ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
1週間ぶりの日本は相変わらず日本だった。いや、国外から帰るとこの相変わらずってのがなんとも気持ちのいいものなんだよね。成田空港に到着した後は千葉に家がある人はそこで解散で、それ以外の参加者はVVV・VS組の為に用意したバスに便乗して都内へ。なんだかんだとバスの中で感想会のようなものを配信して、VVVの事務所に到着したら解散。
なんてするわけもなく、麻雀が好きなVタレさん達は群青さんが持ち込んだ全自動麻雀卓があるVSの事務所へ突撃し、それ以外の者はVVV食堂で我らが料理長満腹たべるの料理に舌鼓を打ちながら後夜祭を始めた。早く帰れよと思ったが、アキコさんがOKを出したんならまぁ仕方ない。ただし配信枠はこっちが頂く。当然だよなぁ?
「ど、同接数が見た事ない数字に……!」
「クマコーさーん。千葉で帰った敗残者が羨ましがってるんで煽って良いですかー?」
「いぇーいマロンみってるぅ? お前が行きたがったアメリカ旅行最の高だったぜぇ~」
大体3時間ぐらいバカ騒ぎをした後、彼ら彼女らは電池が切れたように寝落ちを始めた。いやまぁ、そんなに体力がないVタレさんが1週間遊びっぱなしの国外旅行から帰って来たらそら疲れてるだろうが、思わず「ガキかこいつら」と口にしたらコメント欄も「草」だとか「ほんまこいつら何がしたかったんだw」なんてコメントで溢れてきたので俺の感想はやはり間違っていなかったらしい。
配信はそのままにしてマイクをオフにし、男性陣は担いでマンションの別の部屋に放り込んでおく。流石に男女が同じ部屋で寝てると不味いからな。この部屋なら特に企業機密もないし起きたらそのまま外に帰ってもらえば良い。
さて、こっちの部屋がこうなっているという事はVS側も酷いことになってそうだなぁと様子を見に行くと、案の定全員爆睡をかましていたため事務所のマイクをオフにして男だけ担いでまた別の空き部屋へシューッ! 祭りの後片付けって感じだなぁ。
さて、今度こそ寝るかぁと思ったんだが、ここ1週間『まみ』として過ごしていたため元の姿に戻った瞬間から健康な若い男としてのリビドーが。不覚にも『まみ』が零したビールが『まみ』の谷間に溜まってるのを見て不覚にも。大事な事なのでもう一度言うが不覚にもときめいてしまったので、馴染みの風俗嬢にちょっと相談してみようと思い立ちとりあえず風俗行こうと決意した。やっぱりね、やろうと思った時が吉日なんだよ。
猪上くんとか梟くんが興味ありそうな感じだったし起きてたら連れてっちゃおうかなぁと思ったんだが二人とももう寝てるだろうししょうがない、一人で行くかとマンションを出て駅に向かって歩いていると、住宅街の道を3人ほどガタイの良い兄ちゃんたちがこちらに向かって歩いてくる。あれ、明らかにこっちを意識してるな?
