ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
今回の旅ではVVVやVS以外のVタレも居るため、最初に集合して挨拶を行う。ホログライブさんからは4人、はちじくじさんからは3人が追加で参加しているため合計30人近い人数だ。流石に俺が全員に付くわけにはいかないから、マックス氏に頼んで現地の案内兼ボディーガードを手配してある。これらも全てVVV持ちのため参加者、特に他所からお誘いを受けてきた7人は恐縮しているのだが、実を言うと来年の税金対策も兼ねているためうちとしては全然問題なかったりする。ただ、まぁこの件でアキコさんに恩義を感じて、どこかで返してくれると期待しときたい。
「ばにほー! ホログライブ三期生、
「あ、他の方も配信用の動画を撮られて結構ですよ。VVV公式チャンネルではその撮影シーンを配信させてもらいますんで」
「流石はクマコー社長、商売がお上手ですぅ。うちの同期の配信なんてもうね。なんぼでも踏み台に! 良い具合に飛び跳ねる感じにしてもらっていいんでぇ」
「てめー! 久しぶりに会った同期を投げ売りすんじゃねーばに!」
「え。「はにー、篠原騎手応援旅行に行けるならなんでもします」ってさぁ言ったよね? なんかさー。はにーちゃん頭、高くない? 頭の位置そこでいいのかなぁってまんしぃ思いますぅ」
「こ、こいつぅ……! 言ったけど! 言ったけどさぁ!」
離陸して十数分。シートベルトを外しても良いとアナウンスが入ってすぐ行ったオープニングはこんな感じで賑やかに始まり、その場で今日の配信のルールを説明。機内では常に立体投射機が動いているため撮影は自由だが、この機内の様子自体をVVVが配信しているためそれは理解してもらう。先行者利益はVVVが貰うって事だな。
最初の挨拶が終わった後、俺を含めた男性陣は前の方の座席に移動する。VVVは兎も角他のVタレ事務所には異性との絡みに異常な嫌悪感を持つユニコーンなる存在が居るため、面倒なことにならないよう性別ごとに座席は分けてあるのだ。同じ馬でも競走馬とはえらい違いだ。
「ユニコーンさん方は売上で推しの生活を支えてますんで……」
「その分苦労も多いみたいですし良し悪しあると思うんですよね。他所の会社の経営方針には文句つけたくないんですが、うちの会社にも流れてくるんで」
「根暗さんガチ恋勢多いでしょうねぇ」
「シカやんシカやん。麻雀せん? 欅くんが雀牌とマット持ってきてるって!」
隣に座った鹿谷くんとそんな事を話していると猪上くんが声をかけてくるのでそちらを見ると、隣に座っていたはちじくじの欅スロープくんと一緒に食事用の四角いテーブルに麻雀マットを並べているのが目に入る。その様子に他の男性Vタレ組から口々にツッコミが飛んでいき、後方のかしましい様子とはまた別ベクトルで盛り上がりを見せる。
「なんでアメリカ旅行で雀牌持ってきてるんだ?」
「欅さぁ、折角誘ったアメリカ旅行で雀牌はないでしょ」
「やー。ほら、雀力気になるクマさんとかそこにいらっしゃるじゃない。ね?」
「ね? じゃねーんだわ。すんません社長、こいつうちの古巣の若いもんで……ちょっと俺から言っときますんで命だけは……」
「あ、もしかして俺いまリアル命の危機?」
なんて会話から男性組が麻雀マットを敷いたテーブルに集まり、その場でVVV・VS・はちじくじの名誉をかけた麻雀大会が始まる。なんか気軽にディスられた気がするが気のせいだろう、うん。ところで麻雀って初めてでルールが分からないんだがどうすればいいんだろ。『メンチ』にでも聞いてみるか。
『お、麻雀? 良いぜ。じゃあレクチャーしちゃうわ。とりあえず牌の扱いは今やってる人の動きを見ればいいぞ』
――Ok把握
頭の中で呼びかけると暇をしていたらしい『メンチ』が応じてくれたので、とりあえず第一回戦ということで麻雀マットを囲う欅くんたちを見て牌の持ち方や切り方を学ぶ。ほうほう、要は3・3・3・3・2で関連性のある牌を集めれば上がりという事か。相手の捨てた牌で上がればロンとか自分で引いてきた牌で上がれば自摸とか色々あるが、まぁそういうのはやっていくうちに覚えるだろう。
1回戦は梟くんが欅くんを猛追したものの欅くんが1位で上がり、2回戦目。ルールはなんとなくわかるけど素人だと伝えると何名かが「え、つまりクマコーさんに勝てるチャンス!?」とか色めきだったのが少し気になるが、まぁ練習のつもりだし金もかかってないし気にしないでおこうと席に着く。いやー、いつかはやってみたいと思ってたから、ちょっと楽しみだな。これ4人いないと出来ないゲームだろ? ブラック労働してた頃はそんな元気なかったしVVVを立ち上げてからは忙しくて結局やれてなかったんだよなぁ麻雀。
ガチャガチャと麻雀牌をかき混ぜて、麻雀牌を17枚並べて2段にする。この2段に積まれた麻雀牌は山というらしく、ここに積まれた麻雀牌をどんどん引いていってゲームを進めていくんだよな。
『うん、綺麗に積んだな。じゃあ次は親決めでサイコロ振って。お、お前が親だな。じゃあお前がもう一回サイコロ振って、そう。7なら対面だから、対面の山のこっちから見て左から7までが王牌って名前な。8番目から2組4枚ずつ牌を順番に取っていって14枚になったら一枚要らないものを切る。こっからゲームスタートだ』
――了解!
事前に素人だと伝えたからか、卓を囲んだ欅くんや猪上くんたちもこうするといいんだよ、とゆっくりした動きで進めてくれている。ありがたい、色々考える事が多くて一々止まっちゃうんだ。でも、やっぱり初めてのゲームはわくわくするなぁ。
ただ、残念な事に今回の配牌はかなり悪いように見える。3ずつ揃えていかないと駄目なのに1組しか被りがなくてバラバラだし、階段のように繋げるにも1と9と漢字の牌しか手札に無いのだ。
――なぁ、『メンチ』。これってかなり悪い配牌だよな? 最初はどれを切ればいいんだ?
『おう。ツモって言ってそのまま倒していいぞ』
――なんで???
教えられた事と真逆の事をいきなり言われて頭がフリーズしそうになるが、『メンチ』から『いいからこう言え』と言われた通りに口を動かす。ええと、ツモ、てんほーこくしじゅうさんめん。ぜんいんとびっと。
そう口にして牌を倒したんだが、誰も反応を返してくれない。ポカーンと口を開いたまま、全員が俺の手元に視線を向けて固まってしまった気まずい状況だ。あ、あれ。もしかしてこれ『メンチ』に担がれたか? おいおい、この空気であと10時間も飛行機の旅を続けるのかよ、勘弁してほしいぜ全く。
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