ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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第106話 酒飲みながらやる話じゃないんじゃなくて???

“アキコの文句は俺に言え!! クマの咆哮チゲェダを粉砕!”

 

“決まり手はオリジナルホールド!? アントキバ猪上大絶賛”

 

“タイトルマッチを用意した!? 全米プロレスクマコーへラブコール!”

 

“技術を持った人間大の熊!? クマコーの爪痕は人間業じゃないと米教授断言!”

 

“プロレス新時代到来! クマコー、怒りの最強宣言か”

 

 

 新聞を開くとどこもかしこも好き放題に書き立ててくれている。例の試合から1週間ほど経過しているが、周囲の騒々しさはまだまだ収まりそうにない。

 

 

『惜しかったなぁ。これほど注目されるなら決め台詞をちゃんと言っとけばよかったのに!』

 

――お前の決め台詞ってあのくっそ恥ずかしい奴か?

 

『人の決め台詞をクッソ恥ずかしいとか言うんじゃない! 確かに恥ずかしいけどクッソほどじゃないだろ、クッソほどじゃ!』

 

 

 アドレナリンマシマシの時はなんかノリだけで動いていたが、冷静になると恥ずかしい行動が多かった試合だった。もっと冷静に試合組み立ててればアキコさんのラウンドガール姿を全世界にお披露目できたんだけどなぁ。それだけが悔やまれる。

 

 ちなみに対戦相手のチゲェダは両足首と右拳の複雑骨折に脊髄損傷と全身無事な所が皆無ってくらいのダメージを受けて無事に再起不能の診断を下された。とはいえ仮に五体満足だったとしても試合前に付き人を殴って重体に追い込んでいたり違法薬物を試合前に大量摂取してたりと諸々の不祥事が明るみに出てきていて、試合後には警察行きになってたみたいだから一秒でも長く外の空気を吸えるって意味ではむしろ助けてしまったかもしれない。

 

 まぁ、チゲェダの事はもうどうでもいい。俺の人生に今後あいつが関わってくることはないだろうしな。とはいえ、あいつとの試合によって良い流れが出来たからその点は感謝しておこう。あいつとの試合後、チゲェダに便乗してアキコさんや俺を中傷していた連中が一斉に黙ったのだ。特に格闘系のインフルエンサーは試合前は「俺と試合を組め!」ってうるさかったのにチゲェダの無様が全世界に配信されてからは一気にトーンダウンだ。

 

 まぁ、試合後のマイクパフォーマンスで「今回は手加減したけど次は手加減しねぇから。SNSで遠い所から吠えてる連中、テメェらの道は三つだ。俺と戦うかうちの社長を貶して申し訳ありませんって土下座するかアカウント消して二度と粋がらねぇか。好きなのを選べ。絶対に逃がさん」と言ってからはね。SNSの一部で一斉に謝罪大会が始まったりアカウントが消えたりと大盛り上がりだった。最高だったね。そう考えたらチゲェダの名前は暫く憶えておいてやってもいいか、うん。

 

 そしてアキコさんがねぇ。ツブヤイターで格闘系のインフルエンサーどもからの謝罪コメントに最高の返しをしてくれたんだよ。「え、そんな事あったの? 私は気にしてないわよ、元風俗嬢は本当だし。でも悪いと思うんなら今度うちの配信を見ていってね」ってさ。

 

 違うよなぁ、器が。ついついチゲェダの無礼な発言に発狂してしまった自分が恥ずかしいよ。その器の大きさが世間に広まったのか、アキコさんのチャンネルの登録者数が最近また増加傾向にあるんだ。登録者数が100万を超えた辺りから伸び悩んでいたんだけど、たった1週間で20万人も登録者数を増やしている。こう考えたらあの試合もアキコさんを知ってもらえる良い機会だったのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 さて、世間が騒がしいとはいえ俺にはいつも通りお仕事がある。今日は関係先であるはちじくじさんの運営元であるアニカラさんでの打ち合わせだったのだが、事務所で話をしていたらいきなり複数人のVタレに引き立てられて飯を奢らされることになったのだ。

 

 

「よっお大尽!」

 

「ファイトマネーでがっぽりなのは知ってるよ(はぁと)」

 