はてこんな面の連中は見覚えがないんだが。疑問に思っていると先頭に立っていた兄ちゃんが俺の前で立ち止まりすっと両腕を上げてファイティングポーズを取る。
「あんた、こないだキックの谷町をぼこったリーマンだな? 空手道の正田だ。あんたを狩ればランキングに入れるんでな、悪く思わないでくれ」
「…………??? え、うん? 意味が分からな過ぎてお前の言葉がどれも頭に入ってこないんだが。俺、今からFカップのみなみちゃんの胸の谷間にテキーラ貯めて飲み干すって大事なミッションがあるんだ。どいてくれないか?」
「そっちの方が意味わかんねーよ!」
首を傾げた俺の顔に正田とか名乗った空手マンの上段蹴りが飛んでくる。悪くないんだがよくもない。『日華』の上段蹴りは俺が気付く前に俺の頭に届いてるから、こんだけ他の事を考えていてもまだ届いてないなら単純に速度が遅いんだろうな。
がつん、と頭に衝撃。ちょっと揺れるがそれだけ。うん、パワーもない。蹴りの動作は良かったんだが全体的にフィジカルが足りてないね。頭に上段蹴りを喰らって微動だにしない俺に正田とやらは驚愕を顔に張り付けながらもすぐに体勢を立て直し、今度は正拳突きを放ってくる。こっちはそこそこ早い。けどやっぱり軽い。鳩尾などにしっかりと拳を突き立ててる所はプラスだけど、それでダメージが入らないなら意味がないでしょ。
「別にお前に興味も何もないし、なんなら邪魔だと思ってるんだけど一つだけ親切」
「な、なにを……」
「もっと肉食え肉」
そう口にした後、出来るだけゆっくりとした動作で前蹴りを放つ。ゆっくりとした動作だから当然相手のガードが間に合うが、そのガードした腕をへし折ってそのまま相手を10mほど蹴り飛ばす。『日華』に言われたそこそこ程度の相手への対処法だ。こう考えると一応闘いが成立してたう〇こ漏らしたキックボクサー、つよかったんだなぁ。
「……は?」
「え? ……え? 正田?」
正田とやらは背後に控えていた二人の間をぶっ飛んでいったため、二人が互いを見合ったり後ろを振り返ったりしている間をそのまま通り過ぎる。こいつらは今飛んでった正田とやらよりも弱く見えるし、撫でる程度でも危ないかもしれない。かかってこられてたらそれはそれで困ってたかもしれんな。
まぁ今はどうでもいいんだそんな事は。行きつけの店のみなみちゃん(21)はFカップの爆乳でちょっとキツめな容姿のかわいこちゃん。さっき連絡したら今日は出勤してるって言ってたし来てくれたらサービスするって言ってたから谷間酒だってやってくれるはず!
「あの、山里さん!」
「うん?」
ルンルン気分でそのまま歩き去ろうとした時、名前を呼ばれたので足を止める。声のした方向に視線を向けると、見覚えのあるパーカーを着た少年が直立不動の体勢で立っているのが見えた。えーと、あれだ。うん。『日華』と一緒に居た時に何度か見た顔の筈。名前はパッと出てこないんだけど、ええと。
『あれ、サルじゃん。どしたんだこいつ』
――あー! そっかそっかサルくんか。お面被ってないから分からんかった
頭の中で響く『日華』の声で彼の事を思い出す。彼は『日華』と一緒に違法外国人や犯罪者どもをめたくそにしていた頃、『日華』の手足になって戦う以外の手伝いをしてくれていたメンバーの一人で、その頃は良くサルのお面を被っていたから『日華』からサルと呼ばれていた少年だ。
「あれ、久しぶりだね。というか俺の名前知ってたんだ?」
「はい! リーダーの同門という事で、うちの連中で山里さんの事を知らない奴はいないっす! じゃなくて! 先ほどはうちの候補生がご迷惑をおかけして申し訳ありません! あいつ、何を勘違いしたのかランカーに勝った山里さんに勝てば自分もランカーだって勘違いしたみたいで」
「うん。良く分からんが落ち着こうか。そのランカーとかタンカーだか知らんけど、何の話?」
そういえばさっきの正田とかいうのもそんな事を口にしていた気がする。唐突過ぎて意味が分からなかったが、サルくんの様子だと結構有名な話だったりするんだろうか。そう思って尋ねてみると、サルくんは「え?」と驚いたような声を上げた。
「雨宮セキュリティー警備の人材発掘兼街の喧嘩自慢のガス抜きに行われてる賞金ランキングバトルの事ですが、山里さんには話が行ってないんですか?」
「うん、初耳。びっくりするほど初耳」
サルくんの言葉に大事な事なので二回同じことを口にする。あの野郎、闇のカルト組織以外にもとんでもないもん隠してやがったな?
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