エクスデス先生スレに投稿するやつ   作:eriza7170

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アリウスゾンビーと内藤

「……今日も来たよ」

 

 とぼとぼと、一人のアリウス生徒が墓地を歩いていた。

 ――いや。

 正しくは、かつて墓地と呼ばれていた場所だ。

 そこに並んでいるのは、墓石ではない。

 慰霊碑。

 幾度もの戦争と内乱によって命を落とした、アリウスの生徒たちを弔うために建てられた石柱だった。

 ここはアリウス分校。

 かつてベアトリーチェという暴虐が支配し、地獄と呼ばれた学園。

 長きにわたる戦いを経て、その在り方はようやく変わり始めていた。

 

「なんか……先生っていう存在のせいでアリウスがなくなったと思ったら、今度は試験ってのをするらしくて、みんなてんやわんやだよ」

 

 少女は苦笑しながら、慰霊碑に花を添える。

 そこには既に、数えきれないほどの花が供えられていた。

 

「……また、会いたいな」

 

 ぽつり。

 その言葉が、墓地に落ちた。

 

「…………」

 

 慰霊碑が、微かに震えた。

 

「……スグアエルサ!」

「え?」

 

 次の瞬間。

 少女の視界が、真っ暗になった。

 何かが彼女の目の前を覆った。

 そして――

 一人のアリウス生徒が、アリウスから消えた。

 

### 002

 

「アリウス生が行方不明になっただと?」

「はい。正確には、墓参りに行ったきり帰ってきていません」

 

 アリウスからの報告を受け、エクスデス先生は腕を組んだ。

 エクスデス先生。

 連邦生徒会長との契約によってキヴォトスを守る、少々特殊な立場の先生である。

 そんな彼のもとへ、今回アリウスから持ち込まれたのは、奇妙な失踪事件だった。

 

「それで、何人だ?」

「現在確認されているだけで数名です」

「全員、同じ場所から?」

「はい」

 

 アツコが答える。

 

「『アリウスの罪』です」

 

 アリウスには墓がある。

 正確には、生徒たちを弔うための慰霊碑だ。

 アリウスはかつて、トリニティとの内戦によってカタコンベへと追放された。

 そして、その後も長い年月にわたって争いは続いた。

 融和を望む者。

 徹底抗戦を望む者。

 さらにベアトリーチェが現れてからは、彼女の支配を受け入れる者と拒絶する者。

 アリウスは幾度となく分裂し、そのたびに戦った。

 その結果。

 数えきれないほどの生徒が命を落とした。

 エクスデス先生が現れてからは、少なくとも新たな死者が増えることはなくなった。

 だが。

 積み重なった過去まで消えるわけではない。

 だからこそ、彼女たちのために慰霊碑が建てられた。

 その場所は、いつしかこう呼ばれるようになった。

 ――『アリウスの罪』。

 

「つまり、『アリウスの罪』に向かった者だけがいなくなっていると?」

「はい」

 

 スバルが頷く。

 

「それも……特にバイタリティのある、元気な子が狙われています」

「……」

 

 エクスデス先生は黙り込んだ。

 

「明らかにゾンビの事案だな」

「ゾンビですか?」

「ああ。それも特に悪質なタイプだ」

「やはりそう思いますか」

 

 アツコが続ける。

 

「ですので現在、アリウスでは作戦を考えています」

「作戦?」

「はい」

 

 二人が説明を始める。

 囮を使う。

 それも、魔力や生命力に満ちた生徒を。

 いかにもゾンビが食いつきそうな人材を、慰霊碑へ向かわせるのだ。

 

「……」

 

 しばしの沈黙。

 

「おい、待て」

 

 そこへ割り込んだのは、ロアヒカセンだった。

 

「私にいい考えがある」

「ロアヒカセンさん?」

「囮なら私が行く」

 ロアヒカセンは立ち上がった。

 

「アリウスには顔を知られていない。それに、私ならある程度のゾンビなら素手でも無力化できる」

「ですが……いいのですか?」

 

 アツコが心配そうに尋ねる。

 

「かなり危険な任務になります」

「こういう時は大人を頼れ」

 

 ロアヒカセンは胸を張った。

 