「クマちゃんの! あっ! ちょっと良いとこみてみたい!」

 

「……仕方ねぇなぁ!」

 

 

 見知った顔の人ばかりだったし、たまに飲みにも誘われてた相手だ。まぁデカい金が入った後でもあるし付き合い先の接待と考えれば良いか。決して耳元でぼそぼそっと生ASMRを聞かされたり抱き着かれた時に背中に柔らかいものが押し付けられたからではない。俺の名誉のためにそこは宣言しておく。多分D、かな。

 

 アニカラさんの担当者さんが慌てたように「うちで持ちますんで!」と言って来たけど、まぁそこはそんなに気にしてない。綺麗処複数人に囲まれて飲むのにはそれだけの価値があるからよぅ! と宣言すると番長を含めたVタレさんがまたヨイショしてくれたので「よっしゃよっしゃ!」と典型的成金ムーブをかましてアニカラさんの事務所から移動を開始。もちろん万札をひらひらさせながら「ヘイタクシー!」をしてタクシーを呼び十分事務所から離れたなと判断した辺りで「釣りはいらねぇくれてやる!」と万札を置いてタクシーを出る。

 

 成金ムーブ割と楽しいな。

 

 

「それで、わざわざどうしたんです? あ、好きなもの頼んで良いですよ。ファイトマネー入ったのはマジなんで」

 

「うん、ちょっと山里さんに頼みたい事があってね。ってアレマジで貰ったの!? 確か〇億って書いてたんだけど」

 

「その報酬が出せる位にはプロモーターに金が入ってるんですよ」

 

 

 お昼時にも気軽に食べられる焼肉の店に入り、番長と他3名のVタレさんと卓につく。実際にこのお店をビルごと買えるくらいのお金は入ったから奢るくらいはなんでもないんだ。領収書は持っていくけど。

 

 細かい話はとりあえず食べてからという事にして出てきたお肉をどんどん焼いていく。まぁ女性ばっかりだからそれほど量は頼まれなかったけどね。でも昼なのに酒は頼むんかい。

 

 

「いや……山里さんアキコシャチョー好きすぎじゃない? あの人彼氏持ちですよね……?」

 

「好きって単語じゃ軽いかな。この感情は尊敬よりも熱く崇拝よりも深いもの。愛だよ」

 

「愛ならしょうがないかぁ……?」

 

 

 そして焼いてる時間に出てきた話題はアキコさんについての事が多かった。どうも傍から見てるとアキコさんの恋人は俺なんじゃないかと思ってたらしいが、アキコさんの恋人は俺じゃなくてメンチだ。そこはちょっと複雑で、俺個人としては他の誰がアキコさんの恋人でも許せないんだが、それこそたとえ俺が恋人だったとしてもちょっと脳が受け付けないんだがメンチなら許せるのだ。俺は確かにアキコさんへの愛を持っているが、恋人としての愛はちょっと超越しちゃってて。もっとこう、なんだろうな。言葉にしにくいんだが、兎に角恋人としてアキコさんの隣に俺が座っているのはなんだか違うと感じてしまうんだ。

 

 最初は確かに俺があの人の恋人に、なんて思ってたんだけどな。でも、それであの笑顔を引き出せたかと考えるとううんと考えてしまう。多分、無理だったんじゃないだろうか。俺はあの人の友人にはなれるけど、恋人にはなれない気がする。

 

 でもアキコさんの笑顔は一等間近で見たいと願っている。そう告げると、番長はぱちぱちと拍手をしてきた。予想以上に面白かったらしい。

 

 

「うん、やっぱり山里さんならいっか。ね、山里さん、ちょっとお願いがあるんだけど」

 

「借金の申し込みと移籍の話しなら受けませんよ」

 

「お金の話はあるかもしれないけど移籍については逆かなぁ」

 

「逆?」

 

「そ。うちの子で事務所と合わない子が居るからさぁ。VVVで引き取るって出来ないかな?」

 

 

 そう言ってはちじくじの番長は、ちゅーちゅーとストローでカクテルを飲み干した。酒飲みながらやる話じゃないんじゃなくて???

 

 




山里一也(男)26歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
『プロレスラーに明日はない!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』(料金:良き闘い)


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