ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
馴染みの風俗嬢から「最近来ないねぇ~」と連絡が入ってきた。これは寂しがってるって事だな、よしお金落としちゃうかぁと仕事を手早く片付け、久しぶりに遊びに行くべと田井中さんに連絡を入れる。
「すみません、僕いまめぐ活が忙しくて女遊びは控えてるんですよぉ」
「あ、そうなんですか……どうです、その後の進展は」
「実は一緒にランチに行ったんですよぉ! めぐみさんは本当にモノを食べる姿も絵になってぇ」
連絡して久しぶりに顔を合わせた田井中さんは、いつものにちゃあっとした笑顔で『めぐみ』が如何に素晴らしい女性であるかを語ってくれた。その姿に少し寂しさを覚えたが、風俗に一緒に行っていた頃より楽しそうだからこれで良いのだろう。ただ、『めぐみ』の方は完全に『田井中さん? ああ、良い友人だよ』って感じだったから……いや、止そう。突き詰めない方が良いことも世の中にはあるのだ。
風俗遊びの友人としては竹永もいるんだが、雨宮セキュリティー警備の仕事がかなり忙しいらしくて捕まえる事が出来なかった。大陸側の情勢がかなり悪いみたいで海外との取引がある“鈴の音”関連の会社から大口の依頼が結構来てるらしくてんやわんやしてるんだとか。
俺と同じく営業も経理も出来る竹永は『かすが』に便利に使い倒されていて、人員を増やすために声をかけた外国の傭兵や『日華』がしばき倒した半グレなんかでもまだ使えそうな人員の教育なんかもやらされているらしい。ブラック労働か? と『かすが』に対する制裁を検討したが、竹永曰く半年先の風俗の原資を稼ぎたくて頑張っている、という事なので検討内容を破棄することにした。今度こそ鯨の餌にしようと思ったんだが……
『お前、私に対する扱いがどんどん悪くなってないか?』
「自分がやってる事を思い浮かべて、それが俺にどう思われてるかを連想してみてからもう一回その台詞吐いてくれる???」
さて、一人ぼっちなら遠慮する事はない。馴染みの風俗嬢×3くらいに声をかけてぱぁっと夜の町を楽しんじゃおうか、とうきうきしながら準備していると、なにか用事があるらしい『かすが』が部屋に入ってくる。闇のカルト組織の会合でとくに大した事もしてないのにお目々をキラキラさせたおじさん達に称賛され続けるのは気持ち悪いを通り越してホラーなんだが、こんな環境を創り出した野郎への対応としては特段おかしなものじゃないと思うんだけどな。
その辺は『かすが』も自覚してるのかこほんっと咳ばらいをして誤魔化す。それで誤魔化されるわけじゃないが、わざわざ声をかけてきたという事は本題があるんだろう。それを聞くためにソファにどかっと座ると、隣にちょこんと座った『かすが』が本題を切り出してくる。
『例の装甲材な、使用した車両は日米以外じゃ販売禁止になった。これは両政府の間の取り決めだから覆せないはずだ』
「あー。あれ変異前の普通のスチール板の時じゃないと加工できないんだけど」
『それを加味しても性能が高すぎる。私なら加工できなくても無理やり車両に埋め込んで複合装甲の一部にするな。一応聞くが、あきらは兵器を作る気はないんだよな? あのロボットなんか兵器転用できないかと相談を受けてるんだが』
「ああ。兵器に忌避感はないけど自分から作る気はないらしい。あいつの作るAIはデフォでロボット三原則入りだぞ? 火器を搭載したら自己判断でAIが動かなくなるらしい」
『そうか…………それが聞ければいい』
「直接聞けば良いんじゃないか? なんで俺経由してんだよ」
『いや、あきらはなんだかんだ勘が良いからな。私が彼女の作品を兵器として扱いたいという事くらい分かるだろうし、私も態度に出てしまう。この件で話すと互いに嫌な気持ちになるだろうから』
口元をつんと尖らせて『かすが』がそう口にする。この中身オッサンのちんまいのはこう、若い娘とのやり取りだとちょっと及び腰な所があるんだよな。生まれ変わってからもう20年くらい女子をやってるはずなのに。だから自作の方では明らかに女子高生とかいうスケールじゃない相棒と噛み合ったというかつるむようになったんだろうが。
とはいえ『あきら』も『かすが』ももう1年以上の付き合いなんだ。互いにどういう奴かは十分以上に知れたはずだし、もうちょっと気楽に接しても良いと思うんだけどねぇ。『あきら』側は絶対に気にしないと思うんだけどねぇ。
『あ、やっぱり無理だったんだ! 分かった、じゃあ外国販売用の作業用ロボットも設計しちゃうね!』
「出来るんかい」
『どうしても構造的に弱くなっちゃうからやりたくないけどね! でも、まぁ。研究に制限があるのは当たり前だからね! その上で最善を追求するのが研究者の腕の見せ所だよ!』
俺の言葉にそう応えて、『あきら』は自分の細い腕をポンポンと叩く。この様子を見るに、こいつ最初からこんな展開になると見こしてたっぽいな。まぁやる気を失わずに開発を続けてくれるなら、それはそれで良いか。
『あきら』の方は兎も角として松戸真楠自動車の開発チームは新装甲材の件で結構なショックを受けたみたいだが、代わりに完全版の作業用重機ロボットが米国の方で需要があるかもと伝えると水を得た魚のように元気になった。まぁ販売先は恐らく米軍かマックス氏の会社になるんだが、購買力とかを考えればこれまでの販路とは段違いの販売利益になるんじゃないかな。これまでの松戸真楠自動車の車、なんでまだ会社が残ってたのかって位にニッチ方面に突き抜けたものばっかだったからな。
まぁこの新装甲材の規制はこれから開発予定の要人用装甲高級車にも波及するんだが、国外に出さなければOKは貰えるだろう。多分これに乗るのは国内でもやんごとなき方々とかを筆頭にした超が付くお偉いさんか“鈴の音”関係者くらいだから、話も通しやすいはずだ。お偉い人にとっては身の安全に直結するし。というか現行の高級車の外装を超硬度変異スチールに変えるだけだからもしかしたら一番開発が早いかもしれない。完成したらVVVにも一台回して欲しいね。
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