ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

104 / 104
第104話 今日見たお前の表情で一番好きだぜ

“睨み合っている! 睨み合っているぞ二人が睨み合っている! クマコーとチゲェダがリングの真ん中で睨み合っている! 一触即発とはまさにこの事! ゴングを待たずにすでに二人の間では幕が上がっている!”

 

“チゲェダがコーナーポストを殴りつけた! 凄いパワーだ一撃! 二撃! 鋼鉄のポストが折れ曲がっている! これがお前の未来だとチゲェダが笑っている……おおっとクマコーが自身のコーナーポストを……削った!? 三本の指で、まるで、クマが縄張りを示すかのように削ったのか! 人間に出来る事なのか、これが! 会場内がどよめいています! クマコーのパフォーマンスに会場内が驚愕のどよめきで埋め尽くされています!”

 

“青ざめています! チゲェダが明らかに青ざめているおおっとクマコーがマイクを寄越せと合図を送る! マイクを俺に寄越せとクマコーが求めている! 何を言うのかハイジャック事件解決のヒーロー!”

 

“『可哀そうだから打撃は封印してやるよ。キックボクサー』! そう言った! 確かにそう言ったぞクマコー! なんとここでハンデを公表した! 会場内からどよめきとおおっとチゲェダが行ったー! キレたチゲェダが真っすぐクマコーに行ったー!!! レフェリーが体で止め、られない! 引きずりながらクマコーへとチゲェダが殴りかかる! クマコーが殴られ、ていない! ウケだ! カラテのウケを披露したぞクマコー! チゲェダのコーナーポストを折り曲げるパンチをウケた! なんという技術だクマコー!”

 

“チゲェダがクマコーから引き離された! 何事もなかったかのように肩をすくめるクマコーと! 顔を青黒く変色させたチゲェダが引き離されていく! 始まる前から大興奮の展開だ! この試合、どちらもただでは終わらない!!!”

 

“両者がコーナーポストに下がりました! 審判がマイクを持ってリング中央に上がってルールの最終確認を行っていますが両選手どちらもコーナーポストに立ったまま! こんな試合があるのか! 審判が諦めたように首を振って手を上げました! 試合が開始される! こんな試合があるのか!”

 

“ゴングが、鳴ったァァァァ!!!”

 

 

 

 

 

 カイザーさんからオススメされた実況の人が面白すぎる。流石にこのタイミングで笑うと挑発しすぎって言われちゃうから我慢してるけど腹筋痛いわ。さっきの空・回し受けよりもこっちの方にエネルギー取られてるかもしれんぞ。

 

 ゴングが鳴った瞬間、真っすぐ一直線にチゲェダが突っ込んでくる。あれ、キックボクサーなのにタックルで来るんだ。蹴りが来ないからって事かな? まぁ隙だらけなんだけどな。低い体勢からひざ元を狙って突っ込んでくるチェゲダの頭の上に右手を置き、ひょいっとその場で飛び上がって跳び箱のように飛び越える。そのままチゲェダは俺が背にしていた爪痕のあるコーナーポストに頭から突っ込んだ。おお、痛そう。

 

 うん、良い感じだ。元からスペックのある体だからってのもあるんだろうが闘人並の身体能力のお陰で違和感なく純情仮面の技を使う事が出来ている。駄目だ。純情仮面って名前を思い浮かべるだけで忘れかけていた笑いの波が……!

 

 

『笑わば笑え! 最初にこの名をつけられた時は先代をぶっ殺そうと思ったが、最早この名は俺の一部なんだ!』

 

――ごめんて

 

 

 心の中で今回の相棒、純情仮面こと大帝プロレス2代目社長間藤勇作の声が響いてくる。勇作は『プロレスラーに明日はない!』というアニメの主人公で、闘人と呼ばれる戦闘に長けた人類が居る世界で、人を殺さずに闘う道を究めた闘人プロレスの第一人者である。

 

 第一人者というか、作中で勇作に勝てるレスラーは誰も居ない為紛れもなく最強の闘人プロレスラーなのだが、この作品は勇作の強さではなく闘人プロレスという格闘技の難しさと経営者の苦悩にスポットが当たっているため、作品を通してみた彼の印象は最強ではなくて苦労人というイメージだった。

 

 闘人というのは元々か弱い普通の人の代わりに闘うために進化した人種であり、基本的に脳筋である。力こそパワーとか作中で本気で言っちゃう連中ばっかりな人種だ。その中で血の気だけで出来ているような闘人プロレスラーたちを使って何とか興行を行っていくのには多大な労力がかかり、作中では数年しかたっていないはずなのに若々しかった勇作は最終話の時点で随分と老け込げふんげふん。壮観な顔立ちになっていた。

 

 そして、そういう勇作――純情仮面だからこそ、俺は今回の闘いでの相棒として彼を選んだ。彼は酸いも甘いも嚙み分ける老練な経営者であり、強者として弱者と戦う方法を熟知しており、そしてそれ以上にエンターテイナー。リングの上で光り輝く一番星でもある。

 

 今回の闘い。目の前のチゲェダをただ血祭にあげるだけでは満足できない俺としては、純情仮面の魅せて決める戦い方が最も必要なのだ。強い光があるからこそ、闇は濃く深く見える。

