ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
“睨み合っている! 睨み合っているぞ二人が睨み合っている! クマコーとチゲェダがリングの真ん中で睨み合っている! 一触即発とはまさにこの事! ゴングを待たずにすでに二人の間では幕が上がっている!”
“チゲェダがコーナーポストを殴りつけた! 凄いパワーだ一撃! 二撃! 鋼鉄のポストが折れ曲がっている! これがお前の未来だとチゲェダが笑っている……おおっとクマコーが自身のコーナーポストを……削った!? 三本の指で、まるで、クマが縄張りを示すかのように削ったのか! 人間に出来る事なのか、これが! 会場内がどよめいています! クマコーのパフォーマンスに会場内が驚愕のどよめきで埋め尽くされています!”
“青ざめています! チゲェダが明らかに青ざめているおおっとクマコーがマイクを寄越せと合図を送る! マイクを俺に寄越せとクマコーが求めている! 何を言うのかハイジャック事件解決のヒーロー!”
“『可哀そうだから打撃は封印してやるよ。キックボクサー』! そう言った! 確かにそう言ったぞクマコー! なんとここでハンデを公表した! 会場内からどよめきとおおっとチゲェダが行ったー! キレたチゲェダが真っすぐクマコーに行ったー!!! レフェリーが体で止め、られない! 引きずりながらクマコーへとチゲェダが殴りかかる! クマコーが殴られ、ていない! ウケだ! カラテのウケを披露したぞクマコー! チゲェダのコーナーポストを折り曲げるパンチをウケた! なんという技術だクマコー!”
“チゲェダがクマコーから引き離された! 何事もなかったかのように肩をすくめるクマコーと! 顔を青黒く変色させたチゲェダが引き離されていく! 始まる前から大興奮の展開だ! この試合、どちらもただでは終わらない!!!”
“両者がコーナーポストに下がりました! 審判がマイクを持ってリング中央に上がってルールの最終確認を行っていますが両選手どちらもコーナーポストに立ったまま! こんな試合があるのか! 審判が諦めたように首を振って手を上げました! 試合が開始される! こんな試合があるのか!”
“ゴングが、鳴ったァァァァ!!!”
カイザーさんからオススメされた実況の人が面白すぎる。流石にこのタイミングで笑うと挑発しすぎって言われちゃうから我慢してるけど腹筋痛いわ。さっきの空・回し受けよりもこっちの方にエネルギー取られてるかもしれんぞ。
ゴングが鳴った瞬間、真っすぐ一直線にチゲェダが突っ込んでくる。あれ、キックボクサーなのにタックルで来るんだ。蹴りが来ないからって事かな? まぁ隙だらけなんだけどな。低い体勢からひざ元を狙って突っ込んでくるチェゲダの頭の上に右手を置き、ひょいっとその場で飛び上がって跳び箱のように飛び越える。そのままチゲェダは俺が背にしていた爪痕のあるコーナーポストに頭から突っ込んだ。おお、痛そう。
うん、良い感じだ。元からスペックのある体だからってのもあるんだろうが闘人並の身体能力のお陰で違和感なく純情仮面の技を使う事が出来ている。駄目だ。純情仮面って名前を思い浮かべるだけで忘れかけていた笑いの波が……!
『笑わば笑え! 最初にこの名をつけられた時は先代をぶっ殺そうと思ったが、最早この名は俺の一部なんだ!』
――ごめんて
心の中で今回の相棒、純情仮面こと大帝プロレス2代目社長間藤勇作の声が響いてくる。勇作は『プロレスラーに明日はない!』というアニメの主人公で、闘人と呼ばれる戦闘に長けた人類が居る世界で、人を殺さずに闘う道を究めた闘人プロレスの第一人者である。
第一人者というか、作中で勇作に勝てるレスラーは誰も居ない為紛れもなく最強の闘人プロレスラーなのだが、この作品は勇作の強さではなく闘人プロレスという格闘技の難しさと経営者の苦悩にスポットが当たっているため、作品を通してみた彼の印象は最強ではなくて苦労人というイメージだった。
闘人というのは元々か弱い普通の人の代わりに闘うために進化した人種であり、基本的に脳筋である。力こそパワーとか作中で本気で言っちゃう連中ばっかりな人種だ。その中で血の気だけで出来ているような闘人プロレスラーたちを使って何とか興行を行っていくのには多大な労力がかかり、作中では数年しかたっていないはずなのに若々しかった勇作は最終話の時点で随分と老け込げふんげふん。壮観な顔立ちになっていた。
そして、そういう勇作――純情仮面だからこそ、俺は今回の闘いでの相棒として彼を選んだ。彼は酸いも甘いも嚙み分ける老練な経営者であり、強者として弱者と戦う方法を熟知しており、そしてそれ以上にエンターテイナー。リングの上で光り輝く一番星でもある。
今回の闘い。目の前のチゲェダをただ血祭にあげるだけでは満足できない俺としては、純情仮面の魅せて決める戦い方が最も必要なのだ。強い光があるからこそ、闇は濃く深く見える。
「うお、バッチィ。お前ワセリン塗り過ぎだろ」
『て、メェ!!』
油まみれになったと手の平を広げて観客席にアピールすると、困惑が混ざった笑い声が聞こえてくる。これだけ油まみれなら自分も組み技なんて出来ないだろうに。タックルなんてしてどうする気だったんだコイツ。
俺のパフォーマンスに腹を立てたのか、ふらつきながら立ち上がったチゲェダは額から血を流しながら拳を握る。爪痕にぶつかって裂けちゃったかな? まぁ自爆した自分が悪かったって事で。殴りかかってきたチゲェダの右腕を横から掴み、そのまま飛び上がって右腕に絡みつく。うお、油まみれだからすっげぇ滑る。たっのしぃ!
ぐるんと右腕を軸に一回転。更に滑りも含めて一回転すると、勢いに負けたチゲェダがバランスを崩してたたらを踏んだ。じゃあそのまま倒れて貰おうかと回転する勢いのままチゲェダの後頭部を右足でロックし、回転の勢いを後頭部に集中。右腕を捻っているため踏ん張りがきかないチゲェダは、そのまま顔面からリングに叩きつけられた。
『ウギャアアアアアァァァッ!』
鼻が折れたのだろう。リングに血の華を咲かせたチゲェダがゴロゴロとのたうち回りながら顔を押さえている。打撃技はしないと言った。確かに言った。だが投げ技はしないとは言ってない。
「ほら、立てよチゲェダ。まだ1Rも始まってすぐだぜ?」
転がり回るチゲェダの傍にしゃがみ込み、努めて明るい声音でそう口にする。その声が耳に届いたのだろう。痛みと恐怖に支配されていたチゲェダの瞳に濃厚な殺意の炎が広がっていく。
うん、良い顔だ。その顔、今日見たお前の表情で一番好きだぜ。
山里一也(男)26歳
視聴履歴
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プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
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プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』
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