ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
日本中の企業が阿鼻叫喚となる地獄の季節、年度末が終わった。
VVVは日米ともに大幅な黒字。というか去年の立体投射機の時の比ではないくらいに今年はヴァーイ関連のお金が入ってきたため、VVVアメリカはたった3名しか居ないのに日本本社の5倍くらい儲かってる。儲かり過ぎたため米国大統領が『今年は新たな財源が増えた』ってジョークにしちゃうくらいだ。
まぁ儲けた分を税金で吸われるのは嫌なので、マックス氏と話し合って彼が持っているテキサスの土地を幾つか購入したりしていくらか節税も行っている。向こうの税理士さんにはもっとお金を使ってと言われているからこの土地には超硬度変異スチール用の大きな工場を建てるつもりだ。現状だと松戸真楠自動車の開発工場でしか作れないからね。日本の方でも節税のために生産設備が欲しいと思っていたから、最近赤字になってしまった大手自動車会社の工場を一か所購入して中身を超硬度変異スチールの生産設備に置き換えようか検討中である。
その超硬度変異スチールだが自衛隊に耐久試験を行って貰ったら大変評判が良く、流石に10式戦車砲の試験は撮影出来なかったがそれ以外の携行火器や機関銃などの耐久試験は撮影許可も出たし抜群の結果を残している。
従来の装甲と同じ重さで3~4倍くらい頑強になるということですぐさま機密情報に指定されそうになったが、生産するには専用の設備が必要な事とその設備以外では加工が難しいこと。当初はマックス氏経由で米軍に依頼するはずだったため性能について米軍も興味を示しており、そのうち米国でも生産が始まるだろう事を伝えると超硬度変異スチールの自社利用は認めて貰えた。
ただ、自社利用は兎も角それ以外は自衛隊と米軍以外には売らないでね、というお願いはされてしまったが。まぁこれは問題ない。そもそも生産設備も『あきら』が居ないと作成すら出来ない一品物なんだから、作業ロボットの見込み販売数を考えても余剰なんて暫く出る余地はない。日米の生産工場を整えてようやく自衛隊や米軍に販売できるかな、という程度の生産量になるだろう。つまり来年とか再来年の話になるわけで、今は松戸真楠自動車の分で精一杯であり他所に流すなんて心配するまでもないわけだ。販売した作業ロボットから装甲材を剥がせばいいって? 加工が難しいから他の車両につけるには鋼線かなにかで固定するしかない。そんなもの装甲としては何の意味もないだろう。
まぁこの装甲材を防衛省にもたらした戦部事務次官は技術にも明るい官僚として省内での株を上げたらしく、闇のカルト組織の会合では大喜びで“鐘の音”への忠誠を謳っているし、立体投射機とヴァーイに次ぐ資金源を手に入れた事でVVVも大喜び。そして機関砲くらいじゃ破壊できない装甲のロボットを開発できる松戸真楠自動車も大喜び。まさにWINWINWINという素晴らしい結果に終わったわけだ。
この結果を元に『あきら』と松戸真楠自動車は開発を加速させ、装甲材以外の設計はもうほぼ終わっている状況だったため試作機の作成を開始。来月か再来月には作業用重機ロボット1号と2号が完成するそうだから、今から楽しみだな。
そして嬉しいニュースはこれだけではない。というか、もしかしたら現状だと世間の扱いはこちらの方がむしろ大きいかもしれない。
4月の初週、日本中のテレビや新聞を席巻する大きな話題が米国から飛び込んできて日本中が沸いているのだ。日本人女性騎手『篠原まみ』、日本人女性騎手として史上初の海外G1レース勝利というそのニュースは、ネット投票などで少しずつファンを取り戻していた日本競馬に大きな追い風となったらしい。
『最後方から一気に来た! ナーガが来た! ナーガが来た! 篠原を乗せて大蛇が馬群を飲み干してやってきた! 1馬身、2馬身の差をつけていまナーガがゴォォォォル! 右手を挙げた篠原! 日本人女性初のG1レース勝利はまさかの国外、アメリカでの快挙です!!!』
