ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→   作:ぱちぱち

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第158話 闇のカルト組織の会合が開かれていた……

 『かすが』からちょっと海里二郎として手を貸してほしいと言われたので立体投射機で海里二郎になってほいほいついていくと、そこでは予知能力者『リリーベル』を首魁とした闇のカルト組織の会合が開かれていた……

 

 

『いや、カルトじゃないから。互助組織ね。私を頂点にしてるのはそうだけど私は頂点に座って占ってるだけだから』

 

「どういうシステムで運営してるんだ?」

 

『かすがが実際の運営をしてるんだがね、大まかに言えば会員招待制のクラブさ。会員には等級があり、一番下からブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤモンドと上がっていきダイヤモンド会員には宣告者という肩書がつく。私の予知を聞くことが出来る立場というわけだね。階級を上げるには他の会員を紹介しなければならないんだが、紹介したい相手を宣告者会議にかけて組織にとって益になると判断された者のみが加入する事が出来る。例えば政治家や実業家、芸能人でも多方面にコネがあるなんて人物だな』

 

「ふむふむ」

 

『ブロンズからゴールドまで階級を上げるには凡そ20人の有力者を組織に紹介しなければいけない。そして組織に紹介した相手は紹介された人物の主位となり、紹介された人物は従位となる。寄り親と寄り子の関係だな。そして宣告者になるにはゴールドの階級を持ったうえで組織にどれだけ貢献したかが必要になってくる。ただし宣告者となったら貢献に応じて自身の従位たちに予知を届ける権利を得る。今いる宣告者はかすが含めて2名だから現在はかすがともう一人が組織内の予知を差配してる』

 

「それなら、前にお前の靴にキスしてたのはどういう場面だ?」

 

『あん時はまだ会員も両手の指くらいだったから個別にやってたんだけどね。一々応対するのが面倒だったから今じゃ最初にどの信者も一度予知を受けさせてそれ以降は宣告者が捌いてるんだ。実利がないとやる気でないでしょ?』

 

 

 そう言って『リリーベル』はお気に入りのパイプを口に咥えて煙を吸い込んだ。まあ、あの水晶玉を必死に支えて予知を聞くの大変そうだったしなぁ。とはいえ仕組みを聞くと紹介制の皮を被ったカルト宗教にしか思えないんだけどな。もしくはねずみ講か。

 

 ただまぁ、普通のねずみ講とかと違ってこいつらは有力者しかターゲットにしてないから、まぁ……それで日本転覆とか目論んだりしなければ別に良いんだけども。

 

 会合の場所は『かすが』が資本を入れたらしい高級クラブの奥にある大きな広間で、玉座のような椅子に座った『リリーベル』が見下ろす形で円卓が組まれており、その円卓には現在宣告者となっている『かすが』ともう一人の宣告者。テレビで何度か見た事のある無所属の政治家が対面になる形で座っている。

 

 その円卓から少し離れた所に並べられたパイプ椅子に座っているのがゴールド以下の役職のない会員たちらしく、彼らの陳情を受けた宣告者2名が今月割り当てられた予知を振り分けるのが今回の議題らしい。

 

 のだが。

 

 

「時に、かすがさん。リリー様のお隣にいる男性はどういった立場の人物なのかな?」

 

『リリー様に能力者のお弟子さまが二名いると前に話したと思うが、この方はそのお一人ですよ。もう一人のお弟子さまと違って彼の予知はリリー様ほどの精度ではありませんが、悪い出来事に対しての感知能力が高く護衛を兼任した付き人として教育されておられます』

 

「ふむ。リリー様のお弟子様が付き人、ですか」

 

『……そう睨まないでいただけませんか、海里さま。あの通り、海里さまはリリー様を第一に考えておられる方です』

 

 

 いきなり大ぼらをこき始めた『かすが』を睨みつけると、それを利用するように苦笑を浮かべて『かすが』はまた大ぼらをこき始める。小声で『リリー様w』から『組織の運営を担ってるかすがをライバル視してるんだよ、あの人』と言われるが、それがこの大ぼらと何が関係……

 

 

『彼をこの場に呼んだわけは、“鈴の音”の体制が凡そ固まってきたからだ。これまでは共同設立者だった私を通してリリー様とのやり取りを行っていたが、それでは宣告者である私がリリー様を私していると思われてしまう。これは良くない。そのためリリー様を第一に考える中立の立場である海里さまに御骨を折っていただき、これからは私ではなく海里様がリリー様への取次をお受けして頂くことになります』

 

「おお! なるほど、かすがさんを疑う訳ではありませんが、その点は懸念しておりました。それではかすがさんは宣告者の仕事に専念されるという事ですね」

 

『ええ。ここまではリリー様にご不便をかけないために私の方で人員を差配していましたが、これを機に運営人員についても話を進めさせていただきたい』

 

 

 そんなやり取りの度に、唇をほとんど動かさずに『リリーベル』から『嘘だぞ。あの人、かすがが思い切り私の予知を自分の為に使いまくってると勘づいてたから』とか『互いの派閥に分かれてけん制し合ってて身動き取れなくなってたんだ』とか『あ、運営自体は今まで通りにやるけど形式上って奴だ。そんなに手間はかけない』とか言い訳がましく言ってくるせいで、目の前の応酬がとても薄汚いものに見えてくる。政治って嫌だね。それに思い切り巻き込まれてる点については、マジでどうしよう。国会議事堂の汚い旗にするか、鯨釣りの餌にするかの二択だな……?

 

 

 

 

 

 

「お久しぶりです、海里さん。いや、海里様とお呼びすべきですね。只ものではないと理解していましたが、まさかリリー様のお弟子さまだとは……」

 

「遠藤先生、お久しぶりです」

 

「いや! いや! 先生などと言わないでください。命の恩人である上にリリー様のお弟子さまである貴方に畏まられたら、私は恐れ多くて心臓が張り裂けてしまいます!」

 

 

 会合が終わると食事会だ。場所を変えてとある高級ホテル最上階にあるレストランを借りた立食形式の懇親会では、集められた人物たちが誰も彼も有力者な為かあちらこちらで仕事や政治の話がささやかれている。そんな中、このカルト邪教の教主wとして君臨している『リリー様』は同じ席に着く事が出来ないため個室に押し込まれることになり、そんな『リリー様』のために付き人の俺は彼女が欲しがった料理を厨房にリクエストしにいったのだが、その帰路に見知った顔の人物から声をかけられる。

 

 以前、“血手”と戦った時に護衛をしていたメディアに強い国会議員、遠藤さんだ。

 

 

「私はね、あの時の襲撃を生き延びられたのは、これ。運命だと思っているのですよ。この“鈴の音”に所属して貴方をリリー様から紹介いただけた事で、私の命は今日まで繋ぐことが出来た。雨宮さんからは気にしすぎるなと言われましたがね。気にしますよあんなもの見せられたら。“鈴の音”を、リリー様を信じて良かったって、毎日家族と感謝しながら生きています」

 

「え、あ、はい」

 

 

 遠藤さんは以前別れた時と同じ魅力的な笑顔を浮かべたまま、ただお目目の奥だけがなにか極まってるような様子でそう口にした。その言葉を周囲で聞いていた政財界の大物たちが、然り然りと満面の笑顔で頷き始めてやれ「リリー様のお陰でうちの会社は」とか「あの政敵にやりこめられるのを防げた」という自慢話のようなそうではない会話がそこかしこで起き始めた。宗教、怖い。変装してる姿とはいえ巻き込みやがった『かすが』への仕返しはうんと強烈にしてやろう。

 




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