エクスデス先生スレに投稿するやつ   作:eriza7170

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VSカイザーアシエン、ブラッシュアップ版

アルカディア・レイドバトル

 

『究極幻想――アルテマオメガ伝説ウェポン』

 

「「いでよ、集いし死を超える者と契約せし者よ! 集いし生徒たちよ!」」

 

アロナとプラナの声が、仮想空間アルカディアに響き渡った。

二人が同時に両手を掲げる。

瞬間、足元に巨大な魔法陣が展開された。

一つ、二つ、三つ。

青と白、そして黒と紫の光が幾重にも交差し、八つの召喚陣が空間に刻み込まれていく。

それは、光の戦士から教えられた召喚魔法。

異界との境界を越え、契約によって結ばれた魂を呼び寄せる秘術。

生徒たちと、彼女たちが友として認めた召喚獣。その絆を、一時的に一つの戦力として結実させる魔法である。

そして八つの陣が、一斉に輝いた。

「はい! アリスは勇者としてやってきました!」

最初に飛び出したのは、勇者のごとき笑顔を浮かべたアリスだった。

その手には、雷光を帯びた剣。

続いて、甲高い笑い声が響く。

 

 

「イーヒッヒッヒッヒw」

 

 

仮面の向こうでゴズが愉快そうに笑い、煙のようなエフェクトをまとって姿を現した。

 

 

「おー! こういう登場の仕方、あこがれてたんだ!」

 

 

モモイが両腕を広げる。

 

 

「これは社長に感謝だね」

 

 

ミドリは冷静な口調ながら、その目を輝かせていた。

 

 

「「ギャハハハw」」

 

 

シロとクロが、互いに顔を見合わせて笑う。

 

 

「おぉ! カッケェ契約獣じゃねぇか! こりゃ燃え上がるってもんだぜ!」

 

 

ネルが拳を鳴らす。その両手には、すでにいくつものハリセンボンが装着されていた。

 

 

「グッグッグ」

 

 

サボテンダーは、まるでこれからマラソンでも始めるかのように準備運動をしている。

 

 

「うぅ、緊張します……! ですが、ブロントさんと一緒なら!」

 

 

キリノが銃を構え、隣に立つ騎士を見上げた。

 

 

「それほどでもない。ナイトはマルチプレイに必須のメイン盾」

 

 

ブロントさんは、まったく動じることなく胸を張った。

 

 

「うぇぇ!? ヒカセンさんからオススメのお祭りがあるって言われましたが、これですか!?」

 

 

シズコが、周囲の光景を見て素っ頓狂な声を上げる。

 

 

「カッカッカ! これほどの祭り! 楽しまなければ損というもの!」

 

 

スサノオが豪快に笑い、刀を掲げた。

 

 

「パヒャヒャw カイザーを名乗るなら、遠慮なく倒しちゃうね!」

 

「順当ー」

 

 

ノゾミとヒカリが、実に対照的な反応を示す。

そして最後に。

――ポォォォォォォォォォォォォン!!

場違いなほど重厚な汽笛が鳴り響いた。

巨大な蒸気機関車の姿をした召喚獣、グラシャボラス。

その車体から蒸気が噴き出し、線路のような光が虚空に伸びていく。

八つの魔法陣から現れた戦士たちが、次々とその車両へ飛び乗った。

アロナとプラナもまた、召喚の余波で舞い上がる光の中から戦場を見下ろしている。

対するは、魔王が操縦する究極の魔獣。

黒き四本の腕。

背中から広がる一対の翼。

獅子のごとき強靭な下半身。

そして、その中心に鎮座するカイザーアシエン。

アルテマウェポン。

それは単なる巨大兵器ではない。

無数の戦闘データと魔法技術を結集し、観客を熱狂させるために作られた、アルカディアの怪物だった。

カイザーアシエンは、挑戦者たちを見下ろす。

そして、その口元を歪めた。

 

 

「まるでラスボス戦ですねぇ! ですが、やられるのはどちらなのか教えて差し上げましょう!」

 

 

アルテマウェポンの四本の腕が、ゆっくりと左右へ広がる。

翼が開く。

その巨体を覆う装甲の隙間から、赤い光が漏れ出した。

観客席の照明が落ちる。

巨大なモニターに、アルテマウェポンの姿が映し出された。

そして、戦闘開始を告げる鐘の音が響く。

――アルカディア、開幕。

 

 

「人数が集まろうとも! この我と、奇跡でつながっているアルテマウェポンは無敵だあああ

あ!!!」

 

 

カイザーアシエンが叫ぶ。

アルテマウェポンの背後で、二つの巨大な魔法陣が回転を始めた。

円形の陣が、まるで砲門のように展開する。

その内部に凝縮されていくのは、灼熱の魔力。

通常のフレアでさえ、直撃すれば戦場一帯を焼き尽くす。

だが、そこから放たれる魔法は、その威力をさらに上回っていた。

アルテマファイア。

 

 

「さあ、消し飛びなさい!」

 

 

二つの魔法陣が、一斉に火を噴いた。

 

