ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
一目見た瞬間、危険を感じた。
真っすぐに車へと歩みを進める白スーツの男と車の間に体を滑り込ませると、小石くらいの赤黒い水滴のようなものが飛んできたので受け流す。俺の霊力とぶつかり合った赤黒い水滴はジュッと音を立てて蒸発して消える。
「ほぉ?」
肩眉を上げて男が立ち止まる。今、初めて視界に俺が入った。そう言いたげにしげしげと白スーツの男は俺の全身を眺め、やがて口元を歪める。頭の中で『メンチ』が『丁度いい具合の相手だな。やってみろよ』と言ってくる。『日華』との模擬戦に比べたら感じる圧力は確かに弱い。油断さえしなければ俺でも対処できそうだ。
まぁヤバそうならその時は『メンチ』に代われば遠藤さんを守り切れるだろう。いつでも選手交代出来るってのはやっぱ強いわ。立体投射機を作ってくれた『つくも』に感謝だな。
「あの術師といい粒ぞろいの国だ。おい、お前。後ろの男を差し出すなら眷属に加えてやっても良いぞ?」
「田井中さんの事か? あれやったのお前か殺す」
『あ、やっぱ代わってくれ殺す』と頭の中で叫び始めた『メンチ』を無視して真っすぐに突き進むと、それを予見していたのか男がポケットから右手を取り出し……右手じゃない。赤黒い剣?
男は右手の代わりに伸びた剣を切り上げるように振るってきた。空拳には当然刃物対策もあり、やろうと思えば指で刃を受け止める事も出来るが嫌な予感がしたため突進の勢いを殺して後ろに飛ぶ。目測を誤った相手の斬撃は俺の目の前を通り過ぎ、そのまま剣は真っすぐに伸び続けて5mくらい先にある街路樹を切り裂いた。射程無視かい。
「お。良く避けたなぁ。あの術師も惜しかったんだがなぁ、お前より気付くのが遅れたんだ」
「初見殺しにも程があるだろ。死ね」
「口悪いなお前」
懐からウイスキーのスキットルを取り出し周辺にばら撒く。「オン」の一声と共に酒精の制御を握り、アルコールの水滴を剣へと変える。瞬間、男の斬撃がまた飛んできたのでそれを酒精の剣で受け止め、男の赤黒い剣と酒精の剣が混ざり合う。
「ちっ」
男が舌打ちを一つして、俺から距離を取ろうと背後に飛んだ。俺の剣もこいつの剣もどちらも液体が元だしな。液体同士がぶつかり合えば混ざり合うのは必定で、俺の剣はアルコールでこいつの剣は血液。それらが混ざるとどうなるか。血液はアルコールを循環させるからなぁ、俺の霊力をたっぷり含んだアルコールがその右手から体に入るとどうなるかな?
「聖別されたワイン、違う、なんだこれ、頭が、ふらつく!?」
「あ、体の機能は人間と変わらないんだな」
上手くいけばラッキーくらいだったんだが、直脳アルコール作戦は無事に成功したようだ。というかめっちゃ効いてるくさい。霊力を用いて血管を通して脳に集中攻撃させたんだが、思いのほかあいつの防備が薄くて簡単に脳にアルコールを届かせることが出来てしまった。
『うーん、相性がバカみたいに良すぎたな。俺の呑天術式だとこいつカモだ』
――吸血鬼って皆こうなのかな?
『いやぁ、こないだ戦った雑魚は術も使わなかったし判断できん。ただ、こいつの血液操作術を他の吸血鬼が使うならまぁ不意打ち以外じゃ負けんだろ。あとは逃げるかもしれんからそこは注意!』
頭の中でそんな会話を交わしながら何度か酒精を飛ばして攻撃するが、相手は酔っ払ってフラフラの状態ながらもそれらを血液を操って防いでくる。ただ、どうも相手さんは血液が体のどっかと繋がってるみたいでそれを操る度にどんどんアルコールが蓄積していく。吸血鬼が酒に酔うと顔は赤くなるんじゃなくて青くなるんだなぁ、勉強になる。
「くしょぉ、なんだこれぇ」
「日本だとへべれけっていうんだよ」
「へべれけぇ、おそろしぃ、じゅちゅだぁ……」
もうまっすぐ立つのも難しいのか、がくがくと千鳥足気味に動く白スーツの男がバタリと倒れた。え、あれ。倒れた?