「俺はロアだから年齢なんぞ知らないが、それにだな……」

「それに?」

「何かジェントルな匂いがする」

「は?」

 

 アツコの顔が固まった。

 

### 003

 

 こうして、作戦は実行に移された。

 慰霊碑の前に立つロアヒカセン。

 その周囲には、エクスデス先生の魔法によって姿を隠したアリウス・スクワッド。

 さらに、万が一に備えて実力者たちも配置されている。

 完璧な布陣。

 誰が見ても隙はない。

 ただし。

 

「……何をしているんだ?」

 

 サオリが呟いた。

 ロアヒカセンが、奇妙な踊りを踊っていた。

 左右に腕を振る。

 上下に腕を振る。

 謎のステップ。

 

「……あれも作戦の一部なのか?」

「私にも分かりません」

 

 アツコも困惑している。

 

「オォ……」

 

 空気が変わった。

 

「オォォ……!」

 

 ぞわり。

 墓地を、死者の匂いが満たしていく。

 腐った魔力。

 生者のものではない気配。

 

「タチサレ……」

「……!」

 

「タチサレ、イカイノモノヨ……」

 

 ロアヒカセンは踊りを止めた。

 

「断る」

「ナニ?」

「お前の親玉と会わせろ。アリウスの生徒」

「ナラバ――!」

 

 地面から何かが飛び出した。

 

「センセイ! オネガイシマス!」

「うはwwwwwwwwwwおkwwwwwwwwwww」

「む!?」

 

 ガギィン!!

 振り下ろされた大剣を、ロアヒカセンは盾――オーディンヒャムルルで受け止めた。

 

「伝説のwwwww突き技wwwwwパワースラッシュwwwwを防ぐとはwwwwww」

「ええいうるさいんだな!」

 

 大剣を振り抜く。

 

「貴様、暗黒騎士か!?」

「なんかwwwwこの世界に来てからwwwwそう呼ばれすぎてwwww」

 

 ロアヒカセンは笑いながら剣を構える。

 

「ナイトじゃなくて暗黒になっちまったけどwwww」

「……」

「心はナイトだぜwwww」

「エクスデス先生!」

「助けてくれ! 話が通じない!!」

 

「そこまでだ」

 

 静かな声が響いた。

 

 エクスデス先生が歩み出る。

 

「装備を見る限り、ブロントと同じ世界の者だな」

 

「うはwwwwww」

 

 内藤がエクスデス先生を見る。

 

「マジでエクスデスじゃんwwwww」

「……」

「かてるわけねーwwwwww」

「ディスペル!」

「ざんねーんwwwww」

 

 内藤は大笑いする。

 

「俺の笑い方はwww状態異常じゃないってのwwww」

「ええいうるさいわ!」

 

 エクスデス先生が杖を向ける。

 

「貴様、なぜゾンビに雇われている! 召喚獣よ!」

「え?wwww」

 

 内藤が首を傾げる。

 

「wwww俺、召喚獣なのwwww」

「バハムートとかと同じなのかwwww」

「理由を言え」

 

 エクスデス先生の声が低くなる。

 

「言わなければ、即刻消し炭にするぞ」

「だって可哀そうじゃんwwwwww」

「可哀そうだと?」

「戦いに明け暮れてwwwww」

 

 内藤は笑っている。

 だが、その目だけは笑っていなかった。

 

「戦争しか知らない子供なんてwwww」

「……」

「俺たちFF11当時は少年だったけどwwww」

 

 剣を下ろす。

 

「今や立派な社会人だしwwwww」

 

 そして、アリウスゾンビたちを見る。

 

「子供は助けなきゃwwww」

「……」

「それがたとえゾンビだとしても、ってねwwww」

 

 エクスデス先生は、黙って内藤を見た。

 

「……志はナイトそのものだな」

「だろwwwww」

「だが」

 

 エクスデス先生の目が細くなる。

 

「分かっているのか?」

「何をwwww」

「貴様」

 

 エクスデス先生が指を向ける。

 

「存在が希薄になっているぞ」

「……」

 

 一瞬だけ。

 内藤の笑顔が消えた。

 

「それでもだよwwww」

 

 すぐに、いつもの笑顔に戻る。

 