一発。

二発。

十発。

百発。

 

それはもはや、魔法というよりも弾幕だった。

赤熱した火球が空間を埋め尽くし、互いの爆炎が重なり、巨大な火柱となって戦場を覆い尽くす。

着弾するたびに仮想空間の地面が砕け、爆風が次の爆風を押し広げる。

 

 

「うおおおおおおおお!?」

 

 

観客席が揺れた。

衝撃に耐えきれず、座席ごと吹き飛ばされる観客。

目を覆ってもなお瞼の裏に焼き付く閃光。

それでも、爆炎の向こうに立つアルテマウェポンは、まるで何事もなかったかのように四本の腕を広げていた。

やがて、炎が消える。

そこに残ったのは、黒く焼け焦げた大地と、煙を上げる瓦礫だけ。

観客席に沈黙が落ちた。

 

 

「……あれ?」

「今ので終わり?」

「また瞬殺かぁ……」

 

 

何人かの観客が、慣れた手つきでホームボタンへ指を伸ばしかけた。

だが。

 

――ポォォォォォォォォォン!!

 

空から、汽笛が響いた。

観客たちが顔を上げる。

煙を突き抜けて、巨大な蒸気機関車が降下してきた。

その屋根の上。

そこには、挑戦者全員が立っていた。

 

 

「パヒャヒャ! いきなり必殺技連打はずるくなーい?」

 

 

ノゾミが笑いながら、カイザーアシエンへ指を突きつける。

その隣では、プラナが涼しい顔で杖を下ろしていた。

 

 

「全員の転移、完了しています。攻撃の発動を確認してから転移させました」

「ふふっ。作戦成功ですね!」

 

 

アロナが胸を張る。

先ほどの爆撃が着弾する直前。

エクスデス先生とプラナは、全員をグラシャボラスの上へ転移させていたのだ。

つまり、あの大爆発は――

一発たりとも、挑戦者に当たっていない。

 

 

「なっ……!?」

 

 

カイザーアシエンの声が裏返る。

その眼前で、挑戦者たちが一斉に構えを取った。

 

 

「お返し、いっくよー!」

 

 

モモイが叫ぶ。

 

 

「ぜんだんはっしゃー」

 

 

ヒカリが淡々と続けた。

直後。

魔法陣が、銃口が、剣先が、拳が、一斉に敵を向く。

爆炎。

轟雷。

幾重にも重なる斬撃。

聖なる光。

そして――光と闇が合わさった、最強に見える遠距離斬撃。

その中に、明らかに異質な緑色の影が混じっていた。

 

 

「グッグッグ」

 

 

サボテンダーの全身が、弾丸のように震える。

次の瞬間。

 

 

――はりせんぼん!!

 

 

無数の針が、魔力の奔流に混ざって飛んでいく。

 

 

「ちょっ、待っ――」

 

 

カイザーアシエンの抗議は、爆音にかき消された。

数え切れない攻撃がアルテマウェポンの装甲へ殺到する。

衝撃で巨体が揺れ、翼が大きくたわみ、四本の腕が防御のために交差した。

そして。

 

 

「ぐおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

アルテマウェポンの巨体が、初めて後退した。

HPゲージが、目に見えて減少する。

観客席が沸いた。

 

 

「おおおおおおおおおおお!!」

 

「削れてる! ちゃんと削れてるぞ!」

 

「いや、あの弾幕を全部受けてまだ立ってるのもおかしいだろ!」

 

 

カイザーアシエンは、歯を食いしばった。

 

 

「この程度で……! この程度で、アルテマウェポンが!」

 

 

だが、その言葉が終わる前に。

コックピットの警告音が鳴り響いた。

 

『被弾率、想定を超過』

『姿勢制御、異常』

『操縦者の安全確保を推奨』

 

 

「うるさい! そんな機能はない!」

 

 

カイザーアシエンは、震える手で操縦桿を握り直した。

そして、ようやく気づいた。

自分は今、猛烈に揺れるコックピットの中で――

シートベルトを着けていなかった。

 

 

「ま、まずい! シートベルト! シートベルトはどこだ!?」

 

 

その瞬間だった。

一人の騎士が、爆炎の向こうから跳び出した。

雷光をまとった左拳を、まっすぐに構えて。

「――突撃からのギガトンパンチ!!」

ブロントさん。

その一撃は、単なる拳ではなかった。

全身に重ね掛けされた補助魔法。

雷属性を極限まで高めたエンチャント。

そして、ナイトとして培ってきた揺るぎない技量。

すべてが一つの拳へと集約されていた。

 

 

「なんのぉ!! アルテマウェポンブロゥ!!!」

 

 

アルテマウェポンもまた、右腕を振りかぶる。

巨大な拳と、アルテマウェポンに比べれば小さな騎士の拳。

両者が激突した。

 

――轟ッッッッッッッ!!

