ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
一万個もの鬼たいじに霊力を注ぎ込むと結構疲れる。一個一個はすぐ終わるんだが、流石に数が多いからな。風俗店を出た時は朝だったのに、全ての鬼たいじに霊力を注ぎ込んだ時にはもうどっぷりと日が暮れていた。昼飯も食べずに集中してたからなぁ。朝から何も食べてないから流石に腹が減ったぞ。
「長時間の作業、お疲れさまでした。飲み物を用意してありますので一服されてください」
「ありがとうございます」
集中してたために今の今まで気付かなかったが、秋村さんもわざわざ付き合ってくれていたらしい。自分も何も食べてないはずなのに……く、静まれ! 静まれ俺のム(ry
良い香りの紅茶を飲んで人心地ついた辺りで秋村さんは急いでこれを関係各所に通達すると言って部屋を出ていった。お、おお。これから食事でもどうですか? と誘おうと思っていたんだが、うん。残念だ……いやいやいや。危ない、完全に絆されかけているぞ山里一也!
やっぱり風俗店の大満足から時間が経つと、つい誘惑に負けそうになってしまうんだろう。元気過ぎる男ってのも考え物だな(他人事)
とはいえ流石に二日連続で風俗店ってのも風情がないし、明日の朝アキコさんにジトっとした目で「もー、一也くん。分かるんだからね?」とお小言を貰う事になっちゃうからなぁ。それは流石に避けたいところだ。
……よし、とりあえずは飯。そしてその後はこの火照りを冷ますためにどっかその辺で軽い運動でもしようかな。食後に軽い運動をするのは健康にも良いし寝つきをよくなる。
なんて考えていたんだが大変ラッキーなことにふらっと入ったラーメン屋で明らかに心得がある奴らが「募金お願いしまーすwww有り金全部な」的な因縁をつけてきたので、近くの公園で3人相手に軽い運動をすることが出来た。こいつら全員キックボクサーだったんだがなんかランキングだなんだとか言ってきて全然意味が分からんかったので、とりあえず撫でる位の強さで頭をシェイクしてやったらそのまま白目をむいてぶっ倒れた。三半規管が弱いね、ちゃんと鍛えとかないと。船釣りとか良いよ?
頭の中で『日華』がズルいズルいと騒いでいたが、お前は『勇作』とがっぷり楽しんでたのを知ってるんだからな。そっちで我慢しなさい!
『困るんですよ、クマコーくん。あれ、あれね。人命救助は素晴らしいんだけどさ、やり方が良くない。なんだよ飛燕なんとか脚って。千裂脚? 知らねーよそんな話じゃなくてだね。あれ、あの遊具さ。ぶっ飛んでった遊具がさ。メリーゴーランドの馬をなぎ倒しちゃったあの遊具とメリーゴーランドの修理代どれくらいか分かる? ぶったまげるよ。人命第一! それは良い! だから君に負担を求めないけどそれはそれとしてもううちで仕事をしてほしくないんだ、分かる? 分かるよね?』
マネージャーの言葉に項垂れる彼の名はクマコー。東京にあるスゴイデカイ遊園地で四葉のクローバーを探して子供に渡す係をしているマスコットだ。だけれど彼はちょっとしたミスで遊園地の遊具を大破壊してしまった。遊園地は遊具の修理まで営業できなくなり、クマコーくんは遊園地の仕事を失ってしまった、カワイソ!
従業員用のロッカーに預けてあった財布を取って、クマコーくんは遊園地を後にする。出る時に振り返り、スゴイデカイ遊園地に頭を下げたあと、とぼとぼとクマコーくんは東京の町を歩いていく。ラーメンの屋台の前で立ち止まりお腹を摩りながら財布の中身を確認するクマコーくん。20円しか入ってない。帰っておうちでご飯を食べよう。
そんなクマコーくんの足元にどこからか一枚のチラシが飛んでくる。財布をポケットに入れようとしていたクマコーくんは偶然、そのチラシに掛かれていたマスコット募集! の文字に目を引かれた。
“グンマー最大のテーマパーク 三図リバーサイドパーク堂々オープン! オープニングマスコット募集中! 報酬は高い! 三食昼寝付き”
マスコット募集、報酬は高いの順に目を滑らせた後、三食昼寝付きの文字でクマコーくんの視線が止まった。三食昼寝付き、それはマスコット界隈で最大のご褒美とされている報酬である。
チラシを拾い上げたクマコーくんはそれを大事に四つに折って財布の中に入れ、グンマーの方角へ向かって走り始める。電車のお金はないからね!
「あ、ちょっと止めて貰って良いですか」
「うん、どうしたんだい?」
「なんでこれ、クマコーくんの行動を一々音読してるんです?」
「それはね。クマコーくんの台詞が棒すぎて苦肉の策なんだ」
「ぐぅ」
原木理さんの言葉にぐうの音も出なくなった俺を尻目に、編集が終わったというクマコー・THE MOVIEの試写会?は進められていく。『勇作』と原木理科学特撮研究所の人たちだけの試写会だから完全に身内だけの上映会だ。
クマコー・THE MOVIEの上映時間は1時間20分。コメディチックなホラーアクションならこれくらいの時間が一番いいという原木理さんの考えに基づいた構成になっているとか。
「あの、ところでもう一つ質問なんですが」
「うん、なんだい?」
「これ、特撮というかもうホラーコメディ映画では」
「着ぐるみ着たヒーローが怪物と戦う現実にはありえない映像だよ? 特撮の要綱は全部満たしてるでしょ」
「そうかな……そうかも……」
なにか、なにか非常に大きなごまかしを受けたような気がするが一先ず俺を主役に据えた一本の作品を取る事が出来て原木理さんは大満足したらしく、「よっしゃ! 本命の準備頑張るぞぉ!」と気合が入ったようだし、原木理科学特撮研究所の面々も良い仕事したぁ、と満足げだから。まぁ、まぁ……良かったんだろう。多分、なにかが。
所でこの作った作品はどうするのかと尋ねると、知り合いの映画館を幾つか当たって上映してくれないかを交渉するつもりとの事。まぁせっかく作ったものだしね。本命の準備体操みたいな作品とはいえ初めてカメラの前で演技をしたから、俺としても思い入れがある作品だ。
あ、そうだ。
「それなら、最初の上映はこっちで受け持って良いです? 良い話題になると思うんですが」
「お、もしかしてVVVのチャンネルで流してくれるの? アーカイブや録画が残る形だとちょっと困るけど」
「そこは安心してください。配信するときはうちのAIがコピーガードつけてくれるんで」
「それなら、まぁ……お願いできるかな? うち程度の零細が出来る宣伝より、万倍効果がありそうだしねぇ」
原木理さんは笑って許可をくれたため、クマコー・THE MOVIEのお披露目はVVVの配信で行う事になった。どうせならデッカい場面でやりたいな。今度のVタレ運動会でどっか使えないだろうか。
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