
軍服が崩れている人間が話しかけてきた。ガルドだ。
「まぁそんなお世辞はここまでだ。お前には負けねぇからな。一応、ルイの奴さえいなけりゃ俺は成績ナンバーワン何だよ。」
ガルドがそう言うと、紙に包まれたガムを投げて一つ渡す。
「ガムを噛むと集中できるぜ。お守りだ。」
そして、MSに乗り込む。今日はまだ類とは言葉を交わしていないが、考えていることは同じだった。
あいつを倒して証明する。自分が一番だということを。
ドシン!ドシン!ドシン!
ジムが既定の位置まで歩き始める。
「それでは規定の位置に着いたな?私が3秒数えたら、スタートだ!それでは、、、、」
3...
モビルスーツの通信から、いつもの教官の勢いある声が聞こえる。
ガルドは、モビルスーツのコックピットを開け体を外に出し風邪を浴びていた。ペアにサムズアップをした後、コックピットに戻る。
2....
トモヤはガムを眺めていた。
すぐ味が無くなりそうだ。これは、戦闘のときに噛もう。そう思い、ポケットにガムを入れる。
1...
ルイは戦いに備え、戦場の地図を確かめながら、モビルスーツを調整していた。いよいよ戦いが始まる。
全員の鼓動が大きくなる。
「0!!スタートだ!」
ドシン!!ドシン!!
この戦場では、外縁の山に登り、静かに戦いを待ちながら遠距離から漁夫の利をとる作戦。もしくは周辺の岩のある地帯で黙々と的と戦う作戦。中心部の建物でガンガン戦うという作戦が考えられる。
銃声が聞こえる。
山の方からだ。二人も直ちにそこに向かう。
少し歩くと、2機のモビルスーツが座り込んでいた。
「なんだお前?トモヤか?残念だが俺はもう負けたぞ。」
モビルスーツをよく見ると、胸の部分にペイントがついている。
声を聞くと、候補生のジョックだった。
「誰にやられたんだ?こんな山で。こんなに早く。」
トモヤが驚きながら聞く。
「普通山にすでに登ってるやつと戦おうとはしないよなぁ?地形的に不利だからだ。でもあいつは、俺等に真っ先に接近して、あっという間に倒しやがった。そして走り去っていったよ。」
こんな早くから動き回っているのか?
エネルギーのことを考えたら、早々に走り回るなど誰もやろうとはしない。
これは、おそらくルイの仕業だ。となると、行方が気になる。
「あいつはどこに行ったか分かるか?」
「真ん中に走り去っていったから、多分あの建物の、あたりじゃないかなぁ。お前真ん中行く気か?あそこは成績トップ10ばっかだから気をつけろよ。」
それを聞いて、トモヤが感謝を言って中心へ向かう。
岩を盾にしながら、どんどん建物へ進んでいく。
ドドドドドド!!
銃声がいたるところで鳴り響いていた。
がしかし、なぜか行く途中でモビルスーツと交戦することはなかった。
なぜなら、全員撃破されていたからだ。
そこまで強いとは思っていなかった。恐らくルイの仕業だろう。
そうして、建物のの入口についた。
建物の中を見ると、錆びついてボロボロの、恐らくモビルスーツ用の古い軍事施設だった。
ドザザ!!
早速モビルスーツによる不意打ちを受ける。
まずい。そう思い咄嗟に座り込んでいた眼の前のモビルスーツを盾に使う。
「うわっ!!何だよ!アブねぇだろうが!」
盾にしたモビルスーツから怒号が聞こえる。
「悪い!!済まなーーい!!」
ドヒューーン!!
ペイント弾が当て、早速1機撃退する。
よし、よくやった俺。そう心のなかで言いながら、更に奥へ進む。
建物内のどこからか物音がする。
おそらくモビルスーツ。
「お前トモヤか?よく中央に来た。褒めてやるぞ!」
通信からルイの声が聞こえる。
どこだ?周りを見渡すがどこにもいない。
「ここだよ。そこの先の上の方だ!」
巨大なコンテナの上に、ルイの乗るジムが立っている。
「会いたかったぜ。」
ドヒューーン!
ペイントがルイを横切り、壁にぶつかる。
「ウォールアートでもするつもりか?そんなひょろい狙いじゃ俺には当たらねぇよ!」
ルイが即座に下に逃げ、壁の裏に逃げた。
だが奴はここに来るまでに、恐らくエネルギーを多く消費している。
まるでルイがハンデを負っているようで、少し気に食わないが、そこを突けば確実に勝てる。
静かにコンテナの裏に周り、ルイが走っていった方を隠れながら確認する。
ガサガサ!
またも物音がする。
壁の向こうにジムの頭パーツが見える。
ドヒューーン!!
迷わずペイント弾を打つ。
しかし、微動だにしない。
「それは囮だ!」
ドヒューーン!!
ジムの裏からもう1機ジムが出てきて、ペイントを打ち込む。
トモヤは咄嗟に片足を上げ、足と背中のバーニアを思いっきり吹いて、無理に後ろに飛ぶ。
ドッシャーーン!!
無理な飛行で、後ろの壁に衝突したが、弾を避けることはできた。
「壊れてねぇといいけど!」