 

衝撃波が円形に広がり、空間の光が一瞬だけ歪む。

雷光が弾け、拳と拳の間に白い火花が散った。

互角。

まさしく互角。

だが、二人の攻撃には決定的な違いがあった。

ブロントさんの一撃は、幾重もの補助魔法によって強化された必殺技。

対するアルテマウェポンの一撃は――ただの通常攻撃だった。

 

 

「……通常攻撃で、あの威力かよ」

 

 

ネルが、思わず笑みを深める。

 

 

「いいじゃねぇか。ぶっ倒しがいがあるってもんだ!」

 

 

ブロントさんは着地すると、何事もなかったかのように剣を構え直した。

 

 

「ふむ。相手にとって不足はない。だが俺はこの程度では止まらない」

 

 

そして、グラシャボラスの汽笛が再び鳴った。

――ポォォォォォォォォォン!!

 

 

「グラシャボラスぅ~、たいあたり~!」

 

 

ヒカリの声が、戦場に響いた。

蒸気機関車が、火花を散らしながら加速する。

車輪が回転するたびに、線路状の魔力が虚空を走り、車体後部から大量の蒸気が噴き上がった。

その速度は、もはや列車の常識を超えていた。

 

 

「なっ!? 機関車だとォ!?」

 

 

アルテマウェポンが四本の腕を構える。

ブロントさんは巻き込まれる寸前、姿をかき消すように離脱した。

 

 

「とんずらで回避するのは基本」

 

 

直後。

グラシャボラス、突撃。

車体がアルテマウェポンの胴体へ激突する。

爆音。

火花。

装甲の軋む音。

雷属性の一撃を受けていた右腕が、痺れによってわずかに動きを鈍らせる。

そこへ、さらに二度目の突撃。

三度目。

四度目。

汽笛が鳴るたびに、巨大な機械の身体が揺さぶられていく。

 

 

「おのれぇぇぇぇぇぇ!!」

 

 

アルテマウェポンは残る三本の腕を地面に叩きつけ、強引に踏みとどまった。

だが、列車は止まらない。

その屋根から、次々と挑戦者たちが駆け出していた。

 

――レイドバトルは、まだ始まったばかりだった。

 

 

「勇者の一撃です! ギガブレイク!!!」

 

 

グラシャボラスの屋根を蹴り、アリスが跳んだ。

その姿を、カイザーアシエンは見逃さなかった。

 

 

「小娘がぁ! アルテマウェポンの装甲を破れると思っているのか!」

 

 

アルテマウェポンの顔面に、青白い防御フィールドが集中する。

幾重にも重なる障壁。

物理攻撃を弾き、魔法を逸らし、あらゆる攻撃を無効化するための防御機構。

だが。

アリスの剣に宿った雷は、それらを見ても怯まなかった。

 

 

「アリスは勇者です!」

 

 

剣を両手で握り、腰を落とす。

一瞬、時間が止まったかのように見えた。

次の瞬間、アリスは回転しながら空中を駆け上がる。

雷光がエクスカリバーの剣先へと収束する。

 

 

「――ギガブレイクッ!!」

 

 

閃光。

刃が振り抜かれた瞬間、巨大な雷の斬撃がアルテマウェポンの顔面へ叩き込まれた。

防御フィールドが波打つ。

一枚目、突破。

二枚目、突破。

三枚目――崩壊。

バギィィィィィン!!

左目の装甲が砕け散った。

内部の魔導回路が露出し、青白い火花が噴き出す。

 

 

「なっ……!?」

 

 

カイザーアシエンの顔から、余裕が消えた。

アリスの一撃は、単にダメージを与えただけではない。

アルテマウェポンの視覚センサー、その片側を破壊したのだ。

 

 

「やりました! アリス、敵の装甲を破壊しました!」

「やるじゃねぇか、アリス!」

 

 

ネルが叫ぶ。

だが、その歓声をかき消すように、アルテマウェポンが咆哮した。

 

 

「よくも……よくもこのアルテマウェポンに傷をつけましたねぇぇぇ!!!」

 

 

破壊された左目が、異様な音を立てて回転する。

残された右目に、聖なる光が凝縮されていく。

 

 

「ならば、全員まとめて焼き尽くしてやるッ!!」

 

 

――拡散アイビーム・アルテマホーリー!!

アルテマウェポンの両眼が、同時に輝いた。

右目から放たれるのは、正確無比な聖光の奔流。

そして破損した左目からは、制御を失った光線が無秩序に拡散する。

本来なら一つの目標を焼き尽くすための光が、戦場全域を薙ぎ払う災害へと変貌していた。

光が走る。

地面が消し飛ぶ。

グラシャボラスの屋根が爆発し、車体の装甲がめくれ上がった。

 

 

「うわあああ!?ちょっと!列車がぁぁぁ!」

 

 

シズコが悲鳴を上げる。

 

 

「全員、回避を優先してください!」

 

 

プラナの声と同時に、挑戦者たちが散開した。

だが、空中にいたアリスは逃げ場を失っていた。

その瞬間。

 

 

「アリス、後ろに下がれ!」

 

 

ブロントさんが割り込んだ。

アリスを抱えて、光線の軌道へ身を滑り込ませる。

光が二人を包む寸前、ブロントさんの身体が一瞬だけ光に溶けた。

 

