ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
「じゃあ、行くよ。いっせーの」
「「「Vタレ運動会、はっじまるよ~(いくでがんす)(ふんがー)」」」
「真面目に始めろよ!」
Vタレ運動会の収録は雨宮セキュリティーが所持する体育館を借り切って行われた。参加企業はVVV・ホログライブ男子・はちじくじの男性組がそれぞれ3名ずつの9人が参加し、各企業ごとに応援団兼司会として1人が出ている形だ。撮影班はもっと居るけどね。配信機材の関係上撮影担当が居ないのはVVVだけで、残りの企業は一人に付き一つのカメラと二人のカメラマン兼任サポート要員が付いている形だ。
それぞれのカメラで撮られた映像は彼らのチャンネルで配信される予定なので、基本的に彼らのカメラは彼らに付きっ切り。そうなってくるとカメラで映されるVタレさんもそれを踏まえた撮られ方をしなければならず、視聴者に飽きが来ないよう撮影中は頻繁に会話なんかを行っているようだ。はえー勉強になるなぁ。
さて、Vタレ運動会は出場する選手たちの体力と時間を考えて5種目になっており、一番最初と最後に全員参加の綱引きと玉入れが。二種目目からは各企業一名ずつ代表を出す個人戦になり、50m走・跳び箱・パン喰い競争となっている。あとは騎馬戦とかも最後まで候補に考えられてたんだが、ケガのリスクを考えて除外された。
「最初の競技の綱引きはVVVの勝利でした! いやー、強いというか一人明らかに反則なのいるんじゃないです?」
「シャベルゴリラくんは去年まで大学でレスリングしてましたからね。その分キチシカくんと梟くんで調整してるんで」
「一人だけぶっちぎっても他がお察しと。はい、視聴者の皆様お聞きになりましたか。ちゃんと戦力調整は行っておりますよ~」
「それでもシャベルゴリラがぶっちぎってるのは流石ゴリラって事ですかねぇ」
「ゴリラと人間を戦わせるな! 動物虐待反対!」
同じVタレという枠組みではあるが、スタッフがやってるVVVと違ってはちじくじ組のVタレさん達は非常にカメラワークというか色々と巧いと感じる事がある。感心していると他の司会者たちが話を振ってきたので合わせて会話を行う。余計な事を考えていたな、今は仕事に集中しないと。
Vタレ運動会の進行を他二人と行いながら、全体の様子を確認していくと幾つか問題になるだろうな、という点が浮かび上がってくる。まず、Vタレは基本的に体力がないというのがはっきり分かってしまう点だ。全体競技でもそうだが、猪上くん以外の選手たちは競技ごとに休憩を設けないと駄目っぽい。いや、まぁ多分頑張ればいけない事はないんだろうけどって感じだな。ただ、明日は筋肉痛だなってのが透けて見える感じだ。
これはこれで良いんだけどね。数少ないとはいえ女性の視聴者さんとかは推しの普段は見れない姿を見て胸をキュンキュンさせてるだろう。多分。各社の本命である女性版運動会でもこの辺はしっかり踏まえて運公表を作る事になりそうだ。
次の問題としては、絵面が地味になるという点。いや、これまでになかった新しいことなんだけどね。男同士の運動会ってノリでバカ騒ぎしてて面白いんだけど、やってることは超ミニマムオリンピックみたいなもんだし二回三回とやっていくと飽きられそうだな、という印象だ。大昔に流行った芸能人の運動会みたいにお笑い要素を取り入れていかないと長続きしないかもしれないな、これは。
そのまま種目は進んでいき、最終的に全体競技と個人競技で一勝ずつを挙げたVVVとホログライブ男子が同率首位に、はちじくじが最下位という形になり、最下位になったはちじくじ組にはサプライズとして超苦いけど健康にいいお茶を司会者含めて飲んでもらう事に。これ知ってたのは司会者でも俺だけだったので「聞いてない! 俺これ聞いてないけど!」と暴れるはちじくじ組の司会者も含めてきっちり全員が「まずぅい!」と叫んで記念すべき第一回Vタレ運動会は幕を閉じる事となった。
ここでお後がよろしいようで、と終わるわけもなく、運動会に使った体育館の片づけをスタッフ一同と行った後に運動会参加者の12人は全員でVVV本社の食堂に移動し、そこで後夜祭を行う事になる。
「運動会お疲れ様ぁ! 食べんしゃい食べんしゃい! VVV食堂の満腹たべるだよぉ~!」
「ビールあるじゃん!」
「うおっ! 生たべるちゃんだ!」
「お、女の子の手作り料理……おおい! VVVのユニコーンども見てるかぁ↑!」
「VVVのユニコーンは絶滅危惧種だよ。社長のアキコさんが定期的に駆逐してるから」
後夜祭会場になるVVVの食堂には打ち上げ用の料理とおビール用意されており、おじさん率の高かったはちじくじ組から喜びの声が上がる。料理もつまみに合う濃い味付けのものが多いから疲れた体に塩分がドバドバ供給されることになる。健康に悪いんだが、健康に悪いものは美味いんだよね。
さて、後夜祭という事で俺達司会者も選手に交じって飲めや歌えの大騒ぎである。まぁ、『メンチ』の影響でほとんど酒に酔わない俺は雰囲気を楽しむだけになっちゃうんだけど、パカパカビールを空ける俺に気付いたホログライブ男子の一人が調子に乗ってビールを渡してきて、それを飲み干してを繰り返していると30人分くらいで用意していたビールが全て無くなってしまった。
「えぇ……350を50本はちょっと引くというか……」
「そのモデルの向こう、本当にクマだったりしません?」
「喋るクマはちょっと著作権がなぁ」
「違う、そうじゃない」
そんなバカ話をしながら足りないビールを不肖の弟子に買いに行かせて「オリコン首位の歌手にパシらせてる」と参加者たちがザワついたり、用意しておいたクマコー・THE・MOVIEの映像を立体投射機を使って皆で眺めながら笑ったりVVV運動会の感想を言い合ったりしながら後夜祭は更けていき、日付が変わる前くらいまで収録をしてその日は解散の流れに。後夜祭は立地の関係でVVVメインの話題が多かったから、お返しに帰りの足代はVVV持ちで参加者たちにはタクシーチケットで帰ってもらった。撮影スタッフさんたちは後夜祭まで来てなかったからね。どうしてもうちのチャンネルでの配信になっちゃうんだ。
まぁ、こういった経緯でVタレ運動会と後夜祭の撮影は問題なく終わり、各自の編集作業などが終わった後に予告通りにVタレ運動会は配信を開始。特に各社の公式チャンネル放送は女性Vタレなどが同時視聴を行ったりもしていたためかなり話題になり、あっという間にそれぞれの配信が100万回再生を超えるという大きな成果を残すことになり、現在も再生はガンガン回り続けている。
幾つか課題も見えた配信だったが、これだけ結果が出たなら今後も恒例行事として行う事は間違いないだろう。そして恐らく、待望の女性版運動会もその内行われるだろうな。BAN対策を行ったうえで。
ただ一つ、予想外というか予想以上な結果になったことが、後夜祭で初めてお披露目したクマコー・THE・MOVIEがやたらとバズっており、若干Vタレ運動会を喰ってしまいそうなんだが……まぁ、うん。話題に上がらないよりは話題になった方がいいのは分かってるんだがね?
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