ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
安全くんと確認くんを立山さんの会社に預けて数日後。
「申し訳ない! こちらの管理が甘かった!」
「そうですねぇ」
『これは、ちょっと不味い、のか?』
立山さんと彼の会社の社長、そして元凶となった副社長さんが青い顔をして頭を下げている。それを見ながら気まずそうに『メンチ』が尋ねてくるが、割と不味い状況だ。なんせ機密保持契約を結んでいる筈なのに、2機の存在がSNSで拡散され大バズリしてしまったからだ。
安全くんと確認くんはまだまだ性能試験中の機体で、言ってみれば開発中の代物。まだ表に出す段階ではない為、立山さんの会社には性能試験のお願いと共に機密保持契約を結んで外部の目に触れないように作業現場も絞り込んでもらっていたのだが。
「申し訳ない。社長や会長にはまだ開発中の代物であると理解してもらっていたんだが、副社長がどうしても工期が遅れてる現場で使いたいと言い出して……」
「その現場は機密保持が出来る場所なんですか?」
「い、一応ネットなどで外部からは見えないようにはなっているんだけどねぇ」
「出入りの時にネットが外れるタイミングがあるならそれはもう無いのと一緒では?」
そう言う立山さん自身も、自分の言葉が言い訳染みているのは理解しているんだろう。ますます顔を青くしながら、何度も何度も頭を机に打ち付けるようにして下げ続ける。ネットで区切られたと言うが、大きな機材を出し入れする際にネットを外すタイミングがあったらしい。その上、そんな大きな機材を受け取る際に安全くんと確認くんを使わない理由がないよな。その機材の受け取りを行っていた安全くんと確認くんはバッチリ外部から見られてしまい、あっという間に存在が露呈してしまったという訳だ。
いや、流石に大企業の副社長ともあろう人物がするミスかとも思ったんだが、どうもこの副社長さんは現場にはほとんど顔を出さないタイプの人らしく、現場の状況を数字と写真でしか把握しておらず、作業中にネットが外されるタイミングがある事も知らなかったそうなのだ。その為区切っているから大丈夫だと自信満々に社長たちに言い切っていたのにこの状況に陥ってしまい、顔色を無くしているのだとか。
ますますなんで副社長なんて立場にと思ったのだが元官僚で財界とも強いコネがあり、自社に有利な条件で仕事を取ってきてくれる管理職としては非常に優秀な人で、現場には出ないけれど現場が必要なものはガンガン手配してくれるというある意味で理想的な上役であったらしい。安全くんと確認くんに関しても工期が遅れ気味の現場のカンフル剤になればという思いから手配したらしい。大失態とはいえこうやって立山さんを含めた会社の重役3名が頭を下げに来る位には今回の件を大きく捉えてるし、副社長さんをカバーしたいという思いも伝わってくる。
うぅん。VVVとしては正直、ある種の宣伝になるから今回の大バズリは想定外の棚ぼたではあるんだが、問題はそうじゃないんだよな。VVVと立山さんの会社は機密保持契約を結んでいるのに、それが漏れるような事を先方が行ってしまったからここで甘い顔をすると後々に問題が出てしまう。
何らかのペナルティは絶対。それはそれとして、もう隠し通せなくなった安全くんと確認くんの発表も行わないといけない。
でも、ペナルティとは言ってもなぁ。目の前に座って何度も頭を下げてくる立山さんには建築関係で随分とお世話になっているし、今後も色々と頼みたい事があるからここで縁が切れるような事はしたくないし、そもそも『メンチ』の飲み友達である立山さんにそんな事は言いたくない。
「こちらから頼んだ性能試験でありますし、うちとしても空王建設さんにはお世話になってますんで大事にはしたくありません。ただ、流石に契約違反に何もなしじゃ筋が通りませんので、情報漏洩の違約金5000万。それと…………そうですね。現在、松戸真楠自動車さんと共同で安全くんをベースにした建設用重機と車両を開発してますんで、そちらを合わせて10台購入してもらうって形では如何でしょうか」
「それは……願ってもないことですが……」
「じゃあそれでお願いします。あとは今回の情報漏洩に関して空王建設さん側に会見を開いて頂きたい。我々が行うとそちら様に対して角が立つかもしれません」
「ミスをしたのは我々です。当然、責任は取らせて頂きます」
「安全くんと確認くんについてはVVVにて開発中の作業用ロボットというのは発表して頂いて結構です。いっそ宣伝にしてやりましょう」
そう断言する社長さんの言葉に頷いて返し、この日の会談は終了。その次の日には空王建設さんがマスコミ各社を呼んでSNS上で拡散されているロボットについて言える範囲で回答を行い、未だ開発中のもののため詳細は言えないが現在開発中の“自立型AI搭載建築重機”であると説明。開発に目途が立った段階で開発元であるVVVから発表がある旨を伝えると、「なんでこの場でVVVの名前が出るんだ」と記者会見場は大混乱に陥った。
その後、ネット上でも同じく「なんでVVVが建築重機作ってるんだよwww」という発言が多々でていたが、中には「いや、九十九あきらはロボット工学が専門だって言ってるし」という『あきら』ファンのコメントが注目され、そこから一気にマジでVVVはロボットを作っているという形で話題は加速していく。
お陰でVVVの電話番ことAIオーイシアキコは問い合わせへの対応にまた大忙しになったらしいが、WEBサイトに安全くんと確認くんの全身像を置いて「鋭意製作中!」と書いてあるんだから完成するまで詳細は待ってほしいね。
「社長、マジでVVVってロボット作ってるんです?」
「作ってる」
「マジかー。本気で何の会社なんですかね、VVVって」
「Vタレ事務所以外のなんだと?」
「俺の知ってるVタレ事務所と違ーう! あの、一度見せてもらうって出来ません? ほら社員割とかで」
「性能試験終わったら良いけどそれまでは駄目だね。配信で言うのは良いけど試験終わるまでは見れないって言っといてね」
VSの事務所にある社長室に座り、美味しいお茶を飲む。事務所に顔を出した時はこれが俺の一日の仕事である。
そんな俺が暇を全力で持て余している時に梟くんに安全くんについてを尋ねられたのだが、まぁ当然答えられる事は少ない。だってまだ製品化すら決まってないし、そもそも安全・確認・ヨシくんは一品物の予定だからね。『あきら』と松戸真楠自動車さんが頑張って作ってる量産型自立型AI搭載建築重機が完成するまではこれ以上情報を出す気はない。
まぁ、そっちの開発が終わったら見せるのは吝かでもないんだけど。そうだな、完成した時にはVVVとVSの社員から希望者を募って松戸真楠自動車の工場見学をしに行くのもありかな?
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