ブラック労働で過労死数歩前だった俺の心の癒しだった動画アプリがマジモンの神アプリだった 作:ぱちぱち
「是非、九十九あきら博士と対談をさせていただきたく」
「申し訳ありません。実験を優先したいとの本人の希望でして対談などはお断りさせて頂いております」
「新技術の商品化についてご一考を!」
「特許出願中のため商品化はまだ検討していません」
「VVVに入社したいんですが」
「履歴書をファックスで送ってください。事務歴あります? コールセンター勤務でも全然オーケーで即戦力期待してるんであ、ちょっと待って! 切らないで! 話だけでも!!!」
レンタル期間が終了し、元の日常が戻ってきた……わけもなく。気付けば事務所備え付けていた電話機は常に鳴りっぱなし。録音メッセージは上限まで保存されていてすでにその機能を生かすことが出来なくなっていた。
だが今は違う!(ギュッ)
何故ならこの電話機には『九十九あきら』お手製のAIオーイシアキコが搭載されており、なんとかけてきた相手の用途に合わせてAIオーイシアキコが自動で返答をしてくれるという素晴らしい機能がついたからだ!
おかげでSNSでは「いつ電話をかけてもオーイシアキコが出てくる」「友達と一緒に電話を掛けたのに両方オーイシアキコが出た」というオーイシアキコ偏在説が実しやかに囁かれているが、まぁその程度のコラテラルダメージは置いといて。
「あきらちゃん、こっちに常駐は出来ないの?」
「無理ですね。あいつメンチよりも自由人なんで。生活力も人一倍あるし」
「まぁ、それは、なんとなくそう感じたけど。でもねぇ」
アキコさんと向かい合って雑談という名の、今後のVVVの活動についてのお話合いを行う。議題はもちろん、VVVの時計をいきなり1年分くらい先倒しにぶっ倒してくれた『九十九あきら』とかいう核弾頭についてだ。
レンタル期間が終わった為、無事にプレミアムレンタル権を手に入れた今。『九十九あきら』を1日呼び出すことは普通に出来る。出来はするんだが、そうなるとその日は俺が一日居なくなるという事になってしまう。『九十九あきら』が俺である以上、俺と彼女は同時に存在できない。
元々の予定ではそれでもかまわなかった。彼女には技術的なオブザーバーとしてときたま事務所の機材を見てもらうという立ち位置にするつもりだったからだ。だが、現状はそうも言っていられない状況だ。なんせ『九十九あきら』の名前はVVVの名と共に大きく広まってしまった。社長であるオーイシアキコと並ぶ、いや。一部界隈ではそれをも凌駕するVVVの顔だ。
それに現在、VVVに最も多く来る問い合わせ。VVVが開発したという事になっているホログラム技術や3Dアバターの技術についての質問などは、『九十九あきら』でないと返事が出来ないものばかりだ。まぁ、やろうと思えば一時期『九十九あきら』を宿していた俺にも出来るんだが、アキコさんは俺の前職とかを知ってるからな。なんでそんな事が分かるんだと聞かれたらちょっと困ったことになる。
まぁ、どちらにせよこのままでは不味い事になるというのは間違いない状況だ。いっそ俺が辞めて『九十九あきら』を専属で、とも思ったけれどそれをしようと考えただけで『九十九あきら』のプレミアムレンタル権が“使用不可”になってしまったため諦めた。薄々感づいていたけど、このアプリ俺の意思とかもバッチリくみ取ってる。怖い。けど手放せない。
そのレンタル権の話しで言うと、使用料金が1円になってる一番上の人も怖い。ちょっとずつ値下げしてる時から一回はそろそろ借りないとなって思ってはいたんだ。ただ、1日潰れるのはやっぱ辛いと放置してたら『九十九あきらは終末世界を諦めない』をレンタルした辺りからガンガン値下げが始まって気付けば1円になっていた。なんなんだお前。むしろここまでくると借りるの怖ぇよ。
スマホのアプリ一覧を見ると、『どき魔女』の項目の所には“運営に怒られたので10円に値上げしました”と運営に擦り付ける形で値上げした理由が書かれてたりするし自由過ぎる。君たちの力関係一体どうなってるんだ。
……いったん『赤神さやか』の事は置いておこう。今はこの状況をどう打破するかだ。
いちおう、案としてはある。ちょっと極端な話だが、結局のところ俺と『九十九あきら』が同時に存在できないことが最大の問題なわけだ。一度レンタルするとそれが1日なわけだからどうしたって誤魔化す事が出来ない。これがアニメ視聴の時のように一旦停止とかで元の姿に戻れるならまだやりようはあるし、『さやか』をレンタルする事だって出来たんだがな。以前、運営にレンタルを1日縛りではなく一旦停止とか出来ないかと問い合わせたんだが、その件の返答も無かった。
このアプリがどういう技術か分からないから俺としてはやれることは問い合わせしかない。つまり、この方面での解決は現状難しい。
そこで考えたのが『九十九あきら』の技術の一つ、ロボット工学を活用する事だ。『九十九あきら』は元々ロボット工学者であり、作中世界で文明が崩壊する前は新型の人間そっくりな人型アンドロイドの開発に携わっていた。まぁ、その完成前に核戦争が起きたんだが、人型のロボットを作る知識を持った人物である。その技術を使って、全身は難しくても一部。たとえばどこかの部屋に座ったままの状態のロボットを置いて、上半身だけ本物のように動かしてホログラムを被せれば誤魔化すことも出来るのでは、というものだ。
これならロボット部分さえ何とかすれば後は現在の技術だけで行ける筈。『九十九あきら』の残滓でそれっぽく話す程度なら俺でも出来るから、後はボイチェンかまして週に2,3回配信っぽいことをすればそれらしく振る舞う事は出来そうな気がする。
まぁ、そのためには今度は1か月くらい『九十九あきら』を借りっぱなしにしないといけないだろうが。流石にロボット作るのは時間かかるからね。
そんな事を考えていたら、テーブルの上に置いていた俺のスマホがブルっと震えた後、画面の中から火柱がボワァ! といきなり立ち上った。ファッと思ってそっちを見ると、立ち上る火柱はやがて真っ白な光に変わっていき、そしてちょっとずつ小さくなり、やがてスマホの中に消えていく。あまりの光景に数秒、その場で佇んだ後。いきなりピピピっという通知音がスマホからなり始めたため、触るのが怖かったけど壊れてたらそれはそれで怖いとスマホを持ち上げる。
熱くは、ない。それどころか火柱が立っていたのにスマホが置かれていたテーブルや周囲には焦げ跡の一つもない。
一体何だったんだ。俺の部屋にもホログラムが実装されたのか? と首をかしげながらスマホを見ると、『NEET NOW』から新機能に関しての通知が入ってきていた。
ええと、なになに。「ご希望されていたレンタル中の一時停止機能及び時間単位でのレンタルを実装いたしました。今後ともNEET NOWをよろしくお願いいたします」………………か。
そうか、そうか……うん。便利になったのは嬉しいな。色々これで解決できそうだし。うん。
これ、借りなきゃ駄目だよね(震え声)
山里一也(男)25歳
視聴履歴
『ドキドキ! 魔女っ子大戦争』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『不死鳥の魔女』(運営に怒られたので値上げしました。料金10円)
『煉獄列島』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『閻魔の地上代行人』(料金1000円)
『電脳歌姫ろっくんろー!』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『鬼畜クマネージャー』(料金30000円)
『九十九あきらは終末世界を諦めない』(レンタル終了)
プレミアムレンタル権『天災科学者』を獲得しました。(料金:ひなちゃん家のご飯)
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