ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
原木理さんと仕事を始めて1週間目。特撮プロジェクトは暗礁に乗り上げていた(15回目)
「いや、前から言ってたでしょ。VVVの仕事があるんですよ」
「そこをなんとか!」
「なりません。本業をおろそかにする気はないんで」
「ぐぬぬぅ」
俺の言葉に原木理さんはそう口にして無念そうに引き下がった。いや、この1週間寝る間も惜しんで撮影に励んでたから大分進んでるって知ってるんだからな。余計なシーンを想い付きでガンガン突っ込もうとしなければもう終わってるのも含めて。
なんというか、原木理さんは思い立ったら即実行というタイプの監督らしく「このシーン、思ったより面白くないから没」とか「んー、悪くないけどここちょっと変更しよう」とか「あ、今のシーン丸々差し替えやろうか。さっきのシーンからの続き変更します」とかがガンガンあり、脚本もバンバン書き換わっていくのだ。
「いや、流石にこんなに脚本書き換えるのはこれだけだよ!? 勢いで書いちゃったから途中で粗が出てるだけだから!」
「ほんとです?」
「……うん、もちろん」
俺の言葉に原木理さんはそっと視線を逸らした。そういうとこだぞ。
ただ、まぁ。この1週間の撮影は中々大変だったが楽しかったのは間違いないので、別に撮影が嫌になってるってわけじゃない。ただ、俺も原木理さんも撮影にかかりきりになってて他がおざなりになりそうだったからな。そろそろペースを変えないと他の仕事に支障が起きてしまう。
俺はそろそろVタレ男子の運動会企画に参加しないといけないし、原木理さんは本命の企画を進めるって仕事があるからいつまでもカメラを持ってるわけにもいかないのだ。
「という訳でちょっと遅れましたが企画どうなってます?」
「映画撮影って凄いことしてますね」
「こっちはばっちりですよ! もう皆、楽しみで楽しみで!」
さて、立体投射機を使ったVタレ男子組によるVタレ運動会だが、一先ず人員はVVV・VSからは俺を除いて3名、ホログライブ男子組からも3名、はちじくじからも3名と合計9名が参加する事になった。ここに各社から運営担当が一人ずつ選出され、計12人の男性Vタレが参加する大型企画となる。
運動会という事でもっと大規模にやるかと思ったんだが、大人数過ぎても捌くのが大変だというのと、初回だし粗を出すのが目的でもあるんだからある程度規模は抑えた方が良いだろう、という判断があったそうだ。
ちなみに俺は満場一致で運営担当にさせられた。間違っても選手として出ちゃいけないと言われたので、まぁ、大人しくしているつもりだ。
「いや、まぁクマコーさんが対戦相手だったら辞世の句を詠まないといけませんし」
「殺しませんよ???」
「殺しはしないぜ、殺しはなって副音声に聞こえるんですわ……貴方が言うとなにもかもが」
はちじくじさんから参加した全男性Vタレトップのカス、じゃなかった。登録者数を誇る万葉さんがそう口にすると他の参加者が一斉に頷きを返した。俺、他のVタレに嫌われてるのかな……?
「いやー。総合格闘家を1Rで半殺しにして再起不能にした人と体力勝負とか自殺行為ですから当然じゃないっすか?」
「むしろクマコーさんをVタレと思ってる人の方が少ないんじゃ」
「じゃあ俺はなんなんだよ」
「そりゃクマコーでしょ。今作ってる映画のタイトルもクマコー・THE MOVIEなんですから」
「クマコー・THE MOVIEwww マジかよwww」
鹿谷くんの暴露に俺以外の全員がゲラゲラ笑いながらも話し合いは進み、競技やルールなどから勝利条件や賞品といったこまごまとしたものまで話し合い、出た結論を一度各社に持ち帰ってすり合わせてを繰り返して企画内容は本決まりに。撮影は12月に入って忙しくなる前が良いだろうという事で11月末に行う事が決定した。
結構急な日程だが、場所は雨宮セキュリティーの保有する体育館だし機材も立体投射機セットだけだから特に問題はない。なんなら今すぐでも出来るのだが、流石に事前告知はしとかないと視聴者が困ってしまうからね。
という訳で予定が本決まりになったタイミングでVVV・ホログライブ・はちじくじから共同で『どきっ! 男子だらけの大運動会! ポロリはないよ!』を開催すると発表した所、非常に大きな反響が返ってきた。
主に各社の女性Vタレから。
「ふっざけんなぁ! 男子だけでこんな美味しげふんげふん。面白そうな企画やるってどういうことだぁ!」
「「「そうだそうだー!」」」
「シュプレヒコォォオォル! 我々はぁ! じゃちぼうぎゃくなる会社の決定にぃ! 断固反対するぅ!」
「私らも立体投射機であそばせろぉ! そしてローション相撲を開催するんだぁ!」
「そうだそうだぁ」
「いや、それはちょっと」
「王将さんと闇王ちゃん、ちょっと100m範囲に近寄らないで欲しいなって」
まさに喧喧囂囂とはこの事だろう。彼女たちは一斉にSNSや自身の配信で今回の男子運動会が初耳だった事、正直めちゃめちゃ羨ましいこと、男子だけズルいぞという事、参加者にクマコーが居るけど他の参加者は生きて帰れるのか不安だという事をぶちまけた。最後は余計だが、割と全員同じ反応であり当然彼女たちのファンもこぞってこの件に興味を寄せる事となる。
このタイミングで各社の広報はこぞって「いやー、自分らも男女別で運動会をやろうと思ってるんですがね? こないだVVVさんの体力測定でもセンシティブ判定が怪しかったんで様子見をしたいんですよぉ。こっちも困ってるんですぅ(要約)」という趣旨の発言をして責任の回避とV女子運動会も起こりえる事を発表。
これを受けてファン達は運営への攻撃ではなくV女子運動会に対しての議論を過熱させていき、相対的にV男子運動会の注目度もガンガン上昇していった。
この段階で各運営の広報担当(俺含む)は高笑いである。普段はVタレに興味がない層もこの一連の騒動を見て「Vタレ運動会ってなに?」と呟いたりと予想通り、いや予想以上に今回の企画の注目度が爆上がりしたからだ。参加するVタレの登録者は軒並み増加傾向にあり、中には一晩で5万人も登録者が増えたチャンネルもある。VVV公式チャンネルって所なんだけどね。個人チャンネルを持ってない俺と鹿谷くん、猪上くんはVVV公式チャンネルでの配信になるからなぁ……
この過程を見てやっぱり女性Vタレからは「ひいきだ!」「訴訟も辞さない!」と声が上がってるけど、多分君らの時はこの比じゃないと思うから我慢して欲しい所だ。
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