「友達と話す時間を稼ぐためならwwww」

「俺は別にどーでもいいしwwww」

「……」

 

 その言葉を聞いたアリウスゾンビたちは、互いに顔を見合わせた。

 

「ワタシタチモ、内藤サンヲケシタクアリマセン」

 

 一人が呟く。

 

「デスガ……契約ニ値スル魂ガ見ツカラナ……」

「ん?」

 

 そこで、アリウスゾンビの一人が何かに気づいた。

 

「……」

 

 ゆっくりと振り返る。

 

「な、何故私の方を見るのですか、アリウスゾンビさん」

 

 視線の先にいたのは――スバルだった。

 

「ミツケターッ!!!!!!!!!!!!」

「え?」

 

 スバルの顔が引きつった。

 

### 004

 

 だが

 その場にいた誰もが気づいていた。

 何かがおかしい。

 アリウスゾンビたちは、内藤と話している。

 その言葉には確かに敵意がある。

 しかし――殺意がない。

 

「……先生」

 

 アツコが小さく呟く。

 

「彼女たち……私たちを襲っているんじゃない」

「では何をしている?」

「……連れていこうとしている」

「どこへ?」

「……」

 

 答えは出なかった。

 

 その時だった。

 アリウスゾンビの一人が、ふらりと慰霊碑へ近づいた。

 

「ココハ……」

 

 震える手で石柱に触れる。

 

「ワタシタチノ……オウチ」

「……」

「オウチ?」

 

 サオリが聞き返す。

 

「ワタシタチ……ココニ、イル」

 

 ゾンビの少女が自分の胸を押さえる。

 

「ズット……ココニ、イタ」

 

 その言葉と同時に、慰霊碑が淡く光った。

 

 そして。

 周囲の空気に、無数の声が重なった。

 

『帰りたい』

『学校に行きたい』

『友達と話したい』

『もっと勉強したかった』

『明日が欲しかった』

「……!」

 

 アリウスの生徒たちが息を呑む。

 それは、目の前にいるゾンビたちの声ではなかった。

 もっと遠い。

 もっと古い。

 何十年、何百年と積み重なった声だった。

 

「これは……」

 

 エクスデス先生が慰霊碑を見る。

 

「死者の魂か?」

「違う」

 

 内藤が答えた。

 いつもの笑い声が消えている。

 

「たぶん、魂そのものじゃない」

「なら何だ?」

「記憶だよ」

 

 内藤は慰霊碑を見る。

 

「この場所に残った記憶と、魔力と……」

 

 そしてゾンビたちを見る。

 

「未練だ」

「未練……」

「死んだ奴らが最後まで持ってた気持ち」

 

 内藤は笑わなかった。

 

「会いたい」

「……」

「帰りたい」

「……」

「普通に学校行きたい」

 

 ゾンビたちが震え始める。

 

「トモダチト……ハナシタイ」

「ベンキョウ……シタイ」

「アソビタイ……」

「センソウ……シタクナイ」

 

 サオリが目を見開いた。

 

「……」

 

 誰も言葉を発せなかった。

 これまで彼女たちは、自分たちを「ゾンビ」だと思っていた。

 だが、本当は違った。

 アリウスで死んでいった者たちの記憶。

 戦争の中で失われた「普通の生活」への願い。

 それらが長い年月をかけて慰霊碑に染み込み、魔力によって形を得た。

 それが――

 アリウスゾンビだった。

 

「じゃあ……」

 

 アツコが呟く。

 

「この子たちは……」

「死者そのものじゃない」

 

 エクスデス先生が答えた。

 

「だが、死者が残した『生きたかった』という願いから生まれた存在だ」

「……」

 

 ゾンビたちは俯く。

 

「デモ……ワタシタチ……」

 

 一人が呟いた。

 

「イキテイルヒトヲ……ツレテキタ」

「うん」

 

 内藤が頷く。

 

「だって、お前らには『生きてる』ってどういうことか分からなかったんだろ?」

「……」

 

「だから、生きてる奴を連れてくれば、自分たちも生きられると思った」

 

 ゾンビたちは答えない。

 だが。

 その肩が震えていた。

 

「ゴメンナサイ……」

「……」

「ワタシタチ……タダ……」

 

