エクスデス先生スレに投稿するやつ   作:eriza7170

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魔列車VSグラシャラボラス 短文版

「整備員の何人かが行方不明になってる?」

 

休憩室で休んでいたノゾミは、目の前に座るアオバの話に耳を傾けていた。

 

いつもの雑談から始まったはずの会話。しかし、行方不明という物騒な単語が飛び出したことで、室内にはどこか暗い空気が漂い始めていた。

 

「えぇ。なんでも、一年生が根性なく逃げ出したんだとか……そんな話を聞いたんですけど」

「それでー? 後ろにいるエクスデス先生と関係あるのー?」

「うむ。今回の事例、過去の魔列車案件によく似ているのでな」

 

アオバの背後から、重々しい声が響いた。

そこにいたのはエクスデス先生だった。

 

「前に……スオウゼロムスが現れた時のことを覚えているか?」

「グラシャラボラスと初めて出会ったときの?」

「今では私たちのしょうかんじゅー!」

「うむ。その時と同じ反応がしているのだ。我が枝にな」

「つまり、洗脳された召喚獣ってこと?」

「ダブルグラシャラボラスはちょっといっぱいいっぱーい!」

 

ノゾミとアオバがそれぞれの反応を見せる中、エクスデスは首を横に振った。

 

「いや、今回、魔列車の目的がはっきりと分かっている。死者の回収だ」

「……冗談?」

「いや。最近、アリウスでゾンビの存在が確認された。それを強引に回収しに来ているのだろうな」

 

エクスデスは腕を組み、考え込んだ。

 

「そして、アリウスには鉄道が通じていない。わざわざ線路を新設してまで向かおうとしているのなら、なおさら異常だ」

「でもさー、死者を回収するなら、どうして一年生たちに線路を掘らせてるの?」

 

ノゾミの疑問に、エクスデスはわずかに目を細めた。

 

「……そこだ。死者を運ぶだけなら、線路を敷設する必要などない。ましてや、生者を使役する理由もないはずだ」

「じゃあ、何のために?」

「分からぬ。だが、単なる機械の暴走ではあるまい。何かを運ぶためではなく、何かの居場所へ到達するために線路を作っている……そう考えるべきかもしれぬな」

「それで、ハイランダーが立てた予想図なんですけど……」

 

アオバはスマートフォンを取り出し、写真フォルダを開いた。

 

画面に映し出されたのは、地下へと伸びる見慣れないトンネル。そして、その奥で作業を続ける複数の少女たちの姿だった。

 

朝から夜まで働き続けていたアオバだからこそ、偶然気づけた異変だったのだろう。

 

「確かに、こりゃまずいね」

 

映像の中では、行方不明になった一年生たちが、土埃にまみれながら線路を掘り進めていた。

しかも、どう見てもまともな労働環境ではない。

 

「……なるほど。急いだほうがよさそうだな」

 

エクスデスは静かに立ち上がった。

死者を回収する魔列車。そして、知らぬ間に地下へと作られていた線路。

その二つが意味するものを、彼はまだ完全には理解していなかった。

だが、放置すれば取り返しのつかない事態になる。

それだけは確信していた。

 

002

 

「グラシャラボラス、しゅっぱーつ!」

 

「しゅっぱーつ!」

 

夜の街に、二人の少女の元気な声が響いた。

声こそいつも通りふざけているが、その表情は真剣そのもの。ノゾミとアオバは、グラシャラボラスに乗り込み、件のトンネルへと向かっていた。

運転席の前方には、グラシャラボラスの視点から見える映像が映し出されている。

ライトが照らす先には、深夜の市街地と、その向こうに広がる漆黒の闇。

やがてグラシャラボラスは速度を落とし、静かに停止した。

ライトの先に現れたのは、地下へと続く巨大なトンネルだった。

そして、その奥には――。

 

「……そこで止まれ」

「了解、先生。こりゃひどいね」

「みんな痩せてるから、徹夜作業?」

 

トンネルの中では、行方不明になった一年生たちが、土埃にまみれながら黙々と作業を続けていた。

疲れ切った顔。汚れた制服。休む間もなく線路を敷設する少女たち。

どう考えても、ただの家出や逃亡で片づけられる状況ではなかった。

 

「まずは私がトンネルまで向かう。連れてきた人員には、一年生たちの回収を任せよう」

 

エクスデスがそう告げた、その瞬間だった。

 

ポッポー!!!!!!!!

ポッポオオオオオオオオオ!!!!

