ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった   作:ぱちぱち

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第16話 『なんとかなるなる』じゃないんだよなぁ!

『これねぇ! むかしあったパックマンによく似た子でお口にドライバーを咥えてるんだよね! このドライバーのせいでお話が苦手な可哀そうな子だよ! という訳で今日はこの子が自由に喋れるように実験・発展・文明開化だ!』

 

 

コメ:冗談だよね?

コメ:やめろやめろやめろ

コメ:デーモン○アくんwww

コメ:(英語からの翻訳)三回目は首都で起きるのか。ジャップは狂ってる

コメ:お前はマジかシャレかわかんねぇんだよ!

コメ:大阪住みの俺、対岸の火事

コメ:(スペイン語からの翻訳)ふーん、彼女面白いね

コメ:ちょっと新幹線乗るから待ってくれ。1時間で良い

 

 

 VVVで借りているマンションの配信部屋はこの1週間で大規模な改修が行われている。『九十九あきら』主導で行われたそれらによって、この配信部屋はここだけ2100年代の部屋のような様相になっていた。

 

 まず、部屋の中に居る人間は自動的に全身をホログラムで覆われ、Vタレであれば3Dモデルに、スタッフであれば黒子の衣装を着た黒い人型の姿になる。画面の中ではない。現実空間で、だ。九十九あきら曰く『自作した立体投射機』によって実現したこの技術をアキコさんは早速自身の配信で扱って大変な騒ぎになっているのだが、今はそれは置いておく。

 

 次に様変わりした点は、コメントについてだろうか。オーイシアキコが配信を行っている動画配信サービスにはコメント機能があり、配信のコメント欄に視聴者が自由にコメントを言い合う事が出来る。配信者はこのコメントに反応を返したりと雑談する時のネタになったりするのだが、『これ一々コンピタちゃん見ないといけないのめんどーだよね!』という鶴の一声により、動画配信中の配信者の視界には常にコメントが目に入る位置に浮かび上がるようになっている。

 

 向きを変えたりとか、天井を見たって同じだ。大体顔から30cmくらいの空間に、コメント欄がだーっと流れている。VRメガネとかそんなちゃちなものじゃない。Vタレの挙動をカメラでとらえて、その挙動に合わせて位置調整をしながら表示しているのだ。

 

 この二つを実装した時、ホスト風優男改め鹿谷くんが体を数回ビクンビクンと震わせていたのが最高に気持ち悪かったのを覚えている。ゴリラ系大学生改め猪上くんがバッチいものを触るような手つきで部屋の外に捨ててくれたからそれ以降は見ずに済んだが、後で猪上くんに聞いたら大変だったそうだ。なにが大変だったんだろうね。

 

 

『という訳でこのフィールドによって自由中性子の運動を阻害する事により! 核分裂が起きなくなるんだね! さぁ未だデーモン○アくん! 今日のお昼は天ぷらだよ!』

 

チン!(重金属同士がぶつかり合う様な音)(シュヴァっと青白い光に包まれる室内)

 

『あれ? ちょっとまちがったかな!』

 

~To Be Continued~

 

 【本日の配信は終了しました。またみて文明!!】

 

 

 

コメ:草

コメ:今日から都は大阪か

コメ:(英語からの翻訳)笑っちゃいけない内容なのに笑っちまうよ

コメ:東京住みの俺、どうやら幽霊になったらしい

コメ:これが生配信とか嘘だろ

コメ:成仏してくれめんす

コメ:アメリカの学者ニキが多分本物って言ってたぞ

 

 

 

 動画配信を終えた後もコメント欄の流れは途絶えない。この配信サービスは終了後も1時間くらいはチャット欄が使えるらしくて、終わった後の会話の方が盛り上がってる場合もある。あんまり変な盛り上がり方をしたら削除とかしないといけないんだけど、この盛り上がりもまた人気に繋がる部分ではあるから難しいところだ。

 

 

「お疲れ様、姫君。今日の配信もとても良かった。絶妙に真実と虚実を混ぜ込んだテーマに、視聴者たちもドギマギしただろうね!」

「うん、そだね! 鹿谷くんも声真似お疲れ様! とっても似てたよ!」

「ううん。そうか、うん。全然嬉しくないかな」

「あきらちゃん、カメラはもう止めて良いのか?」

「オッケーオッケー!」

 

 

 撮影の補助をしていた鹿谷くんと猪上くんが、黒子の衣装のまま声をかけてくる。彼らが何故撮影の補助をしているかというと、VVVのバイトになっていたからだ。なっていたってなんだと思うかもしれない。だが、本当に実時間にして30分ほど目を離していたらアキコさんから「あの子たちバイトになったから!」という言葉を聞くことになったのだ。話が早すぎる。アニメだったらもうちょっと展開を緩くしてくれないとこっちがついていけないんだけどね?

 

 いや、まぁ。うん。多分、今もし俺の人生がアニメでこの場面を見ている人がいたら多分こうツッコミが来るはずだ。「そうじゃねぇだろ」って。言いたい事は分かるし、俺もそう思ってる。『えー、楽しいじゃん!』じゃねぇんだよ。鬼畜クマだってこんな事は見通せてなかったはずだ。

 

 俺はつい数日前。VVVの更なる発展のために『九十九あきら』という技術チート主人公になるために『九十九あきらは終末世界を諦めない』というアニメを見た。めちゃめちゃ面白かった。全13話ぶっつづけで見る価値があるアニメだった。それを見た事に後悔はないし、実際にそれによって俺は目的の人物、天才科学者『九十九あきら』の能力を使う事が出来るようになったわけだ。

 