 

「とんずら――からの救出」

 

 

彼はアリスを抱えたまま、グラシャボラスの別車両へ飛び移った。

光線が、二人のいた場所を焼き払う。

 

 

「ぶ、ブロントさん!?」

「問題ない。俺はリアルではモンクタイプでナイトだからよ」

 

 

ブロントさんはアリスを下ろし、再び敵へ向き直った。

 

 

「それよりも、今の一撃で敵の目が壊れた。つまり――」

「狙いどころが増えたってことだな!」

 

 

ネルが、楽しそうに笑った。

だが、戦場にはまだ危険が残っていた。

アルテマウェポンは、壊れた左目を無理やり稼働させていた。

過剰な魔力が内部で暴走し、光線が敵味方の区別なく空間を薙ぎ払っている。

そして、その一部が観客席へ向かった。

 

 

「おい、こっち来るぞ!」

「うわああああああ!!」

 

 

光線が観客席を直撃する。

座席が吹き飛び、観客たちが宙を舞った。

だが。

 

 

「これだよ、これ!」

 

 

吹き飛ばされた観客の一人が、なぜか満面の笑みを浮かべていた。

 

 

「もっとやれえええええ!!」

「危険な攻撃が観客席まで届く! これぞアルカディア!」

「運営、最高ォォォォ!!」

 

 

観客席は悲鳴と歓声の坩堝と化していた。

――アルカディアでは、観客もまた戦いの一部なのだ。

その狂乱を横目に、キリノは銃を構えた。

 

 

「今です……!」

 

 

照準器の向こうに映るのは、暴走する左目。

光線の射出周期。

照準の揺れ。

魔導回路の位置。

キリノは呼吸を整えた。

 

 

「撃ちます!」

 

 

一発。

二発。

三発。

 

 

銃弾が光線の隙間を縫って飛ぶ。

アルテマウェポンが光を放つたび、その照準がわずかに逸れる。

キリノはその一瞬を逃さなかった。

 

 

「そこですっ!」

 

 

全弾連続射撃。

ダダダダダダダダダダダッ!!

最後の銃弾が、露出した内部回路を貫いた。

 

――バキンッ!!

 

左目の光が消えた。

完全停止。

暴走していた魔導回路が焼き切れ、黒煙と火花が噴き出す。

 

 

「よしっ!」

 

 

キリノが思わず拳を握る。

これでアルテマウェポンの視界は大きく制限された。

しかし、敵はまだ倒れていない。

むしろ。

その巨体から、これまで以上の魔力が噴き上がり始めていた。

 

 

「よくも……よくも……!」

 

 

カイザーアシエンの声が、低く響く。

 

 

「ならば、お返しに耐えて見せよ!」

 

 

アルテマウェポンの四本の腕が、同時に天を指した。

空間に、巨大な紋章が浮かび上がる。

それは、剣の形をした魔法陣。

幾重にも重なった光が凝縮され、やがて一本の巨大な聖剣を形作っていく。

剣身だけで戦場を覆い尽くすほどの大きさ。

その輪郭は、聖剣というよりも、神話に記された審判の象徴だった。

 

 

「伝説の武器を召喚する!!」

 

 

カイザーアシエンが叫ぶ。

 

 

「アルテマエクスカリバァアアアア!!!」

 

 

――天が、裂けた。

巨大な聖剣が、空から引き抜かれるように姿を現す。

刃の周囲には無数の光輪が浮かび、刀身の内部では魔力が星のように瞬いていた。

その切っ先が、挑戦者たちを捉える。

直撃すれば、回避も防御も意味をなさない。

その場にいる全員が、本能的に理解した。

これは、正面から受け止めなければならない攻撃だ。

 

 

「スサノオさん! 頼みますよー!」

 

 

シズコが叫ぶ。

 

「いざいざいざぁ! 祭りである!!」

 

スサノオが、豪快に笑った。

彼の身体から、神々しい光が噴き上がる。

生徒たちと召喚獣たちの魔力が、一斉にスサノオへと流れ込んだ。

アリスの勇者の力。

ネルの戦闘意志。

シロとクロの遊戯のような連携。

ゴズの幻影。

キリノの正確な射撃。

ブロントさんの守護。

そして、アロナとプラナが繋ぐ異界の魔力。

それらが一つになり、スサノオの巨体をさらに巨大化させていく。

ついには、アルテマウェポンと並び立つほどの神格へと変貌した。

スサノオは、両手を広げた。

 

 

「来い! アルテマウェポン!」

 

 

そして、豪快に笑う。

 

 

「祭りは、最後まで付き合ってこそである!!」

 

 

「アルテマジャッジメントォォォォ!!!」

 

 

巨大な聖剣が、振り下ろされた。

その一撃は、単なる斬撃ではなかった。

刃が通過した空間そのものが、白い光に塗りつぶされていく。

剣の軌道上にあるものは、すべて消滅する。

そして、斬撃の余波が地面に触れた瞬間、光の欠片が無数に散った。

欠片は地面へ落ちると同時に爆発し、ランダムな位置に新たな攻撃範囲を生み出していく。

逃げ場を奪う、広範囲の即死ギミック。

アルカディアのスタッフが悪ノリで実装した、最強の全体即死攻撃である。

 

 

「これ、避ける場所あるの!?」

 

 

モモイが叫ぶ。

 

 

「ないなら、作ればよい!」

 

 

スサノオは一歩も退かなかった。

両手を広げ、落下する聖剣を迎え撃つ。

 

 

「――真剣白刃取りッ!!」

 

 

ガァァァァァァァァァァァン!!