 少女の口から、嗚咽のような声が漏れる。

 

「トモダチト……ハナシタカッタ……」

 

 その言葉を聞いた内藤は。

 

「……」

 

 しばらく黙っていた。

 

 そして。

 

「だったら」

 

 笑った。

 

「やり直せばいいじゃんwwww」

「……え?」

「死んでるとかwwwwゾンビとかwwwwそんなのどうでもいいってwwww」

「デモ……」

「学校ならあるだろwwww」

 

 アリウスの生徒たちを見る。

 

「勉強なら教えてもらえばいいwwww」

「……」

「友達なら作ればいいwwww」

 

 内藤は大剣を肩に担いだ。

 

「明日が欲しいならwwww明日まで生きればいいwwww」

「……」

「死んでるけどwwww」

「そこは重要ではないのですか?」

 

 スバルが思わず突っ込んだ。

 

「重要じゃないwwww」

「重要でしょう!」

「だって今ここで消えるよりwwww笑ってる方がいいじゃんwwww」

 

 内藤は笑う。

 

「俺はそう思うぜwwww」

「……」

 

 ゾンビたちは顔を見合わせる。

 そして。

 

「……ワタシタチモ」

「ん?」

「ガッコウ……イッテモ、イイ?」

「もちろん」

 

 答えたのは、アツコだった。

 

「……試験もありますよ」

「シケン……?」

「はい」

「……」

「勉強、しないといけません」

「…………」

「頑張りましょう」

「………………」

 

 ゾンビたちは、互いに顔を見合わせた。

 

「イヤダ」

「逃げるな!!」

 

 サオリの声が響いた。

 

### 005

 

 ――こうして。

 内藤はスバルと契約し、召喚獣となった。

 本来、内藤は両手剣を扱うナイトというジョブについていたらしい。

 しかしアリウスに来てから、その在り方は大きく変質。

 現在では、FF14世界の暗黒騎士に近い存在となっている。

 なお、パワースラッシュについては本来別の名前があるらしい。

 本人曰く、

「パワースラッシュじゃないとダメなんだよwwwww」

 とのことである。

 そして。

 アリウスゾンビたちは、その後もアリウスに残ることになった。

 彼女たちは、アリウスで死んだ生徒たちの魂そのものではない。

 長い年月をかけて慰霊碑に染みついた、死者たちの記憶。

 そして――

 最後まで消えなかった「普通に生きたかった」という願い。

 それが魔力によって形を得た存在だった。

 だから彼女たちは、戦争しか知らなかった。

 勉強も。

 遊びも。

 くだらない雑談も。

 友達と笑うことも。

 何も知らなかった。

 だから今。

 彼女たちは勉強をしている。

 普通の学校で習うようなことを、一から。

 

「先生!」

「何だ?」

「この問題分かりません!」

「どれだ?」

「『将来の夢を書きなさい』」

「……」

「死んでるから将来ってないんですけど」

「……」

「先生?」

「……」

 

 エクスデス先生は頭を抱えた。

 

「好きなことを書け」

「好きなこと……」

「そうだ」

「じゃあ……」

 

 少女は少し考えて。

 

「友達と遊びたい」

「それでいい」

「……はい」

 

 少女が笑った。

 それは、生前の記憶にはなかった笑顔だった。

 なお。

 内藤の評価は――

 

『笑い声以外は良い人』

 

 である。

 ギャグと、本来の明るい性格。

 それによって救われた者も少なくない。

 アリウスの少女たちに、少しずつ笑顔が増えていった。

 ――まあ。

 

「うはwwwwwww試験とかwwwwwwwwww余裕だろwwwww」

「内藤さん、試験は真面目に受けてください」

「大丈夫だってwwwww」

「前回、赤点でしたよね?」

「…………」

「内藤?」

「ディスペル!」

「効かねぇってwwwwww」

「うるさい!!」

 

 ちょっとうるさいが。

 

 それでも。

 かつて戦うことしか知らなかった少女たちが、笑いながら日常を過ごせるようになったのなら。

 それはきっと。

 悪くない結末だった。

 ――これが。

 **『アリウスゾンビー異変』の結末である。**

 

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