ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

155 / 155
第155話 馬鹿とバカをかけ合わせちゃいけない

 “クマコー・THE・MOVIE”が映画館で公開されて2週間。俺と原木理さんは予想外に舞い込んできた仕事に追われていた。

 

 

「これ映画館に必要あります???」

 

「場末映画館だけズルいって言われちゃってさぁ……」

 

 

 大きな鉄板に5本指で爪痕を刻みながら原木理さんに尋ねると、原木理さんもかなり不服そうな表情で爪痕が刻まれた木の板にサインを書きこんでいる。何をしているかというと、映画館に飾る宣伝材料?みたいなものを作っているのだ。

 

 発端は映画を撮っている最中の事だ。先行上映を行っている映画館のオーナーさんに原木理さんが俳優時代からお世話になっている人が居て、その人のお孫さんがクマコーのファンだという話を耳にした原木理さんが、クマコーのサインを欲しいと口にしたためじゃあという事でセット作成とかに使う木の板に五本指で爪痕を刻んだものを渡したのだ。

 

 原木理さんは随分と引いていたが、クマコーって名前書いてサインするのもなんだか恥ずかしいからね。実際に貰ったお孫さんは随分と喜んでくれたらしいし、以後俺のサインはこれで行こうなんて当時は思っていたんだが、風向きが変わったのは映画公開後。このサインをオーナーさんがお孫さんから借りて映画館で展示していたらしく、それがSNSでバズったのだ。

 

 そしてそれを見た他の映画館から「ああいう宣材があるならうちにもくれ」と一斉に連絡があり、いやあれは個人へ送ったサインだから、と俺や原木理さんは主張した物の最後には泣き落としまでされたため、今こうやってサインを量産する事になってしまった。

 

 せめてもの抵抗として俺の爪痕の下に監督である原木理さんのサインも書き込んでいるのは、最初のアレは個人的なサインだったという主張を続けるためだ。あくまでこいつは宣材として請われたから作ってるだけなんだよ。

 

 

「ところで映画館からグッズの販売について問い合わせが来てるんだけどうちそういう伝手がないんだよねぇ、クマコーくんの会社、そういうの出来ない?」

 

「出来ますけどあの映画でなんのグッズを売るんですか? クマコーのぬいぐるみはもうVVV公式で販売してるんですけど」

 

「ヒロインになった血まみれ受付さんのプロマイド写真とか販売しないって言われてるんだよね」

 

「ヒロインになったとは???」

 

 

 血まみれ受付さんとはクマコーが入社試験(笑)を行うたびに次の試験会場を白目向いて口から血をたらしながら指し示す案内人の事であり、設定としてはこの遊園地を作った前オーナーの娘さんで遊園地が呪われてしまった際に巻き込まれて悪霊化した人である。クマコー・THE・MOVIEでクマコーが一言も喋らない為、勝手に遊園地の呪いについて語りだしたり観客に現状を教えてくれる役割の人なんだが、クマコーが呪われた遊園地を解放していく最中に彼女も浄化されて悪霊から幽霊にジョブチェンジ。

 

 以後はクマコーに憑りついてナレーションと一緒に背後から指示を飛ばす背後霊になり、遊園地が無事に解放された後は権利を押し付けられたクマコーに遊園地を経営しろと脅す所で映画は終幕する。まぁ確かにヒロインっちゃヒロインなのかな。ナレーションと口論したり観客に向かって「クマコーを応援して! ほら3・2・1、クマコーがんばえー!」とどう考えても第三の壁を突破した発言をしたりやりたい放題してたけど。ちなみに配役は原木理さんの奥さんで元女優さんらしい。中学生のお子さんが居るとは思えない美人さんだった。

 

 まぁそんなやり取りをするのもB級映画の醍醐味というか、そもそも2週間で作った脚本なんだから適当な部分が多々あるストーリーなんだがむしろそこがウケているらしい。なにも考えずにすっと見れて最後まで笑って映画館を出れる作品だとか……おかしいな、一応これホラー作品じゃなかったっけ。

 

 

 

 

 

 

 馬鹿とバカをかけ合わせちゃいけない。

 

 全長20mの頭おかロボットの設計図は思わずそう思ってしまう出来栄えだった。俺もロボット工学の知識が天才の10分の1くらいはあるはずなんだが、なんでクレーン車とショベルカーとトラックが三位一体となって合体するのかが理解できないのだ。設計図としての出来栄えは完ぺきである。多分AI部分とか以外はこのまま他社に持っていっても同じものが創れるんじゃないかな。AIが無きゃ合体は出来ないだろうけど。

 

 

『どうだ!』

 

「却下だ」

 

『そんなー!!!』

 

「やっぱ駄目か」

 

「合体必要ないしな……」

 

 

 自信満々にそう叫んだ『あきら』に却下を言い渡すと、この世の終わりだと言わんばかりの表情で『あきら』は天を仰いだ。当たり前だ。なんで合体が居るんだよ建築ロボットに。あと周りの他の技術者たちの「まあそうだよね」って反応に思わず分かってるんならやるなよと声を出しそうになったが、この会社は海外向けに対人地雷を踏んでも壊れない! とか言ってトラックを売りつけようとする連中だったと思いなおす。とりあえずやってみて作った車がこれまでもいっぱいあったんだろうな、これ。

 

