ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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第116話 舌禍は慎まねばな

「え、田井中さん入院してるの!? 大変、お見舞いにいかなきゃ! 一也くん、病院は知ってる?」

 

「近くの〇〇大学病院ですね。午後にでも行こうと思うので一緒に行きましょう」

 

 

 ちょっと二日酔い気味のアキコさんに田井中さんの入院を告げるとそう返事が返ってくる。このマンションの購入や新ビル建設の際に色々骨を折ってもらったから、アキコさんとしては世話になった相手という事なんだろう。右手を負傷してギブスを嵌めていると伝えたのでお土産は片手でつまめるお菓子にした。

 

 

「あ、大石さんお久しぶりです。わざわざすみませんねぇ」

 

「いえ、田井中さんにはお世話になってますし。早く良くなると良いですねぇ」

 

「本当ですよぉ。よりにもよって利き腕でやっちゃって……はぁ。あ、一也くん、例の件お願いね?」

 

 

 いつものニチャアっとした笑みを浮かべて頭を下げる田井中さんと軽く雑談をして病室を後にする。例の件ってのは『めぐみ』を紹介してくれという話だ。『メンチ』は常に連絡がつくわけでもないため、『めぐみ』への連絡は俺経由で行うと伝えてあるのだ。

 

 その事をアキコさんに尋ねられたのだが「ああ、女の人を紹介してくれって話です」と伝えるとアキコさんは呆れたように納得してくれた。田井中さんの風俗好きはアキコさんの耳にも入っているらしい。ただ、仕事先への対応は誠実そのものだしアキコさんにアプローチをかけるような事もないため気にはしていないようだが。

 

 

「ね、一也くんはどうなの。結構身近に可愛い子が多いんだけど誰か気になる子とか」

 

「流石に職場の人間関係壊すのは嫌なんでそっちは考えてないですね」

 

「えぇ~。さやかちゃんとはどうなの?」

 

「妹分にそういう感情は抱けないですねぇ」

 

 

 そんな何事もないやり取りをしながら帰路につく。マンションまでは車で大体20分ほどかかるのだが、道は相変わらずの東京の道路事情という奴だ。つまり、車が多い。

 

 ただ、去年と大きく違う点は比較的交通マナーが良くなっている点だろうか。以前はいきなりフルスロットルで追い抜きをしたり気に入らない車がいれば背後からぴったり1mくらいにつけて煽ったりいきなり急ブレーキをかけてゲラゲラ笑ってる様な連中が多かったが、今日はそういった脳みその欠如したドライバーは見当たらず快適な運転が出来ている。

 

 これは去年よりもドライバーのマナーが良くなったから、という訳ではない。一部の不法外国人がガンガン日本を追い出されているからその影響はあるかもしれないが、それだけで全ドライバーが一気にお行儀良くなるなんて事はないのだ。

 

 では去年と今で何が違うのか。答えは明白で、迷惑な運転をした奴は例外なく切符を切られているのだ。

 

 去年、その当時の半数の国会議員が逮捕・起訴された大疑獄により日本の国会は一気に人員を入れ替える事となった。その時の総選挙では支持母体ごと消えた政党なども多数存在したため、新たに国会議員となった議員たちは無所属議員などがかなりおり、これまでは過去のしがらみで施行できなかったり議論できなかった法案などが多く議論・または施行されていったのだ。

 

 その一つに道路交通法の一部改正が行われ、道路事情の悪化を起こすような危険な運転などに対する厳罰化と、それを取り締まる警察等が円滑に業務を遂行できるように装備の更新がされている。とりわけ速度違反や危険運転に対する通報から警察官の現場急行がスムーズに行われるように通報を受けた場合位置特定・近隣の警察車両への連絡が自動で行われるシステムが導入されてからは危険運転等で捕まる者が増え、抑止力として機能しているのだ。

 

 このシステム、雨宮セキュリティー経由でVVVも関わっており自動応答システムと近隣車両への通報システムにはなんとAIアキコが組み込まれている。AIアキコには元々相手の要望を聞いて回答する程度の自己判断能力が備わっていたため、この自己判断能力と警察の通報システムを組み合わせて24時間迅速な対応が出来るシステムが構築されたのだ。

 

 そしてこの通報システムは今年の4月から導入されているのだが、市民からは「やりとりが簡単」「言わなくても現在地を分かってくれる」「すぐに警察が来てくれる」と評判だし実際にこの通報システムで現場に急行する警察官からも「知りたい情報が一発で分かる」「聞き取りやすい」「ファンになった」とこちらも評判。二つ合わせて大評判って所だろうか。

 

 このシステム導入で結果を出したのと社内に警察官僚の受け入れを行うなど雨宮セキュリティーはどんどん警察内部に影響力を増しており、おかげで『かすが』のぶどうジュース消費量が最近増加しているらしい。このままだと本当に日本の内部を掌握しかねないんだがやっぱりアイツどっかで〆ないといけないんじゃないだろうか。全部ご破算にしてリセットする相方が呼べないのが悔やまれる。

