ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
“本日20:00を持って第二回VVVエキスポはしゅうろ……終了しました。皆様、忘れ物などがないようお気をつけてお帰りくだしゃい”
「まんしぃちゃん噛んだ! 噛んだよまんしぃちゃん!」
「草。最後で笑かすじゃん」
「まんしぃちゃん声かすかすじゃん」
「終了時刻となりましたのでぇ~案内に従っておかえりくださーい!」
『お帰り下さい。なぁ、りんりん。何故終了時間になっているのにこの人たちは会場から出ようとしないんだ?』
「うわ、生のりんりんちゃんだ! さ、さ、サイン!」
“会場内のりんりんちゃんへ。私のファンを横取りするのは止めてくださぁい”
「してないわい! ほら、貴方達も。今日はサインとかスタッフからのサービスはダメなイベントだからね! ヴァーイちゃんの悪影響になるから帰った帰った!」
多分コアなファンなんだろう根暗まんしぃのファングッズで固めたいかにもな格好の来場客が場内の声掛けをしているりんりんにサインを求め叱られるという光景が中央の画面に映し出され、ちらほらと残っていた来場者から笑い声が上がる。いや笑い事じゃないんだけどな。アナウンスを流してるのに一向に腰を上げない連中が多くてちょっと困るぞ。去年はこんなじゃなかったんだが。
「あー、今年のファンは結構な数、VSのVタレ目当てが居るんでぇ。とくにホログさん所の強火ファンは狂信的ですからぁ」
「え。あれ、はちじくじさんがそれ言っちゃう? 喧嘩売っちゃう? 我ホログライブだが?」
「うちははちじくじなんだが???」
「今じゃどっちもVSの社員ですよ。ほら、ダベってないで仕事仕事」
「「あらほらさっさー」」
来場者たちはイベントを楽しんで帰るだけであるが、俺達スタッフはまだまだ仕事が残っている。ここから次のイベントのためにブースの解体や機材の搬出があるからな。特にヴァーイ関連はここにある機材が世界唯一の品ばっかりだから持ち運びにも注意しないといけない。そしてそれらを扱えるのは『あきら』とマックス氏参加のAI技術者、それに俺だけだから当然搬出作業の指示だしは俺がしなければいけないわけでむしろ俺だけはこっからが本番と言えるくらいに忙しいのだ。
まぁ会場内にVVV側の責任者が一人も居ないのは不味いから、どっちにしろ一人は社員が残らないといけないんだ。プレミアムレンタル権者の影響で体力お化けで1週間くらいなら飲まず食わず寝なずでも平気で活動できる俺がこの場に残るのはむしろ適材適所と言って良いだろう。
「本当に俺ら帰っていいんですか?」
「うん。こっからは解体作業と機材の搬出だし、機材の取り扱いは俺か『あきら』くらいしか出来ないから帰っちゃっていいよ。あ、ただし時間も時間だから全員タクシーでこのまま帰宅してくれ。打ち上げはまた別日でやるから皆で飲みに行って公共交通機関で女性一人が帰宅、なんてのは慎むように。これタクシーチケットね」
「「「はーい!」」」
「あ、しゃちょー。打ち上げじゃないですけど配信は良いです? これ、このタイミングでネタに扱わないの勿体なさ過ぎるんで」
「それは構わんよ。ちゃんと家でな?」
『えー、イロリーやヴァーイともっと遊びたーい!』
「やかましいぞ
「一也くん、ひなちゃんと蝶子ちゃんは親御さんが来たから、先にタクシーチケットを渡しておいたわよ」
「あ、了解しました。助かります、アキコさん」
VVVのスタッフとVSの社員にタクシーチケットを渡し、打ち上げなんて行くなよと釘を刺してから全員を返す。家に帰るまでがイベントだからな。ここで途中で飲みに行って事故とか事件に巻き込まれるというのは勘弁願いたい。
解体作業は設営の時と同じ業者に頼んでいるため、話し合いはスムーズに進んだ。やっぱり一度仕事をした相手だとこっちの意見も通りやすいし相手の意見もくみ取りやすい。今の調子だと来年もエキスポを開催するだろうし、その時もまたこの業者さんにお願いしたいな。
そんな事を考えながらヴァーイ関連の機材を片付けて梱包していると、ぶるっとスマホが震えて通知音が流れてくる。おや、と思ってスマホの画面を見ると、何故かタクシーで返した筈のVVVとVSの社員たちがVVVの事務所に集まり、そこで配信を始めているのだ。
「はい! というわけで栄えある第二回! VVVエキスポお疲れさまでしたぁ!」
「「「お疲れさまでしたぁ!」」」
「いやー、最っ高に楽しかったなぁ!」
「ええ……これ、大丈夫なん? クマコーさんには直帰しろ言われとったやん」
「ふふ、大丈夫。大丈夫よみつきちゃん。何故ならVVVはアキコさんが許可を出してるし、貴方達寮に住んでるんでしょ? つまりここが家!」
「はっ! そ、そやった!? 直帰して事務所に居るんやから帰ったことになるな!」
「いやならんやろ。というかそれなら
「前にクマコー社長に仕事するなら事務所にはいっくらでも居ていいよって言われてたじゃん。つまり事務所が私らの家って事では!!? 私なんか寝袋持ち込んでるよ!」
「あれお前の寝袋かよ! なんか談話室に寝袋並んでるって思ってたんだよ」
「あ、一つは私のね」
「私のも」
「実は私も」
「あたしも」
「……あれ。もしかして俺以外全員、寝袋置いてる?」