 まぁ、多分本命だった冗談にしたいロボットの設計図はさておき。合体を必要としないクレーン車等を変形ロボット化した車両の設計もすでに終わっているらしく、車体に関してはいつでも作れる状態だという。後は実際に運用するためのAIを開発すれば変形機能なども使える状態になるから、そこから性能実証実験を行い問題無さそうなら性能試験を行い、そこでも問題がなければお上から認可を貰って販売となる。

 

 ただ、追い風にはなるんだがここに来てちょっとした問題が一つ上がってきている。

 

 

「そういえば立山さんの所で使ってる安全くんがすっごい評判良いらしいぞ」

 

『そうなんだ! よぉし、じゃあ安全・確認・ヨシくんに合体機構を』

 

「つけないで良いぞ。立山さんの会社からは是非量産して欲しいって言われてるから、安全くんシリーズの生産受注とかって無理だよな」

 

『うーん。安全くんは一品物だからねぇ。作れって言われれば作れるけど、量産って言われるとちょっと困るかな!』

 

 

 朗らかにそう笑う『あきら』だが、応対しているこっちは割と笑えないというか。どうも安全くんが欲しいと言っているのは立山さんの上、つまり社長とか副社長さんらしく、曰く『彼が居るだけで一つの現場の作業効率が段違いに上がる。施工管理の最高の相棒になる』と非常に高評価なんだとか。その為、立山さんはなんとか安全くんを複数台手に入れるようにと無茶ぶりされてるらしく、『メンチ』に泣きついてきたりしている。

 

 安全くんはあくまで性能実験中の機材で現在量産性の高い新型を開発中です、と伝えて貰ってるんだけどね。立山さんにはこちらからのお願いを聞いてもらってる形だし、『メンチ』の飲み友達だから無下にはしたくない。故郷(詐称)の開発に勤しんでいる確認くんを持ってきてお茶を濁してもらってるうちに新型の開発を進めるのがベターかな。

 




更新の励みになるのでお気に入り・評価よろしくお願いします!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

チートハッキング能力を手に入れた浪人生、善性ゼロのまま世界を幸せにして復讐する~東大理三落ちの欠陥品は、政府と気まぐれ性格最悪女AIを使って現代社会の神になる~(作者:tinko1129)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

東京大学理科三類へ落ちた平尾龍は、自分を人間失格と判定し、首を吊ろうとした。▼その瞬間、あらゆる電脳と機械へ絶対命令を下す【電脳神の右手】を獲得する。▼善性なし。社会性なし。コミュ力なし。▼人が人であるための三要素の無い自分は人ではないし生きる価値等無い▼それでも今度こそ理三へ合格し、人間だと証明する。▼そして受験勉強のストレス解消として、正規品の善人共より…


総合評価:3455/評価:8.43/連載:28話/更新日時:2026年09月14日(月) 20:00 小説情報

転生してイージーモード!(作者:ハニラビ)(オリジナル:現代/日常)

普通に生きて普通に死んだ男がチートを得て現代日本にTS転生したお話。作者はバカだからよぉ、難しい話は無しにしねーか?(ただのバカ)


総合評価:4573/評価:8.67/連載:22話/更新日時:2026年09月27日(日) 11:10 小説情報

スキル制ステータスで現代をお気楽に過ご……したい(作者:逆鯖)(オリジナル:現代/ノンジャンル)

▼ 工場派遣として働く25歳、佐藤直人。▼ ある日突然、視界に《スキルシステム》なんてものが現れた。▼ 《清掃》《料理》《プログラミング》みたいな普通の技能から、《豪運》《魔術》《錬金術》《ダンジョン作成》なんて明らかにおかしいものまで、SPさえあれば取得可能。▼ だったらまあ、使うっきゃない。▼ 仕事は楽に、金はなるべく効率よく稼いで、自分の時間はしっかり…


総合評価:2078/評価:8.43/連載:6話/更新日時:2026年09月26日(土) 14:32 小説情報

俺の異能が中華ゲーだった ~34歳無職、ガチャで引いたキャラに変身して働きます~(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル:現代/冒険・バトル)

 ブラック企業を辞めて十一ヶ月。実家で無職生活を送っていた34歳の森川直哉の前に、ある朝突然、ゲームのような画面が現れた。▼ その名も《因果集結クロニクル》。▼ キャラクターガチャ、武器ガチャ、レベル、スキル、限定バナーに天井――どう見ても現代の中華系キャラゲーそのもの。しかも無料十連で引いた★4キャラクター《東雲セナ》を選択すると、直哉自身が黒髪の美少女剣…


総合評価:5048/評価:8.08/連載:40話/更新日時:2026年09月27日(日) 21:51 小説情報

転生したら異世界の宇宙最強の龍でした!〜0から星と生命を作り出して一大文明の支配者になったので現代日本へ帰還します。自分は日本が一番暮らしやすい。〜(作者:電動ガン)(オリジナル:現代/コメディ)

目覚めたら無だった。何も無い。宇宙さえも。自分の身体を見る。銀色の甲殻、長い尻尾これモンスターだ!?よく見ると俺の他にも二頭のモンスターが。ドラゴンだこれ!!▼俺たち三頭の女神龍は宇宙創成の前の世界にいる。俺たちを生み出した主神の指示で世界を作り生命を繁栄させることとなったけど・・・・・・それ何年掛かるの?▼何億年も掛けて生命が宿れる星を何個も作り、失敗し、…


総合評価:2798/評価:7.58/連載:146話/更新日時:2026年09月27日(日) 17:07 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>