ブラック企業にすり減らされた社畜が主人公になれるアプリを手にしたらどうなるか→ 作:ぱちぱち
「え、嘘、ほんと!?」
「はい。無事に成功したそうです」
「やだ! じゃ、じゃあピンクちゃんの応援に行かないと! あ、駄目よね。受胎したばっかりだとマリッジブルーかもしれないわ。が、我慢。安定するまで我慢しないと! ね、一也くん馬の赤ちゃんにはどんなプレゼントが良いかしら!」
「果物が良いんじゃないですかね。耶馬さんに聞いてみます」
耶馬千葉牧場からピンクスカート号が無事に受胎したという連絡が来たためアキコさんに伝えると、アキコさんは大喜びでさっそく馬グッズやらなにやらを楽しそうにネット検索し始めた。うんうん、喜んでくれてなによりだ。本当に耶馬千葉牧場を買ってよかったぁ!
耶馬千葉牧場といえば、この牧場を購入した経緯である霊障対策課の秋村さんから連絡が入っている。どうも以前作成したワンカップの鬼たいじ1万本が諸外国のオカルト機関に好評らしく、今度は一本幾らという契約で追加生産を行いたいそうだ。どのくらいのお値段になるのかと尋ねると一先ず一本10万円。後は時価によって順次値段交渉をしたいとの事。牧場をポンと買ってくれた前回に比べたら大分見劣りする感じに聞こえるが、売却して貰った当時の耶馬千葉牧場の場合ピンクスカート号を含めても資産価値が10億行ったか分からないからね。総合的にみるとむしろ初回よりも値段が上がってるんじゃないかな。
というか、こんなに貰って良いのかちょっと怖いくらいだ。なんせアレの作り方は近くにいて霊圧をあげるだけだから、俺は特に何もすることはない。近場の酒が霊力を浴びてると判断したら場所を移ってまた霊圧をあげるだけを延々繰り返すお仕事を一日ずっとやるだけで前回は牧場を貰ってしまったのだ。
『そこは技能職の強みだと思っていた方が良いんじゃないかな。私だって一回の手術で億を請求したことあるし』
――いやー。そうなんだろうけどさぁ、やっぱり気後れするわ。
『一也は意外と真面目だね。女性関係だと見下げ果てたスケベなのに』
――俺、お前にそこまで言われる事したっけ???
最近プレミアムレンタル権者たち、とくに女性陣から、女遊びに付いて非常に厳しい意見を多く頂いている。いや、分かるよ。風俗通いは女性から見るとこう言われちゃうってのはさ。でも、風俗に行くときは向こうに伝わらないようスマホもOFFにしてこっちの意識が伝わらないようにしてる筈だから、『めぐみ』達には最中の情報とかは伝わらないはずなんだけどね。
まぁ、彼女たちの言い分も分かるから俺もね、これだって心に決めた人が出来たらすっぱりと風俗通いは止めるつもりなんだよ。アキコさん? アキコさんは『メンチ』の彼女だろ、NTLは好きじゃないんだよ俺。まぁね? アキコさんが俺にとって特別な女性だって言うのは間違いないんだけどさ。ほら、初恋相手とかっていつまでも心に残るもんなんだろ? それだよ多分。風俗嬢たちとのメイクラブも楽しんでは居るけどそう言うのとは違うって言うかね? あと複数人とのプレイが多いのは向こうの体力が持たないってお店から懇願されたのが始まりであってだね。やっぱり体力差がありすぎて普通の女性だとすぐにダウンさせちゃうからこういった状況になってるんだよね、うん。
……この間、『かすが』が女性のストリートファイターも居るとか言ってたな。女性の格闘家って事はきっと体力も凄い筈。ちょっとその。一度どういう催しなのか見せてもらおうかな……?