テレビ画面の中でぐっと右手を挙げる『まみ』と相変わらず鼻息荒く暴れ散らかすナーガ。現場には俺も居たんだが、いやぁナーガは強かった。途中で『まみ』が『あ、これ勝ったわ』なんて口にしたからマジかと思ったんだが、他の馬がポジション争いで少し飛ばし気味になっていたため最後方に居たナーガが美味しく頂けてしまったらしい。ナーガの適性としてはもうちょっと長い方が良いらしいから、本当に今回は運が良かったんだがそれでもG1勝利はG1勝利。
オーナーであるプレリーさんは自身初のG1勝利馬に大興奮で、口取り式では涙を流しながら満面の笑みで写真を撮っていた。割とこういう事はよくあるらしくスタッフさんもカメラマンも口々に『おめでとうございます』と言いながら慣れた様子で写真を撮ってたけどね。数年後、ピンクちゃんの産馬の口取り式ではアキコさんもこんな風になるのかなぁ。今から楽しみだぜ。
『どんだけ馬同士の相性が良くても勝てる馬が生まれるとは限らんよ?』
――それは勿論分かってるさ。ただ、中央では兎も角地方ならワンチャンあるだろ、お前なら
プレリーさんの喜びを見ながらそんな軽口を交わしたのはつい先日の事。
ここで終わるならいい思い出だなぁとなるんだがそれだけで終わらないのが騎手稼業というものらしく、その次の日からは代理人であるレイチェルさんの電話には騎乗依頼がひっきりなしに入ってくるようになった。
もちろん全て癖馬ばかりである。
『とんでもないやつのばっかり依頼が来るんだけど!?』
――ナーガが有名になっちゃったからなぁ
この理由は単純で、G1を取ったナーガは当然今年のクラシックを争う有力馬となったため他の陣営やクラシックには参戦しない他の関係者からも注目を集めた事である。『まみ』以外の騎手を文字通り殺しに行くナーガという狂暴馬の実態が明らかになり、そんな悪魔のような馬をポニーのように御する『篠原まみ』という女性騎手にも注目が集まったのだ。
更に『まみ』がテキサスで乗っている他の馬も気質が問題で余り走らなかったが、彼女が騎乗するとこれまでとは全く違う結果を出してくるというのが知れ渡ると、癖馬に苦しむ他のオーナーたちが一縷の望みをかけて騎乗依頼を出してくるようになった、というのがこの忙しさの原因である。
『いや騎手としては嬉しいんだよ? 嬉しいんだけどねぇ。レース中にロデオやるのが趣味の馬を真っすぐ走らせるって割と難イんだけど!?』
【マミ、暴れて良い? 今暴れて良い?】
『シグルドは元気だねぇ。ほら、あっこの木でできた大きなわっかをくぐったらオーナーさんがメロンを持ってきてくれてるからね。それを食べたら一緒に遊ぼうか? 私も落ちないよう頑張るよぉ』
【メロン!? すぐわっかくぐる!】
――おおぉ~さっすがぁ
そしてそんなオーナーたちの一縷の望みを見事に叶えて乗りこなすのが『篠原まみ』という騎手なんだろう。ニンジンを垂らしたわけじゃないが言葉だけで馬のやる気を刺激してレースへの原動力へと変える『まみ』の手腕?により、これまでまともに走らなかったと評判の馬たちがどんどん結果を出し、これは本物だとまた騎乗依頼がガンガンと増えていく。まさに正のスパイラルという奴だろう。
おしむらくは『まみ』には日本での仕事があるため、どうしても時間制限がある事だろうか。耶馬千葉牧場に顔を出した時は「まみちゃん、君、アメリカで騎手やってるの???」って驚かれてしまったもんな。なんで日米で往復してるんだってのはまぁ突っ込まれるところか。プライベートジェットで往復してる(嘘)と伝えて誤魔化したから大丈夫だろうが、そろそろ自前で公的な移動手段を用意するべきだろう。
プライベートジェット、買うとどのくらいなんだろうなぁ。どうせ日米はしょっちゅう往復するんだし、節税対策にVVVの予算で買っちゃうのもありか?
更新の励みになるのでお気に入り・評価よろしくお願いします!