『全身にお前の霊力が回ってるからな。吸血鬼っての結局のところ死体なんだろ? そー言う連中は自分の身体を動かすのに霊力が居るから、その霊力を他人の霊力で邪魔されたらこーなるんだよ』
――なるほど……え、つまり酔い潰したってこと?
『まぁ、そうだなぁ。アルコールと霊力の違いはあるけど』
ぶっ倒れたままグァーグァーとうめき声をあげる白スーツの男。あ、これもしかしていびき? いや、でも吸血鬼って眠るのか……? というかこれどうすんだろ。街路樹ぶっ倒れてるし車動けないし。吸血鬼酔い潰れてるし。
……よ、よし。まぁとりあえず勝ちは勝ちとしておくか。最後が締まらなかったが、遠藤議員を守り切って人的被害もなし。うん、良い結果なんじゃないかな!?
「か、海里くん、終わったのかい?」
「ええ、終わりました。渡辺さん、替えの車の手配をお願いします。俺はこいつを拘束して専門家に引き渡すので」
「分かった、いや、分かりました。指示に従います」
「遠藤議員には危険は排除したと。ただ、事後処理がありますのでお時間をくださいと伝えてください」
「聞こえてるよ! 私は気にしないでくれたまえ!」
残った酒精を使って男をぐるぐる巻きにしていると第一秘書の渡辺さんが声をかけてきた。遠藤議員といいとんでもないシーンを目にしたはずなのに変に騒がずにいてくれたのは感謝だ。こっちの指示にも従ってくれるし。
お言葉に甘えて先日連絡先を貰った霊障対策課に連絡を入れ、国会議員の護衛中に吸血鬼らしき男に襲われた旨を報告すると電話の向こうが大騒ぎになったのが分かった。吸血鬼は拘束しているため早く迎えに来てくれというと5分ほどで日の丸マークがついたハイエース2台が到着。議員宿舎から霊障対策課の本部は結構近いらしい。
やってきた霊障対策課の人は10人くらいいて、その中にはこの前知り合った秋村さんも居た。車を降りた彼女はなんだか身なりの良い若い兄ちゃんに何事か呟き、こちらに向かって歩いてくる。
「課長、こちらが例の……失礼。今はなんて名乗っているのかしら」
「海里です。仕事中の為、こんな形で失礼」
「先日は部下がお世話になりました。内閣府霊障対策課で課長を務めております、木村です」
育ちの良さを感じさせる物腰で身なりの良い兄ちゃんが頭を下げながら名刺を出してきたので、「あ、これは」と頭を下げ返す。つい胸ポケットを探ってしまったがそういえば今は名刺持ってないんだった。事情を察してくれたのか木村さんは苦笑してくれたが、少し恥ずかしい。
「遠藤議員、お車はこちらで手配いたしましたので、今日はこのままお帰り下さい」
「うむ、そうか内閣府の。噂には聞いていたが」
「ええ。噂で済むのが一番いい。それが霊障対策課ですので」
木村さんと遠藤議員のやり取りを眺めながら、霊障対策課の人と一緒に白スーツの男をハイエースに詰め込んでいく。白スーツの男を見た時に霊障対策課の人たちがざわついていたが、もしかして有名人?なのだろうか。まぁ、相性が悪すぎただけで普通に強かったし田井中さんをケガさせた奴でもあるらしいから、他所で結構悪さをしていたのかもしれないな。
山里一也(男)26歳
視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
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プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
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プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
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プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』(料金:良き闘い)
『ライアードクター』(レンタル終了)
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