ライブに向けての準備期間中、ひなちゃんと蝶子ちゃんに声をかけられた。我がVVVでも最古参Vタレであるひなちゃんは現在登録者数が80万人ほどの大物Vタレに成長し、大学と配信の両立で忙しい毎日を送っている。彼女の学業に悩む日常的な配信は子供か孫を見るような目線の紳士たちで毎日賑わっている。もう一人の蝶子ちゃんは高校一年生として学業が忙しいらしく、最近は配信を控えてはいるものの『リリーベル』とのコンビで50万人の登録者数を持っているVタレだ。週に一度行う彼女の「こんしゅうのてんきよほう」という占い配信は毎回数万人の同時接続数を誇る人気配信でもある。
この二人との関係ももう三年目かぁ。思えばひなちゃんをスカウトしたのがほぼVVVの始まりだったなぁ。なんて思いながら彼女たちの相談に乗ったところ、どうも過去にコラボしたりした比較的仲のいい他所のVタレさんから今回のVVVエキスポに参加したいと頼まれているのだとか。もちろんライブに参加したいとかではなく、VVVエキスポのチケット完売が早すぎて購入できなかった為なんとか出来ないか、という類の頼み事だ。
「なるほど。ひなちゃん達はどうしたい?」
「おともだちからの頼みだしある程度なんとかしたいんですけど。無制限にってのはやっぱり他のお客さんに悪いから、ある程度制限をかけてイベントみたいにできないかなぁって」
「わたしもそうしたい。ぜんいんが無理ならえらばないほうがいいって占いにも出たし、おししょーさまもそう言ってる」
「うん。了解したよ」
無制限に受け入れるではなく、かといって付き合いのある人間を選んでは禍根を残すかもしれない。この判断をこっちに投げてくれたのはありがたいね。
そしてVVVでも年少と分かってるこの二人に話が来ているという事は、他の人にも同じような話が間違いなく来てるだろう。この間の番長の話もあるし、とそう思って事務所で尋ねてみると、案の定VVV・VS共に全員が知り合いからエキスポへの参加もしくはチケットだけでも手に入れられないかと相談を受けているらしい。
うん、これだけ話が来てるならもうこれ自体をイベントにした方が良い気がするな。
「という訳で先着10名のVVVエキスポチケット争奪戦。はーじまーるよー! 司会は私! VVV1期生、雛まつりとぉ!」
「1期生。揚羽みらい」
「の! 二人でおこなっていきまーす! あ、機械の操作とかはクマコーさんがやってるから反則にはキビシー処罰が下るからね!」
「いのち、だいじに」
「余り変な事を言わないでくださいね???」
ワアアアアッ! と集まりに集まった各箱のVタレさんたちの歓声が上がる中、ひなちゃんと蝶子ちゃんコンビは軽快なトークで場を盛り上げていく。今回のイベントは言ってみればゲームの順位で競おうというものであり、題材は大乱格闘ブラザーズという様々な格ゲーのキャラを使った集団バトルゲームである。一度に16人が同じフィールドに降り立ち各所で格闘を行うというゲームだが、このゲームギミックが面白くて何故かアイテムに銃があったりボムといって自分の周囲を爆発に巻き込んだりといった事が出来るのだ。このアイテムのお陰で実力差があっても勝ち上がる可能性があるのと一度に多人数がプレイできるため、正に今回のイベントでうってつけだとチョイスされたゲームである。
イベントに参加したVタレさんはホログライブやはちじくじから、更にゲーミングPC部とかいう他箱とかも含めて総勢40人超。それぞれのVタレさんが勿論自分のチャンネルで配信しながらの挑戦であるため、複窓で開かれる事になるVVVの公式チャンネルはあっという間に同時接続数が20万人を超えてしまった。『あきら』が新技術を発表するときかVVVガールズバンドが新曲を出す時くらいしか見ない数字だ。
これだけの人間に見られながらの配信という事で当然Vタレさん各自も気合が入り、大会はある種の祭のようなノリで進んでいった。最終的に10人のVタレがチケットを勝ち取ったのだが、勝ち取れなかったVタレさんもかなり満足げにイベントを楽しんでいたようなのでこの様子ならトラブルになる事はもうないだろう。
と思っていたのだが。余りにもこの争奪戦が盛り上がっていたため、すでにチケットを持っていた招待組のVタレさんから「あれはズルい……ズルくない?」と言われる事になってしまったのは予想外だった。流石にそこまでは面倒見切れんわい。
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