巨大な刃が、スサノオの両掌に挟まれた。

大地が沈む。

足元に巨大な亀裂が走り、衝撃波が戦場を覆い尽くす。

白い光が全身を包み込み、スサノオの身体から火花のような魔力が飛び散った。

 

 

「ぐおおおおおおおおおおお!!」

 

 

スサノオの腕が震える。

だが、聖剣は止まっていた。

止まっているのだ。

本来ならば、戦場にいる全員を一瞬で消し飛ばすはずの攻撃を。

神格に連なる蛮神が、真正面から受け止めている。

 

 

「カッカッカ! この程度で祭りを終わらせるわけにはいかぬわ!」

 

 

スサノオの足元で、光の欠片が次々と爆発する。

それでも、彼は膝をつかない。

その姿を見て、アロナが拳を握った。

 

 

「すごいです! スサノオさん、耐えています!」

「耐えているだけではありません」

 

 

プラナが冷静に分析する。

 

 

「攻撃の出力は極めて高いですが、剣を振り下ろした状態では、アルテマウェポンの姿勢制御が制

限されています。今が反撃の好機です」

「つまり、隙ありってことだね!」

 

 

モモイが叫ぶ。

 

 

「シロ! いって!」

「クロ! いくよー!」

「ゴズ! 召喚です!」

 

 

三体の召喚獣が、一斉に動いた。

シロが、巨大な玉を転がす。

玉は地面を抉りながら加速し、アルテマウェポンへ向かって突き進む。

その進路上には、アルテマジャッジメントによって生じた無数の爆発範囲。

しかし、クロはそのすべてを計算に入れていた。

 

 

「そっちじゃないよー!」

 

 

クロの列車が玉を弾き飛ばす。

――ガコンッ!!

玉が軌道を変える。

左へ。

右へ。

急カーブ。

爆発範囲の隙間を縫い、信じられない軌道でアルテマウェポンへ迫っていく。

 

 

「ギャハハハwww」

 

 

シロが笑う。

 

 

「そのままいっけー!」

 

 

クロの列車がさらに加速した。

そしてゴズは、アルテマウェポンの視界を塞ぐように、複数の分身を配置していた。

一つの分身が消える。

次の分身が現れる。

視界の端から端へ、幻影が次々と滑り込む。

壊れた左目を持つアルテマウェポンは、残された右目で敵の位置を把握しようとするが、その判断が遅れる。

 

 

「なっ、どこだ!? どれが本物だ!?」

 

 

その瞬間。

 

――ドゴォォォォォン!!

 

巨大な玉が、アルテマウェポンの胴体に直撃した。

巨体が大きく揺らぐ。

聖剣を支えていた腕の位置が、わずかにずれた。

そして、そこに生まれた隙を逃す者はいなかった。

『サンドボックスツリー、全力稼働!』

無機質な起動音が、戦場に響く。

分子分解の出力が、限界値へ到達する。

斬撃の軌道に沿って空間が震え、刀身が透明な光を帯びた。

狙いは、スサノオの雷撃によって痺れたままの一本の腕。

すでに酷使され、損傷し、再生すら追いついていない部位。

そこへ、限界まで高められた斬撃が放たれた。

 

――ズバァァァァァァン!!

 

一瞬、音が消えた。

次いで。

アルテマウェポンの腕が、肩口から切断された。

 

 

「なんとォォォォォォォォ!?」

 

 

切り離された巨大な腕が、回転しながら宙を舞う。

地面に激突するより早く、スサノオが動いた。

「隙ありよぉ! 無刀取り!!」

彼は聖剣を受け止めていた両手の力を、わずかに緩めた。

アルテマウェポンが体勢を立て直そうとした、その瞬間。

スサノオの掌が剣の柄へ滑り込む。

力を受け流す。

軌道を逸らす。

そして、相手の力をそのまま利用して奪い取る。

――アルテマエクスカリバー、強奪。

 

 

「なっ……私の剣を!?」

「返してほしくば、取りに来るがよい!」

 

 

スサノオが笑う。

次の瞬間、巨大な聖剣が返し刀となって振り抜かれた。

 

 

「一刀両断ッ!!」

 

 

――ドォォォォォォォン!!