 

耳をつんざくような汽笛が、夜の地下空間に鳴り響いた。

 

「なんだ!?」

「汽笛の音って……!」

「まさか、まれっしゃー!?」

 

三人が顔を上げる。

そこには、かつてグラシャラボラスが変化していたものとよく似た、異形の列車があった。

魔列車である。

しかも、こちらへ向かって全速力で突進してきていた。

 

「いかん! アロナ! プラナ! 私に魔力を!」

 

『『はい、先生!』』

 

エクスデスは即座に魔法を発動する。

行方不明だった一年生たちに対し、テレポを使用!

光に包まれた少女たちは、魔列車の進路から一瞬で退避させられた。

その直後、魔列車がトンネルへと突入する!

 

轟音とともに土砂が爆ぜ、岩盤が砕け散る。まるで魔力そのものを掘削機に変えたかのように、魔列車は行く手を塞ぐ地面を破壊しながら進んでいった。

 

「くっ! こちらの考えが読まれていたか!」

「ちょっと待って、先生! グラシャラボラスにメッセージが!」

「再生せよ! あの魔列車と関係があるかもしれぬ!」

 

ノゾミが操作すると、グラシャラボラスの車内に不気味な音声が響き渡った。

 

『死者が此の世を生きることなど許されぬ、許されぬ、回収せよ、此の世から退去せよ』

 

機械的でありながら、どこか怨念を感じさせる声。

音声が途切れた、その直後。

 

『……まだ……帰りたくない……』

 

かすかな声が、ノイズに混じって聞こえた。

 

「……今の、聞こえた?」

 

ノゾミが小さくつぶやく。

 

「うん。でも、魔列車の声じゃなかったような……」

 

エクスデスは黙り込んだ。

今の声が何を意味するのか、彼にも分からない。ただ、魔列車の言葉とは明らかに異なる何かが、そこにはあった。

 

「……気になるが、今は列車を止めることが先だ」

 

エクスデスは杖を握り直した。

 

「ヤツの狙いは、やはりアリウスのゾンビたちか!」

 

「悲しい思い出だけになんかさせなーい!」

 

ノゾミは操縦席で力強く声を上げた。

 

「グラシャラボラス、はっしーん!」

 

グラシャラボラスが唸りを上げ、魔列車を追って走り出した。

 

003

 

「しかし、後ろを追いかけるだけではいずれカタコンベに到着する。そして、そこを突破されればアリウスに到達されてしまう……!」

 

追跡を続けながら、エクスデスは状況を分析していた。

 

相手は地形を破壊しながら進む魔列車だ。このままでは、アリウスにたどり着く前に止められる保証はない。

 

だが、その時。

 

「そんなときに、しんはっけーんぎじゅつ!」

「ぱひゃひゃ! グラシャラボラス・エーテルアーム変化!」

 

グラシャラボラスの車体が、わずかに身震いした。

次の瞬間、正面の顔の両脇から、巨大な二本の腕が生えてきた!

 

「おおっ!?」

「いっけー!」

 

グラシャラボラスはその腕を大きく振りかぶると、魔列車の客車を一両、また一両と掴み上げ、豪快に投げ飛ばし始めた。

 

ガゴーン!!

 

バゴーン!!

 

客車が宙を舞い、トンネルの壁に激突する。

もはや追跡というより、走行中の列車を解体しているような光景だった。

その時である。

 

「待ちな!!!!」

 

突如、前方から一人の剣士が飛び出してきた!

 

「とりゃりゃりゃー!」

 

剣士は勇ましい掛け声とともにグラシャラボラスへと斬りかかる。

 

グラシャラボラスに8ダメージ!

 

「俺の名はジークフリードォォォオオオオオ!?+!?」

 

名乗りを上げた直後、ジークフリードはグラシャラボラスの巨大な片腕に捕まった。

 

「お、おい! 待て! まだ俺の見せ場は――」

 

ぶんっ!

そのまま後方へと投げ飛ばされた。

 

「ぬわああああああああああ!?」

 

剣士の悲鳴が、夜の闇へと遠ざかっていく。

 

「……何だったんだ、今のは?」

「さぁ? それより、そろそろ先頭車両だよ!」

 

ノゾミの言葉通り、グラシャラボラスは次々と客車を投げ飛ばし、ついに魔列車の先頭車両へと到達した。

 

『死者ヲ回収、奪取、確保セヨ!』

 

魔列車が叫ぶ。

その直後、後方へ向けて大量の車輪が射出された!

通常の車両についている数をはるかに超える、無数の車輪。それらが唸りを上げながらグラシャラボラスへと迫る。

だが、グラシャラボラスはひるまなかった。

巨大な両腕を構え、飛来する車輪を正面から受け止める!

 

そして――。

 

「グラシャラボラスキャーッチ!!!」

 

ドゴォォォン!!

