ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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第153話 これは人間同士の競技でして

 愚か者たちに制裁を下した後、クマコー・THE・MOVIEの宣伝をしてついでに耶馬千葉牧場のオーナーになったと報告。松戸真楠さんとの共同開発はVVVの案件だしまだ設計段階だから表には出さず試作段階で段階的に情報を公開していく予定だ。

 

 あ、もう完成してる安全確認ヨシ!くん達の宣伝はしても良かったな。あれは性能実証試験中だし映画の公開の際にVVVのチャンネルで宣伝するかぁなんて思っていたら、その日からネット上が盛大に盛り上がり始めた。

 

 

「なんでだろうね……? ヴァーイがツブヤイター上で勝手にライブを始めた時よりも騒がれてる」

 

「それ本気で言ってます?」

 

「それだけじゃないでしょぉ……」

 

 

 隣り合う席でメールの返信を行いながら梟くんと会話をしていると、ホログライブ移籍組の竜ヶ坂りんりんさんがため息を吐く。あの徹マー組への制裁が彼女たちのファンに問題視されたのかな? でもあの時のコメント欄だとよくやったとかもう一曲遊べるドン! とか好意的なコメントが多かったんだけどな。

 

 ああ、そういえば耶馬千葉牧場と言えば今も現役で数頭走っている馬が居るみたいでこの子たちの応援もしなくちゃいけないんだった。『まみ』の魂羽織が完成したから彼女には一週間の半分くらい耶馬千葉牧場で馬たちの面倒を見てもらい、耶馬千葉牧場に足りない設備や欲しい資材があれば教えてもらう予定だ。

 

 ピンクスカートに良い子を産んでもらうためにも牧場設備はしっかりと整えなければね。アキコさんを紹介した後すぐに厩舎の新設を依頼してあるため、繫殖シーズンまでには各種最新設備を整えた冷暖房完備の厩舎が出来る筈だ。

 

 一週間の残りの日はって? それは勿論アメリカで騎乗して実績を積んでもらう予定である。レンタルを解除すれば時差は解消されるみたいなんで、これを応用して『まみ』には日米で活躍してもらう予定だ。

 

 

『流石に私、忙しすぎない?』

 

「大丈夫、俺も付き合う」

 

『あんたはレースが楽しいから付いてくるだけでしょぉが!!』

 

 

 彼女をレンタルしてからはもうべったりと言っても良いくらいに『まみ』と一緒に居るから、彼女と俺のやり取りも随分と気安くなってきた気がする。ぽやっとした感じの顔立ちの癖にちょっと気が強くてなにより身長の割に豊満なお胸と見た目と性格は超好みなんだがなぁ。プレミアムレンタル権者は美人が多いんだが、彼女たちに対して感じる感情は姉か妹か鏡に映った女装した自分って感じで性の対象として捉えられんのだ。

 

 向こうも俺に対してそんな風に接してくるから、付き合いが長い『さやか』や『あきら』なんかは完全に妹としてしか見る事が出来なくなってきてるし、最近はもしかして俺が気付いてないだけでこいつらは子供のころから一緒だったんじゃないかって存在しないはずの記憶すら思い浮かんでくる始末だ。

 

 この事を『さやか』に相談した所、『その記憶は単にアンタの頭が勝手に現状と齟齬を取ろうとしてるだけだから気にしないで良い』との事。現状との齟齬ってなんだろうと思ったんだが、『さやか』が気にしないで良いというならまぁ俺が知ってもあんまり意味がないことなんだろう。

 

 考えても仕方がないことは兎も角として、流石に公開1週間前となると映画関係の仕事が多くなってくる。ただ、クマコー・THE・MOVIEの場合は事前に特大の番宣をしてるためあえてTVなどの番組は使わず、映画館のポスターやSNSだけで宣伝を行う方針である。これには原木理さん方の予算という大きな問題があったりする。

 

 

「やっぱりこちらから融資した方が」

 

「いらない。演者からお金を集めて公開した作品はいくらでもあるけどこれはそうじゃない。そうじゃないんだ山里さん」

 

 

