エクスデス先生スレに投稿するやつ   作:eriza7170

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ダンサーの司祭

「今回はいつも通り!!!!!!!!

異色の組み合わせだァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!』

 

アナウンサーの絶叫が、アルカディア全域へと響き渡った。

 

観客席から返ってくるのは、もはや歓声というより地鳴りである。

 

魔物。

 

獣人。

 

生徒。

 

オートマタ。

 

そして、何故か無名の司祭と同じ格好をした者たち。

 

その数は、時間が経つほど増えている。

 

「ダンサー様ァァァァァ!!!!!」

 

「こっち向いてー!!!!」

 

「いつか倒してやるぞー!!!!」

 

「無名の司祭は無に追放されたはずでは!?」

 

「踊りで次元をこじ開けたらしい」

 

「爆笑ものだな」

 

「だが、それがいい!!」

 

会場は完全に相手側のホームと化していた。

 

そんな熱狂の渦の中央。

 

エクスデス先生は、ただ静かに相手を見据えていた。

 

その隣ではアロナとプラナが杖を構えている。

 

二人とも、いつ戦闘が始まってもいいように完全な戦闘態勢だ。

 

しかし――。

 

「…………」

 

対戦相手は、静かだった。

 

一人。

 

白いローブ。

 

見覚えのある、無名の司祭の姿。

 

だが、かつての彼とは明らかに違う。

 

身体から溢れ出しているのは、得体の知れない魔力。

 

いや。

 

それだけではない。

 

妙に軽快なリズムを刻みながら、足先が動いている。

 

「無名の司祭?」

 

アナウンサーが叫ぶ。

 

「いいえ!!!!!!」

 

「色彩の手先?」

 

「いいえ!!!!!!」

 

「彼はド根性と自身で磨き上げた!!!!」

 

「磨き続けた!!!!」

 

「踊りの魔法だけでアルカディアを支配した魔王!!!!!!」

 

一拍。

 

そして。

 

「ダンサーの司祭だァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!」

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!』

 

歓声が爆発した。

 

その瞬間だった。

 

ダンサーの司祭が、すっと片腕を天へ掲げる。

 

そして――。

 

跳んだ。

 

「――――ッ!」

 

足を大きく開き。

 

空中で一回転。

 

着地。

 

ドォォォォォンッ!!

 

背後で爆発が起きた。

 

意味はない。

 

少なくとも、攻撃ではない。

 

ただ格好いいから爆発した。

 

だが、それだけで観客は熱狂した。

 

「ダンサー様ァァァァァ!!!!!」

 

「カッコいいぞォォォォォ!!!!!」

 

「俺も踊るぞォォォォォ!!!」

 

もはや誰も止められない。

 

ダンサーの司祭。

 

その正体は、踊り子というジョブの限界を超えた存在だった。

 

かつてバッツたち光の戦士が身につけた「踊り子」。

 

そのジョブすら遥かに凌駕する。

 

もはやこれはジョブではない。

 

踊りそのもの。

 

ダンサーの司祭は静かに口を開いた。

 

「お前が……我々無名の司祭の敵対者」

 

「さらに、名もなき神々の王女を誑かし、色彩すら打倒したエクスデス先生か」

 

対するエクスデス先生も口を開く

 

「無名の司祭……貴様、何をしに現れた」

 

「理解できぬ」

 

ダンサーの司祭が、ボックスステップを踏みながら答えた。

 

「見れば分かるだろう」

 

「何がだ」

 

「踊りだ」

 

左右。

 

左右。

 

一歩。

 

二歩。

 

そしてターン。

 

そのたびに、周囲の景色が変化していく。

 

床が石畳へ。

 

石畳が草原へ。

 

草原が水面へ。

 

水面が空へ。

 

空が宇宙へ。

 

踊っているだけなのに、世界そのものが書き換えられていく。

 

「……ッ!?」

 

アロナが杖を掲げた。

 

「レビデト!」

 

しかし――。

 

ダンサーの司祭が、指を一本だけアロナへ向けた。

 

「ミュート」

 

「――――!?」

 

アロナの声が消えた。

 

「はわわ!?」

 

「発声不能を確認」

 

プラナが冷静に報告する。

 

「複数回行動……」

 

「その通り」

 

ダンサーの司祭は踊り続ける。

 

「私はボスである」

 

「ボスだから複数回行動する」

 

「そして踊る」

 

「…………」

 

エクスデス先生は頭を抱えた。

 

「何を言っておるのだ貴様は」

 

「我々は、色彩をも超える力を手に入れた」

 

「何!?」

 