 

 

『だからあいつを呼ぼうとするなと何度も言っているだろうが! 私やリリーベルだって程度は弁えている。過ごしやすい国を作るため以上に手を入れる事はしないさ』

 

『予知して足にキスされるだけの私を共犯に仕立て上げないでくれるかな???』

 

「いや、お前割とノリノリでフィクサー気取ってるだろ」

 

 

 まぁなにかしでかしそうならその時には他のプレミアムレンタル権者全員で止めるし『かすが』たちもそれは分かっている。こっちに火の粉がふりかかりそうな事を勝手にやらかすならそれはもう止めるべきなのだ。ただ一応釘だけは刺しておかないといけないのでね。

 

 俺が言いたい事も分かっているのだろう、『かすが』はお気に入りのぶどうジュースを入れたグラスをゆらゆらと右手で揺らしながら、一つため息を吐く。

 

 

『もっと信頼してくれても良いだろうに。私はこれでこの国の為に頑張っているんだぞ? 不法外国人の不法行為を止め、警察の機能不全を改善し、汚職に塗れた国会議員を入れ替えて政治を立て直すきっかけを作った。恐らくここ半世紀のどの総理大臣よりも仕事をしている自負がある』

 

「お前はなぁ……行動の節々に感じる毒気がなきゃ素直に頼れるんだけどな」

 

『それはもうしょうがあるまい。屑が右往左往しながら地獄に墜ちる姿を見るのは趣味なんだ。生き甲斐なんだよ。真面目に頑張る一般市民に迷惑はかけてないだろう? お前がモーションをかけてくる後輩や自社社員に手を出さずに風俗通いするのと一緒だ』

 

「……すぞ」

 

 

 それを言ったらおしまいだろう。戦争だろうが、言っちゃったら。無表情でソファから立ち上がった俺に危機感を覚えたのかぶどうジュースを飲み干して豪華な社長椅子から立ち上がった『かすが』と机を挟んでカバディをしていると、『あ、そだ』とソファに座ったままの『リリーベル』が声を上げた。

 

 

『一也、お前たしか今、相当暇なんだろ? そんなに暇ならちょっとこっちの仕事を手伝ってくれないか?』

 

「見て分からんのか。今、忙しいんだが」

 

『リリーベル、助けてくれ! パートナーの危機的状況だろう!?』

 

『自業自得だ。舌禍は慎まねばな、かすが? 一也、そう言わずに話だけでも聞いてくれ。多分、メンチが動くことになった件とも繋がる話だ』

 

「吸血鬼の件と?」

 

 

 虚を突いて上手く背後に回った俺の右腕が『かすが』の顎下を押さえ、続いて左腕でその右腕を固定する。チョークスリーパー。またの名を裸締め。ギブギブとタップしてくる『かすが』を無視して視線を向けると、『リリーベル』は何故そこに入れていたのか分からないが豊かな胸元から一枚の写真を取り出した。

 

 

『酷い占い結果が出た顧客が居てね。このまま放置すると3日後に命を失う可能性がある。当然雨宮セキュリティーの護衛はつけているんだが……どうも相手が人間じゃないかもしれない』

 

 

 机の上に置かれた写真に写っているのは恐らく40代くらいの男性の姿だった。国会中継で見た覚えがある。たしか、現職の国会議員だったか。

 

 

『彼はメディア関連に強い人材でね。彼を中心に幾つかプロジェクトが動いているからうちとしても日本としても彼を失う訳にはいかないんだ。仮に相手が吸血鬼であるなら血を吸って相手を支配する、とかやるかもしれんのだろう? 彼を取り込まれる訳にはいかんし、人間以外の相手となると雨宮セキュリティーでも心許ない。力を貸してくれないか?』

 

「良いぞ」

 

 

 タップしなくなった『かすが』を解放し、テーブルの上に置かれていた写真を受け取る。あっさりと頷いた俺に『リリーベル』が拍子抜けしたような表情を浮かべるが、日本を支配とか粛清とか一般市民に迷惑がかかりそうな事をやらなきゃ止める気はないのだ。そして今回の依頼はそうじゃない。なら手伝う位はやぶさかじゃない。

 

 それに、『リリーベル』が心配するって事は本当に雨宮セキュリティー単独だと危ないって事だろうしな。雨宮セキュリティーには友人も知人も居るし、彼らが危なくなるかもしれないなら手くらいは貸すさ。まぁ、もしも本当に吸血鬼とやらが出てきたらその時は『メンチ』が相手する事になると思うけどね。




山里一也(男)26歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
『プロレスラーに明日はない!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』(料金:良き闘い)
『ライアードクター』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権は獲得していません



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