 

 

アルテマウェポンの胴体が、真っ二つに切り裂かれた。

装甲が砕け、内部の魔導回路が露出する。

HPゲージが、一気に減少した。

そして、戦場に静寂が訪れる。

……いや。

静寂ではない。

コックピットの中では、無数の警告音が鳴り響いていた。

「うぬおおおおおおおおおおお!!!」

火花が散る。

配線が爆発する。

モニターが次々とブラックアウトしていく。

 

 

「なぜだ! なぜ、ここまで削られる!? このアルテマウェポンは無敵のはずだろうがぁぁぁ!!」

 

 

カイザーアシエンが、操縦桿を叩いた。

だが、アルテマウェポンの装甲はすでに再生を始めていた。

切断された腕も、両断された胴体も、魔力の奔流に包まれて再構成されていく。

 

 

「……なるほど」

 

 

プラナが目を細めた。

 

 

「再生能力を備えていますか」

「だったら、再生する暇もなく殴り続けりゃいいんだろ!」

ネルが、拳を鳴らした。

 

 

その手足には、いつの間にか無数のハリセンボンのようなものがついたナックルダスターが装着されていた。

 

 

「さぁて……ここからは、あたしの時間だ!」

 

 

橙色の残光が、戦場を走った。

 

 

ネルは、地面を蹴った。

一歩。

二歩。

三歩目で、すでにアルテマウェポンの懐へ入り込んでいた。

 

「オラオラオラァァァァァァ!!」

 

飛び蹴り。

右拳。

左拳。

膝蹴り。

肘打ち。

一切の無駄がない。

ネルは、アルテマウェポンの再生が追いついていない両断面へ、執拗に攻撃を叩き込んでいく。

その手足に装着されているのは、召喚獣サボテンダーの力を借りたハリセンボン。

一撃ごとに、固定されたダメージが敵の防御を貫通する。

どれだけ装甲が厚かろうと。

どれだけ防御力が高かろうと。

どれだけ巨大なHPを持っていようと。

ハリセンボンは、ハリセンボンである。

 

 

「オラァ! もう一発!」

 

 

――1000!

 

 

「まだまだぁ!」

 

 

――1000!

 

 

「そらそらそらぁ!!」

 

 

――1000! 1000! 1000!

 

 

アルテマウェポンのHPゲージが、目に見えて削れていく。

その減少量は、一撃ごとに確実だった。

 

 

「な、なんだそのダメージは!? 防御機構はどうした!?」

「知るか! 殴れば減るんだよ!」

 

 

ネルは笑った。

 

 

「それとも何だ? あたしの拳が怖いのかよ!」

 

 

――1000!

 

 

「うおおおおおおおお!!」

「オラオラオラオラァァァァァ!!」

 

 

観客席から、割れんばかりの歓声が上がった。

 

 

「出たあああああ!!」

「固定ダメージだああああ!!」

「装甲? 防御力? 知らねえ! ハリセンボンだああああ!!」

 

 

そして、最後の一撃が叩き込まれた。

 

 

――1000!!

 

 

ネルが、着地する。

 

 

「……へっ。どうだ?」

 

 

アルテマウェポンの巨体が、ぐらりと揺れた。

その装甲には無数の亀裂が走り、内部からは火花と煙が噴き出している。

だが。

カイザーアシエンは、笑っていた。

 

 

「……ふ、ふふふ」

 

 

その声に、ネルの表情が変わる。

 

 

「何がおかしい?」

 

 

「ええ、実に素晴らしい。実に素晴らしいですよ、あなた方は!」

 

 

アルテマウェポンの中心部が、赤く輝いた。

 

 

「ここまで私を追い詰めたのですから、相応のお礼をしなければなりませんねぇ!!」

 

 

四本の腕が、胴体へと折り畳まれる。

翼が閉じる。

全身の装甲が、内側へ収束していく。

 

 

「アルテマウェポン――形態変更!!」

 

 

ネルの目が見開かれた。

 

 

「やべっ!」

 

 

彼女は即座に地面を蹴り、離脱する。

その判断は、正しかった。

――ドゴォォォォォォォォォォォォン!!

アルテマウェポンが、内側から爆発した。

衝撃波が戦場を吹き飛ばす。

煙が、視界を覆う。

爆風に煽られたグラシャボラスが大きく傾き、スサノオが踏ん張り、アリスたちが互いに身を寄せた。

 

 

「くっ……!」

「全員、位置を確認してください!」

 

 

プラナが叫ぶ。

挑戦者たちは、煙の向こうを見つめた。

遠距離攻撃を放つ。

魔法。

銃撃。

斬撃。

しかし、着弾した感覚がない。

まるで、そこに敵など存在していないかのようだった。

その時。

戦場に、無機質な音声が響いた。

 

『残存HP、30%』

『全力稼働オーバーロード』

『戦闘データ収集、完了』

『挑戦者の能力情報を解析』

『データアップデート、開始』

 

煙の中で、二つの光が灯った。

 

『新規形態への移行を確認』

『アルテマオメガ伝説ウェポン――起動』

 

――その瞬間、アルカディアの空がノイズに覆われた。

 

 

最初に現れたのは、二本の脚だった。

巨大な脚部が、煙の中からゆっくりと踏み出す。

一歩。

それだけで、地面に亀裂が走った。

続いて、二本の腕。

旧形態の四本腕とは異なる、極端に巨大化した機械の腕だった。

その表面を、黒い装甲と青白い電流が覆っている。

そして中央部。

そこには、厳重な装甲に守られたカイザーアシエンのコックピットが存在していた。

 