「古より行われてきた行為」

 

ダンサーの司祭が、両腕を広げる。

 

「神という存在が形を持たなかった時代」

 

「火という文化が生まれ」

 

「人々が獲物を食らい」

 

「その姿から発想を得た」

 

一拍。

 

「踊りだ」

 

「…………」

 

エクスデス先生は沈黙した。

 

アロナも沈黙した。

 

プラナも沈黙した。

 

そして。

 

「踊り子か!?」

 

エクスデス先生が叫んだ。

 

「そうだ」

 

「それってバッツさんたちと同じ、光の戦士のジョブってことですか!?」

 

「分析……」

 

プラナがダンサーの司祭を見つめる。

 

「レベル、不明」

 

「ジョブ、不明」

 

「分類不能」

 

「イレギュラー存在です」

 

「でしょうね!!!!」

 

アロナが叫んだ。

 

その瞬間。

 

世界が変わった。

 

巨大なダンスフェスティバル会場。

 

無数の照明。

 

巨大なステージ。

 

謎の観客。

 

そして中央に立つ二人。

 

ダンサーの司祭とエクスデス先生。

 

「…………」

 

エクスデス先生は自分の服を見る。

 

「何故だ」

 

衣装が変わっている。

 

魔王のような姿だったはずなのに。

 

今の自分は、妙に踊りやすそうな衣装を着ている。

 

「何故、我の衣装まで変えた」

 

「踊りやすいだろう?」

 

「踊らん!」

 

「そうか」

 

ダンサーの司祭は残念そうに首を振った。

 

そして。

 

「我々が行うのは踊り」

 

「神への儀式」

 

「すなわち――」

 

全員が一列に並んだ。

 

そして。

 

グルグル。

 

グルグル。

 

身体を大きく円形に動かし始める。

 

全員の動きが完全に一致している。

 

まるで巨大な列車のようだ。

 

「我々の力を侮るなよ、エクスデス先生」

 

ダンサーの司祭が笑う。

 

「今までの無名の司祭とは違うと思うがいい」

 

「我々はダウンではなく――」

 

「アップである」

 

「挑め」

 

「挑戦者よ」

 

「高みへ!!!!」

 

『制約解除決戦――』

 

『踊りの司祭』

 

ドンッ!!

 

「大嵐のラプソディ」

 

ダンサーの司祭が回転した。

 

ただの回転ではない。

 

縦。

 

横。

 

斜め。

 

ランダム。

 

直線的な動きなど一切存在しない。

 

次の瞬間。

 

「――――!」

 

巨大な羽が現れた。

 

風を纏った鋭利な刃。

 

一枚。

 

二枚。

 

十枚。

 

百枚。

 

無数の羽がフィールドを埋め尽くす。

 

そして。

 

ゴロゴロゴロゴロ……。

 

雷鳴。

 

「逃げ場を探せば雷が落ちるぞ」

 

「なに!?」

 

轟ッ!!

 

雷。

 

雷。

 

雷。

 

雷。

 

風の刃と雷撃。

 

その全てが、ダンサーの司祭の踊りが終わった瞬間に――。

 

「来る」

 

一斉に襲い掛かった。

 

「これは……!」

 

エクスデス先生が目を見開く。

 

「モーグリの踊り……!」

 

「グワァァァァァァァァ!!!!!」

 

直撃。

 

「リフレク!」

 

アロナが反射魔法を展開する。

 

「これで――!」

 

「――あれ?」

 

雷が反射をすり抜けた。

 

「ぐわーっ!!!!!」

 

「タイミングは完璧なはずなのに!?」

 

プラナが即座に分析する。

 

「攻撃属性ではありません」

 

「では何だ!」

 

「踊りです」

 

「…………」

 

「踊り判定です」

 

「なんだそれは!?」

 

エクスデス先生一行。

 

残りHP――約一割。

 

「体力減少、一撃で危険域です」

 

「ふふふ」

 

ダンサーの司祭は笑っている。

 

「これが踊りの力だ」

 

「先生!」

 

アロナが叫んだ。

 

「ライブラを使いました!」

 

「何が分かった!?」

 

「ダンサーの司祭の攻撃力が異常に高い理由です!」

 

「それはなんだ!」

 

「踊りです!」

 

「見れば分かる!」

 

「違います!」

 

アロナは必死に叫んだ。

 

「対応する踊りを、同時にこなすしかありません!」

 

「…………」

 

エクスデス先生は固まった。

 

「このエクスデスに」

 

「踊りを踊れというのか?」

 

「そうです!」

 

「我は世界を支配する魔王だぞ!?」

 

「今は踊ってください!」

 

「威厳がなくなる!」

 

「そんなこと言ってる場合ですか!」

 

その瞬間。

 

「話す暇があるのか?」

 

ダンサーの司祭が一歩踏み出した。

 

『世界樹のノクターン』

 

身体が小さくなる。

 

そして――。

 

跳ぶ。

 

一気に巨大化。

 

大地から木々が生え。

 

草原が広がり。

 

巨大な樹木の根が蠢き始める。

 

「自然の成長力を示す踊りだ」

 

ズゴォォォォォン!!