 金銭的な問題ならVVV側の出資で解決することが出来るんだが、原木理さんとしては演者からお金を集めるのは出来る限りやりたい事じゃないらしい。要は映画監督としての彼のプライドの話しで、そうなると俺が言えることはあんまりない。

 

 ただまぁこの作品はそんなものがいらないくらいにもう世間に注目されているというのも理由にはある。すでに公開初日のチケットはどこも完売しているそうで、初日の売り上げだけで製作費の十倍近い金額を稼げるそうだ。

 

 まぁ製作費と言っても立体投射機の導入費用だけだからそれほど大きな金額じゃないけどね。あとはここからの売り上げから俺の取り分と会社側の取り分が発生するからここから先は全てが利益ってわけだ。ここで余計な出費を行わないのは、まぁ確かに理に叶ってるのかな。

 

 ただまぁ、出演者としてお金のかからない範囲の宣伝なら幾らでもして良いだろうという事なので、以前からお誘いがあった仕事の案件に宣伝させてもらうという条件で幾つか仕事を請け負う事にした。

 

 その内の一つがVVV事務所の会議室にカダー社の重役さんとホログライブのVタレさん、そしてあにから社の重役さんとはちじくじのVタレさんをお招きしての討論会であり、そこで話し合われる議題は立体投射機を使ったVタレイベントの定期開催について、である。

 

 これを配信で流すあたり両社共に立体投射機に相当力を入れてるのが分かる。わざわざ配信で流すという事は、つまりこの会議で決まったイベントを行うと視聴者に示す意思が見えるからね。

 

 

「先年行われた第一回Vタレ運動会は、男性のみという条件下でありながら非常に好評でした。その後の後夜祭も含めて影響力は大きく、出演した男性Vタレは軒並み視聴者数を大幅に増加させています」

 

「男ばっかりずるいぞー」

 

「そうだそうだー」

 

「シャラップ。という訳で我々ホログライブとしては今年も同様立体投射機を用いたイベントを行いたいと思っているのですが、ここで問題なのは女性Vタレが立体投射機を用いた配信でして」

 

 

 黒子姿のカダー社重役さんの言葉に他の参加者がうんうんと頷いている。立体投射機を用いた撮影は色々制限が多かったVタレの配信に革命を起こしたと言っても良く、この機材によってYOUCUBEで配信している動画配信者たちとほぼ同じことをVタレが出来るようにした。3Dのガワを被ったままお料理配信も出来れば釣りにいく事だって出来る。Vタレの活動の幅が、このたった一つの技術によって急激に広がったのだ。

 

 ただ、そうなってくると当然他の動画配信者たちと同じような制限も出てきたりするわけで。

 

 

「体力測定で危うかったんで、モデルの衣装はかなり気を使った方が良いですね。芋ジャージとか」

 

「芋ジャージwww」

 

「いや、まぁ、そうなるのかぁ。一発BANは怖いしなぁ」

 

「ローション相撲! ローション相撲はセーフですよね!」

 

「ぶっちぎりアウトじゃないかな???」

 

 

 毎回顔を合わせる度にローション相撲の良さを宣伝してくるホログライブのVタレさんの言葉を無慈悲にぶった切りながら、俺はふと思いついた言葉を浮かべる。

 

 

「男同士の相撲なら……あ、いやこれは俺とうちのゴリラくんが出禁になるだけか」

 

「すみません、これは人間同士の競技でして怪獣と類人猿はちょっとお断りしてますんで」

 

「ばっちり遺伝子上人間ですが」

 

 

 こんな会話をかわしながらも会話は白熱し、一先ずモデルの服装を露出の少ない運動着にするという条件のもと女性版のVタレ運動会も開催するという事が決定。時期は男子とズラして行う事になり、女性の方は春のゴールデンウイークあたりにしようという段取りが組まれたところで今日の会議は終了となった。最後までローション相撲に拘っていたとあるVタレさんも運動会が出来るならばよし、と矛を収めてくれたので円満終了と言えるだろう。

 

 しかし、ローション相撲の何が彼女をあそこまで駆り立てるんだろう。見るだけなら兎も角自分がやる側なのにね。




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