ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
「私は今、冷静さを欠こうとしています。理由はもうお分かりですね?」
『メンゴメンゴあだだだだだ!』
舐めた言葉を吐きやがる『あきら』の頭にアイアンクローを行いながら、目の前で行われる工事を眺める。つい半年前までは何も無かった廃れた山村だった場所が、今では舗装された道路と鉄筋コンクリートの建物が並ぶ小さな集落に代わっている。これは全てこのうめき声をあげる20歳児が作り上げた3体のロボットの成果である。
全自動建設マシーン安全くんと確認くん、そしてヨシ!くんの3体は大体3mくらいの大きさのマシーンだ。足回りは変形する事により車輪・四つ足・二足歩行形態になり、上体には小型のクレーンアーム二本にマニピュレーター付きの腕が二本。更にドリルなどの工具アタッチメントがある腕もあり、見た瞬間に『メンチ』が『阿修羅か?』と呟いていた。
こいつらは状況に応じた作業が行えるよう建設に特化したAIが詰まれており、予め目標を指示しておけばそれに従って勝手に作業を行ってくれるらしい。幾つか完成している鉄筋コンクリートの建物もこいつらが建てたそうだから生コン打設まで出来るみたいだな。どうやったんだ一体。
俺、今回の建築の為に見るアニメ厳選とかしてたんだけどなぁ……まぁ、それらは良い。事前に工業用のロボットを作ると聞いていたからこの3体に関しては全く文句はない。この3体に関しては。
「なんだこれ」
『足!! いだだだだ!』
「そんなん見りゃ分かるわい。なんの脚かって聞いてんだよ」
鉄筋で作られた大きな建物の一つはほぼ倉庫のような状況なんだが、この中にサイズとしては大体3mくらいの、他のロボットたちと大体同サイズくらいの足が並べられている。足だけだ。他の部分はない。だから初見ではなにがなんだか分からなかったんだが、20歳児に尋ねるとこんな回答が返ってきたためアイアンクローとなったわけだ。
足、しかも明らかに膝より下しかない状態で3m近いという事は仮に全体が完成したらどのくらいのサイズになるか。10mは優に超えるのは予測できるから、それはつまり、どっからどう見ても立派な巨大ロボットである。
「俺、巨大ロボット、作るな、言ったぞ???」
『さぎょうよう! さぎょうようだよおいいいだだだだあ!! たちけてー!』
『いやー、すげーなぁ。あーしはロボット? ての良く分からんが働きもんだぁ』
『今日寝る所がもうあるのはありがたいな。最悪魂羽織のボックスで作業の度に起こしてもらうつもりだったし』
『これなら内装に手を入れる感じでいいか。勇作ー、買い出し行こうぜ!』
『分かった。ひばり、運ぶのを手伝ってくれないか?』
『えぇーしょうがないですねぇ。私はKIAIのベッドが欲しいですぅ』
『あきら』が悲鳴を上げるが、当然のように他のプレミアムレンタル権者たちはそれを無視して自分の作業に入る。好き放題した分の責は自分で追うというのがプレミアムレンタル権者たちのルールであり、当然禁じられていた事をばっちり破っていたこのおバカが制裁を受けるのはこいつの責任というわけだ。
「で、ちゃんと聞くがなんだこれ」
『だからー作業用のロボットなんだって! 今は足だけになってるけど完成形は大型クレーン車が変形する形になるの! 全長18mあるから大体の建物を建てる時に使えるしマニピュレーターで細かい作業も可能! 重機にも大型クレーンにもなれる超優れものだよ!』
「そういう場面だと普通に大型クレーンで良いんじゃないか???」
たっぷり10分ほど頭をみしみしした後、痛みに蹲ったままの『あきら』にどういう意図で作ったのかを尋ねると返ってきた答えはこれである。なんだろう、一昔前に大型車両がロボットになるアニメとかあったけど、ああいう乗りなんだろうか。若い子の考えって良く分からん……
『ほう、それは面白そうだな。なぁ、それならうちの会社の警備車両をロボットにすることは出来るか? 巨大ロボットを持った警備会社! なんともまぁ男心を擽るじゃないか』
「今のお前は女だけどな?」
『もちもちもち出来るよ出来るよー! なんならお仕事の補助をしてくれるAI積んでお話しできるようにするのも可! 喋る車って文明! って感じしない?』
俺には良さが伝わってこなかったが、どうやら今までの会話で『かすが』が『あきら』の作ろうとしている作業用大型ロボットについて興味を持ったらしい。自社で扱う警備用の車両をロボット化させるとか言い出したため、『あきら』が我が意を得たり、と先ほどまで痛みに呻いていたとは思えない勢いでプランを話始める。
いや、だから、巨大ロボットは……いや、うん。ちゃんと理由があるなら、それと警察とかにご迷惑をおかけしそうだからやるなと言ったけど、その警察とずぶずぶの関係を構築している『かすが』が欲しいと言っているなら大丈夫、か?
『えー、俺は好きだぜ巨大ロボ。デカい! 堅い! 強い! は男の子のロマンだろ』
『闘人レスラーにロボットみたいな外見の奴居たから俺は微妙かなぁ。戦う相手って目線で見ちまう』
『巨大ロボットと生身で戦う、か……あーし、良いこと考えたんだけど』
「その考えは封印しといてくれ。じゃ、街まで買い出しに行くか」
『あきら』と『かすが』は勢い込んで話続けているため留守番にして、残りの面々は『ひばり』のテレポートで近くの町に移動して、そこで家具を購入することになった。その前に住居用に立っている家の部屋割と部屋のサイズを測ったりしておかないとな。家具が入らなくなるし。家具を運ぶのは建材とかを積んできたトラックに詰め込めばいいから、後は買うだけで良い。
トラックごとテレポートで運べるのは本当に便利だよなぁ。それでも複数回往復は必要だろうが仮にこの人数分の家財を揃えて運ぶとなると普通は何日もかかる計算だ。ここ、かなり山の中にある元廃村だし。まぁ、こんだけ辺鄙な場所にあるからこそ色々と好き放題できるんだけどね。
『好き放題って本当に好き放題しそうだな、お前』
「ああ。田井中さんに中を見られちゃった『残夢』の人形工房を移動させたかったし、この感じだと『あきら』の工場もここに持ってきた方が良いでしょ」
『そうだな。後は、かすがの悪だくみにも使われそうだけど』
「やりすぎそうなら国会議事堂の旗の代わりに吊るす」
『おい、バカ止めろ! 二度とあんな恥辱は御免だ!!』
『やられた事あるんかい』
たわいのないバカ話にゲラゲラ笑いながら、俺たちの秘密基地作成は進んでいく。世間様では年末年始で騒がしい中、気心の知れた奴らとのんびり遊ぶってのも悪くないもんだな。
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