 

巨大な根が襲い掛かる。

 

アロナが咄嗟に踊った。

 

プラナも同時に踊る。

 

二人の身体が、攻撃に合わせて自然なリズムを刻む。

 

「――回避!」

 

二人は攻撃を透過したかのようにすり抜ける。

 

しかし。

 

エクスデス先生は――。

 

「…………」

 

動けなかった。

 

「先生?」

 

「…………」

 

根が迫る。

 

「いやだ」

 

「先生!?」

 

「踊りたくない!」

 

「先生――!」

 

ズドォォォォォン!!

 

エクスデス先生。

 

HP――ゼロ。

 

『GAME OVER』

 

「せんせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

アロナが絶叫した。

 

プラナは冷静に告げる。

 

「アロナ先輩」

 

「はい!」

 

「これでは踊りに対する人数が足りません」

 

「はわわ!?」

 

そのとき。

 

「そんなときの!」

 

「わたしたちだよ!」

 

ベキッ。

 

世界の壁が割れた。

 

「…………え?」

 

バキバキバキバキッ!!

 

空間そのものが破壊される。

 

そこから現れたのは――。

 

不気味なアンティークドール。

 

「カルコ……」

 

「プリーナ……?」

 

『その通り!』

 

カルコブリーナ。

 

その人形は瞬時に分裂した。

 

赤。

 

青。

 

そして、ゴスロリチックな衣装を纏った小型の人形たち。

 

「「ブリンク!」」

 

「「そして召喚!」」

 

光が弾ける。

 

召喚されたのは――。

 

「え?」

 

ハナエだった。

 

「ここ……アルカディアの中ですか!?」

 

「ハナエおねえちゃん!」

 

アロナが叫ぶ。

 

「パパの代わりにアタッカーをやって!」

 

「私がですか!?」

 

「はい!」

 

「救護要員なんですけど!?」

 

「大丈夫です!」

 

「何が!?」

 

「ゲームなので!」

 

「それ大丈夫じゃないですよ!?」

 

その頃。

 

ダンサーの司祭は静かに次の踊りへ移っていた。

 

「作戦会議は終わったか?」

 

「……!」

 

『大砂漠のララバイ』

 

砂嵐。

 

一瞬にしてフィールドが砂漠へと変わる。

 

視界ゼロ。

 

砂嵐が吹き荒れる。

 

「この踊りの間、踊っていない者は――」

 

ダンサーの司祭が指を鳴らした。

 

「体力を失う」

 

ハナエのHPが急速に減少していく。

 

「ええい!」

 

ハナエがチェーンソーを構えた。

 

「救護は度胸!」

 

「なんでもやってみるもんです!」

 

ブォォォォォォン!!

 

チェーンソーが唸る。

 

「チェーンソーダンス!!」

 

斬撃。

 

斬撃。

 

回転。

 

斬撃。

 

「…………」

 

ダンサーの司祭の動きが止まった。

 

「何?」

 

「効いてます!」

 

アロナが叫ぶ。

 

「どうして!?」

 

「ダンサーの司祭が対応できない踊りだからです!」

 

「チェーンソーで踊っているだけでは!?」

 

「踊りです!」

 

「踊りならなんでもいいんですか!?」

 

「たぶん!」

 

「たぶん!?」

 

ハナエの攻撃が続く。

 

ダンサーの司祭のHPが削れていく。

 

「師匠」

 

後ろの弟子が問う。

 

「慌てるな」

 

師匠は踊りながら答える。

 

「これは現実ではない」

 

「ならば?」

 

「踊り続けなさい」

 

「了承」

 

『重愛のセレナーデ』

 

炎の嵐が吹き荒れた。

 

だが、二人ずつが腕でハートを作る。

 

「…………!?」

 

「何ですかそポーズ!?」

 

ハナエが呟く。

 

「炎のダメージを軽減している……?」

 

カルコブリーナたちがブリンクを繰り返す。

 

そのたびに攻撃の威力が下がる。

 

「いや、だから何で踊りで軽減されるんですかこの魔法!」

 

