ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
遠藤議員の秘書(護衛)になってから数日。
「遠藤議員、お話をお願いします! マスメディアに対して否定的な貴方ですが過去にはBテレの~」
「遠藤議員の改正案は私怨ではないかという専門家からの意見ですが貴方はどう思われますか!」
「おい遠藤! お前も同じ穴の狢だろうが! 局の金使い込んで追い出された逆恨みなんぞしてんじゃねぇよ!」
「あ、今の発言の人。そこの黒いシャツの貴方。局どこ? 一線超えたぞアンタ」
遠藤議員は放送法改正のキーマンと言われているため、ほとんど四六時中マスコミに張られているような状況だ。その遠藤議員を守るためには当然俺も四六時中傍に居なければいけなくなる。スケジュール管理は公設の第一秘書さんがやってくれているから俺はもっぱら今のようなやらかしてくる相手の対応を任されているのだ。
感情に任せた罵詈雑言をね、したくなるのは分かる。よぉくわかるよそれでおまんま食いあげちゃうかもしれないからね。だが日本には侮辱罪ってものがあってだね。局どこ? Bテレって遠藤先生の古巣だね。君、自分の立場分かってる? 君の今回のやらかしで遠藤議員とBテレの確執とかってネタで他のマスメディアに美味しいネタにされちゃうよ? マスメディア改正法はBテレの責任って他の局から盛大にバッシングされてもおかしくなくなっちゃったねぇ。じゃ詳しい話はあっちの警備員が聞くから。
俺の言葉にどんどん顔色が青くなる記者さんをニコニコしながら見送り、車で待っていた遠藤議員に合流。第一秘書さんは顔をひきつらせているが遠藤議員はニヤニヤ笑ってる。
「いやぁ、スカッとした! 海里くんには助かるよ、お陰で囲んでる連中も変な質問は投げてこないしね!」
「お役に立てているなら光栄です。まぁ、肝心かなめの時以外は役に立たないと言われなくてほっとしています」
「いやあ、議員なんてやってるとこういう問題なんかはいくらでも起きるからね! それをスパッと解決してくれる君は私にとってはヒーローだよ、ヒーロー! ライダー仮面みたいなものさ!」
「ライダー仮面ですか。特撮がお好きで?」
「もちろんだとも! 局に居た頃は特撮畑で仕事をしていてねぇ!」
そう言って遠藤議員は車両での移動中、テレビ局で仕事をしていた頃の話を面白おかしく語ってくれる。これがまたすっげぇ話が上手くて面白い。思わず遠藤議員の話をずっと聞いていたくなってしまう。国会議員の話しというとただだらだらと自分は悪くない、悪いのは秘書とかいう言い訳みたいな会見ばっかりを想像していたからこの遠藤議員の話しの巧さは予想外だった。
「それはね、海里くん。そういう会見ってのは必要な言葉をどうやって角を立てずに言うかがポイントで、それを面白おかしく話すってのが難しいんだよ。しかも一人相手じゃなくて不特定多数に向けた話し方をしなければいけない。基本的にマイナスからスタートなんだから聞き入ってもらえないんだ」
「なるほど。じゃあ、もしそれが一対一なら」
「楽勝だね」
自信満々にそう言い切った遠藤議員の言葉に、思わず拍手を送ると満更でもなさそうに遠藤議員が笑った。予想していた護衛の仕事というのとはなんか違う気がするが、思った以上に楽しい職場だ。
さて、勿論仕事である以上は楽しいだけでは終わらない。俺に求められているのは遠藤議員の安全で、この安全には心理的な物も含まれている。気がめいってしまっては仕事のパフォーマンスを落としてしまうからね。
『うし、これで大丈夫』
「うむ。リリー様の占いもそうだが、いやぁ凄いもんだねぇオカルトってのは。ぶわっとお酒が膨れ上がって消えていったのはなんだったのかな?」
『結界つうか、まぁ、悪いもんが近寄らないように除菌した、みたいなもんスわ。今日一日は効果あるんで』
「なるほど。オカルト版のアルコール除菌みたいなものか」
遠藤議員とご家族、それに自宅周りには『メンチ』の結界を張ってある。というのも護衛に付いてから何度か明らかに怪しい動きのカラスや蝙蝠を見かけているからだ。
『ありゃ恐らく使い魔だろーな。変な霊力纏ってた』
――吸血鬼に狙われてるってのは間違いなさそうか?
『吸血鬼かはわかんねーがまぁ変なのに狙われてるのは間違いないな』
脳内で会話をして、遠藤議員が家を出る時に『メンチ』と交代で遠藤議員の傍に付く。これは外出時は俺がつき、自宅は『メンチ』が固めていると相手に勘違いさせるためだ。もし留守中に自宅を襲われたらご家族が危険にさらされるからな。『メンチ』の姿で結界などを張っているため自宅の防備に力を入れていると相手は誤認してくれるはず。
じゃあ外に出ている遠藤議員が狙われるじゃないか、というのはまぁその通り。というか、この件はむしろ遠藤議員から頼まれている事だ。家族に迷惑がかかる可能性があるから、もしもなにか恐ろしいものに狙われているなら自分に矛先が向く様にしてほしいと。
だから遠藤議員にはご自宅は『メンチ』が、遠藤議員自身は『海里二郎』が守るという風に伝えて、自宅は万全に守られているというアピールをしているわけだ。
まぁ、明らかに霊能力者が護衛に付いているというのは相手も理解しているだろうし、このまま諦めてくれるのが一番楽なんだが。『リリーベル』が口にした三日という数字がそろそろ過ぎようとしている頃。頭の中でそうボヤいたのが悪かったのだろうか。
今日の分の仕事を終え、車で遠藤議員の自宅に向かっていた所でいきなりパァンと乾いた音がして、運転手を務めている雨宮セキュリティーの警備員から「うわっ」という声が聞こえた。そちらに視線を向ける前にグラグラと車両が左右に大きく揺れ始める。
「な、なんだ!」
「森田くん!?」
運転席を見ると、運転していた森田くんが必死になってハンドルを握っているのが見える。「パンクです! いきなり全部!」と叫んだ森田くんはサイドブレーキを引き、車を強制的に止めに入った。なんとかガードレールにぶつからないように森田君がハンドルを操作し、車は徐々に減速していきやがて止まった。
「……フゥー、びっくりした」
「先生、お体は大丈夫ですか」
「ああ、なんともないよ。ちょっと心臓がドキドキしたくらいだ!」
「先生は車両から出ずお待ちください。渡辺さん、少し外を確認してみます。先生を」
「あ、ああ。分かった。座席を変わろう」
車の外に出てタイヤを見ると、どのタイヤも明らかに尖ったなにかで穴が開けられているのが見て取れる。パァン、と大きな音がした場所からはそれほど離れていない筈だ。そちらに視線を向けると、地面から赤黒い棘のようなものが突き出しているのが見て取れた。
その赤黒いものは少ししたら水に溶けるように消えていき、アスファルト上には赤黒い水たまりだけが残されている。それを見た瞬間にピピッと背筋に走った悪寒に従って視線を巡らせると、真っ白なスーツに身を包んだ20代後半くらいの青年がポケットに手を突っ込んで歩いてくる。
ああ、どうやらこいつが、招かれざるお客様のようだ。
山里一也(男)26歳
視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
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プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』(料金:良き闘い)
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