 ここまでは良かった。そして、その『九十九あきら』としてVVVには画期的な新技術をもたらす事が出来、何故か全く意図していなかったけれど足りなかった人手(バイト)を確保する事が出来た。ここまでも、良かった。一人はちょっと年齢的な問題で賑やかしみたいになってるけどアキコさんもひなちゃんも可愛がってるし、鬼畜クマとしての残滓があの子を見るたびにうずうずするんだよな。もしかしたらVタレとしての才能があるのかもしれん。

 

 まぁ、ここまでも良かった、か。問題はここからだった。

 

 早速の新技術を使った初配信。念願の3D技術を駆使したモデルの登場に、同時接続数は2000人のVタレとは思えないほど上がり、配信中にもガンガン登録者数は増え、アキコさんも楽しそうに配信を行っていた。まさにこの時、大きな問題が起きた。

 

 

『え、製作期間1日は吹かし過ぎ? そうなの? あきらちゃんがジョバンニみたいに一晩でやってくれたんだけど……あ』

 

 

コメ:あきらちゃん? 製作者の事かな

コメ:普通は月単位でモデル作成かかるもんだろ

コメ:どっかで嘘があるんじゃねーか?

コメ:女の子が作ったのかな? もしかして新タレ?

コメ:出しちゃいけない名前みたいな反応で草

コメ:あきらちゃんis誰

 

 

 なんとアキコさん。配信中に思いっきりリアルの名前を出すという大チョンボをかましてしまったのだ。そしてコメント欄はいきなり出てきた個人名あきらちゃんでもちきりになり、アキコさんでも捌ききれない程の流れになった。これは不味いんじゃないか。そう思った瞬間、俺の身体が勝手に動き出した。

 

 勝手に、動き出した。大事な事なのでもう一回言っておく。

 

 

『はいはーい! VVVが誇るぅ天才! エンジニアの! 九十九あきらちゃんでーす! アキコちゃんは技術者じゃないからそーいう質問は私が答えてもいーけど! ここはアキコちゃんの配信だからそーいう人は後で私の配信で質問してねー!』

 

 

 ぬるっと画面にいきなり現れた、アニメ調になった『九十九あきら』の登場にコメント欄は一瞬止まり、そしていきなり爆発的にコメントが流れていった。かなり動体視力が良い『九十九あきら』でも追いきれないほどの速度で流れていき、アキコさんとしてもこれは終わらないと不味いと判断したのか「じゃあ次の配信に移るね! 気になるあの子は誰なんだ! まて! 次回!」と全力でこっちにぶん投げてきた。その判断は正しい。正しいんだが、貴方も一緒に出て貰いますからね?(鬼畜クマ成分)

 

 まぁ、という訳で。

 

 俺、改め『九十九あきら』。何故かひなちゃんを飛び越えて二人目のVタレとしてデビューする事になりました。アキコさんと同じく一応本名デビューだ。ふふ、このVタレ会社頭おかしいとか思われそうで怖い。

 

 デビュー配信? 1時間くらいコメント欄の有識者ニキとホログラムの限界について語り合うって謎の空間になったよ。Vタレなのに自分の名前以外は自分の事を言わず、終始ずっとこの科学者の考え方が凄い! だの実際にホログラムでどこまで表現できるか、だのと語り合い、飽きたらそのまま終了。アキコさんのように視聴者を楽しませる気持ちなんて皆無で、〆の言葉は謎の「文明開化!」だ。

 

 こんな奴がVタレとして伸びるわけがない。Vタレってのは結局のところエンタメであり、どれだけ視聴者の興味を引けるか、楽しませるかが肝になる分野だと俺は思っている。思っていた。思っていたんだけどなぁ。

 

 何故か『九十九あきら』のデビューはSNSで大バズりし、ネットにゴロゴロといる謎の検証班とやらが「VVVの技術マジでヤバいんじゃね?」という結論になり更にバズが加速。更に更にコメント欄に現れた謎の海外有識者相手に英語で討論を行い、それが海外でも取り上げられて日本だけではなく海外でも知名度が爆上げになったのだとか。

 

 あと、何故かうちの配信だけコメントが自動で翻訳されるのも地味にバズった切っ掛けである。プラットフォームの限界を超えていく配信と少し話題になっているらしい。プラットフォームの運営から問い合わせが来てアキコさんが困っていたけど困っている姿もかわいいから良しとする。

 

 この段階で「あ、これは不味い」と思って、ネタ要素として今日の配信を『九十九あきら』に提案してみたのだが……SNSで日本消滅だとかテロなんて甘っちょろい!起爆させてから言って見ろ! だとか好き勝手言われまくってるのをみてそっとスマホを閉じた。箸が転がっても話題になるフェーズに入ってる。

 

 『九十九あきら』の配信はVVVの公式チャンネル、つまり『オーイシアキコ』のチャンネルでしか行っていないため、オーイシアキコの登録者数は2000人から3日で30万人を突破。日本だけではなく海外のユーザーもガンガン登録していて、その勢いは収まる事を知らない。

 

 アキコさんは初日に数時間で1万人を突破した時に「たった数時間で1か月の私の努力を抜かれたぁ!」と嘆き、次の日に10万人を突破した辺りで「え、これ大丈夫? これ大丈夫な奴!? 一也くん! 一也くんなんで電話に出ないの!!?」と俺のスマホに鬼電して、ついさっきは「もうどうにでもなーれ」と楽しそうに笑っていてすっごくかわいい(クマ成分)

 

 タイミングとかがあえば、多分アキコさんは自力でこのくらいには来れたはず。それを誘発するために『九十九あきら』になったんだから、俺の目論見はこれで完全に当たったことになる。

 

 頑張り過ぎたけどね!!! これレンタル期間終わったらやべぇ、やべぇよ。『なんとかなるなる』じゃないんだよなぁ!

 

 




山里一也(男)25歳


視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(料金1円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル中 1週間)


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