「分析結果、不明」

 

「ですよね!」

 

それでも。

 

ハナエはチェーンソーを振る。

 

一歩。

 

二歩。

 

三歩。

 

踊りながら斬る。

 

「がんばって、ハナエおねえちゃん!」

 

「こっちも頑張って踊るね!」

 

アロナとプラナも踊る。

 

カルコブリーナも踊る。

 

ハナエも踊る。

 

そして――。

 

ダンサーの司祭も踊る。

 

「見事だ」

 

彼が笑う。

 

「だが、これで終わりだ」

 

『深淵のラプソディ』

 

空間が暗転した。

 

ダンサーの司祭たちが両腕を大きく広げる。

 

背後に巨大な深淵が開く。

 

「これは……!」

 

アロナが息を呑む。

 

「即死攻撃です!」

 

プラナも分析する。

 

「全体即死攻撃の可能性、極めて高い」

 

深淵が広がる。

 

世界が飲み込まれていく。

 

まるで――。

 

ネオエクスデスのグランドクロス。

 

「させません!」

 

ハナエが前へ出た。

 

「チェーンソーの舞――!」

 

ブォォォォォォン!!

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

斬撃。

 

斬撃。

 

斬撃。

 

舞う。

 

回る。

 

跳ぶ。

 

チェーンソーを振り回しながら、ハナエが踊る。

 

そして――。

 

ズバァァァァァァン!!

 

「…………」

 

ダンサーの司祭の動きが止まった。

 

HPゲージ。

 

残り――ゼロ。

 

「勝負ありィィィィィィィ!!!!」

 

アナウンサーが叫んだ。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』

 

会場が揺れる。

 

無敗。

 

アルカディアにおいて一度も敗北したことのなかった踊りの司祭が――。

 

ついに倒れた。

 

ハナエは肩で息をする。

 

「……勝った?」

 

「勝ちました!」

 

アロナが飛び跳ねる。

 

「やりましたね!」

 

プラナも頷く。

 

「勝利を確認」

 

カルコブリーナたちも喜んでいる。

 

その中で。

 

倒れたはずのダンサーの司祭が、ゆっくり立ち上がった。

 

「…………」

 

エクスデス先生の残像のようなものを見ながら。

 

「負けたな」

 

「ですが――」

 

「布石は打った」

 

「何ですと!?」

 

全員が振り返る。

 

ダンサーの司祭は、観客席を指差した。

 

「周りを見るがいい」

 

「AI」

 

「人形」

 

「そして、生徒よ」

 

「…………?」

 

観客たちが立ち上がっている。

 

その多くが――。

 

踊っていた。

 

右へ。

 

左へ。

 

一歩。

 

二歩。

 

ターン。

 

誰も彼もが、見よう見まねで踊り始めている。

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

「俺も踊るぞォォォォォ!!!」

 

「ダンサー様の踊りを習得するぞ!」

 

「いつか俺も無名の司祭になる!」

 

「いや最後のは違うだろ!」

 

ダンサーの司祭は満足そうに頷いた。

 

「踊り子の魔法の使い手は増えるだろう」

 

「私を超える者も現れるかもしれない」

 

「それこそが――」

 

「我らの目的」

 

「我らの目標だ」

 

「…………」

 

ハナエが首を傾げる。

 

「え?」

 

「要するに……」

 

アロナも恐る恐る尋ねる。

 

「踊り子を増やしたいだけですか?」

 

「そうだ」

 

即答だった。

 

全員が固まった。

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

プラナが淡々と告げる。

 

「結論」

 

「はい?」

 

「平和でした」

 

「平和でしたねぇ……」

 

ハナエが苦笑する。

 

その背後。

 

倒れていたエクスデス先生が、ゆっくりと起き上がった。

 

「…………」

 

全員が振り返る。

 

エクスデス先生は無言で立ち上がる。

 

そして――。

 

ぎこちなく。

 

ほんの少しだけ。

 

右足を動かした。

 

「先生?」

 

「…………」

 

左足。

 

「先生、まさか……」

 

一歩。

 

二歩。

 

ターン。

 

「我も……」

 

エクスデス先生は顔を真っ赤にしながら呟いた。

 

「……踊りを覚えてしまったではないか」

 

会場が爆発した。

 

『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!』

 

こうしてアルカディアにまた一つ。

 

新たな文化が誕生した。

 

――踊り子。

 

その日。

 

世界を滅ぼしかなかった元魔王と、世界を救ったAIと、人形と、救護要員の少女によって。

 

踊りの可能性は、また一段階高みへと昇ったのである。

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