 

「……何だ、あれは」

 

 

ネルが、初めて警戒を露わにした。

アルテマオメガ伝説ウェポン。

その姿は、かつてトキが操っていたアビ・エシュフを思わせるものだった。

しかし、規模が違う。

全身を走るノイズ状の稲妻は、単なる電気ではない。

アルカディアの仮想空間そのものへ干渉し、世界の構成データを書き換えようとしているのだ。

足元の地面が、突然、格子状のデータへと変わる。

空に浮かんでいた瓦礫が、途中で静止する。

グラシャボラスの車体が一瞬だけ透明になり、次の瞬間には元に戻った。

観客席のモニターが、次々と意味不明な文字列を表示する。

 

『WARNING』

『DATA CORRUPTION』

『UNAUTHORIZED UPDATE』

『SYSTEM OVERLOAD』

 

そして、巨大な機械の頭部が、ゆっくりとこちらを向いた。

 

『対象、解析開始』

『過去の攻撃データを照合』

『防御手段、再構築』

『回避行動、予測』

『次回戦闘における勝率を算出』

 

一瞬の沈黙。

 

『――挑戦者の勝率、0.00%』

「……は?」

 

 

モモイの口から、間の抜けた声が漏れた。

その直後、アルテマオメガ伝説ウェポンの腕が動いた。

 

 

「全員、回避してください!」

 

 

プラナの警告と同時に、巨大な腕が振り抜かれる。

だが、攻撃の軌道は見えていた。

見えていたはずだった。

ネルが跳ぶ。

アリスが剣を構える。

ブロントさんが防御姿勢を取る。

それぞれが、先ほどまでの戦闘で成功していた回避行動を実行した。

――なのに。

拳は、全員の回避先を正確に捉えていた。

 

 

「なっ!?」

 

 

衝撃波が戦場を薙ぎ払う。

グラシャボラスが横転しかけ、スサノオが巨大な刀で地面を支え、アリスたちが吹き飛ばされる。

 

 

『回避行動、予測成功』

『攻撃データ、更新完了』

『次回命中率、上昇』

「こいつ……!」

 

 

ネルが歯を食いしばる。

 

 

「さっきまでの戦闘を、全部学習してやがるのか!」

「その通りです!」

 

 

カイザーアシエンの声が、戦場に響いた。

 

 

「アルテマオメガ伝説ウェポンは、挑戦者の能力を解析し、学習し、そして超えるために作られた究極の兵器!」

 

巨大な腕が、再び持ち上がる。

 

 

「あなた方がどれほど強かろうと! どれほど奇抜な技を使おうと! どれほどインチキじみた召喚獣を連れてこようと!」

 

 

装甲の隙間から、青白い光が漏れ出す。

 

 

「一度見た技は通用しない! 二度目の奇跡は起こらない! この戦闘において、勝利するのは常に――」

 

 

アルテマオメガ伝説ウェポンの両腕が、左右へ広がった。

 

 

「学習し、進化し続ける、この私だああああああああ!!!」

 

 

――全身の魔導回路が、一斉に起動した。

 

 

空間に無数の照準が出現する。

そのすべてが、挑戦者たちを捉えていた。

アリスが剣を構える。

ネルが拳を握る。

キリノが銃を構え直す。

スサノオが刀を掲げる。

ブロントさんは、静かに前へ出た。

 

 

「……なるほど。相手は学習するタイプの敵か」

「ブロントさん?」

 

 

キリノが、不安げに見上げる。

 

ブロントさんは、アルテマオメガ伝説ウェポンを見据えた。

 

 

「ならば話は簡単だ」

 

 

剣を肩に担ぐ。

 

 

「学習できるということは、学習した内容に依存するということだ」

「つまり?」

 

 

ネルが尋ねる。

 

 

「まだ見せていない技を使えばいい」

 

 

一瞬の沈黙。

そして、ブロントさんは堂々と言い放った。

 

 

「それほどでもない、パンチングマシーンで120とか出せばいいだけ」

 

 

……その言葉に、挑戦者たちは笑わなかった。

誰もが理解していた。

ここから先は、単に火力をぶつけ合う戦いではない。

相手が学習するよりも速く、相手の想定を超えなければならない。

だが、そのためには。

一人ひとりの力だけでは足りない。

仲間の力を、一つにする必要がある。

その時だった。

 

 

『随分と長ったらしい名前だ』

 

 

エクスデス先生の声が、戦場に響いた。

挑戦者たちの背後。

そこに立っていたのは、白と黒の魔力をまとった一人の先生だった。

エクスデス先生。

アロナとプラナの力を借り、数多の世界を越えてきた教師。

そして、今回の戦いにおける最後の切り札。

彼は、二人の少女へ手を伸ばした。

 

 

『アロナよ! プラナよ! 私に力を!』

 

 

二人は顔を見合わせる。

そして、迷いなく答えた。

 