すぐさまメッセージアプリで「後でお話な?」とVS社員のグループ通話にメッセージを送ると、配信画面の向こうでVS社員がビクッと体を揺らしたのが見えた。そして明らかに挙動不審になるVS社員たちに、VVVのスタッフたちがにやにやと絡んでいく姿を横目に梱包作業に戻る。バレたら不味いと思ってんなら公式チャンネルで集合配信なんかやるんじゃないよ、ったく。
だが、まぁなんというか。送られてきた言い訳を読むには流石は最大手2社で鎬を削ってきたVタレ達と言うべきだろうか。このタイミングで集合で打ち上げ配信をやるからこそ意味があるとほぼ全員が理路整然とした理由をメッセージで送ってきており、俺としても勉強になる点が多々あった。これが町中のカラオケとかでやってるんなら全員クマビンタものだが安全で仮眠設備もある事務所で配信する分には小言くらいですませてやるべきか。
なによりアキコさんからのとりなしも来てるしね。お祭りみたいで楽しいってアキコさんが喜んでるならまぁそれでいい。それでいいのだ。
『随分と楽しそうじゃないか。えぇ、残業で笑えるのは流石日本人って所か?』
「いやぁ、残業の内容にもよるでしょ。祭りの跡片付けなんて最高の残業ですよ」
『そういうもんか』
ヴァーイの機材を梱包してマックス氏側の受取人に連絡を入れると、警備の腕章をつけたクラウザーさんが受け取りにやってきた。この人も今日は早朝から付近のクリアリングに会場内の護衛と働き詰めだというのにまるで疲れた様子が見えない。
『ちょっと報告と伝言がある。近隣のビルに4名、狙撃銃を持ち込んでいた男たちが居た。雨宮セキュリティーからの連絡で早期確保できたと、雨宮氏に礼を言っておいてくれ』
「あー……いましたか」
『ああ。そっちの占い師、とかいうコードネームだったか。良い参謀が居るとうちでも話題になっているよ。どうやって場所を特定したのか聞きたいそうだが』
「企業秘密でしょうね」
イベント開催前、マックス氏が会場入りする前に『リリーベル』が『かすが』に何かを伝えていたのだが、多分その時だろうな。雨宮セキュリティーは日本の企業だから当然銃火器への対応はそれなりになってしまう。そのため、バリバリの銃社会で鍛え抜かれているマックス氏の護衛チームに話を持っていったのだろうがこの様子を見る限りこの対応で正解だったみたいだ。
しかし、日本で狙撃銃かぁ。『日華』がぶちのめしていた不法外国人といいどうやってこの国に銃器を持ち込んだのか気になる。恐らくこの話を聞いたら『かすが』辺りは大喜びで何かやらかしそうだなぁ。関わらんようにしとこう。
山里一也(男)26歳
視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女 赤神さやか』(料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人 坂東メンチ』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー マネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者 九十九あきら』(料金:ひなちゃん家のご飯)
『安楽椅子の占い師』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『未来を知る者 リリーベル・リ・ラスティーネ』(料金:1億円or生徒とのランチ権1回分)
『ドッペルゲンガー』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『もう一人の俺 セシル・ファラウェイ』(料金:週休2日三食昼寝付き週6万)
『世界最強の傭兵隊長だった俺が女子高生になった件について』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『生真面目系殺伐女子高生 雨宮かすが』(料金:組織)
『魂羽織』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『至高の人形師 人形残夢』(料金:人形作成・開発費)
『拳創成期』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『無双女帝 日華』(料金:気持ちよく昼寝できる環境)
『テレポーター三沢ひばりは平穏に過ごしたい』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『ハードラックテレポーター 三沢ひばり』を獲得しました(料金:休日)
『プロレスラーに明日はない!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『炎の経営者 純情仮面(本名:間藤勇作)』(料金:良き闘い)
『ライアードクター』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『神域の外科医(コスプレ?) 黒井めぐみ』(料金:1手術100万円)
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