ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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第148話 最優先でお安く提供いたしますよ

 年明けから1週間。帰省していた面々も戻ってきたためVVVとVSは仕事始めとなったのだが、すこし困っている。というのも、昨年末のVタレ運動会以降やたらとコラボのお誘いが入ってくるのだ。

 

 

「社長ぉ、友人のVタレからまたコラボのお誘いが来てるんですけどぉ」

 

「事務所使いたいの?」

 

「はい、それと社長とも是非コラボしたいって言われててぇ」

 

「顔合わせる位なら良いけどよそ様の配信に映るのはちょっとねぇ。失礼があっても困るし絶対嫌だって言っといて」

 

「火の玉ストレートで拒否www りょうかいでーす」

 

 

 こういう具合にVSの社員が所属会社の繋がりからコラボに誘ってくる事もあれば、元々面識のあるはちじくじの番長やホログライブのポン子さんなど連絡先を知っている相手が「ね、どうしても(コラボ)やりたいなって……(コラボ熱が)熱くなっちゃっからぁ……(コラボ)やらない?」みたいなネタを振ってきたり、自分の配信中にいきなり電話をかけてきて「コラボ成立!」とか口にするおバカも居たりとまぁ手を変え品を変え様々な形でコラボのお誘いが来るのだ。毎日。

 

 最初の方は俺も律儀に対応してたんだけどね。毎日毎日のやり取りに流石に面倒になったためお断りをするようにしたら、じゃあとばかりにアキコさんに連絡が行くようになってしまった。それは良くない。大変良くないため、俺へのコラボ依頼はVSとして受ける場合を除いて行わないと宣言までする羽目になる。

 

 

「というか呼んでも面白くないだろ。俺、別に喋りが上手いわけじゃないんだから」

 

「話題の人ですから仕方ないですって」

 

 

 アキコさんに迷惑をかけたのは俺にとって痛恨の失態だ。同じ性別ということでよくバカ話をする梟くんに思わず愚痴を言ってしまったら、梟くんは気の毒そうな表情でそう口にした。

 

 話題の人って言われてもなぁ。全ての原因であるテレビを見上げると、そこでは今日もギターを持った俺が飛び跳ねながら演奏するシーンが映し出されている。

 

 

“これね、凄いのは一発撮りで全部やってるとこなんですよ。単にめちゃめちゃ上手いだけじゃないの! この人、めちゃめちゃ上手い演奏を行いながらカンフースターみたいなアクションを熟してかつ一切ミスを出してないでしょ? 流石にリテイクはしたんでしょうけどそれでもこれは凄いって! 見る人が見れば一発で分かる異常クオリティだよ!”

 

“明らかに異常と分かるホラー作品そのものな舞台の上でしかも襲い掛かってくる化け物までいるのに、どこにでもありそうなクマの着ぐるみが縦横無尽に飛び跳ねながらギターを弾いて最後には化け物退治しちゃってる。怖いのに怖くないって絶妙なバランスだったんですよねこれ。これ見て本編見たくないって人居ないんじゃないかな”

 

 テレビ画面の中ではコメンテーターと言われる人種の人たちが、先月公開したクマコー・THE・MOVIEのPVについて語り合っている。この番組だけではない。正月特番が終わって以降、どの放送局もニュース枠でクマコー・THE・MOVIEのPVを扱っているのだ。

 

 これが梟くんが俺を指して話題の人と言った理由である。

 

 

「いや、でもね。これ公開したの先月だよ。もう一月経つのに今更話題になるって」

 

「年末年始は特番とかで忙しかったからじゃないですか? それに早い所だと今月から映画館で上映するんですよね。KTM」

 

「KTMってなんだよ」

 

「クマコー・THE・MOVIEの略です。ネットで流行ってるんですよ」

 

 

 梟くんの言葉にそっと手で目を覆い、天を仰ぐ。最近、知りたくない知識ばっかり増えている気がする。これ、上映前でこんだけ騒がれてるなら上映が始まった後はどうなるんだろうか。失速してくれることを祈っているが、配信時の反応を見るにウケそうな気配がするんだよな、クマコー・THE・MOVIE。

 

 なんならPVの方はもうとっくに一億回再生を突破しているし、気の早い所では「新年早々今年の覇権映画誕生か!」なんて言い出している雑誌まで存在するくらいだ。

 

 まぁ映画が話題になってヒットすれば原木理さんの会社にお金が入るし、それは構わないんだけどね。あの人、資金提供しようか? って提案しても俺とのやり取りに不純物が混じるからイヤって断ってくる人だし。自分が撮りたいものにたいしてストイックすぎるくらいにストイックな人なんだよ。ただ、会社経営は下手くそすぎるからしっかり者の奥さんが実質社長になってるのは、まぁ。適材適所って奴だろう。

 

 

 

 

 

「メンちゃん。俺、メンちゃんが持ってきた話の中で、今、一番驚いてる」

 

『そうだよなぁ。俺もビックリしたから』

 

 

 さて、Vタレとしての業務が意図せず忙しくなってしまったが俺には他にも仕事がある。特に『あきら』が開発した機材などはわが社の稼ぎ頭でもあるため、最優先で対処する案件になる。

 

 昨年、『あきら』が開発した建築用のロボット、安全・確認・ヨシくん達は“自立型AI搭載建築重機”という名称になり『かすが』の口利きで関係各省のお偉いさんに通達。映像付きで性能を見せつけられた各省庁では阿鼻叫喚の声が上がっているらしい。

 

 まぁその辺は置いておくとして、こういった建設機械は実際に現場で使ってデータを洗い出さないと流通できないため性能試験と称して『メンチ』の飲み友達である立山さんの会社に安全くんを預ける事になったのだが。

 

 

「まさか50年近く生きて、人型ロボットと仕事する事になるとはなぁ……」

 

【安全、安全、実際、安全。よろしくお願いします】

 

「うんうん。これ、会話できるの?」

 

『ある程度は出来るよ! ただ複雑な会話は答えられないかも!』

 

「なるほどぉ。じゃあ、安全くん。あっちに束ねられてる鉄筋を左手のレールの上に並べてくれる?」

 

【安全、了解、了解】

 

 

 立山さんの言葉に『あきら』がそう応えると物は試しと立山さんが安全くんに指示を出す。安全くんは立山さんの言葉を聞き、指先を見てそちらに並べられている鉄筋の方へと四つ足で移動し始めた。そのまま見ているとマニピュレーターと工具の腕を器用に使って十数本の鉄筋を持ち上げ、指示された通りに移動させている。

 

 

「おぉ~。今の作業、人間の手でやると結構手間なんだよねぇ。重量物の持ち運びだけでも大分楽になるかも」

 

『基本的な工事作業の手順とか道具の名前はインプットしてるよ! あとは作業しながらAIが学んでいくから、新人に教えるみたいにしてあげてね!』

 

「なるほどなるほど! じゃあ次は……」

 

 

 『あきら』の言葉を聞いた立山さんが楽しそうに次の指示を出し始めた。この調子ならガンガンデータも集まりそうかな。安全くんは『あきら』謹製の高性能機で自己判断が出来る超高性能AIを積んでいる。当然『あきら』と俺以外に維持管理が出来ないからそのまま売りに出す事は出来ない。だからVVVとしては『あきら』が手を加えなくても作れて整備できる廉価版の建築ロボットを開発するため、ここでしっかり建築ロボットに必要なデータを集めときたいんだよね。

 

 まあそれでも一台億とか行きそうだけど。あ、もちろん立山さんの会社には最優先でお安く提供いたしますよ。ええ。

 




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