 

「「いいですとも!」」

 

 

アロナの白い魔力が、右腕へ。

プラナの黒い魔力が、左腕へ。

光と闇。

秩序と混沌。

生と死。

それらが互いを打ち消すことなく、エクスデス先生の身体へと流れ込んでいく。

その姿が、一瞬だけ別の何かと重なった。

次元の狭間。

無の世界。

そして、ネオエクスデス。

かつてヴァーチャ社長が垣間見た、究極の魔法の記憶。

エクスデス先生の背後に、巨大な魔法陣が展開される。

その中心には、剣の形をした紋章が浮かび上がっていた。

 

 

「先生……!」

 

 

アリスが、思わず声を上げる。

エクスデス先生は振り返らない。

ただ、敵を見据えていた。

 

 

「ここから先は、教師の仕事だ」

 

 

そして、両腕を交差させる。

 

 

『敵性魔力を検出』

『戦闘データ照合、完了』

『全出力、最終攻撃形態へ移行』

 

 

アルテマオメガ伝説ウェポンの全身を、青白い稲妻が駆け巡った。

巨大な両腕が天を仰ぐ。

その頭上に、幾重にも重なる巨大な魔法陣が展開された。

機械仕掛けの紋章と、古代魔法の術式。

二つの異なる体系が融合し、空間そのものを覆い尽くす。

カイザーアシエンは、操縦桿を握り締めた。

 

 

「ここまで私を追い詰めたことは褒めて差し上げましょう!」

 

 

装甲の隙間から、膨大な魔力が噴き上がる。

 

 

「ですが、これで終わりです! このアルテマオメガ伝説ウェポンの全能力をもって、貴様らを次

元の彼方へと葬り去ってくれる!」

 

魔法陣の中心に、巨大な剣の輪郭が浮かび上がった。

光が幾重にも重なり、刃を形作る。

それは、剣というよりも、世界そのものを断ち切るための装置だった。

 

 

「アルテマオメガジャッジメントソォォォォォォォドッ!!!」

 

 

振り下ろされる究極の剣。

その刃が動いた瞬間、空間が悲鳴を上げた。

斬撃の軌道に沿って世界が白く塗り潰され、次元の境界が剥がれ落ちていく。

それは単なる破壊ではない。

この仮想空間を構成する法則そのものを切断し、敵対する存在を世界ごと消し去る究極の一撃だった。

対するエクスデス先生は、静かに両腕を構えた。

右腕にはアロナの白き魔力。

左腕にはプラナの黒き魔力。

二つの力が交差し、先生の周囲に暗黒の渦が生まれる。

 

 

『ネオアルマゲスト』

 

 

その瞬間、無の力が解き放たれた。

存在を消し去り、次元を破壊し、あらゆるものを無へと還す奔流。

白き究極の剣と、黒き無の奔流。

二つの力が、真正面から激突した。

――アルカディアの世界が、崩壊を始めた。

 

 

音が消えた。

光が消えた。

そして、世界が消えた。

そこには、何もなかった。

ただ、星空だけが広がっていた。

砕け散った仮想空間の残骸が、光の粒となって漂っている。

その中心に、一つの影があった。

膝をついている。

巨大な装甲は崩れ、両腕は力なく垂れ下がっていた。

コックピットを覆っていた装甲も、半分以上が消失している。

カイザーアシエンは、震える手で操縦桿を握り締めていた。

 

 

「ば、ばかな……」

 

 

モニターは真っ暗だった。

どのボタンを押しても反応しない。

どれだけ魔力を流しても、アルテマオメガ伝説ウェポンは動かない。

 

 

『――システム停止』

 

 

最後に響いた音声は、それだけだった。

カイザーアシエンは、ゆっくりと顔を上げた。

そこには、誰もいない。

エクスデス先生も。

アロナも、プラナも。

挑戦者たちも、観客たちも。

すべて、吹き飛んでいた。

 

 

「ばかなぁあああああああああああああああああああ!!!」

 

 

その叫びを最後に。

――アルテマオメガ伝説ウェポン、爆発。

巨大な閃光が、星空を白く染め上げた。

そして、画面が暗転する。

一秒。

二秒。

三秒。

やがて、見慣れたゲームの勝利画面が浮かび上がった。

 

VICTORY

KAISER ASCIAEN DEFEATED!

ALCADIA RAID — CLEAR

 

 

 

かいざー あしえん を たおした!

 

あるてま おめが でんせつ うぇぽん の まきもの をてにいれた!

 

 

RAID CLEAR BONUS

アルテマオメガ伝説ウェポンの戦闘データ

 

伝説の巻物 × 1

 

称号:不倒の連合

 

 

……なお。

この直後、観客席のどこかから声が上がった。

「で、これ何分討伐?」

「知らねえよ!」

「でも次の週もやるんだろ?」

「当然だろ! 巻物が出るまで周回だ!」

そして、星空の彼方から。

――ポォォォォォォォォォォォォン!!

グラシャボラスの汽笛が、再び響き渡った。

アルカディアの祭りは、まだ終わらない。

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