 

 

「うお、バッチィ。お前ワセリン塗り過ぎだろ」

 

『て、メェ!!』

 

 

 油まみれになったと手の平を広げて観客席にアピールすると、困惑が混ざった笑い声が聞こえてくる。これだけ油まみれなら自分も組み技なんて出来ないだろうに。タックルなんてしてどうする気だったんだコイツ。

 

 俺のパフォーマンスに腹を立てたのか、ふらつきながら立ち上がったチゲェダは額から血を流しながら拳を握る。爪痕にぶつかって裂けちゃったかな? まぁ自爆した自分が悪かったって事で。殴りかかってきたチゲェダの右腕を横から掴み、そのまま飛び上がって右腕に絡みつく。うお、油まみれだからすっげぇ滑る。たっのしぃ!

 

 ぐるんと右腕を軸に一回転。更に滑りも含めて一回転すると、勢いに負けたチゲェダがバランスを崩してたたらを踏んだ。じゃあそのまま倒れて貰おうかと回転する勢いのままチゲェダの後頭部を右足でロックし、回転の勢いを後頭部に集中。右腕を捻っているため踏ん張りがきかないチゲェダは、そのまま顔面からリングに叩きつけられた。

 

 

『ウギャアアアアアァァァッ!』

 

 

 鼻が折れたのだろう。リングに血の華を咲かせたチゲェダがゴロゴロとのたうち回りながら顔を押さえている。打撃技はしないと言った。確かに言った。だが投げ技はしないとは言ってない。

 

 

「ほら、立てよチゲェダ。まだ1Rも始まってすぐだぜ?」

 

 

 転がり回るチゲェダの傍にしゃがみ込み、努めて明るい声音でそう口にする。その声が耳に届いたのだろう。痛みと恐怖に支配されていたチゲェダの瞳に濃厚な殺意の炎が広がっていく。

 

 うん、良い顔だ。その顔、今日見たお前の表情で一番好きだぜ。

 




山里一也(男)26歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
『プロレスラーに明日はない!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』


更新の励みになるのでお気に入り・評価よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

転生してイージーモード!(作者:ハニラビ)(オリジナル現代/日常)

普通に生きて普通に死んだ男がチートを得て現代日本にTS転生したお話。作者はバカだからよぉ、難しい話は無しにしねーか?(ただのバカ)


総合評価:3608/評価:8.6/連載:15話/更新日時:2026年05月24日(日) 18:02 小説情報

【書籍化決定】クラス転移したけど俺だけステータス表記が違った(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

学校で進路を悩んでいた斎藤隆史(サイトウ タカシ)はクラスに馴染めずに居た。▼そんな最中、突如異世界にクラスごと召喚もとい拉致され、魔王と戦えと言われる。▼そして各自に役職と能力が付与されているからとステータスを開くように言われてステータス画面を見ると……皆が普通のRPG表記なのに、俺だけポケ◯ンみたいにレベル形式だし、技ってのが見える。▼そして始まる異世界…


総合評価:2857/評価:8.12/完結:95話/更新日時:2026年08月06日(木) 10:50 小説情報

転生したら異世界の宇宙最強の龍でした!〜0から星と生命を作り出して一大文明の支配者になったので現代日本へ帰還します。自分は日本が一番暮らしやすい。〜(作者:電動ガン)(オリジナル現代/コメディ)

目覚めたら無だった。何も無い。宇宙さえも。自分の身体を見る。銀色の甲殻、長い尻尾これモンスターだ!?よく見ると俺の他にも二頭のモンスターが。ドラゴンだこれ!!▼俺たち三頭の女神龍は宇宙創成の前の世界にいる。俺たちを生み出した主神の指示で世界を作り生命を繁栄させることとなったけど・・・・・・それ何年掛かるの?▼何億年も掛けて生命が宿れる星を何個も作り、失敗し、…


総合評価:2431/評価:7.46/連載:129話/更新日時:2026年08月07日(金) 21:56 小説情報

祖父の遺品整理をしていたら封印AIが起動したので、地球中の異星遺産を回収して成り上がる(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル現代/冒険・バトル)

三十五歳、売れないフリーライターの久世恒一は、親に頼まれて東京にある祖父・久世宗玄の家を整理することになる。▼変人扱いされていた祖父の家で彼が見つけたのは、封印された異星文明の管理AI《イヴ》と、現代ではチート級の価値を持つ超技術だった。▼最初の遺産《セル・チューナー》は、地球のバッテリーを桁違いの高性能品へ変質させる基幹技術。▼スマホは一ヶ月充電不要。死に…


総合評価:2604/評価:7.97/連載:49話/更新日時:2026年05月26日(火) 21:44 小説情報

うわぁぁ!!! エルフだ!!??!(作者:葛城)(オリジナルファンタジー/日常)

例によって例のごとく、神様のミスで異世界TS転生しただけでなくエルフになった人の話▼なお、異世界ではエルフはお伽噺の住人扱いされるぐらいで、本当にエルフっていたんだって超驚かれる存在である▼※セルフレイティングは、いちおう念のため


総合評価:3396/評価:8.31/連載:10話/更新日時:2026年07月04日(土) 23:35 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>