ついにグラシャラボラスは、魔列車の後部を両腕でがっちりと掴み取った!

 

「今だ! 出力を最大に!」

「「いいですともー!」」

 

ノゾミとアオバの声が重なる。

グラシャラボラスの駆動音が一段と高まり、車体から魔力が噴き上がった。

ギギギギギギギギギギギギ――!!

二つの列車が、耳障りな金属音を響かせながら引っ張り合う。

まさに、列車同士の綱引きである。

 

『死者ヲ、回収セヨ……!』

 

魔列車はなおも前進しようとする。

しかし、相手が悪かった。

グラシャラボラスは、ただの列車ではない。

次元を超えて召喚され、ノゾミたちと絆を育んだ、れっきとした召喚獣なのだ!

 

「いっけええええええ!!」

 

グラシャラボラスが最後の力を振り絞る。

そして、ついに魔列車を後方へと引きずり始めた!

そのままトンネルを抜け、夜空へと飛び出す二つの列車。

グラシャラボラスは魔列車を掴んだまま、勢いよく上空へと放り投げた!

 

「私の生徒に手を出すからこうなるのだ!!!」

 

エクスデスが杖を掲げる。

収束する魔力。夜空を照らす閃光。

そして――。

 

フレア!!

 

大爆発が夜空を覆い尽くした。

魔列車は轟音とともに爆発四散し、その姿を跡形もなく消し飛ばしたのだった。

 

 

 

 

戦闘が終わり、静寂が戻った。

救出された一年生たちは無事に保護され、行方不明事件もひとまず解決へと向かうことになる。

ただし、地下に作られた線路の撤去や、破壊されたトンネルの修復など、後始末は山積みだった。

 

「……先生、これ、修理費ってどこから出るんですか?」

「それは……後で考えよう」

「ぱひゃひゃ! グラシャラボラス、だいかつやくー!」

「次はもっと上手に車両を投げたいね!」

 

そんな二人の声を聞きながら、エクスデスは爆発の跡を見つめていた。

魔列車が消えた場所には、黒い煙と、微かな魔力の残滓だけが残されていた。

彼は杖を伸ばし、その残滓に触れる。

 

「……なるほど。そういうことか」

「先生、何か分かったの?」

「確証はない。だが、あれは死者を生み出すための存在ではない。死者を運ぶための存在だったのだろう」

「運ぶって……どこに?」

「死者の行くべき場所へ。少なくとも、かつてはそういう役割を与えられていたのだろうな」

 

エクスデスは目を閉じ、残された魔力の記憶を読み取ろうとする。

そこにあったのは、古い命令の残響だった。

死者を乗せること。

死者を運ぶこと。

そして、死者を此の世から送り出すこと。

それは本来、誰かを傷つけるための命令ではなかったのかもしれない。

 

「だが、何らかの理由で、その使命だけが残ってしまった。死者が何を望んでいるのか、生者が何を思うのか。それらを考えることなく、ただ回収し、運び、此の世から退去させる」

「……じゃあ、アリウスの子たちも?」

「ああ。あれにとっては、彼女たちが何者であるかなど関係ない。死者である。それだけで回収する理由になるのだ」

 

ノゾミは、静かに拳を握った。

 

「……そんなの、絶対に認めないよ」

「うむ」

 

エクスデスはうなずいた。

 

「死者を送ることが間違いなのではない。死者が何を望んでいるかを確かめもせず、ただ使命だからと連れ去ることが間違いなのだ」

 

彼は、アリウスのある方角を見つめた。

 

「彼女たちは、ようやく生きることを始めたのだからな」

 

その時だった。

 

『……まだ……帰りたくない……』

 

消えたはずの魔力の残滓から、かすかな声が響いた。

 

三人は一斉に振り返る。

 

しかし、そこにはもう何もなかった。

 

「……今の声」

「うん。さっきと同じだね」

 

エクスデスはしばらく黙り込んだ後、ゆっくりと杖を下ろした。

 

魔列車は死者を運ぶ使命を果たそうとしていた。

では、あの声は誰のものだったのか。

魔列車が運んできた死者たちの残響か。それとも、かつてその列車に乗り、帰りたくないと願った誰かの記憶か。

 

あるいは――。

 

 

「……いずれ、確かめる必要があるな」

 

 

エクスデスはそうつぶやき、歩き出した。

死者を運ぶ列車は消えた。

だが、死者をこの世に留める願いまで、消えたわけではない。

そして、その願いを守ることこそが、今を生きる彼らの役目なのだろう。

なお、その頃。

遠く離れた夜空の彼方では――。

 

「俺の名前を最後まで聞けええええええええええ!!」

 

謎の剣士ジークフリードの叫びが、むなしく響いていた。

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